なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

亜急性甲状腺炎

2024年04月26日 | 内分泌疾患

 4月22日(月)にふだん高血圧症で通院している87歳女性が、1週間前からののどの痛みと食欲不振・体重減少(3kg)で受診した。

 のどといっても前頸部を指さした。触診しても指さしたところに圧痛はなく、鎖骨直上の左右に少し圧痛があるかどうかというくらいだった。

 嚥下痛はなく、咽頭の発赤はなかった。鼻汁・咳はない。発熱は体温測定していないというので、わからないが、その日は36.9℃だった。微熱が続いていたかもしれない。前日は寝汗をかいて、着替えたという。

 

 3日前から声がかすれてきたともいう。会話には支障がないが、確かに少しかすれているように聞こえる。通院している時は、もう癌健診はしませんといっていたが、その日はのどの癌が心配という。

 耳鼻咽喉科外来に回すことにして、コロナとインフルエンザの迅速試験を行って(耳鼻咽喉科受診前には必須、両者陰性)、点滴・血液検査も提出した。

 耳鼻咽喉科外来受診は、午後になった。血液検査で白血球5800・CRP9.8と思いがけなく、CRP高値を認めた。ウイルス性喉頭炎を想定していたので意外だった。喉頭炎はkiller sore throat以外ではあまり細菌感染はないはずだ。

 耳鼻咽喉科で喉頭ファイバー検査が行われたが、有意な所見はなかった。頸部痛(甲状腺部痛)なので亜急性甲状腺炎ではないですか、といわれた。診察時に、年齢で否定的かと思ってしまっていた。採血分で甲状腺機能も追加した。

 甲状腺機能は、TSH0.03(↓)・FT3 16.9・FT4 >5.00と甲状腺機能亢進だった。甲状腺エコーを行うと、内部実質は不均一で、まだらに低エコー域があった。

 亜急性甲状腺炎だった。上気道感染が先行することになっているが、軽度の声のかすれはそうなのか、甲状腺炎の影響なのか。改めて甲状腺の触診をしたが、痛みがあるといえばあるというくらいだった(数日前からは軽快してきたそうだ)。

 内分泌に詳しい内科の先生に訊いてみると、FT3とFT4の比率のことをいわれた。確かにBasedow病のようなFT3メインではなく、FT4の上昇が目立つ。それは破壊性甲状腺炎を示唆するそうだ。

 NSAIDsではなく、プレドニゾロンを使用することになった。高齢なので30mg/日ではなく、20mg/日での開始を勧められた。國松淳和先生の30mg/日から5日おきに漸減ではなく、20mg/日から1週間おきに漸減して1か月の使用を予定した。

 「発症年齢は30~60歳に多く、男女比は1:10と女性に多い」となっているが、87歳でも起きるのだった。

 鑑別のためもあり、甲状腺もマーカーを一通り提出した。抗TSH受容体抗体(TRAb)・抗サイログロブリン抗体・抗TPO抗体を提出して、念のため可溶性IL-2受容体抗体もといわれたので、それも提出した。

 わかってみると、最初から亜急性甲状腺炎の症状・経過なのだった。

 

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甲状腺機能亢進症

2024年04月21日 | 内分泌疾患

 高血圧症で腎臓内科の外来に通院している68歳男性は、2か月で11㎏の体重減少があった。さらに1月から少しずつ貧血を呈していた。もともとHb14~15g//dLだったが、1月から漸減して、4月にはHb11.8g/dL(MCV90.6→82.7と小球性側に変化)だった。

 貧血以外の血液検査や尿検査は異常を認めなかった。担当医は悪性腫瘍を疑って、胸腹部造影CTを行ったが、腫瘍は指摘できなかった。

 さらに上部・下部の内視鏡検査を行うため、消化器科の外来に紹介として予約をとった。(担当は大学病院から来てもらっている先生)

 消化器科を受診した日には、CTの放射線科読影レポートが出ていた。検査目的である消化管悪性腫瘍は指摘できないことの他に、「びまん性甲状腺腫」の記載があった。消化器科医が甲状腺機能検査も提出すると、甲状腺機能亢進症だった(TSH<0.01、FT3 15.75、FT4 >5.00)。

 内分泌に詳しい先生の外来に回されて、甲状腺のマーカーが提出されて、機能亢進症の治療が開始された。

 消化管悪性腫瘍の有無を気にかけてのCTオーダーだったので、自分で見た時はそれ以外は抜けてしまったのだろう。放射線科の読影レポートは遠隔診断なので、数日遅れて出る。さすがに放射線科医は、検査目的以外のところも、撮影された範囲は全部確認するのだった。

 

 この年齢の男性だと甲状腺機能亢進症は想起しにくいかもしれない。この場合(甲状腺機能亢進症)の体重減少は、「食欲旺盛(少なくとも普通)なのに代謝亢進で体重が減少する」、ということになる。

 

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甲状腺機能亢進症

2024年04月14日 | 内分泌疾患

 ふだんは逆流性食道炎・慢性胃炎で消化器科に通院している62歳女性が、両下腿浮腫で内科外来を受診した。

 最初は3月7日に受診した。担当の先生は血液・尿検査を行ったが、有意な異常を認めなかった。(胸部X線・心電図は行っていない)

 3月14日に症状が続いて再受診した時は内科の別の先生が担当した。血液検査に甲状腺機能も入れていて、甲状腺機能亢進症だった。(TSH 0.00・FT3 19.03・FT4 3.22)

 この患者さんは2015年に一過性の甲状腺機能亢進があり、無治療で短期間で正常域に戻っていた。抗TPO抗体・抗TG抗体が陽性で抗TSH受容体抗体は陰性だった。当時外科に甲状腺に詳しい先生がいて、橋本病・無痛性甲状腺炎とされた。

 その後、2019年に期外収縮が多発して、循環器科(当時)で甲状腺機能も検査したが正常域だった。

 今回は抗TPO抗体・抗TG抗体だけでなく、抗TSH受容体抗体も陽性だった。甲状腺に詳しい内科の先生に回されて、Basedow病として治療が開始された。

 最初ヨウ化カリウム丸で開始して、抗TSH受容体抗体の外注検査結果が陽性と判明して、メルカゾールも追加された。甲状腺機能は改善してきた。

 担当の先生に訊いたところ、病名は橋本病+Basedow病になります、といわれた。甲状腺ホルモンを抑えるのはヨウ化カリウム丸で、メルカゾールはBasedow病自体を抑えるのに使用します、ということだった。

 

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