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『世界史の誕生:モンゴルの発展と伝統』

岡田 英弘、1999、『世界史の誕生:モンゴルの発展と伝統』、筑摩書房 (ちくま文庫)

「歴史は文化である。歴史は単なる過去の記録ではない」(あとがき冒頭)。本書は、モンゴルによる世界制覇によって初めて世界史の記述が可能になったとする遊牧史観による世界史である。「歴史の父」ヘーロドトスによる地中海文明の歴史記述は、ヨーロッパとアジアの対抗とヨーロッパによるアジアに対する勝利を基調として描かれ、その後のヨーロッパによるアジア蔑視ににもつながる。また、司馬遷の「史記」は中国皇帝の正統性を記述する「紀伝体」というスタイルを確立したが、両者の歴史記述の方法ははその後の歴史学に大きな影響を及ぼした。
著者はこうした西洋史と東洋史の対立する図式にたいして、双方の歴史および歴史観に強く影響をあたえた中央ユーラシアに行き来した様々な遊牧民の活動を中心に世界史が誕生する基盤が出来上がったとする。すなわち、中央ユーラシアの匈奴、突厥、鮮卑、トルコ、ウィグル、キタイ、ジュシェン、モンゴルらの活動によって、東西の歴史は動き、世界の動きとして記述できるのは彼らの活動に焦点をあてた歴史記述であるとする。たとえば、中国皇帝の制度は、秦漢帝国で終わり、その後、鮮卑系の随唐帝国、モンゴル系の元明、ジュシェン系の清へと受け継がれていく。ヨーロッパも、フンやアヴァルらの活動によって、いわゆるゲルマン民族の移動によって大きくその歴史は書き換えられた。ヘーロドトスと司馬遷による古代の記述はおわり、モンゴルらの遊牧民の活動によって世界史へと統一的に記述しうる状況となった訳である。そしてまた遊牧民たちの陸の帝国に対して、海洋帝国という新たな対抗軸が近代史を作ってきたことも読み取ることができる。

本書はまことに壮大で、実に楽しく読み進めることができたし、これまで謎めいていたこと、つまりは、東洋史と西洋史が独立した歴史として書かれていて、時折、東西の交流が描かれていたが、大半が断片的にしか理解できなかった部分が、本書を読むことで一挙に理解がすすんだし、これまで、実に既成の歴史認識にとらわれていたことが理解できた。

世界史の誕生 (ちくま文庫)
岡田 英弘
筑摩書房

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2008-10-11 11:06:04 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


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