なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

昨年の退院サマリー

2024年01月19日 | 誤嚥性肺炎

 1月17日に退院サマリーの記載催促が来ていた。通常は退院2週間後に記載がないと催促状が来る。大抵は退院当日には記載しているので、退院が休日だったりした時にうっかり忘れることはある。今回は昨年10月22日(日)の入院だった。(入院といっても1日だけ)

 施設に入所している85歳女性が心肺停止で救急搬入されていた。その日は日曜日で、日当直は外部の先生のバイトだった。診療科は違うが、救急の心得がある先生ではある。

 その日の朝に痰が絡んでいて、吸引している。午前11時に職員が気づいた時は、心肺停止だった。既往として、7月から8月まで約1か月肺炎で入院していた(別の内科の先生が担当)。

 救急要請されて、救急隊到着時も同様だった。医療処置の指示は地域の基幹病院に連絡して許可をもらい、ラリンゲアルチューブーブ挿入による人工呼吸と心臓マッサージ(胸骨圧迫)、それに点滴ラインをとってアドレナリン1Aを3回静注していた。

 3回目のアドレナリン静注後に心拍が再開したが、自発呼吸は出なかった。意識は昏睡。当院到着後はアンビュバッグで人工呼吸を行って、血圧は110くらいを保っていた。

 頭部CTでは脳委縮のみで、胸部CTで両側肺に浸潤影(粒状~斑状影)を認めたが、心肺蘇生の影響もあるだろう。既往とその日の状況からは肺炎はあるのだろう。痰が詰まったのかもしれない。(心疾患の可能性は残る)

 病棟に上げたが、血圧低下・心拍数低下があり、昇圧剤の持続静注が開始された。午後6時過ぎに心停止となり、死亡確認となった。

 

 その日当方が内科当番だったので、入院の担当名として名前が入った。実際は日当直医が救急搬入を受けて、適宜処置を行い自分で看取った、という経緯だった。

 基本的には当番といっても、その日は日直・当直医が対応して、翌日に申し送りを受けることが多い。(呼び出されれば、病院に行くことになっている)この患者さんも心拍が続いていれば、月曜に引き継ぐはずだった。

 

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誤嚥性肺炎

2024年01月13日 | 誤嚥性肺炎

 1月12日に記載した脳神経の専門病院から転院してきた心原性脳塞栓症の83歳男性は、転院時にすでに肺炎があった。

 先方の病院に入院中の12月31日にCOVID-19に罹患した。コロナの薬を使用したかどうかは記載がなかった。セフトリアキソン点滴静注後に、経鼻胃管から抗菌薬(セフェム系第3世代)が注入されていた。転院前に微熱が続いていた。肝機能障害があり、胆道感染症も否定できません、という記載もあった。

 1月11日に転院してきて、翌12日の血液検査で白血球8100・CRP8.8と炎症反応の上昇があった。肝機能障害(AST 54・ALT 105・ALP 184・γ-GTP 101・総ビリルビン0.5)もある。

 胸腹部CTで確認すると、両側肺の下葉背側に胸水貯留があり、浸潤影もあるようだ。右上葉にするガラス陰影ともとれる陰影があった。そして肺野全体に気腫性変化があった(喫煙者)。

 ウイルス性肺炎も否定できないが、下葉の胸水を伴う陰影は誤嚥性肺炎だろうか。まずは誤嚥性肺炎の治療を開始することにした。

 そして肝胆道系にも問題があった。胆道系(胆嚢~胆嚢管~総胆管)に胆石と、胆石というより石灰化と表現するような陰影があった。胆嚢炎・胆管の可能性がある。セフトリアキソン投与があり、影響も否定できない。

 

 聴覚言語療法士(ST)に診てもらうと、嚥下はできそうといわれたが、転院翌日は痰が絡んでいた。まずは肺炎の治療をするので、嚥下訓練は一番最初の昼のみ訓練用ゼリーで週明けまで経過をみてもらうことにした。

 

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誤嚥性肺炎

2023年11月11日 | 誤嚥性肺炎

 11月9日(木)の午後に81歳女性が救急外来を受診して誤嚥性肺炎で入院した。救急当番の担当だった別の内科医が診てくれた。

 2年前まで当方の外来に糖尿病で通院していた。手足の浮腫を伴うリウマチ性多発筋痛症(PMR、RS3PE)でプレドニンを使用したこともあった。

 同じく認知症の夫と二人暮らしだったが、夫は精神科病院に入院して、この患者さんは2年前に介護施設に入所した。入所後は嘱託医が治療している。娘さんが介護の仕事をしていたのが幸いだった。

 

 その日の午前10時頃にベット上で嘔吐した。酸素飽和度が79%(室内気)となり、発熱が38℃台となって、午後2時過ぎに救急搬入された。

 胸部X線・CTで左下葉背側に浸潤影を認めた。時間的に誤嚥後3時間くらいでそれほど陰影が出るかとは思う。すでに肺炎が発症していて、体調不良に伴う嘔吐なのかもしれない。

 さらに頭部CTで(念のために撮影した?)、右前頭葉に低濃度域があり、左右比較すると右側が腫脹している。MRIはしていないが、比較的新鮮な脳梗塞の可能性がある。

 通常の治療をして、病状悪化時はDNRの方針として入院した。入院後は解熱して、酸素化も良く、経過としてはいいようだ。

 

 誤嚥性肺炎は「成人肺炎診療ガイドライン2017」には誤嚥性肺炎の明確な診断基準はなく、嚥下性肺疾患研究会で定義されている。

 それによると、まず肺炎の診断は、次の①、②を満たす症例とする、とある。

 ①胸部X線または胸部CTで肺胞浸潤を認める ②37.5℃以上の発熱、CRPの異常高値、末梢血白血球数9000/μL以上、喀痰などの気道症状のいずれか2つ以上が存在する

 あとは、

 確実例誤嚥の直接観察 明らかな誤嚥が直接確認され(食物、嘔吐など)、それに引き続き肺炎を発症した例

 ほぼ確実例嚥下機能障害の存在 臨床的に、飲食を伴うむせなどの嚥下機能障害を反復して認める例

 疑い例嚥下機能障害の可能性 臨床的に、誤嚥や嚥下機能障害の可能性をもつ下記の基礎病態ないし疾患を有する例

 つまり、肺炎があり、誤嚥したところを見れば確実例、ふだんから誤嚥していればほぼ確実例、誤嚥してもおかしくない疾患があれば疑い例、ということ。

 

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