★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

2021-07-21 23:44:35 | 文学


友とするにわろき者、七つあり。一つには、高くやんごとなき人。二つには、若き人。三つには、病なく身強き人。四つには、酒を好む人。五つには、猛く勇める兵。六つには、虚言する人。七つには、欲深き人。よき友三つあり。一つには、物くるる友。二つには、医者。三つには、智慧ある友。

まあ普通に生きていればこうなる気がするのであるが、――わたくしは俯瞰的に見たいので、その「わろき」七タイプの人間達がどういう共とつるんでいるか兼好法師にぜひ教えて頂きたいものである。少数の良友だけではセフティネットにならないことがあるので人々は悪友や幇間友、奴隷友などを持つのであった。理想ばかり述べても現実とは違うのだっ

兼好法師は、つまり物と健康と知恵が欲しかったのだ。案外普通である。そしてこの3つが大概、七悪タイプの中に含まれているのだ。

 大島敏夫 これは小学時代の友だちなり。僕も小学時代には頭の大いなる少年なりしも、大島の頭の大いなるには一歩も二歩も遜りしを記憶す。園芸を好み、文芸をも好みしが、二十にもならざるうちに腸結核に罹りて死せり。何処か老成の風ありしも夭折する前兆なりしが如し。尤も僕は気の毒にも度たび大島を泣かせては、泣虫泣虫とからかひしものなり。

――芥川龍之介「学校友だち」


芥川龍之介はたしか小穴隆一と堀辰雄だけ友だちとしてあとは書いても書かんでも、みたいな文章を書いていたが、「学校友だち」は結構いた。そのなかにはこういう人もいたのであった。「少年」で、「お母さんて言ってやがる」みたいなせりふを吐く悪友を描いている印象から、芥川龍之介が文弱と見える人は勘違いであろう。芥川みたいなのは根本的にいじめが好きなのであった。というわけで、兼好法師の発言も全く信用できない。泣かした友もいたであろう。