なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

CareNeTV メトホルミン・イメグリミン

2024年02月29日 | 糖尿病

CareNeTV

プライマリ・ケアの疑問
Dr.前野のスペシャリストにQ
糖尿病アップデート編
岩岡秀明先生

第5回 メトホルミン・イメグリミン

メトホルミンが第1選択
メトホルミンが優先される理由

ASCVD(動脈硬化性心血管疾患)、心不全、CKD患者
第1選択薬はSGLT2阻害薬
(米国糖尿病学会ガイドライン) となっているが、日本では

1.日本人の心血管疾患リスクは米国人よりも低いためSGLT2阻害薬によるベネフィットも小さい
2.SGLT2阻害薬のエビデンスの大半はメトホルミンへの上乗せ効果を示している
3.SGLT2阻害薬の長期的な効果、安全性が未確立
4.SGLT2阻害薬は高価

メトホルミンの適正使用に関するRecommendation
1.透析患者を含む腎機能障害患者
・メトホルミンの使用に当たっては腎機能をeGFRで評価する
eGFRが30mL/分/1.73㎡未満の高度腎機能障害の患者ではメトホルミンは禁忌である
eGFRが30~45mL/分/1.73㎡の場合にはリスクとベネフィットを勘案して慎重投与とする
eGFRが30~60mL/分1.73㎡の中等度腎機能障害の患者では腎機能に応じて添付文書上の最高用量の目安を参考に用量を調整する
(日本糖尿病学会 メトホルミンの適正使用に関するRecommendation.2020.)

2.脱水、シックデイ、過度のアルコール摂取などの患者への注意・指導が必要な状態
・すべてのメトホルミンは、
 脱水状態が懸念される下痢・嘔吐などの胃腸障害のある患者
 過度のアルコール摂取の患者
 で禁忌である
・利尿作用を有する薬剤(利尿薬、SGLT2阻害薬など)との併用時には、とくに脱水に対する注意が必要である

3.心血管・肺機能障害、手術後、肝機能障害などの患者
・すべてのメトホルミンは
 高度の心血管
 肺機能障害(ショック、急性うっ血性心不全、急性心筋梗塞、呼吸不全、肺塞栓などの低酸素血症を伴いやすい状態)
 外科手術前後の患者(飲食物の摂取が制限されない小手術を除く)
 には禁忌である
・軽度~中等度の肝機能障害には慎重投与である

eGFR 60以上 
 造影CTの時休薬しなくてよい
eGFR 30~60の場合
 造影剤投与後48時間はメトホルミンを休薬
 腎機能悪化が懸念される場合はeGFRで腎機能を評価した後に再開

最高投与量の目安
 30≦eGFR<45:750mg/日
 45≦eGFR<60:1500mg/日
※とくに「30≦eGFR<45」の患者では治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ使用

岩岡先生
eGFR 30~45の場合
 eGFR 30~45では新規に処方しない
 万一処方する際は腎機能を定期的に確認し、750mg/日までに留める

メトホルミンを上手に使うポイントは
500mg/日から開始し、1500mg/日までは漸増する
1日2回、朝・夕の投与とする
夕食時の飲み忘れがある場合、胃腸症状がなければ「1000mg/日、1回朝のみの投与」も可能
※1日2回投与と比較して血糖降下作用に遜色はない

第2選択薬
メトホルミンが禁忌の場合
▸SGLT2阻害薬
(心血管イベント抑制と神保g作用のエビデンスがあるもの)
エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン→ASCVD、心不全、CKDのいずれかがあるorハイリスクの場合
▸DPP4阻害薬
→これらの合併症がない場合


イメグリミン(ツイミーグ)
▸メトホルミンと似た構造式
▸2つの作用で血糖降下させる
膵作用
ミトコンドリアを介してグルコース濃度依存的にインスリン分泌を促す
膵外作用
肝臓、骨格筋での糖代謝を改善してインスリン抵抗性を改善する

▸TIMES1試験:イメグリミン単独投与(1000㎎1日2回)
→投与24週時点のHbA1c変化量
 イメグリミン-0.72%
 プラセボ投与群+0.15%
▸TIMES2試験:ほかの血糖降下薬とイメグリミン(1000㎎1日2回)併用
→投与52週間後のHbA1c変化量を観察
 DPP4阻害薬と併用-0.92%(一番低下)
 GLP1受容体作動薬と併用-0.12%のみ(理由は不明)

▸1回2錠(500㎎×2=1000mgを1日2回、朝・夕に投与
eGFR 45mL/分/1.73㎡未満の腎障害患者への投与は推奨されない
メトホルミンとの併用は避ける
・作用機序の一部が共通している可能性がある
・両薬の併用で消化器症状を多く認めたため
▸インスリン製剤、SU薬、グリニド薬と併用する場合→低血糖リスクを避けるため、適宜減量する

プライマリケアで、メトホルミンから切り替える必要はない
現時点では糖尿病専門医が使用すべき薬剤

 

Dr.前野のここがポイント
メトホルミン
・禁忌を除きメトホルミンが第一選択薬
・eGFR 60以上あれば造影CT時の休薬は不要
メトホルミン使用のポイント
・1日500mgから開始し、漸増する
・1日2回、朝・夕の投与とする

イメグリミン
・「膵作用」と「膵外作用」の2つで血糖を低下させる
・プライマリケアでは使用せず、エビデンスの集積を待つ

 

 メトホルミンの投与法で朝のみ500mg~1000mgも可能というのは、あまり記載されていないので参考になる。

 イメグリミンは10例弱で使用している。講義では現時点では専門医が慎重に使用する薬とされているので、本当はよくないのかもしれない。市内のクリニックでは新薬好きの先生が使用していた。

 下記の本を始め、岩岡先生の本が次々に出るので、購入することにした。

プライマリ・ケア医のための新・糖尿病診療

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

非結核性抗酸菌症

2024年02月28日 | 結核・非結核性抗酸菌症

 1月27日、2月11日に記載した非結核性抗酸菌症と判断される86歳女性の経過。

 

 1月25日(木)に市内のクリニックからの紹介で86歳女性が受診した。食欲不振があり全体に衰弱しているという内容だった。患者さんは小柄でやせていた。

 問題は発熱があり、肺病変があった。胸部X線・CTで両側肺野にまず気管支拡張像があり、限局性の浸潤影・斑状・粒状影が多発している。

 当院には2014年に左橈骨尺骨開放骨折で整形外科に入院していた。その時に入院時検査として胸部単純X線が撮影されている。両側肺に陰影があった(整形外科医は気にしていなかった)。

 呼吸器外来に来てもらっている先生に相談して、基礎に非結核性抗酸菌症(NTM)が疑われる、ということだった。ただ、画像からは通常の細菌性肺炎の併発があるかどうか判別できない。

 まずは細菌性肺炎の治療で経過をみることになった。スルバシリン(ABPC/SBT)の投与を開始した。解熱して炎症反応も軽減した。経過からみて通常の細菌性肺炎があったことは間違いない。(喀痰検査ができなかった)

 白血球は24100→10600→8900、CRPは11.3→1.7→0.6と軽快した(1月25日、1月29日、2月1日)。2月7日(2週間後)に胸部CTを再検査した。初診時(1月25日)と比較して、陰影は軽減していた。

 食事摂取は思った通り、ちゃんと目の前に食事があれば食べられる。四肢の筋肉とくに下肢の筋肉は極端にやせ細っているが、リハビリも開始してトイレまで歩いて行ける。

 Tスポットを提出すると陰性だった。NTMの血液検査もあったと思い出して、キャピリアⓇMAC抗体 ELISAを提出した。

 

(その後) 

 キャビリアⓇMAC抗体ELISAは陽性だった。肺MAC症としては傍証にしかならないが、なにしろ喀痰が出ない。3%高張食塩水の吸入で頑張れば出るのだろうか。

 入院後のスルバシリン(ABPC/SBT)投与による解熱・炎症反応軽快は一般細菌による細菌性肺炎併発を示している。そしてその後は症状はほとんどなく、特に患者さんは困っていない。

 非喫煙・やせ型・中高年女性に多いとされる結節・気管支拡張型だと、経過観察も許されるようだ。入院時から相談している呼吸器外来の先生(大学病院感染症内科所属)に訊くと、「治療による副作用を考慮すると、僕ならそのまま経過を見ます」、といわれた。

 非結核性抗酸菌症の診断は下記の通りで、今回は胸部画像所見がNTMらしいのとキャピリアⓇMAC陽性だけなので確定していない。

表1 肺非結核性抗酸菌症の診断基準(日本結核病学会・日本呼吸器学会基準)
A. 臨床的基準(以下の2項目を満たす)
1. 胸部画像所見(HRCTを含む)で,結節性陰影,小結節性陰影や分枝状陰影の散布,均等性陰影,
空洞性陰影,気管支または細気管支拡張所見のいずれか(複数可)を示す。
但し,先行肺疾患による陰影が既にある場合は,この限りではない。
2. 他の疾患を除外できる。
B. 細菌学的基準(菌種の区別なく,以下のいずれか1項目を満たす)
1. 2 回以上の異なった喀痰検体での培養陽性
2. 1 回以上の気管支洗浄液での培養陽性
3. 経気管支肺生検または肺生検組織の場合は,抗酸菌症に合致する組織学的所見と同時に組織,ま
たは気管支洗浄液,または喀痰での1回以上の培養陽性。
4. 稀な菌種や環境から高頻度に分離される菌種の場合は,検体種類を問わず2回以上の培養陽性と
菌種同定検査を原則とし,専門家の見解を必要とする。
以上のA,Bを満たす。

 治療はCAM+EB+RFPで約2年間になり、完遂後の再発・再燃もある。副作用が比較的少ないCAM+フルオロキノロンもあるらしいが、治療としては好ましくないようだ(CAM耐性になりやすい)。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

寝返りでBPPV

2024年02月27日 | 耳鼻咽喉科疾患

 2月25日(日)は日直だった。午後3時過ぎに回転性めまいの78歳女性が救急外来を受診した。救急搬入ではなく、家族が車で送ってきたので、治まってはきているのだろう。

 病院に来てからは、目を閉じて車椅子に座っていた。嘔気を訴えていたので、ストレッチャーに横になってもらって、点滴(と採血)を入れて、プリンペランとメイロン(=おまじない)を静注した。

 少し落ち着いたところで頭部CTを行った。出血はなく、明らかな梗塞巣も指摘できないが、小脳脳幹部はわからない。

 その日の午前2時ごろに発症していた。トイレに行こうと起き上がった時かと思ったが、そうではなかった。寝ていて寝返りを打った時に発症していた。ぐるぐる回る回転性めまいだった。体動時に発症しては治まっての繰り返しだった。

 意識清明で会話は普通にできる。頭痛はなく、耳鳴・難聴もない。麻痺や運動失調はなかった。

 これまで何度か短い時間同様の症状が出たことがあり、様子をみて治っていたそうだ。回転性の要素は軽減したらしいが、浮遊感が続き、嘔気も続くので受診していた。

 良性発作性頭位めまい(BPPV)でいいようだ。検査が終了してから1回嘔吐したこともあり、入院で経過をみることにした。院内のコロナ発生で入院はダメといわれていたが、地域包括ケア病棟に、認知症がないこと治療は点滴だけであることを伝えて、頼み込んで入院にさせてもらった。

 翌日病棟に行くと、すっかり症状は消失してすぐにも退院したいと希望された。症状継続時の耳鼻咽喉科外来受診と頭部MRIはしないことになった。

 昼食を問題なく摂取できるのを確認して午後から退院となった。夫が血液透析で当院に通院していて、その対応がストレスでといっていた。本人の解釈では、今回のめまいもストレスからきたという。耳石の問題で違うけど。

 BPPVの発症誘因は、起床時・寝返りをうつ・上を向く等があるが、圧倒的に起床時(または夜間トイレに起きる)が多い。美容院で洗髪のために頭部を後屈した時に発症して、そのまま美容院から救急搬入というのもあった。

 夜間睡眠中に寝返りを打ったときにBPPVが発症すると、すぐ自覚できるのかという気はするが、すぐわかって覚醒するのだろう。

 

 3連休中に急性期病棟の入院患者8名がコロナ(COVID-19)に罹患して、スタッフ(看護師1名と看護助手2名)も罹患した。週明けの月曜日には新たに看護師2名がコロナと判明した。

 救急の受け入れが当分厳しい状況が続く。整形外科の手術は今週の予定分だけは、そのまま行うことになった。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

微生物学

2024年02月26日 | ほんの話

 微生物学の本が一冊は必要なので、医学部学生向けの中でも簡単な本を購入した。「戸田新微生物学」は到底読めないし、「標準微生物学」も通読は難しい。

 日本医事新報社の基礎医学Qシリーズは、昔は小さな小冊子だったが、今は学生だったらこのくらいで十分(?)なくらいの本になっていた。フルカラーで見やすい。

新微生物学 (Qシリーズ)

 

 ヒトヘルペスウイルス(human herpesvirus:HHV)は、HHV-1からHHV-8まであり、HHV-6は6Aと6Bの2種類があるので計9種類になる。

 HHV-1は単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)で口唇ヘルペスを、HHV-2は単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)で性器ヘルペスを来す。

 HHV-3は水痘・帯状疱疹ウイルス(HZV)で初感染で水痘、再活性化で帯状疱疹を来す。

 HHV-4はEVウイルスで伝染性単核球症を、HHV-5はサイロメガロウイルス(CMV)でサイトメガロウイルス感染症(網膜炎・肺炎・肝炎など)を来す。

 HHV-6HHV-7は突発性発疹をきたす。HHV-8はカポジ肉腫関連ヘルペスウイルスでカポジ肉腫を来す(こちらはなじみがない)。

 ヘルペスウイルスとしてまとめると、こういうウイルスたちなのかと、わかりやすい。

 

 ヘルペスウイルスは持続感染の中でも、潜伏感染という形をとる。初感染時に急性感染の症状が現れるが、その後はいったん症状が治る。しかしウイルスは体内から排除されず、感染細胞内に核酸の状態で潜んでいる。潜伏時には増殖はしない。

 宿主が強いストレス下におかれたり、免疫機能が低下したりすると、ウイルスが再び増殖を始めて(再活性化)、急性感染時と同様の症状が現れる(回帰発症)。そして再び潜伏し、回帰発症することを繰り返す。

 一度感染したら免疫機能を回避して、宿主の内部に生涯とどまり続ける。MHCクラスⅠ分子の発現を阻止する、樹状細胞が行うMHCクラスⅡ分子への抗原提示を阻害する、免疫応答を調整するサイトカインの合成を阻害する、感染細胞のアポトーシスを阻害する、など多種多様な戦略を駆使して宿主の体内の生涯とどまり続け、「ヘルペスウイルスは免疫回避の芸術家」と形容される。

 

 真菌や原虫なども、まあこのくらい知っていれば、という基本的なことが載っている。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

COVID-19肺炎の推移

2024年02月25日 | COVID-19

 1月5日、1月14日に記載したCOVID-19の79歳男性の画像の推移。

 

 12月29日に当院の発熱外来でCOVID-19 と診断されて、ラゲブリオ内服が処方された。高血圧症・糖尿病・認知症で市内のクリニックに通院している。

 1月4日(7日目)に体動困難で救急搬入となった。胸部X線・CTで右肺野にすりガラス陰性が散在していた。

 デキサメサゾン注8mg(6.6mg)/日を開始した。解熱して、食事摂取できるようになった。

 1月9日(11日目)に隔離解除して、一般病室(同日に隔離解除に移動した。胸部CTでは、入院に見られた右肺上葉の陰影はほぼ消失していた。(後から見ると、両側下葉背側にもやもやした陰影が新に出ていたが、背側の水分分布の影響ともとれるので、さほど気にしなかった。)

 

 5日間投与したデキサメサゾンの漸減を開始した(4mg/日を3日、2mg/日を2日の計10日で漸減中止予定)。ところがその後に発熱が見られた。酸素飽和度の軽度に低下した。炎症反応がぐっと上昇していた。

 1月12日(14日目)に再度胸部CTで確認すると、両側肺下葉にすりガラス~網状陰影が広がっていた。

 入院時から相談して指示をもらっている呼吸器外来の先生(大学病院から応援)に相談した。「武漢株」の時は再燃が見られたこともあった、という。現在の株でも「ぶり返し肺炎」があるようだ。

 デキサメサゾンを初期量の8mg(6.6mg)/日に戻すと、解熱して症状・検査値が軽快した。時間をかけて、デキサメサゾンを6mg/日、4mg/日、2mg/日と漸減してきた。

 

 胸部X線も撮影しているが、すりガラス陰影はCTで見ないとわかりにくい。1月31日(34日目)の胸部CTではすりガラス陰影は軽快して、背側に回復期の線状索状影と浸潤影様の陰影を認めた。

 

 2月21日(55日目)にも胸部CTで確認すると、さらに陰影は減少していた。ステロイドはまだ投与していて、ここからさらに漸減中止の予定とした。

 

 認知症で診断後すぐの入院を見合わせていた患者さんだった。身体抑制もあるし、向精神薬も複数使用している。さらに糖尿病はステロイド使用で悪化したので、インスリン強化療法になった。家族が在宅介護は無理ということで、施設入所の調整中になっている。

 入院時にレムデシビルを入れた方が良かったかもしれない。また、ステロイドはちょっと投与期間を長くとりすぎたかもしれない。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳梗塞

2024年02月24日 | 脳神経疾患

 先週午後8時過ぎに70歳代後半の女性が言語障害で救急外来を受診した。当直は腎臓内科の若い先生だった。家族の話では、日中と比べて呂律が回らないようで、内容がかみ合わずおかしいという。構語障害より失語が疑われた。

 頭部MRIを行うと左中大脳動脈(MCA)のM1で閉塞を認めた。ただ梗塞巣の描出はMCA領域の一部に留まっていた。FLAIRでも描出されるので、24時間は経過していたかもしれない。

 発症時間からみてt-PAや血栓回収療法の適応はないとして、入院として急性期の治療を最大限行っていた(脳神経内科でもそれ以上はないくらいの治療)。

 家族にはMCA領域全体に及ぶ可能性を伝えていた。なんとか梗塞域を少なくしたいと治療して、翌日の頭部CTでは変化がないように見えて、症状もあまり変わらなかった。

 

 しかし残念ながら、その後に右片麻痺の症状が出てしまった。病変がまだらに出ているので、(側副血行も含む)他の血管からの血流に依存しているのだろう。

 座位保持しての食事摂取はできるが、失語症で会話が成立しない。受診時の症状が閉塞部の割に比較的軽度だったので、残念がっていた。MRAの結果からは予想された梗塞巣ではある。

 

 血栓回収療法は条件はあるらしいが、適応拡大で24時間以内にはなるようだ。それでも適応がないかもしれないが。

 脳血栓症は発症後に症状が進行することがあるので、急性期は(症状の軽度なラクナ梗塞以外)脳神経内科か脳外科に搬送して、責任を押し付けるようにしています、と答えた。

 急性期が終わってからリハビリで引き受けるのがいいが、入院の逼迫で(特に80歳代後半以降だと)なかなか受けてもらえないことがある。とりあえず、3か所くらいの高次医療機関には当ってみる。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

腰椎圧迫骨折

2024年02月23日 | 整形外科疾患

 2月21日に退院サマリー未記載の連絡が来た。1月17日の当直の時に救急搬入された腰椎圧迫骨折の76歳女性だった。X線・CTで圧迫骨折がはっきりしなかったので、内科で入院させていた。

 翌18日に整形外科医に伝えると、MRIはその翌日にしかできないが、腰椎圧迫骨折として整形外科入院にした。事務に最初から整形外科入院に修正してもらうよう伝えたが、内科から整形外科転科の形になっていた。そうなると2日分の退院サマリー記載になってしまう。

 患者さんは自宅で後ずさって、襖を掴もうとした掴めず、そのまま尻餅をつく形で転倒した。直後から腰痛が出現して立てなくなった。それでも何とか動いて自分で救急要請していた。

 圧迫骨折を判断されたが、X線・CTでははっきりしなかった。痛みは下部腰椎に感じているようで、圧迫・叩打でもはっきりしなかった。痛みを訴える場所は下部腰椎だった。

 19日に腰椎MRIが行われて、第2腰椎(L2)の圧迫骨折がきれいに描出された。鎮痛薬投与とリハビリを行って、2月5日に退院していた。

 

 林寛之先生と今明秀先生の看護師さん向けの本に、圧迫骨折についての記載があった(担当は林先生)。「背中は二点識別がとても鈍く、4~5cmくら離さないと識別できない」とある。また診察の叩き方にもコツがあり、「”どん”と最後に押し込んで、骨に響くようにたたいてください」とあった。

 MRIでみないと、骨折の有無と新旧の区別が判断し難いとあり、それはその通り。当院では時間外は基本的に頭部以外のMRIは撮影しないことになっている。緊急性はないので、臨床的に判断して撮像は翌日の日中でもいいのだろう。

Dr.林&今の 教科書に載っていないッ! 極める救急・急変対応 (メディカのセミナー濃縮ライブシリーズ)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

悪性リンパ腫

2024年02月22日 | 血液疾患

 11月3日に記載した悪性リンパ腫疑いの86歳女性のその後。

 今月の始めにがんセンター血液内科の先生から、連絡が入った。悪性リンパ腫で治療している患者さんで、化学療法後の白血球減少に使用するG-CSF製剤の注射を当院で行ってほしいという。

 感染管理でがんセンターにお邪魔した時にお会いする先生だった。グラン注は院内にあるので、お引き受けした。診療情報提供書が送られてきて、昨年10月末に紹介した患者さんだとわかった。3か月経過して、すっかり忘れていた。

 

 11月6日にがんセンターを受診して、PET-CTで頸部・腋窩・縦隔・小腸間膜・傍大動脈~腸骨~鼠径部にリンパ節腫大があり、後頭部皮下や上腕骨・肋骨・脊椎・腸骨にも集積があって骨髄浸潤の所見と判断されていた。

 生検については部位の記載がなかったが(たぶん頸部か腋窩リンパ節)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された。11月末からRCHOP療法が開始されている。

 RCHOP療法はリツキシマブ(R、商品名リツキサン)にシクロフォスファミド(C、商品名エンドキサン)・ハイドロキシダウノルビシン(H、商品名アドリアシン)・オンコビン(O、一般名ビンクリスチン)・プレドニゾロン(P)になる。(商品名と一般名がごっちゃになってのRCHOP)

 注射薬は第1日に、プレドニゾロンは内服で第1~4日に投与される。第6日~21日は休薬。1サイクル21日で、6または8サイクル行う。随分前、当院に腫瘍内科医がいたころに行っていたが、ただただ「教科書通りのことが行われている」、と感心してみていた。

 

 2月19日、20日とグラン注を行うようにという指示で、19日に患者さんがやってきた。紹介した時と同様にハキハキした物言いで元気だった。

 「(悪性リンパ腫は)治んないんでしょ」といっていた。ステージⅣ相当でも5年生存率は固形癌よりはいいはずだとは思うが、見当がつかない。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

尿管結石

2024年02月21日 | 泌尿器科疾患

 2月17日(土)の当直の時に、午前中に救急搬入された尿管結石の患者さん(45歳女性)が嘔気が続いて再受診したい、と連絡が入った。疼痛はないそうだ。来てもらって点滴・制吐剤の投与を行うことにした。

 その日朝食後にトイレにいった後に出てこないので、母親が見にいくと、うつぶせに倒れていて、左腰部を抑えて苦しんでいた。救急要請して当院に搬入された。

 当院の呼吸器外来(大学病院からの応援医師担当)に気管支喘息で通院している。別の病院の精神科にも統合失調症で通院している。(雰囲気はBPD様)

 日直は別の内科の先生だったが、患者さんがベット上で転げまわるように痛がった、と記載していた。点滴を入れて、鎮痛薬を使用した。ソセゴン(ペンタゾシン)15mg筋注、アセリオ注(アセトアミノフェン)1000mg点滴静注、そしてソセゴン15mg静注と使用して疼痛が軽減した。

 胸腹部CTで左尿管の腎盂から出てすぐのところに結石を認めた。大きさ的には自然排石を期待できるものだった。他には異常所見はない。症状とも合致する。

 尿管結石を判明してからジクロフェナク座薬50mgも使用していた。気管支喘息はあるが、NSAIDsは大丈夫な方だった。疼痛軽快して帰宅した。

 

 帰宅してから、午後3時にまた同様の疼痛があり、ジクロフェナク座薬を使用して軽快していた。ただその後から嘔気が続いて食事がとれないという。朝からずっと食べていないといっていた。

 腹部所見は特に異常なかった。点滴とプリンペラン(メトクロプラミド)静注をした。他の患者さんたちを診て忙しかったので、次に診にいったときには点滴が終わりかけていた。嘔気は治まっていて、あっさり帰宅となった。

 

 日直の先生が市内の泌尿器科宛に診療情報提供書(画像のCD付き)を持たせていたので、2月19日に受診していた。結石はやはり自然排石を期待できるので、経過をみて1か月後となったそうだ。

 2月20日(火)は午前5時にまた左腰部痛が発症して、ジクロフェナク座薬でいったん治まった。午前7時にまた痛んで当院救急外来を受診していた。当直だった整形外科医がアセリオ注を行って、腹部CT・血液検査・尿検査をオーダーした。

 午前中の救急当番だったので、申し送られた。尿検査は当然だが血尿を認めた。CTで見ると、尿管結石は初診時より数cmだけ下がっていた。

 尿管結石がちょっとだけ動いたの画像で確認することは珍しい。検査結果が出て診に行った時には症状は軽快していて、そのまま帰宅とした。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

急な?低酸素血症

2024年02月20日 | 呼吸器疾患

 2月17日(土)は当直だった。午後8時過ぎに65歳男性が受診したいという電話が入った。事務当直はめまいといっていたが、当直看護師が出るとそうではなかった。

 2年前から時々排便後に鮮血の出血がある。その日も午後3時ごろに排便後に出血があった。便自体は普通便だった。午後4時半から動くと息が苦しくなった。横臥してじっとしていると軽快するが、また動くと同様に息切れがする。

 立ち上がるとめまい(pre-syncope?)がすると言っていて、それが最初に聞いためまいという症状だった。症状は慢性だが、消化管出血による貧血の症状ともとれる。出血による重度の貧血で、それによって息切れをめまいが生じている可能性が考えられた。

 

 来院してすぐに排便があり、また出血していた。貧血と血圧低下を想定したが、眼瞼結膜に貧血はなく、血圧は130くらいだった。

 3年前まで当院の循環器科に発作性心房細動と高血圧症で通院してた。循環器科の閉科で市内の医院に紹介となっていた。お薬手帳は持参していないが、DOAC(当院通院時はイグザレルト15mg)が処方されているはずだった。

 救急室に入れて、点滴と採血を行った。胸部聴診では頻脈だが、心拍は整だった。心電図モニターでは洞調律で、心電図をとっても異常なしだった。

 腹部は平坦・軟で圧痛はない。直腸指診では、肛門周囲に血液付着がしていたが、直腸内に腫瘤はなかった。痔出血でいいようだ。血算はHb13.0で低下してなかった。(出血直後ではある)。

 

 酸素飽和度が80%台(81~86~88%)で手が冷たいためもあるかと思ったが、血液ガスで確認すると、PaO2が50.9・PaCO2が40.0・pH7.343と本当に低酸素血症だった。(酸素3L/分で96~97%になった)

 浮腫はなく、心不全ではない。発熱はなく、肺炎らしくもないが、診察だけではわからない。白血球9700・CRP0.1で感染症などの初期像なのかもしれない。

 胸腹部CTを行うと、両側肺にごく軽度の胸水があり、左肺背側に軽度の浸潤影があったが、これでそんなに酸素飽和度が低下するのだろうかと思った。

 

 酸素飽和度の低下が目立つが、それ以外はそれほどではない。搬送するのも少し躊躇われたが、その日は病棟はできるだけ入院はさけてほしいという状況だった。地域の基幹病院に連絡してみると、すぐ受けてもらえた。

 搬送の準備をしていて、そういえば両側肺に気腫性変化があると気づいた。確認すると喫煙者だった。もともと慢性閉塞性肺疾患(COPD)で酸素飽和度が健常者より低めのところに、感染症の併発などがあり、それが軽度でも酸素の低下につながったということか。(呼吸音は正常で喘鳴はない)

 息切れの発症が、急というか突発のようなのがわからない。搬送後に大したことはないとして戻されるのを当直看護師さん(急性期病棟の看護師長)が心配していたが、それはなかった。(外科常勤医がいなくて当院では座薬を入れるくらいなので、痔出血の処置は困るか)

 肺血栓塞栓症の鑑別で造影CTを追加した方がよかったかもしれないが、DOAC内服もあるので、それはないかと思ってしなかった。酸素吸入に抗菌薬投与(+気管支拡張薬)で良くなるのかもしれない。

 その後に急性腎盂腎炎の98歳女性が受診して、どうしても入院させるしかない患者さん用の1ベットを使用することになった。その点では搬送できて助かった。

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする