daichanの小部屋

日本将棋連盟棋士六段・新米常務理事の日常

FINAL

2015-04-12 17:44:18 | 日記・雑談
最終局はまさか、という決着でした。
いろいろな意見はあるでしょうが、これもまた、コンピュータと人間が戦うということの、一面なのだと思います。

論より証拠、百聞は一見に如かず。
後からでも番組は観られますので、ニュースを見て興味を持たれた方もぜひタイムシフト視聴して、そして、それぞれ思い思いの意見を発信してほしいと思います。
それが、二度とはない勝負の、何よりの意義ではないかと思います。
そして願わくば、人は他人に優しい、そういう論調になっていれば幸いです。

私にとっても、これほど印象に残る1か月は、そうそうないかもしれません。
1局目、プロ快勝の内容でしたが、最後の無駄な王手と無残な投了図が、議論を呼びました。
2局目は例の角「不成」がありました。
3局目は盤上では何も起きませんでしたが、時間をめぐる議論が舞台裏でありました。
4局目がいちばん何事もなく、しかもコンピュータの完勝だったわけですが、体調を崩してしまっていて個人的に大変でした。
また、前にも書きましたが自分にとって一番思い入れのある対戦カードでした。

そして最終局。
1局目の逆を行くように、早い投了が話題を集めました。
まさか当日の夕刊で報じられるとは全くの想定外でしたし、その後の記者会見も、注目すべき点がたくさんありました。

エキシビジョンマッチを組んだのは、まさにとっさの判断です。
結果的に視聴者にも楽しんでもらえて、将棋も熱戦になったので、その点は良かったと思います。
最後まで、電王戦は運が良いイベントだったと思います。

これでいったんひと区切り、またタッグマッチが白紙状態にあることも発表しました。
今後どうなるのか、それは続報を待ってもらうほかありませんが、とにかく将棋ファンの期待を裏切らないようにしたい、運営者としてはその一心です。

昨夜は解放感からちょっと飲みすぎましたが、明日からまた、次の仕事が始まります。
'Let me entertain you'で、がんばります
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5 コメント

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電王戦 (AhQ)
2015-04-12 19:02:45
エキシビジョンマッチがあって救われた思いです。
すばらしい機転でした。
Unknown (たるく)
2015-04-12 22:16:24
最終局は、びっくりしましたね。
開発者、対局者、企画運営者、その他の関係者、そして一般のファン、新たなバッシング対象を見つけて水を得た魚のように躍動するネット民・・・いろんな人間模様を垣間見た気がします。

エキシビションマッチは、まだ見ていないのに言うのも何ですが、考えられる範囲で最高の対応だったような気がします。そこで、プロのプレイヤーがギャラが云々とかごねずに協力できるのは、将棋界では当たり前にも見えますが、実はすごいことなのかも知れません。

「思い思いの意見を発信してほしい」と言って下さるのは嬉しいですね。日本中に妙な同調圧力が蔓延するご時世、こういうコミュニティがあることをありがたく思います。

将棋界のやること全てに賛成ではないけれど、「まあ、悪い人たちではなさそうだ」と思える。それは素敵なことのような気がします。

片上先生も、担当理事として、人知れぬご苦労があったことでしょう。お疲れ様でした。


Unknown (駒落ち好き)
2015-04-13 10:37:15
いやはや。おつかれさまです。
何かあるかとは思いましたがまさかの穴が最新の優勝ソフトにありましたね。
私、古いゲームソフトを引っ張り出して(普通に指しても勝てます)試してみたところ、同じく角を打ちました。古くからの盲点でしたか。他の最新ソフトにも通じる可能性高いですね。阿久津八段の選択への批判の声や開発者の早い投了、(最終局なのだから闘うのはソフトなのだから詰みまで指させるべき等の声にも一理あります)これもまた対コンピューター戦の一面であると同感であります。
対抗戦の人数やルールの見直しも含めて、まだ電王戦は続行してほしいと強く願います。
ひとまずはプロに勝ったソフト(ポナンザ、やねうら王、あるいは習そ)に
挑んで欲しいというのがありますね。
どなたかがワンマッチや
番勝負も良いかと思います。
対抗戦は二年おきのイベントでも面白そうです。
一将棋ファンとしては新しい定跡や筋、異筋感覚、闘いの発見発掘の意味でも対コンピューター戦は是非とも続けてもらいたいです。
お疲れさまでした。 (たきの)
2015-04-13 19:33:52
電王戦FINALが、終わって、片上理事
お疲れさまでした。

電王戦FINALの開催には、片上理事の
力無くしては、語られないと思います。

第5局のわたしの感想は、何が起こるの
か、ホントに解からないですねっていうの
が、感想です。

今回の電王戦は、今までで一番興味深く
て、楽しいかったです。
そして、色々な課題が、現れました。

片上理事に、お願いがあります。

今回出た課題をファンの前でクリアに解決
するためのも、もう1回、今までのスタイル
の電王戦を実施して戴くよう、将棋ファンの
ひとりとして、お願いします。

このままで、終わりでは、モヤモヤした
気持ちのままです。

ダメだとは思いますが、そういう意見も
あったの知って頂ければ、幸いです。

片上理事、この1ヶ月間は、お疲れさま
でした。
電王戦の今後 (矢澤 民樹)
2015-04-16 10:31:07
(電王戦FINALの感想)
 第1局:ソフトが圧倒的に強いとされている対抗形にすらすらと…すらすらと研究通りに進んで斎藤五段の勝ち。
 第2局:自玉の寄り筋が見えていなかったseleneの負け。でも永瀬六段、ちゃんと角を成って勝った上で、局後に「実はこういうバグも…」と明かしていれば大ヒーローだったのに。
 第3局:電王戦で勝ち運のない井上一門。本当はここで勝ち越しを決めておかなければいけなかったと思う。でも2七歩はないのでは…
 第4局:ponanzaは強い。7七歩、3六飛、5六飛と人間の理解を超えた手を連発し、その後ほどなく優位を築いてしまった強さにただただ呆れました。
 第5局:「あー、やっちゃったよー」。阿久津八段がこの指し方を選んだことと、AWAKEが2八角を打ってしまったことと、その両方とも。AWAKEは大将になってしまったのが不運だったかも。

 阿久津八段が初手を着手する前に少し時間を使い、湯呑みを口に運んでいたのは、最後の気持ちの整理をつける時間だったのでしょうね。プロ棋士としての阿久津八段の葛藤、コンピュータ将棋を通じて将棋の可能性・面白さを広げようとした巨瀬さんの無念…。両者とも本当に気持ちを整理できるのは、いつの日になるでしょう…

 最後の全体会見は的確な質問と率直な答えが続き、3年間の締めくくりとしてたいへん中身が濃く有意義な内容でした。プロの存在意義、人工知能の中での将棋ソフトの位置など、深い話も出てきて参考になりました。
 ただ、ソフトの事前貸し出しルールについて「将棋連盟の反対を押し切って決めた」という話は初耳で、ちょっと信じ難いです(批判されることを懸念する意見くらいはあったかもしれませんが)。それを含め、ドワンゴ川上会長の「公平なルールとは何かを考えるのが電王戦の重要なテーマ」という発言は正しく、これは永遠に答えの出ない問題でしょう(とりあえず何か決めなければ何もできませんが)。

 さて、問題はこれからのこと。今後、人間とコンピュータの対戦は(あるとすれば)いくつかの種類に分かれていくでしょう。例えば…

①ソフトの弱点をついて勝つゲーム
 FINALではプロ側がこの戦い方に徹し、運の良し悪しで成功しなかった例もあって3勝2敗という結果になりました。しかし、このための研究に時間を費やすのは、トッププロに期待する仕事ではありません。プロ・アマ問わずそういうことの得意な人や、ゲーマーあるいはプログラマー同士に任せておけばいいことで、「○○に勝ったら賞金・賞品」みたいな企画を恒常的にやればいいのではないでしょうか。
 ponanzaは2八角のハメ手には引っかからないそうです。がんばってみんなで攻略しましょう。

②お好み対局(指定局面戦、ハンデ戦など)
 どちらかが有利とみなされている局面から指し始めて、実際にどうなるか試してみるとか、名人戦第1局の投了図からやってみるとか。

③将棋
 昨年の屋敷九段とponanzaの大将戦は好勝負でした。昨年の時点では、人間とコンピュータのトップ同士の力はかなり拮抗していたのではないでしょうか。その後のソフトの進歩を考えると、今年はちょっと怪しく、来年はもう手遅れかもしれません(どうもこの何年か、連盟の対応は一年ぐらいずつ後手になっているような気がします)。
 それでも実際のところどうなのか、やはり見たい気持ちがあります。もちろん勝敗にも興味がありますが、それだけでなく両者が力を尽くした熱戦を期待します。FINALと同じような研究発表会になったらどうするのかという心配はありますが、ある程度の下調べ・準備はもちろん必要で、結果的にそうなってしまった場合は、それはそれで仕方がないでしょう。
 タイトル保持者の参加も検討してほしいです。長い将棋の歴史の中で、おそらく後に二度とない大きな節目を迎えている今この時に、トップにいるみなさんには、なんと言うか、天から与えられた使命のようなものがあると思うのです。この点については、渡辺明棋王が何度か同趣旨の発言をされているので素晴らしいと思っていたのですが、ちょっと心配な空気も感じられるので、あえて書かせていただきました。
 団体戦としての電王戦はひと区切りで、後継は協議中・調整中とのこと。調整に手間取るほどの企画となると、もしや…。さらに川上会長は対局会場の選定について「これからもいろいろなところにお願いするかも」と発言されていたので、期待して発表を待ちます。

 全体会見の中で、ソフト開発者のみなさんが全員、さらにソフトを強くしたいという意欲を持っていることが分かり、うれしく思いました。「プロに勝ったら終わり」というのでなく、新しいテーマを見つけて挑戦していってもらいたいと思います。
 このへんまで考えていたところで、次の書き込みを見ました。
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やねうらお
2015年4月15日 04:10 より:
人間とソフトの強さは異質の強さで、それぞれが強いという結論でいいんじゃないかと私は思ったりしますが。
(やねうら王ブログ 電王戦Finalを終えて その3 コメント欄)
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 ここに「それぞれが強いが、それぞれに弱い部分もある」と付け足すと、現状の説明としてすごく納得できます。それぞれ得意なことと不得意なことがあると。
 人間は、中盤から終盤に切り替わったことを「何となく」察知して、読みのモードを中盤の大局観から終盤の速度計算へと切り替えます(詰みまでを含む一直線の深い読みは終盤モードの中で発生します)。さらに、完全に切り替えていいのかどうかあいまいな局面では、両方のモードを並行して使うこともあります。相入玉の場合は、双方の玉の寄り筋の有無を見極めつつ、点数計算に従って指し進めるというまた別モードの作業を並行して行います。
 現在の将棋ソフトは、評価関数を指針とする探索に全力をそそぐため、こういう並行作業をプログラムに入れていないのではないでしょうか。中盤のねじり合いですでにソフトが人間(ひと握りのトッププロを除く?)を凌駕してしまった現在、ここまでできると本当に人間の付け入る余地はなくなりますが…

 私は、強さ(勝率)以外にも何か大事なテーマがあるのではないかと思います。想定外の事故を起こさないための安全性・完全性といったこともその一つ。評価値はどこまで信用できるのかという疑問もあり、天気予報の一部で使われている確率予報のように、その時その時の評価値の信頼度をランク分けして表示するといったことができないかと思ったりもします。
 あと、私が開発を期待するのは、天野宗歩や阪田三吉、大山康晴といった伝説の棋士たちをソフトで再現するとか、人間と同じような思考のアヤで(バグでなく)ごくまれには二歩を打ってしまうとか、一手指すごとに必ずダジャレを言うとか(だんだん落ちてきたので、もう止めます)。
 長々と場所をお借りして失礼しました。ありがとうございました。

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