なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

中葉・舌区の病変

2024年03月17日 | 結核・非結核性抗酸菌症

 3月9日(土)に市内の医院から50歳女性が紹介されてきた。咳が続くという症状で受診して、胸部X線で陰影を認めたということだった。土曜日は休診日なので、日当直で来ている内科の若い先生が対応した。

 昨年12月末に38.5℃の発熱があり、紹介した医院をしていた。コロナとインフルエンザの迅速検査は陰性だった。詳しい内容は不明だが、断続的に治療していたようだ。

 ずっと咳は続いていたが、その日は左胸部の痛みも感じて受診していた。心電図は異常がないが、胸部X線で両側中下肺野の内側に陰影があった。体温は37.1℃で、酸素飽和度は98%(室内気)。

 血液検査では白血球 8100・CRP 0.2だった。他の生化学検査は異常がない。胸部CTで右中葉と左舌区に浸潤影を認めた。

 「原因は、悪性腫瘍、細菌性肺炎、肺NTM症、肺結核などが鑑別にあがる」と記載していた。(付け加えるとすると器質化肺炎か。悪性腫瘍ではないだろう。抗菌薬(オーグメンチン+アモキシシリン=オグサワ)を処方して、呼吸器外来を受診としていた。

 3月14日(木)に呼吸器外来(大学病院からの応援医師)を受診した。特に検査は追加されなかった。「第一印象は肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)」としていた。その場合病変が限局して、年齢も比較的若いので手術も考慮とある。その点を家族と相談してもらって再受診となった。

 肺NTM症とするには菌を検出しなければならない。通常は地域の基幹病院呼吸器内科に紹介して気管支鏡検査となるが、他の専門病院を考えているのかもしれない。部位は肺NTM症として合うが、どうだろうか。

 

 土曜日に診てくれた先生は、東京の超有名病院の内科専攻医と伺っている。月1回土曜日に日当直に来ているが、当日朝は間に合わないので前日夜は当地のホテルに宿泊しているらしい。カルテは詳しく書いていて、診断推論と対応がわかりやすく記載されている。

 医師向けのバイト情報を見て当院に来ることになったそうだ。その日は金曜日の当直帯で入院した患者さんを診に病院に来て、初めてお見掛けした。たぶん来年度も来てもらえる?。

 

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非結核性抗酸菌症

2024年02月28日 | 結核・非結核性抗酸菌症

 1月27日、2月11日に記載した非結核性抗酸菌症と判断される86歳女性の経過。

 

 1月25日(木)に市内のクリニックからの紹介で86歳女性が受診した。食欲不振があり全体に衰弱しているという内容だった。患者さんは小柄でやせていた。

 問題は発熱があり、肺病変があった。胸部X線・CTで両側肺野にまず気管支拡張像があり、限局性の浸潤影・斑状・粒状影が多発している。

 当院には2014年に左橈骨尺骨開放骨折で整形外科に入院していた。その時に入院時検査として胸部単純X線が撮影されている。両側肺に陰影があった(整形外科医は気にしていなかった)。

 呼吸器外来に来てもらっている先生に相談して、基礎に非結核性抗酸菌症(NTM)が疑われる、ということだった。ただ、画像からは通常の細菌性肺炎の併発があるかどうか判別できない。

 まずは細菌性肺炎の治療で経過をみることになった。スルバシリン(ABPC/SBT)の投与を開始した。解熱して炎症反応も軽減した。経過からみて通常の細菌性肺炎があったことは間違いない。(喀痰検査ができなかった)

 白血球は24100→10600→8900、CRPは11.3→1.7→0.6と軽快した(1月25日、1月29日、2月1日)。2月7日(2週間後)に胸部CTを再検査した。初診時(1月25日)と比較して、陰影は軽減していた。

 食事摂取は思った通り、ちゃんと目の前に食事があれば食べられる。四肢の筋肉とくに下肢の筋肉は極端にやせ細っているが、リハビリも開始してトイレまで歩いて行ける。

 Tスポットを提出すると陰性だった。NTMの血液検査もあったと思い出して、キャピリアⓇMAC抗体 ELISAを提出した。

 

(その後) 

 キャビリアⓇMAC抗体ELISAは陽性だった。肺MAC症としては傍証にしかならないが、なにしろ喀痰が出ない。3%高張食塩水の吸入で頑張れば出るのだろうか。

 入院後のスルバシリン(ABPC/SBT)投与による解熱・炎症反応軽快は一般細菌による細菌性肺炎併発を示している。そしてその後は症状はほとんどなく、特に患者さんは困っていない。

 非喫煙・やせ型・中高年女性に多いとされる結節・気管支拡張型だと、経過観察も許されるようだ。入院時から相談している呼吸器外来の先生(大学病院感染症内科所属)に訊くと、「治療による副作用を考慮すると、僕ならそのまま経過を見ます」、といわれた。

 非結核性抗酸菌症の診断は下記の通りで、今回は胸部画像所見がNTMらしいのとキャピリアⓇMAC陽性だけなので確定していない。

表1 肺非結核性抗酸菌症の診断基準(日本結核病学会・日本呼吸器学会基準)
A. 臨床的基準(以下の2項目を満たす)
1. 胸部画像所見(HRCTを含む)で,結節性陰影,小結節性陰影や分枝状陰影の散布,均等性陰影,
空洞性陰影,気管支または細気管支拡張所見のいずれか(複数可)を示す。
但し,先行肺疾患による陰影が既にある場合は,この限りではない。
2. 他の疾患を除外できる。
B. 細菌学的基準(菌種の区別なく,以下のいずれか1項目を満たす)
1. 2 回以上の異なった喀痰検体での培養陽性
2. 1 回以上の気管支洗浄液での培養陽性
3. 経気管支肺生検または肺生検組織の場合は,抗酸菌症に合致する組織学的所見と同時に組織,ま
たは気管支洗浄液,または喀痰での1回以上の培養陽性。
4. 稀な菌種や環境から高頻度に分離される菌種の場合は,検体種類を問わず2回以上の培養陽性と
菌種同定検査を原則とし,専門家の見解を必要とする。
以上のA,Bを満たす。

 治療はCAM+EB+RFPで約2年間になり、完遂後の再発・再燃もある。副作用が比較的少ないCAM+フルオロキノロンもあるらしいが、治療としては好ましくないようだ(CAM耐性になりやすい)。

 

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非結核性抗酸菌症の疑い

2024年01月27日 | 結核・非結核性抗酸菌症

 1月25日(木)に市内のクリニックからの紹介で86歳女性が受診した。食欲不振があり全体に衰弱しているという内容だった。実際に来て見ると事情は違っていた。

 市の福祉サービスの方たちが連れてきた。娘と二人暮らしだが、介護放棄に近く虐待の可能性もあるという。今回母子を分離して、患者さんは施設入所に持っていきたいという話だった。自宅はいわゆるごみ屋敷になっているそうで、写真をみせてもらった。

 しかしそういう話も一面でしかないようだ。娘さんに会ったが、介護放棄というよりも、どうしていいかわからないのではないか(理解力が低い?)。

 患者さんは小柄でやせていた。会話はできて(頭部CTの著明な脳委縮があったが)、喋り方からみておそらく目の前に食事があれば食べられる。

 

 問題は発熱があり、肺病変があることだった。(紹介状には発熱の話はなく、連れてきた介護の人も認識していなかった)両側肺野にまず気管支拡張像があり、限局性の浸潤影・斑状・粒状影が多発している。

 当院には2014年に左橈骨尺骨開放骨折で整形外科に入院していた。その時に入院時検査として胸部単純X線が撮影されている。両側肺に陰影があり、内科でみればCTで精査となるが、整形外科医は気にしていなかったようだ。

 紹介状に「細気管支炎・肺サルコイドーシスの疑いで経過観察」の記載があった。クリニックでつける病名ではないので、どこかに紹介しているのだろう。

 問い合わせると、地域の基幹病院呼吸器内科に2020年に肺陰影精査で紹介していた。2021年まで通院して、その病名で終診となっていた。たぶんその見立ては違う。

 

 ちょうど受診日は、呼吸器外来があったので、相談した。画像をみて、第一印象は「非結核性抗酸菌症NTMではないでしょうか」といわれた。それそれ、という感じだ。

 ただ喀痰採取は難しそうだ。胃液採取?になるか。NTMだと胃液採取はどうかと思うが、結核との鑑別のためにも必要になるかもしれない。

 発熱と結構な炎症反応上昇があった(白血球24100・CRP11.3)。他の病変の影響下かもしれない。尿路感染症の可能性は低かった。仙骨部と両側転子部の軽度の褥瘡などもあるが、それでは炎症として弱いか。

 あとはNTMがあるとして、細菌性肺炎の併発だが、画像からは区別し難い。呼吸器外来の先生との相談で、まずはスルバシリン(ABPC/SBT)で治療を開始することになった。(血液培養2セット尿培養は提出)

 

 それにしても、いかにも当院向きの患者さんだと思われた。

 

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感染管理合同カンファランス

2023年11月10日 | 結核・非結核性抗酸菌症

 11月9日は感染管理の合同カンファランスで感染管理加算1の病院におじゃました。当院などの加算2の病院がその指導を受ける形になる。

 感染管理の認定看護師さんと認定薬剤師さんは頑張っているが、医局の方は回り持ちで感染管理室長をされていて、必ずしも感染症の専門ではない。

 血液内科を始めとして免疫抑制の患者さんが多いので、感染症内科医がいてコンサルトを受けるようになるのが好ましいのだろう。(月1回大学病院の感染症内科の先生がラウンドをしている)

 

 いつものように各病院での、耐性菌発生状況・抗菌薬使用の傾向・感染管理ラウンドの結果方向があった。当院は検査技師さんも(今回は多忙で不参加)薬剤師さんも発言したがらないので、当方がまとめて報告している。(各病院の中で一番簡略した発表)発熱外来を行っているのは当院だけなので、その結果を加えたりした。

 今回は感染管理の実技をすることになっているが、PPEの着脱は何度もやっていて、具体的に何をしていいかと先方の認定看護師さんが悩んでいた。

 COVID-19が5類感染症になって、病床確保の保証もなくなった。ふだんは一般病床として使用している病室をCOVID-19の患者さんが入院した時だけ、感染用病室として使用することになる。

 そうすると、グリーンゾーンとレッドゾーンはいいが、イエローゾーンは設置できなくなってしまう。一応実技ということで全員立って行ったが、実際は各病院ではその場合どうしてますかという話し合いになった。

 入室前にPPEを装着するが、病室から出る時はドアの近くをイエローゾーンを想定して、そこでガウンなどは脱ぐ。N95マスクだけは付けたまま病室を出て、出たところでN95マスクを外すことになる。

 精神科病院も入っているので、病室内にPPE用の容器を置いておくのは危険でできません、という話がでた。

 

 2時間くらいで終わって帰ろうとすると、血液内科の先生から相談があります、といわれた。結核の患者さんが出たということだった。呼吸器内科医がいる病院なので、そちらと相談された方が、と伝えた。すると、ぜひ先生にという。相談というよりは愚痴を言いたかったようだ。

 悪性リンパ腫の患者さんが、呼吸器症状には乏しかったが、画像で両側肺内に粟粒影が散布していた(胸膜にもかかっていて、まさに粟粒結核)。

 胸壁から出たリンパ腫らしいが、その近傍に数か月前からair bronchogram(数珠様の不整な気管支拡張)を伴う浸潤影があり、そこは器質化肺炎とされていた。抗癌剤投与は難しい病状となっていたが、ステロイド投与は継続していた。

 喀痰塗抹はそもそも喀痰が出ないのでできず、胃液を提出すると塗抹陽性・結核PCR陽性と出た。すでに抗結核剤3剤で治療が開始されている。

 保健所から、3か月前にさかのぼって接触者健診をするように、と指導された。入退院を繰り返している患者さんなので、その間に3回入院して病棟も別々だった。ということは、対象となる職員数も多数で、同室となっていた患者さんたちもかなりの数に上る。これを全部やるんでしょうか、という。

 やらなくていい、とは誰もいえない。とりあえず今回入院の病棟の職員と同室者から始めていくしかないのだろう。

 

 当院でも5年に1例くらい肺結核と入院後に判明することがある。いかにも肺結核という画像ではなく、通常の肺炎と同じような陰影の結核性肺炎の形だった。

 抗菌薬に反応しないことなどから、喀痰の抗酸菌塗抹を提出する。すると、塗抹陽性・結核菌PCR陽性と判明してびっくり、というパターンだ。

 当院の場合は、担当医と1病棟分の看護師さんが接触者健診の対象になる。20数名で胸部X線・IGRA(T-SPOT)を行うが、職員健診の前倒しのように行うので、手間ではあるがなんとかやれる。同室者となった患者さんは3名か(移動があると)5名くらいが対象になる。

 職員が1~2名が潜在性結核感染症(latent tuberculosis infection:LTBI)として治療(INH)を受けたりしていた。大学病院から呼吸器外来に来てもらっている先生が抗酸菌感染症の専門医なので、おまかせしている。

 

 「数が多くて大変ですねえ、感染管理で来られている先生にご相談下さい」と、お伝えした。はい、当方何の役にも立ちません。

 

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非結核性抗酸菌症

2023年10月10日 | 結核・非結核性抗酸菌症

 3型進行胃癌の手術を受けた80歳女性は、肺病変もあった。

 当院の脳神経内科に本態性振戦などで通院していた。昨年7月に心窩部痛を訴え、消化器科の上部消化管内視鏡検査で胃体下部大弯後壁に3型進行癌があった。

 消化器病センターのある専門病院へ紹介されて、手術を受けた(B-Ⅰ)。pT3(SS)、pN3aでpStageⅢbだった。

 手術前から胸部CTで両側肺に病変があった。中葉・舌区、下葉に粒状影・気管支拡張・一部無気肺を認めて、非結核性抗酸菌症(NTM)が疑われた。(結節・気管支拡張型だが、無気肺様になっている部位は空洞型になるのかもしれない。)

 今後も半年後に胃癌術後のフォローを行うが(CT・腫瘍マーカー)、内視鏡検査と肺病変のフォローは当院で受けることを希望しているのでよろしく、という依頼が来ていた。

 呼吸器科外来(大学病院から応援)で胸部CTが行われた、昨年と比べて画像上は少し進行はあるが、1年後のフォローとされた。今のところ有意な呼吸器症状はないようだ。(半年後のフォローが無難?)

 胃癌は再発の可能性がある。NTMは予後に関係するのだろうか。

 

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