なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

抗精神薬の投与法

2024年04月06日 | 精神科疾患

 40歳代後半の女性が大学病院から当院の回復期リハビリ病棟に転院してきた。胸髄黄色靭帯骨化症の術後だった。

 担当は整形外科になるが、内科で処方の管理をすることになっている。つまり高血圧症や糖尿病の治療薬を継続したり、少し変更したりという作業になるが、この患者さんは違った。

 鎮痛薬(アセトアミノフェン)以外は、精神科処方だった。統合失調症で精神科病院に通院していて、転院日の翌日が外来予約日になっていた。転院してからそれが判明して、病院の持ち出しになるので、地域医療連携室のMSWが慌てていた。

 抗精神病薬はブロナンセリンの内服が入っていたが、患者さんに話を訊くと、4週間に1回の受診時ごろにアリピプラゾール注射(持続性水懸筋注)を受けているという。こういうものは、治療を中断しやすい患者さんで使用されると思っていたので意外だった。(きちんと通院継続しそうな雰囲気)

 

 「精神診療プラチナマニュアル」第3版が出た。今回疾患名がちょっと変わったこともあり、新たに購入した。

 統合失調症では非定型抗精神病薬から選択される。今どきは、パリペリドン(インヴェガ)・アリピプラゾール(エビリファイ)・ブロナンセリン(ロナセン)が選択されるようだ。

 さらに「効果と忍容性が確認できたら、持効性注射剤への変更を検討する」とあり、基本的に患者さんは治療中断するものとして治療しているらしい。

精神診療プラチナマニュアル Grande 第3版

 

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統合失調症、治療中断

2024年03月19日 | 精神科疾患

 3月16日(土)は当直だった。日付が変わる直前に47歳男性が救急搬入された。

 症状は動悸ということだったが、統合失調症で治療を中断しているという。身体的な評価は行うが、統合失調症の入院治療はできないことを家族に確認してもらった。

 以前にも受診したことがあり、要注意の印が付いていた。「暴力団の一員だと名乗っている」とあった。(病状的にとても勤まらない)

 搬入されると、救急隊が伝えてきた動悸があるわけではない。正常洞調律だった。搬入後、体温が37℃台だったので、コロナとインフルエンザの迅速検査を行ったが陰性だった。(発熱のある患者全員にすることになっている)

 「周囲の人に(悪意をもって)見られている」という。「兄弟とゲームをして心臓が血だらけになる」とも言っていて、主訴動悸というのはそのことらしい。妄想の内容だった。

 血液検査と心電図、それに症状がつかめないので胸腹部CTを行ったが異常はなかった。頻繁に10~20秒くらい急に笑うことを繰り返した(空笑)。

 

 隣県の精神科病院に統合失調症で通院していたが、服薬はしたくないと思っていて、実際に中断していた。体調不良(というか生活ができない)で当地の実家に戻って来ていた。

 父親が、通院している病院に1~2度処方を取りに行ったが、それ以上は本人が受診しないと出せないといわれた。当地の精神科病院にも行ったが、やはり本人が受診しないと処方できないといわれた。

 処方はアリピプラゾール(エビリファイ)12mg錠1錠と単純なものだった。当院にはアリピプラゾール3mgの内用液が入っていた。

 前の前の薬局長が、リスペリゾンより副作用が少ない?というのを何かの講演会で聞いて入れていた。通常はリスペリゾンが処方されるので、ほとんど処方されていなかった。

 当直看護師に薬局から持ってきてもらい、3mg内用液を4包飲ませた。せっかく当院に来たのだから、当院の薬は飲んでほしいと伝えると、拒絶はしなかった。

 父親に身体的には異常がないこと、妄想があり、このまま治療中断が続くと精神科病院入院になることを伝えた。アリピプラゾール2日分を持たせて、週明けには精神科病院に連れて行ってもらうことにした。本人にも、このまま治療を中断すると、したくない入院になってしまい、拘束されてしまうことを伝えた。

 受診や服薬を拒否して、そのまま中断が続く可能性もあるが、そうなると精神科病院のような拘束は一般病院ではとてもできない。認知症のBPSDでの身体拘束は、体力の低下している高齢者だからできるので、40歳代男性には到底無理だ。

 

 父親が気の毒になってくるが、この父親も妻に対する家庭内暴力で、しばしば自宅に警察のパトカーが行っていたはずだ。

 

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ふつうに通販で買える

2024年02月18日 | 精神科疾患

 エチレングルコールで事件が起きている。そういえば当院でもあった、と思い出した。

 

 2018年11月1日(土)の午後5時過ぎに18歳男性が倦怠感・脱力で受診した。祖父がおぶっての受診だった。当時在籍していた内科専攻医の若い先生(自治医大の義務年限)が診察していた。

 血圧は120/75で体温は35.8℃だが、頻脈(122/分)と頻呼吸(30回以上/分)が見られた。会話はできるが、見当識障害があった。

 血液検査で白血球31700・Hb18.8と炎症反応の上昇・血液濃縮があり、血清クレアチニンは1.75mg/dlと上昇していた。LDHも313と異常値だった。

 血液ガスで、pH6.924・PaO2 137・PaCO2 10.6・HCO3 2.2・BE -27.9と著しい代謝性アシドーシスを認めた。本人からの聴取が困難で原因は不明だったが、若い先生は高次医療機関で治療を要すると判断して、大学病院救急科に搬送した。(内科専門医のホスト病院は医療センターなので、大学病院がだめならそちらに交渉したのだろう)

 大学病院救急科からの返事には、もともと統合失調症があること、エチレングリコールによる急性腎不全と診断して、血液濾過透析を行ったこと、深部静脈血栓症を来してDOACを処方していること、が記載されていた。

 大学病院の精神科に通院していて、抗精神薬(オランザピン)や安定剤が処方されていたようだ。

 

 2019年8月22日には心肺停止で当院に救急搬入された。大学病院精神科に入院していたが、その前日に祖父の家に外泊に来ていた。室内を歩いていて、急に倒れて意識がなくなった。

 救急隊到着時は心室細動を認めて、AEDを使用したが反応せず、心静止となった。心肺蘇生・アドレナリン静注で搬入され、蘇生術を続けたが反応はなく、死亡確認に至った。救急当番の女性外科医(当時)が対応したが、その後は外科のトップの先生が、警察との対応を行った。

 Autopsy imagingでは両側肺に肺水腫を認めた。警察の検視のあと解剖のため大学病院に送られることになった。

 

 祖父の話では、3日前にアマゾンから本人宛に荷物が送られてきていたそうだ。中身はわからない。解剖の結果は来ていないので不明だが、前回のことも考えるとエチレングリコールかもしれない。

 エチレングリコールは、アマゾンでもモノタロウでもふつうに購入できる。

 

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アルコールの人

2023年12月03日 | 精神科疾患

 11月29日(水)当直の時に、アルコール多飲の55歳男性が自宅で動けなくなっていると救急隊から搬入依頼が来た。

 酸素10L/分の肺炎を入院させていた。その日整形外科で脊椎の手術をした患者さんでちょっと問題があり、病棟に戻るのが時間外になっていた。病棟が嫌がるだろうとは思ったが、引き受けた。

 

 若い時からアルコール多飲があり、焼酎をかなり飲むそうだ(はっきり量は言わなかった)。1か月前に仕事を辞めていて、一人暮らしをしている。

 後で訊いたところでは、妻とは随分前に離婚していた。息子2人のうち、市内に住んでいる長男が手つづきに来てくれていた。両親と住んでいたが、亡くなってからは一人暮らしだった。

 飲酒量は同じだが、数日前から食事はとれなくなっていた。腹痛はなく、嘔気は若干あるのかもしれないが、食欲がわかなかったそうだ。

 

 血液検査では炎症反応は陰性だった。血清カリウムが2.8と低下していたので、脱力に関係したかもしれない。肝機能は普通のアルコール性肝障害だった。

 CTで見ると、肝臓は脂肪肝になっている。表面の凹凸ははっきりしないが、アルコールの量と期間からみれば肝硬変でもおかしくない。

 ビタミンB1欠乏というのでもないようだが、点滴・電解質補正・ビタミン投与で経過をみることにした。就寝前にはジアゼパム内服を数日続ける。

 

 5年くらい前に吐血で地域の基幹病院に入院していた。嘔吐しているうちに吐血ということだと、マロリーワイスだったか。その後(昨年?)アルコール性と思われる低血糖で意識障害を呈してまた入院した。

 精神科医が嫌酒薬(おそらく)を処方して少し続けてやめてしまったそうだ。精神科外来はないはずなので(院内のリエゾン精神科)、よく診てくれたと思う。

 離婚は正確の不一致、仕事を辞めたのは気に入らなかったからということだが、事実はアルコールがらみ?。息子さんに訊かれたので、県内のアルコール依存の専門病院を教えると、スマホで確認していた。

 

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