★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

今年のベスト10以上

2013-12-30 23:30:43 | 文学


今年読んだ本ベスト10とかを世の読書人たちはやっておるらしいので、わたくしもやってみるのである。もちろん、本当に面白かった本は特定秘密として保護されました。

1、押見修造『悪の華』……夢に出た。よって一位。

2、埴谷雄高『死霊』……幽霊は実在する。よって二位。

3、永野護『敗戦真相記』……はいはい。みんなちゃんと敗戦の事実を認めましょうね。

4、加藤智大『解』……《解》脱かと思った。

5、佐藤友哉『世界の終わりの終わり』……わたくしの時間を返せ。

6、ミラン・クンデラ『裏切られた遺言』……ちょっと言っておきたいのだが、あなたの小説の映画は嫌いだ。

7、ジャン=ジャック・ナティエ『レヴィ=ストロースと音楽』……夢を見させる思想家。レヴィ・ストロース。

8、矢作直樹『人は死なない-ある臨床医による摂理と霊性をめぐる思索-』……いや、その、なんでしょう……

9、與那覇潤『中国化する日本――日中「文明の衝突」一千年史』……山川教科書の改訂を急げ。

10、『吉川英治全集』……わたくしの時間を返せ。

11、そにしけんじ『猫ラーメン』……最近、ラーメンを食べると胃がもたれるんですが……

12、田島正樹『古代ギリシアの精神』……哲学者は常に希臘哲学を上演している。

13、濱野 智史『前田敦子はキリストを超えた: 〈宗教〉としてのAKB48』……忠告します。わたくしの時間をただちに返しなさい。

14、小谷野敦『悲望』……正直者の大学院生の悲しみ(正直)

15、壺井栄『二十四の瞳』……世の中に絶望あり。

16-1、『里見全集』……全集じゃないじゃないか、選集じゃないか。

16ー2、『黒島傳治全集』……意外とおしゃれだね。

分を弁えよ

2013-12-30 21:27:49 | 大学
集客をやってるつもりが、頭が悪いとだんたんと人は離れてゆくものである。

誰もみてないのでかわいそうだから細君と二人で車から見物してきたよ


研×××××



動揺して、ぶれた。節×のために携×も大事にしよう、ということで、しまう。

……われわれは、それぞれ一つぐらいしか得意分野はない。だから金××の×××××は××××××××××××。問題なのは、貧すりゃ鈍すの法則により、奴隷が得意分野をなくしてしまうことである。しかしまだそんな事態ではない。××××××××××を××××××××。それだけに集中するしかないのである。


エレクトラ

2013-12-30 03:36:20 | 文学
山文彦の中上健次の評伝を読む。中上についての文章を読むたびに、中上をつくった問題ではなく、中上のつくった問題から逃げないためにはどうするかということを考える。

人の像いかにして神の圓とかくよく結び合へるや、いかにしてその中にあるをうるや

2013-12-28 17:58:56 | 文学


あゝ永遠の光よ、己が中にのみいまし、己のみ己を知り、しかして己に知られ己を知りつゝ、愛し微笑み給ふ者よ
反映す光のごとく汝の生むとみえし輪は、わが目しばしこれをまもりゐたるとき
同じ色にて、その内に、人の像を描き出しゝさまなりければ、わが視る力をわれすべてこれに注げり
あたかも力を盡して圓を量らんとつとめつゝなほ己が要むる原理に思ひいたらざる幾何學者の如く
我はかの異象を見、かの像のいかにして圓と合へるや、いかにしてかしこにその處を得しやを知らんとせしかど
わが翼これにふさはしからざりしに、この時一の光わが心を射てその願ひを滿たしき
さてわが高き想像はこゝにいたりて力を缺きたり、されどわが願ひと思ひとは宛然一樣に動く輪の如く、はや愛に廻らさる
日やそのほかのすべての星を動かす愛に。

――ダンテ『神曲』(山川丙三郎訳)

眥を決して、ただ見ることだ。――見えませんでした

2013-12-27 17:24:31 | 文学


気になって「英靈の聲」を読み直してみたんだが、どうみても、英霊の声を借りて三島が「天皇並びにそのとりまきは戦前も戦後も何処までもけしからんレベルだった」と言いたかったとしかおもえん。それに気になるのは、2・26の将校の英霊の浪漫的な真の迫り方に対して、どうも特攻隊の霊が「眥を決して、ただ見ることだ」の如き、芸術論みたいな?台詞をしゃべっていることである。三島がゴジラみたいな不特定多数の英霊を代弁するつもりがなかったのはさすがなのであるが……。しかのみならず、2・26もどきをこのあと三島が実行したこと、なぜ特攻ではだめだったかよく分かるというものだ。やはり神風が吹こうとどうしようとやはり特攻的なものは犬死になるのではないか。9・11がテロとして思想的なものを喚起しないように。三島事件も2・26も刀ではなく言論が重要であることを逆に示したといへよう。まあ、百歩譲って、内輪には体当たりが効いたとしても、外側には効かない。ぶち破る境界は、内部には属さないからだ。

埴谷雄高対三島由紀夫、その後

2013-12-26 16:54:06 | 文学
ちょっと死霊とか英霊に気持ち聞いてくるから、まっててねっ



死霊曰く「だが、サッカよ、すべての草木が、お前に食べられるのを喜んでいるなどと思ってはならない。お前は憶えていまいが、苦行によって鍛えられたお前の鋼鉄ほどにも堅い歯と歯のあいだで俺自身ついに数えきれぬほど幾度も繰り返して強く噛まれた生の俺、すなわち、チーナカ豆こそは、お前を決して許しはしないのだ。」

英霊曰く「赤誠の士が叛徒となりし日、漢心のナチスかぶれの軍閥は、さへぎるもののない戦争の道をひらいた。」
……それは鬼哭としか云ひようのない、はげしい悲しみの叫びであった。

そして聞き手は……「死んでいたことだけが、私どもをおどろかせたのではない。その死顔が、川崎君の顔ではない、何者とも知れぬと云おうか、何者かのあいまいな顔に変容しているのを見て、慄然としたのである。」


「Groovy!」(「死霊のはらわた」)

「つまり、あの人は才能だけだっていうことを言うだろう。何かほかのものがないっていう、そういう才能ね、そういう才能が、君の様に並はずれてあると、ありすぎると何かヘンな力が現れて来るんだよ。魔的なもんかな。きみの才能は非常に過剰でね、一種魔的なものになっているんだよ。ぼくにはそれが魅力だった。あのコンコンとして出てくるイメージの発明さ。他に、君はいらないでしょ、何んにも。」(小林秀雄)

他人の死、母の愛――そんなものが何だろう。いわゆる神、ひとびとの選びとる生活、ひとびとの選ぶ宿命―――そんなものに何の意味があろう。ただ1つの宿命がこの私自身を選び、そして、君のように、私の兄弟と言われる、無数の特権あるひとびとを、私とともに、選ばなければならないのだから。君はわかっているのか、いったい君はわかっているのか?誰でもが特権を持っているのだ。特権者しか、いはしないのだ。他のひとたちもまた、いつか処刑されるだろう。君もまた処刑されるだろう。人殺しとして告発され、その男が母の埋葬に際して涙を流さなかったために処刑されたとしても、それは何の意味があろう?サラノマの犬には、その女房と同じ値打ちがあるのだ。(ムルソー)

もの思う葦という題名にて、日本浪曼派の機関雑誌におよそ一箇年ほどつづけて書かせてもらおうと思いたったのには、次のような理由がある。
「生きて居ようと思ったから。」(太宰治)

……言うまでもなく、死んだ者の声を聴こうとするなぞ、思い上がりも甚だしい。われわれがまともであれば、必ず死者からではなかろうが呼びかけがあるものである。しかし、世界史的観点から言って、もう決着はついている。われわれは、国際秩序形成に関しては責任をとれない能力だった責任をとって戦後を生きることにしたのである。その時、もはや死霊のつぶやきとかイデオロギーなど問題にならん局面だったことを忘れてはならないであろう。

空をとられたら地下に潜ればいいじゃない

2013-12-25 12:06:25 | 文学


 地形図の価値はその正確さによる。昔ベルリン留学中かの地の地埋学教室に出入していたころ、一日P教授が「おもしろいものを見せてやろう」といって見せてくれたのは、シナの某地の地形図であった。やはり二十メートルごとぐらいの等高線を入れてあったが、それが一見してほとんどいいかげんなでたらめなものであるということがわかった。等高線の屈曲配布にはおのずからな方則があっていいかげんなものと正直に実測によったものとは自然に見分けができるのである。
 その時に痛切に感じたことは日本の陸地測量部で地形図製作に従事している人たちのまじめで忠実で物をごまかさない頼もしい精神のありがたさであった。ほとんど人跡未到な山の中の道のない所に道を求めあらゆる危険を冒しても一本の線にも偽りを描かないようにというその科学的日本魂のおかげであの信用できる地形図が仕上がるのである。そういう辛酸をなめた文化の貢献者がどこのだれかということは測量部員以外だれも知らない。
[…]
人間が地上ばかりを歩いている間は普通の地図で足りるが、空を飛び歩くようになった今日では航空用の地図が必要になった。しかし、現在の航空地図はまだほんの芽ばえのようなもので普通の地形図に少しばかり毛のはえたものである。しかし今に航空がもっともっと発達して、空中の各層に縦横の航空路が交錯するようになればもはや平面的な図では間に合わなくなって立体的なあるいは少なくも立体的に代用される特殊な地図が必要になるかもしれない。
 空中ばかりでなく人間の交通範囲は地下にも拡張される傾向がある。
 関東大震後に私は首都の枢要部をことごとく地下に埋めてしまうという方法を考えたことがある。重要な官衙や公共設備のビルディングを地上百尺の代わりに地下百尺あるいは二百尺に築造し、地上は全部公園と安息所にしてしまう。これならば大地震があっても大丈夫であり、敵軍の空襲を受けても平気でいられるようにすることができるからである。この私の夢のような案は当時だれもまじめには聞いてくれなかった。
 しかし現に丸の内の元警視庁跡に建築されることになっている第一相互の新館は地下六十尺に基礎をすえ、地下室が四階になるはずだそうで、いわば私の夢の一端がすでに実現されかけたように見える。もしも丸の内の他の建物もだんだんに地底の第三紀層の堅固な基礎の上に樹立される日が来れば、自然に建物と建物の各層相互の交通のために地下道路が縦横に貫通するようになるかもしれない。そうなれば丸の内の地図はもはや一枚では足りなくなって地下各層の交通を示す立体図が必要になる勘定である。
 九月一日は帝都の防空演習で丸の内などは仮想敵軍の空襲の焦点となったことと思われる。演習だからよいようなものの、これがほんとうであったらなかなかの難儀である。しかし、もしも丸の内全部が地下百尺の七層街になっていたとしたら、また敵にねらわれそうなあらゆる公共設備や工場地帯が全部地下に安置されており、その上に各区の諸所に適当な広さの地下街が配置されていたとしたら、敵の空軍はさぞや張り合いのないことであろうし、市民の大部分は心を安んじてその職につき枕を高くして眠ることができるであろうと思われる。もしそうなれば、東京の地図が一枚で足りないというめんどうぐらいは我慢してもだれも小言はいわないであろう。
 これは今のところでは一場の夢物語のようであるが、実はこの夢の国への第一歩はすでに踏み出されている。そうして昨今国民の耳を驚かす非常時非常時の呼び声はいっそうこの方向への進出を促すように見える。
 東京市全部の地図が美しい大公園になってそこに運動場や休息所がほどよく配置され、地下百尺二百尺の各層には整然たる街路が発達し、人工日光の照明によって生育された街路樹で飾られている光景を想像することもそれほど困難ではないように思われるのである。

――寺田寅彦「地図をながめて」

Villon, our sad bad glad mad brother's name!

2013-12-24 01:41:05 | 文学


Bird of the bitter bright grey golden morn
Scarce risen upon the dusk of dolorous years,
First of us all and sweetest singer born
Whose far shrill note the world of new men hears
Cleave the cold shuddering shade as twilight clears;
When song new-born put off the old world's attire
And felt its tune on her changed lips expire,
Writ foremost on the roll of them that came
Fresh girt for service of the latter lyre,
Villon, our sad bad glad mad brother's name!

――A Ballad of François Villon, Prince of All Ballad-Makers By Algernon Charles Swinburne

今週あたりのニュース

2013-12-23 16:02:06 | 日記
1、宇宙から見た中国が大気汚染の影響で地形が判別できない件 / 中国ネットの声「ヤバい! 長江が見えない!!」
http://topics.jp.msn.com/wadai/rocketnews24/column.aspx?articleid=2630997


→月に行っている場合なのか、と思ったら、ちゃんと記事にも書いてあった。まあ、地上にいても水が見えない××ダムより長江あるだけうらやましい。

2、学業成績:遺伝の影響は環境の2倍 英で双子を調査
http://mainichi.jp/feature/news/20131217k0000m030010000c.html

→世界中から「知ってるわそんなこと」という声が……いやんなりますね……

3、天皇陛下80歳:「最も印象に残っているのは先の戦争」
http://mainichi.jp/feature/koushitsu/news/20131223k0000m040111000c.html

→陛下はまた臣民の尻ぬぐいをなさろうとしているのではなかろうか……

4、韓国で「過去最大級の放送事故」発生 / 有名画家「ボブ・ロス」と間違えてノ・ムヒョン元大統領のコラ画像を放送
http://topics.jp.msn.com/wadai/rocketnews24/column.aspx?articleid=2697781


→意図的かどうかではなく、想定内か想定外かの問題だ

5、「餃子の王将」社長……
http://mainichi.jp/select/news/20131219k0000e040182000c.html


→餃子の王将という名前にゆるキャラ的なものを感じていたわたくしを悲しませたニュース

6、辞任表明と同時発売!? 猪瀬直樹都知事の新刊『勝ち抜く力』Amazonレビューが大騒動
http://www.cyzo.com/2013/12/post_15537.html


→さすが作家の商魂は違うな。ド庶民とはレベルが違う。

7、ひそかにブームの兆し「カッパ口」…“かわいい”女性にも好印象
http://news.livedoor.com/article/detail/8372411/

→そ、そんな口してもごまかされんぞ。はい、レポートやり直しっ

8、首相、秘密法は争点にならず 都知事選
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/politics/511411.html

→お前が決めることじゃねえよ。

9、エジプトに雪、数十年ぶり
http://www.huffingtonpost.jp/2013/12/13/egypt-snow-2013_n_4443656.html


→申し訳ありませんが、想定外なので、暖房費につきましては料金値上げでお願いします。(棒読み)

海猿と水男

2013-12-22 23:55:19 | 映画


そういえば「海猿」と「ウォーターボーイズ」を混同してました。誠に申し訳ありません。

テレビで「海猿」やってたときに思ったのは、「海猿」の登場人物たちは、「セブン」のミルズみたいに知恵の実食って罪を犯すことがあるのかということであった。アダムは無垢だが人間だ。しかし、猿は猿である。

どれが昔

2013-12-21 23:58:21 | 文学


 その中の一人は、思い出したように、遠く都会のかなたの空をながめました。たくさんの煙突から、黒い煙が上がっていて、どれが昔、自分たちの飴チョコが製造された工場であったかよくわかりませんでした。ただ、美しい燈が、あちらこちらに、もやの中からかすんでいました。
 青黒い空は、だんだん上がるにつれて明るくなりました。そして、行く手には、美しい星が光っていました。

――小川未明「飴チョコの天使」