なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

腎出血

2019年05月31日 | Weblog

 医局にあるコンピュータを見ていると、隣にいた循環器科医が、珍しい症例があると画像を見せてくれた。右腎臓の出血だった。

 82歳女性が心房細動・心不全で入院した。入院してすぐに肉眼的血尿が続き、貧血が進行した(Hb11.5g/dlから6.3g/dlに低下)。CTで右腎臓に出血を認めて、MRIでは多房性腫瘤があった。基礎に腫瘍か嚢胞の存在が疑われた。(濃厚赤血球4単位輸血)

 当院は泌尿器科常勤医はいないので、大学病院と腎センターのある病院から来ている泌尿器科医に相談するしかない。

 

 昨日は原発性胆汁性肝硬変(PBC)の88歳女性が亡くなった。化膿性脊椎炎で入院して、出血性胃潰瘍を来して、それぞれ何とか乗り切っていたが、最終的には黄疸が進行して肝不全となった。PBCを肝不全まで診ることは案外ない。

 今週末は奥さんが学会出張でいないので、喫茶店のハシゴで、まだ読んでいなかった岩田健太郎先生の「抗菌薬の考え方、使い方 Ver.4」を読んで地味に過ごすことにする。

 

 

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DNAR2症例

2019年05月30日 | Weblog

 今日はDN(A)Rの書類を2名で作成した。一人は大腸癌・肝転移の87歳女性で、地域の基幹病院消化器内科から転院してきた。4月に内科クリニックを下肢浮腫で受診して、肝機能障害を認めて紹介になっていた。

 治療は困難で緩和ケアのみとなっていて、末梢点滴2本のみ継続していた(診療情報提供書に記載がないので看護師さん情報をみた)。全身浮腫があり、特に下半身が目立つ。家族は「(当院に)転院して1週間くらいもてばと思っています。静かに終わることができれば」ということだった。ステロイドを使用して経過をみることにした。腫大した肝臓に圧痛がある。

 通常は添付されてくる画像を入れたCDがなかったのは、予後が短いと思っているから?。

 もう一人は89歳女性で、脳梗塞後遺症・リウマチ性多発筋痛症で通院していた。グループホームに入所していたが、介護度が上がって今回急性腎盂腎炎で入院したのを契機にそこは退所していた。何か所か施設を申し込んで入所待ちとしていたが、しだいに食事摂取が難しくなってきた。呼びかけても一言返ってくるかどうかで、すぐに閉眼してしまう。

 家族と相談して、経管栄養も高カロリー輸液も希望しないということで、末梢点滴のみで経過をみることになった(点滴静注が困難で皮下注)。こちらも、苦しまずに静かに追われれば、という。

 

 昨日急遽召集された会議は、外科病棟で起きた医療事故といえるかもしれない事例の話だった。認知症の問題が多いが、高齢者の入院したことによる夜間せん妄で、酸素吸入や点滴や心電図モニターを外して病室から出てしまうことが時々あり、大抵はすぐに気づくので大した問題にはならない。ただ、意外な速さで病棟を飛び出したりするために、止めるのが間に合わない場合がまれにある。

 

 

 

 

 

 

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紛らわしい脳梗塞

2019年05月29日 | Weblog

 81歳女性がめまいを訴えて耳鼻咽喉科外来を受診した。「すーっと引き込まれるような」めまいという訴えだったが、症状は以前からあり、内科クリニックからめまいの薬3種類が処方されていた。

 耳鼻咽喉科の検査では異常がなく、頭部MRIを行ったところ、拡散強調画像で右放線冠に高信号域が出た。耳鼻咽喉科から内科に回されて、内科新患担当だった内科の若い先生に診てもらった。

 T2*で低信号を認めて、出血?ということになり、順番が前後するが頭部CTも行った。ぽちっと点状の高濃度様のとことがあったが、明らかな脳出血とは言えない。

 これはどうなっているのだろうと思ったが、放射線科医の読影は「右放線冠に斑状の拡散強調画像高信号(ADC等信号)、その外側近傍に斑状T2*低信号(old microbleed)を認める」だった。なるほど。

 

 この方のmicrobleedは2か所だけだが、あまり目立つと神経内科でも抗血小板薬は処方していない。この程度だと処方してもいいような気がするが、たぶん決まりはないのだろう。

 

 

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肺癌、反回神経麻痺

2019年05月28日 | Weblog

 昨日内科再来を診ていると、耳鼻咽喉科外来(非常勤医)から連絡がきた。50歳代半ばの男性が1週間前からの嗄声で受診して、CTで左肺門に腫瘤を認めて、肺癌による反回神経麻痺と判断されるという。CTではさらに肝転移も疑われるという読影レポートだった。

 患者さんは発熱もなく、バイタルサインには問題がなかった。嚥下に少し影響が出ているようだが、食事摂取はできる。当院では手におえないので、すぐにがんセンター呼吸器内科の予約をとった。

 

 今日は施設から胃瘻造設目的で紹介された79歳男性に、内視鏡的胃瘻造設を行った(主治医なので今日は穿刺を担当)。先週紹介で入院すると、すでに誤嚥性肺炎があり、約1週間抗菌薬を投与して肺炎軽快後の処置になった。施設は滴下での投与(回数は1日2回)になるので、週末からそれに合わせて経管栄養を開始する。

 

 地域の基幹病院呼吸器内科から、療養型病床のある病院に入院するまでの繋ぎとして当院転院を依頼された。今日診療情報提供書が来たが、患者さんの名前は見てちょっと驚いた。

 医学部の同級生(小児科医)の父親だった。精神科病院に入院していて、肺炎が悪化して搬送されていた。NPPVから気管挿管・人工呼吸を行って、NPPVに戻してから離脱したという経緯だった。ただし、再度肺炎が悪化した際には人工呼吸などはしないことになっていると記載されている。NGチューブによる経管栄養になっていた。

 来週転院予定になった。今は関東の病院に勤務している息子(長男)である同級生と相当久しぶりに会うことになるか。あるいは妹さんがいたはずなので、その方が責任者として来るのかもしれない。

 

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後頭神経痛?

2019年05月27日 | Weblog

 日曜日の朝に、回転性めまいが発症して69歳女性が救急搬入された。土曜日の日直の後に、病院に泊まって待機していたが、準夜~深夜帯では入院はなかった。朝廊下であった当直の外科医から連絡が来て、診に行った。

 頭痛はなく、耳鳴・難聴もない。20年前に一度なったことがあるそうだ。すでに回転性ではなく、浮遊感にようになっていた。BPPVとして入院で経過を診ることにした。月曜の朝からは食事がとれるようになっていた。

 患者さんの関心はめまいよりも、4月初めから続いている症状だった。首が痛くなり、その後に左膝(関節の屈側)が痛くなって、整形外科クリニックを受診した。X線ではまったく異常がなく、整形外科の問題ではないと言われたそうだ。痛みはあるので、セレコックスが処方された。

 5月に連休中に発疹が出て、当院の救急外来を受診した。抗アレルギー薬が処方されたが、発疹(紅斑)が広がって再度受診した時に、セレコックスによる薬疹が疑われた。薬剤中止によって発疹は軽快した。連休明けに整形外科外来と皮膚科外来を受診するよう指示された。整形外科外来ではトラムセットを処方して経過をみることになったようだ。

 それとは別に、高コレステロール血症で通院している内科クリニックで相談したところ、地域の基幹病院の内科(リウマチ膠原病科)の予約をとってくれたそうだ。それが今週水曜日で、めまいで入院してしまって、外来を受診できるかどうか気にしていた。

 首を表現していたが、右耳介の後であり、右後頸部というか項部に相当する。そして、指1本の圧痛点がある。首を動かすと痛いと言っていたが、動作によって痛みが増強するわけではない。安静にしていても動いても痛いのは同じだった。痛みの性状はずきずきすると表現したが、断続的な電撃痛のようだ。持続するわけではない。今日はさほど痛くなかった。

 後頭神経痛に相当するようだ。外来で診て後頭神経痛だろうと思われる患者さんがたまにいるが、数は多くない。後頭神経痛ならば麻酔薬の局注が効くようだが、1日経過をみてから決めることにした(浮遊感があり、頭を持ち上げたりするのはまだ嫌がっている)。

 左膝屈側の痛みは、膝の動きにまったく問題がなく、発赤・腫脹・熱感はまったくなかったそうで、この痛みの原因まったく不明だ。今はまったく痛みがない。

 

 今日は地域の基幹病院から転院依頼が3件続けてきた。療養型病床のある病院が空かないので、その間の繋ぎに、というのもあった。昨日急にアクセスが増えてどうしたのかと思ったが、「トルソー症候群」の検索でひっかかったらしい。

 

 

 

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一発診断 第6回 ジルベール症候群 成人パルボウイルスB19感染症 

2019年05月26日 | Weblog

 一発診断の3冊目「さらに!一発診断100」(文光堂)が出たのでさっそく購入した。CareNeTVと合わせて読むとさらにいい。シリーズが続いてほしい。

 さらに!一発診断100 (プライマリケアの現場で役立つ)

 

CareNeTV

一発診断
第6回 両側の手足に皮疹。むくみ、関節痛を訴える28歳女性

Script illuness11
36歳男性
現病歴:発熱・嘔気・嘔吐・下痢を訴えて受診
 以前から体調を崩すと家族から顔が黄色いと指摘される
 受診現在、患者周囲ではウイルス性胃腸炎が流行
身体所見・検査所見:眼球結膜に軽度黄染を認める
 血算・網状赤血球 正常
 LDH・AST・ALT 正常(溶血なし)
 総ビリルビン 2.5mg/dL
 直接ビリルビン 0.7mg/dL
一発診断:
 ジルべール症候群

ジルベール症候群
病態:
 ビリルビンのグルクロン酸抱合障害
 →間接ビリルビン優位の高ビリルビン血症
頻度:
 人口の5%
 健康診断などで偶然みつかることが多い
症状:
 ・倦怠感・腹部不快感などを訴えることも
 ・大部分の患者は無症状
 増悪・緩解因子:
 (増悪)ストレス・絶食・月経・感染症・手術・寝不足・運動など
 総ビリルビン↑ <6mg/dL
 (緩解)ステロイド・フェノバルビタール・クロフィブラートなど
 総ビリルビン↓
検査:
 ・関節ビリルビン優位の総ビリルビン値上昇<3mg/dL
 ・ほかの肝機能検査はすべて正常
 ・溶血を疑う所見がない
 (血算・網状赤血球数・AST・LDHなど)
診断:
 ニコチン酸負荷試験、低カロリー食試験→総ビリルビン値が2~3倍に上昇する
 本疾患に特異的というわけではなく、臨床で必用とされることはほとんどない
 →1~1.5年フォローして、ビリルビン値以外に異常がみられなければ診断可能
予後:
 良好で、とくに治療は必要ない
 

間接ビリルビンが増加する黄疸

 ・体質性黄疸
  ジルベール症候群
  Crigler-Majjar症候群Ⅰ型:小児
  Crigler-Majjar症候群Ⅱ型:成人
 ・溶血性貧血
 ・無効造血(シャント型高ビリルビン血症)
 体質性黄疸のない健常者でも、絶食により総ビリルビン値が約2~3倍上昇することがある(絶食後高ビリルビン血症)

一発セオリー:
感染などで変動する、溶血所見のない関節ビリルビン優位の高ビリルビン血症は・・・
ジルべール症候群

Script illuness12
28歳女性
現病歴:
 数日前からの両側の手首・手指・足・膝関節の痛み、手足のむくみ、皮疹を訴えて受診
身体所見:
 四肢に網状紅斑
 下腿に紫斑(かゆみ+)
一発診断:
 成人パルボウイルスB19感染症
追加問診:
 保育園に通っている娘が3週間前に伝染性紅斑

成人パルボウイルスB19感染症
潜伏期:4~18日
症状:上気道様症状(倦怠感・発熱・筋肉痛・頭痛)などのウイルス血症症状に続いて、
 1)関節痛 2)皮疹 3)浮腫その他
 1)関節痛
 ・60~80%
 ・急性多関節炎の15%を占める
 ・女性に多い(男性の2倍)
 ・手指(PIP・MCP)に多く、手首・肘・膝・足にもみられる
 ・24~48時間で多関節に及ぶ
 ・朝のこわばりもみられる
 ・X線写真で骨破壊はみられない
 2)皮疹
 ・75%
 ・典型疹(20%)
 伝染性紅斑
  顔面の蝶形紅斑
  体幹・四肢のレース状紅斑
 ・非典型疹
  風疹様の斑丘疹、出血斑・紫斑、血管炎
fPPGSS:papular-purpuric gloves and socks syndrome
 ・手足の痛かゆさを伴う皮疹
 ・両手~前腕
 ・両下腿~足背(手袋や靴下を着用する部位)
 ・紅斑
 ・丘疹
 ・点状紫斑
3)浮腫その他
 ・浮腫 関節周囲のほか、全身性にみられることがある
 ・筋肉痛 50%(小児では4%)
 ・その他 肝機能障害をきたすことがある
診断:パルボウイルスB19抗体 急性期7~10日で陽性
 感度89%・特異度99%
v保険適応は妊婦のみ
治療:
 ・特異的な治療はなく、対症療法で経過観察
 ・通常、症状は6週間以内に消退
 ・まれに症状が数か月~数年続くこともある
ピットフォール:
 ・成人では間接症状が前面に出るため、患児との接触歴を聴取しないと診断に難渋する場合がある
 ・感染を契機にSLE・RAなどの膠原病に進展することがある
 ウイルス感染症で検出される自己抗:
 ・一過性にリウマトイド因子、抗核抗体。抗DNA抗体が陽性となることがある→診断において混乱の原因になりうる
 積極的に膠原病を疑うときだけ測定

急性多関節炎を来す疾患
1)ウイルス性 2)細菌性 3)慢性多関節炎の初期 4)その他
急性多関節炎ではウイルス感染症が多いため、ヒトパルボウイルスB19、風疹、HBVをまず疑う

一発セオリー:
浮腫、関節痛、皮疹のうち少なくとも2つを満たす成人で、伝染性紅斑の患児との接触歴があれば・・・
成人パルボウイルスB19感染症

 ジルベール症候群も、成人パルボウイルスB19感染症も以前はたまに診たが、最近はお目にかからない。

 


 

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副腎不全

2019年05月25日 | Weblog

 今日は日直で病院に出ていた。受診数は少な目だった。暑い日で79歳女性が熱中症で救急搬入された。一人暮らしで孫が電話しても出なかったので、直接自宅に見に行った。ADL自立の普段元気な方がぐったりしていたので救急要請した。

 搬入時、会話は可能だったが、ワンセンテンス答えるだけで、目を閉じてだるそうにしていた。臥位で尿が出ないと言うので、車いすでトレレまで行った。入院で今日明日と点滴して、月曜にまで経過をみることにした。

 

 85歳女性が倦怠感・食欲不振などを訴えて、4月から何度か内科外来を受診していた。そのうち5月の連休中に高熱で救急外来を受診した。内科の若い先生(内科専攻医)が日直をしている時で、急性腎盂腎炎で入院になった。

 尿路感染症は抗菌薬投与で軽快治癒した。不定愁訴的な訴えは続いて、まず甲状腺機能低下を疑ったが、甲状腺機能は正常域だった。低ナトリウム血症が続いているのに気づいて、ACTHとコルチゾールの検査しようと思ったそうだ。

 外注検査だったので、提出前にちょっと相談された(まったく依存はない)。結果はコルチゾール低下・ACTH上昇を認めて、原発性の副腎不全だった。

 この患者さんは3年前から内科クリニックでステロイド内服を処方されていた。皮膚のかゆみで処方されたらしいが、皮疹があるわけではない。そして倦怠感・食欲不振の症状が出る前に、自分で内服をやめていた。長期のステロイド投与によるステロイド依存状態で、ステロイドを中止したための症状だった。

 処方されていたのはセレスタミン1日3錠なので、ベタメサゾン70.75mg/日になる。昔はよくアレルギー疾患に安易に長期処方されているのをみかけた。今時はほとんどみかけない。

 画像上(CT)は副腎を指摘できず、石灰化はない。まあ補充すればいいかと思ったが、若い先生は原発性を証明するために、迅速ACTH試験をするという。結果は、負荷後のコルチゾール値が低く(10μg/dL未満)、原発性副腎不全が証明された。コートリル15mg/日が開始されて、症状は軽快してきたそうだ。 

 

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「ANCA関連血管炎」でした

2019年05月24日 | Weblog

 4月8日に記載した65歳女性のその後。両肩・両上腕・両大腿部痛と炎症反応上昇があり、リウマチ性多発筋痛症(PMR)として入院した。

 両側の下腿痛もあるのが合わないなあ、とは思っていた。プレドニン15mg/日で治療を開始して、症状は軽減して、炎症反応も入院時よりは軽快していた。しかし1週間治療しても、症状・検査所見ともに反応が悪かった。

 その後、顎跛行様の症状もあったことがわかって、巨細胞性動脈炎の疑いが出てきた。ただし頭痛はなく側頭動脈にまったく所見がない。プレドニン増量も考えたが、これは診断自体が間違っていると思われた。

 感染症や腫瘍らしくはないので、リウマチ膠原病の範疇になる。外来でリウマチ膠原病が疑われた時に時々(数年に1回くらい)紹介させてもらっている、リウマチ膠原病外来のある総合病院の先生に電話で連絡して、転院させてもらうことにした。

 どうなったかと思っていたが、返事が来ていた。それによると、血管炎症候群を疑って検査したところ、MPO-ANCA(P-ANCA)が強陽性でANCA関連血管炎と診断したそうだ。ということは顕微鏡的多発血管炎(MPA)だった。

 しびれ(多発性単神経炎)・腎障害・皮膚症状(紫斑)もなく、まったく考えていなかった。紹介してよかった。

 

(4月8日の記載)

 内科科外来(再来)を診ていると、市内のクリニックの先生(医師会長)から電話がきた。1か月前から発熱(微熱)が続く65歳女性を紹介したいという。貧血が進んでいるというのが気になった。

 1時間ほどで来院して、患者さんは普通に診察室に入ってきた。発熱以外に症状のない不明熱だと診断が難しいと思ったが、そうではなかった。1か月前にかぜ症状(微熱+上気道症状)があり、その後から両下肢痛が出現した。両肩と両上腕も痛くなった。発熱は、平熱が35℃台だそうで、36.8~37.5℃の微熱だった。2~3日で症状が完成しているようだ。

 蹲踞した姿勢からの立ち上がりがひどく、あまりやりたくない様子だったが、両手を持ってやってもらった。たしかにひどそうだ。両肩・両上腕・両大腿の把握痛があった。両下腿も痛いと言っていたが、把握痛ははっきりしない。頭痛はないといい、側頭動脈を触診しても異常はなかった。

 これはリウマチ性多発筋痛症のようだ。検査では白血球数12700・CRP14.1・血沈(ぴったり)100mm/時と炎症反応が上昇していた。CKは正常域というより低下していた。血小板数60万で、Hb8.8g/dl・血清鉄低下(6)・血清フェリチン増加(323)と炎症を反映している。

 夫と建築店(家の内装業)を営んでいて、重いものを運んでいたが、つらくてできなくなったという。外来治療でもいいが、安静の保てる入院治療を希望された。

 想定外だったのは、HbA1c6.9%と軽度の糖尿病があったことだった。家族歴がないそうで、追加で検査した腫瘍マーカーは正常域でCTでも膵腫瘍はなかった。抗CCP抗体・抗核抗体の外注検査を提出して、血液培養2セットと心エコーを鑑別のために行った。

 炎症が強い方と判断して、プレドニン15mg/日で治療を開始した。糖尿病薬はDPP4阻害薬を開始して、あとは血糖測定を行って追加することにした(けっこうなステロイド糖尿病が加わるはず)。

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ギラン・バレー症候群疑い

2019年05月23日 | Weblog

 内科の若い先生が診ていた症例で、ギラン・バレー症候群疑いで医療センターに紹介(転送)となった。

 患者さんは71歳女性で、がんセンターで肝細胞癌の治療を受けている。先週の金曜日はがんセンター消化器内科の定期受診日で、前日から出現した両側手足のしびれと左顔面神経麻痺(閉眼障害・口角下垂)の話をした。

 血液検査上は異常がないと言われて(まあそうだろう)、整形外科を受診するように指示された。患者さんは言われた通りに整形外科を受診したが、顔面神経麻痺なので耳鼻咽喉科を受診するよう指示された。

 耳鼻咽喉科クリニックを受診して、そこから当院の耳鼻咽喉科に紹介された。その日のうちに4か所の医療機関を受診したことになり、随分回り道をしていたことになる(耳鼻咽喉科の問題でもなかったが)。

 耳鼻咽喉科では帯状疱疹の確認をしたが、疱疹はなかった。基礎疾患を考慮してかステロイドは見合わせてビタミン剤と、バルトレックスが処方された。

 帯状疱疹によればRamsay Hunt症候群で、原因を特定できないとBell麻痺で単純疱疹の関与となる。バラシクロビル(バルトレックス)は帯状疱疹の治療量で処方されていた。無疱疹性帯状疱疹もあるので、難しい。

 患者さんは、翌18日(土)の夜間に救急外来を受診していた。両側手足(末梢)のしびれと両下肢の脱力が進行していた(歩行はできる)。当直の外科医が頭部MRIを行ったがが、新規の異常は認めなかった。週明けに内科外来受診とされた。

 今週の20日月曜日に内科外来を受診して、内科の若い先生(地域医療研修中の内科専攻医)が診察した。ギラン・バレー症候群ではということになった。入院で経過をみたが、22日水曜日には両下肢の脱力が進行して歩行できなくなった。急遽腰椎穿刺を行うと蛋白細胞解離があった(この辺はさすが神経内科志望)。すぐに自分の病院の神経内科に連絡して、搬送となった。

 当方としては、いろいろやっているのを診て気づいたという形になる。相談されても、「神経内科に送って」というだけで、顔面神経麻痺と両側手足のしびれ・脱力の症状を聴いた瞬間に、経過をみることもなく即神経内科に紹介してしまうだろう。

 今週後半は大阪で神経内科学会があり、この先生も医療センターの指導医から言われて学会発表があるそうだ。

 

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間質性肺炎

2019年05月22日 | Weblog

 昨日の夕方に内科医院から肺炎の84歳女性が紹介されてきた。内科の若い先生(内科専攻医)が診察していたが、通常の(細菌性)肺炎ではなかった。

 胸部X線で両側肺全体にびまん性にスリガラス様陰影があり、一種異様な印象を受ける。胸部CTで見ると、スリガラス様陰影が広がっているが、モザイク状といいたくなるような分布でもある。通常の細菌性肺炎ではなく、間質性肺炎と判断された。

 地域の基幹病院呼吸器内科に紹介としてもらった。

 

 昨日そちらの病院からリハビリ目的で当院に転院してきた71歳男性の胸部画像を、送られてきたCDを取り込んで見てみた。糖尿病専門医の内科医院から肺炎として紹介されていた。

 当初は細菌性肺炎として、セフトリアキソンを投与して、その後レボフロキサシンに変更している(非定型肺炎としてか)。抗菌薬の効果がなく、間質性肺炎としてステロイドパルス療法が行われて軽快したという経緯だった。

 両側の陰影で、間質性と判断しそうな気もするが、答えがわかって見ているので、そう思えてしまう。最初から見たら、通常の細菌性肺炎として治療を開始するかもしれないが、少なくとも間質性の可能性は考えると思う(たぶん)。

 漢方薬の牛車腎気丸(前立腺疾患に処方)と柴胡桂枝湯(脊柱管狭窄症に処方)が原因とされている。

 

 間質性肺炎は呼吸器内科のない当院では原則として診ないことにしている。例外はあって、山間の町の施設から紹介された96歳くらいの女性は当院で治療した。家族が「どうしても当院で診てほしい、他の病院には移動させないでほしい」と希望されたので、やむなく治療した。ステロイドパルスが効いて、プレドニン内服で退院した。その後2回目の再発の時に亡くなった。

 

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