なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

完全房室ブロック

2023年09月08日 | 完全房室ブロック

 9月6日に地域の基幹病院循環器内科から95歳女性が転院してきた。7月28日に完全房室ブロック・心不全で救急外来担当の先生が搬送していた。入院はその先生が担当になる。

 市内の内科医院に高血圧症・糖尿病で通院していたが、最近は動けなくなり、家族が薬だけもらいに行っていた。その日は意識レベルが低下したとして家族が救急要請していた。

 当院搬入時は心電図モニターで心拍数40/分と徐脈を呈して、20台を記録したりもしていた。12誘導心電図で完全房室ブロックを認めていた。肢誘導は著明な低電位差になっている。QRSはwideで心室リズムだった。

 胸部X線では両側胸水と葉間胸水を認めて、肺野はうっ血・水腫を呈している。

 95歳と超高齢で心臓ペースメーカーの適応はどうかという問題はあるが、循環器内科で判断してもらうしかない。担当した先生はプロタノールの点滴静注を行って、搬送していた。超高齢でどうするのだろうかと思ったのを覚えている。

 

 先方ではプロタノールを継続して、心拍数60/分になり、QRSはnarrowになったそうだ(junctional rhythmになったのだろう)。利尿薬の投与で利尿がつき、心不全は軽快していった。プロタノールは漸減・中止となった。

 ベット上の生活で(要は寝たきりということ)、徐脈による症状の訴えがないので、積極的な心臓ペースメーカー植え込み術の適応はなく、むしろ植え込みのリスクがあるので、このまま経過をみることが妥当と判断した、とある。

 胸部X線では心不全所見の明らかな改善を認めているが、心電図は変わりなく、QRSはwideで心拍数44/分だった。

 

 徐脈で心臓ペースメーカー治療までの橋渡し(つなぎ)としては、アトロピン0.5mgを静注して、イソプロテレノールの点滴静注になっている。

 プロタノール(イソプロテレノール)の点滴はしたことがないかもしれない(記憶にない)。プレタノールL注は、0.2mg/1mLで、0.01~0.03μg/kg/分(γ)で使用する。

 「循環器のトビラ」(medsi)ではプロタノール0.2mg/A+生食250mLを40~120mL/時で持続投与とある。これだとすぐに点滴がなくなりそうだ。

 「救急ICU薬剤ノート」(羊土社)には、プロタノールの持続静注は初期投与量0.005γで常用量0.005~0.2γとなっていた。体重60kgでは、プロタノール3A(0.2mg/1mL/A×3)+生食37mlの全量40mLを1.2mL/時(0.005γ)で開始する。これを心拍数50~60/分を目標に1~2mL/時ずつ増量とある。

 こちらの方が使いやすそうだ。1mL/時で開始して、1mLずつ増量して5~6mL/時までの調整で0.005~0.03γくらいか。

 担当した先生は、プレタノール2A(0.2mg/1mL/A)+生食20mLを2mL/時で開始していた。初期開始量としてちょうどよさそうで、わかりやすい調整だった。

 

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