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『貨幣システムの世界史:「非対称性」をよむ』

黒田明伸、2002、『貨幣システムの世界史:「非対称性」をよむ』、岩波書店

昨今、地域通貨がある種のブームだ(と思う)。ここ愛知でも、万博を期に生まれた「エコマネー」という地域通貨が、万博終了後も一般のスーパーも巻き込んで、継続しているようである。また、各地の地域おこしでも地域通貨がそのキーファクターとして、用いられることが多いように見える。
本書の第一章は「越境する回路」と題されていて、20世紀前半における紅海地方における「マリア・テレジア銀貨」の流通が取り上げられる。「マリア・テレジア銀貨」は18世紀のオーストリア帝国のマリア・テレジア女王の即位を記念し鋳造された銀貨で、その鋳造期間も短い。それにもかかわらず、時空を超えた場所で民衆の経済行為の中で交換財としてなくてはならないものであった。われわれは、現在の通貨制度、すなわち、一国一国は独自通貨を持ち、交換レートによって交換されると捕らえていがちなのだが、果たしてそうだろうか。
本書は、その謎を歴史の中に「非対称性」をキーワードとして切り結ぶ。この非対称性は、階層によっても流通する通貨が異なり、季節や地域と行った要素によっても、貨幣の流通が異なっていることを示す重要なキーワードである。また、同時に、国家や制度にとらわれない民衆の経済行為として必要となる交換財たる「貨幣」の謎を解き明かしてくれる。
こうした意味においても、地域通貨(これは、現在の通貨制度の中では、国家のお墨付きとしてこのような名称が与えられているのだが)がもし、人々の中で定着し、生きながらえていくのなら、国家が制度的に規定する通貨と言うにとどまらず、それは、貨幣が人間の経済の営みにおいて、交換のための媒介財として機能していることをしめすもので、人間の経済の本質を示すものと言えるのだろう。

私は、学生・院生のころ吉沢英成先生の『貨幣と象徴』(日本経済新聞社とちくま文庫)をよんで、お勉強させていただいたのだが、貨幣論としては、久しぶりに「目からうろこ」であった。吉沢先生のそれは、「象徴」をキーワードにして人類に普遍な現象として貨幣もしくは貨幣類似の交換財をとらえるというアプローチだったのだが、本書はさらに、貨幣のフローに焦点が当てられていてお勉強になった。
門外漢なのであまり余計なことを書くと馬脚を現しそうなので、そろそろ退散!

本書の書評はあまり見つからなかったけれど、とりあえず。
貨幣システムの世界史―「非対称性」をよむ - ブログ「business」:http://wxx.blkw.net/page/10038.html

貨幣システムの世界史:「非対称性」をよむ

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貨幣と象徴―経済社会の原型を求めて

日本経済新聞社出版局

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貨幣と象徴―経済社会の原型を求めて

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2006-10-05 23:59:25 | 読書 | コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


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