なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

新型コロナの持続感染

2024年03月06日 | COVID-19

 倉原優先生のYahoo Japan!ニュースに新型コロナウイルスの持続感染の記事が載っていた。

 初期のころの退院基準に「PCR検査の陰性確認」があった。大抵はPCR陰性で普通に退院にできていたが、思いのほか陽性が続いて、なかなか退院させられないことがあった。

 施設から来た高齢女性は30日くらい陽性が続いて、本人はすっかり元気になっているのに退院させられない、という状況があった。当院の最高記録は、何度PCR検査を行って陽性が続いて、54日目でやっと陰性確認できたというもの。

 「ウイルスはいなくなっているが、PCRの残骸が残っている」と解釈されていたが、ウイルスがいないのに、遺伝子(RNAの残骸)が鼻咽腔に残り続けるというのは本当だろうかと思った。

 実際はウイルスがまだいて、RNAを作り続けている(正確には作らせ続けている)ということなのだろう。

 当時退院基準の参考に抗原検査を行うことはしていなかったが、おそらくそれだと陰性になり、感染性はほぼなくなっていたはずだ(正確には、「感染伝播リスクがきわめて低い」)。

 コロナの診療の手引きの隔離期間には、「感染性がなくなったとするのに、抗原検査(の陰性化)を参考にすることも選択肢としている」とある。問題は感染性の有無なので、それが妥当なのだと思う。

 最近では、関節リウマチで免疫抑制剤を使用(メソトレキサート4mg/週、プレドニン2mg/日)している88歳女性が、COVID-19 で入院した。免疫抑制剤を使用していると、ウイルス生存期間が3週間になるとされている。

 14日目の抗原検査も陽性となっていた。担当医が、大学病院から呼吸器外来に来ている先生(感染症内科)に相談すると、もう解除でいいでしょうといわれた。看護の手がかかるので、なるべく早く隔離解除にしたい患者さんだった。(本当に大丈夫かとは思った)

 

Yahoo Japan!ニュース 倉原優先生 2024年2月28日

新型コロナ後遺症の解明に糸口 感染者の一部は1か月以上続く「持続感染」だった

 

 新型コロナで入院する患者さんの多くは、いろいろな基礎疾患を持っています。心臓や呼吸器の病気、糖尿病などを持っている人は肺炎を起こしやすいとされています。ほとんどの方は、入院後数日で軽快しますが、海外の研究では「持続感染」というものが存在することが分かっています。これが新型コロナの後遺症リスクを上昇させることが示されました。

パンデミック初期を振り返る

 まだそれほど感染者数が多くなかった初期、退院基準には「PCR検査の陰性確認」というものがありました。PCR検査は、ウイルスの残骸を検出するため、感染性がなくても陽性になります。そのため、現在は陰性化を確認する必要はありません。

 アルファ株やデルタ株が流行して、肺炎の頻度が高かった2021年の春~夏に、何か月もPCR検査が陰性化しない患者さんがチラホラいました。微熱が続いたり、肺炎を繰り返したりする事例があり、隔離を解除してよいものか悩ましいこともありました。

 当初から、抗がん薬など免疫を抑える治療を受けている人において、まれながらも「持続感染」が起こるのではないか、と考えられてきました。

 オミクロン株の登場によってウイルスは弱毒化し、この議論は医療従事者の間でもやや下火になったと思います。しかしその後、後遺症(罹患後症状)が注目され、どうやらその一端を持続感染が担っていることが明らかになりつつあります。

ウイルスの「持続感染」

 約9万人のウイルス配列を解析した結果がトップジャーナルであるネイチャー誌に掲載されました(2)。

 これによると、少なくとも30日間持続する高力価の新型コロナウイルスを有する381人のうち、54人が少なくとも約2か月持続するウイルスRNAを有しているようです。つまり、体内でウイルスの複製が持続しているという意味です。

 感染者全体で推定すると0.7~3.5%が30日以上、0.1~0.5%が60日を超えて持続感染することが分かりました。つまり、29~100人に1人が、1か月以上持続感染していることを意味します。個人的には意外と多いなと感じました。

 また、新型コロナの持続感染者は、そうでない感染者と比べると、3か月時点での後遺症を自己申告する割合が1.55倍だったとされています。持続感染が新型コロナの後遺症リスクを増加させていることは間違いなさそうです。

 とはいえ、持続感染だけで後遺症のすべてを説明できるわけではなく、インターフェロンγ(ガンマ)という炎症性タンパクが長らく体内でつくられることも影響しているという研究結果も最近示されています(3)。

 この研究では、感染後にワクチン接種を受けた人において、後遺症の頻度とインターフェロンγ産生量が有意に減少しており、感染後のワクチン接種にも一定の意義があることが示唆されます。

 

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