★さちゅりこん――渡邊史郎と縦塗横抹

世界が矛盾的自己同一的形成として、現在において過去と未来とが一となるという時、我々は反省的である。(西田幾多郎)

めくそ、はんかけ、蚊のなみだ

2015-04-30 23:01:54 | 文学


 子供らは網の上ですべったり、相撲をとったり、ぶらんこをやったり、それはそれはにぎやかです。おまけにある日とんぼが来て今度蜘蛛を虫けら会の相談役にするというみんなの決議をつたえました。
 ある日夫婦のくもは、葉のかげにかくれてお茶をのんでいますと、下の方でへらへらした声で歌うものがあります。
「あぁかい手ながのくぅも、
 できたむすこは二百疋、
 めくそ、はんかけ、蚊のなみだ、
 大きいところで稗のつぶ。」
 見るとそれは大きな銀色のなめくじでした。
 蜘蛛のおかみさんはくやしがって、まるで火がついたように泣きました。

――宮澤賢治「蜘蛛となめくじと狸」

榾火はとっぷりと

2015-04-29 12:36:59 | 文学


 松三はこう言いながら、自分の美しかった若い妻が、菊枝の母親が、いかに惨めな半生を送ったかを、農村の女達がいかに虐げられるかを思った。
 太陽はだいぶ西に傾いて、淡い陽脚を斜めに投げだしていた。緑の新芽は思い思いの希望を抱き、榾火はとっぷりと白い灰の中に埋もれていた。

――佐佐木俊郎「緑の芽」

ダイナマイト節

2015-04-28 17:36:51 | 思想
民権論者の涙の雨で、みがき上げたる大和魂、国利民福増進して、民力休養せ、若し成らなきやダイナマイトドン。

……やっぱり、今ないのは、「涙の雨」の類である。ダイナマイトではない。

夏の生活スタイル変革(笑)

2015-04-27 23:56:06 | 大学


総理大臣が「夏の生活スタイル変革」を国民運動として展開するとか口走ったので、文科省から文書が送られてきた。首相の施政方針演説をいちいち実現しなければならないという発想がまず意味わからんが、「昼が長い夏は、朝早くから働き、夕方からは家族や友人との時間を楽しむ。」とか、なんだこれ、明らかに「レッド・ドワーフ」の主人たちから、エイリアンのうんこを投げられそうな人間像ではないか。確かに偏差値が一晩で40ぐらい低下した宮澤賢治が言いそうなせりふではある。国民も舐められたものである。まあ、実際のところ国家公務員いじめなのかもしれないが……

きつい匍匐前進を「無駄を省け、5時までにこれをやらないと、わかってるな」と言われながら休憩時間なく10時間8時間やられるのがいやなので、だらだら途中で無駄愚痴スイーツ休憩挟みながら13時間やらされる方を、選択しているという面もあるのよね……

解決策は自明である。匍匐前進をやめればいいのである。

……というのは、好意的な戯画である。今もこれからも、さぼって仕事をできるふりをしている奴がいる一方で、尻ぬぐいで残業している人がいる。それを人間関係のために放置する上司たち。明らかに今回のは、尻ぬぐい係をもっといじめようという政策である。

人は影と一緒に向ふへ行く

2015-04-26 23:01:48 | 文学


汽車はのぼって来るのぼって来ると子供が云ってゐる。人は影と一緒に向ふへ行く。私も行く。
雲が白くて光ってゐる。早池峰の西どなりの群青の山の稜が一つ澱んだ白雲に浮き出した。薬師岳だ。雲のために知らなかった薬師岳の稜を見るのだ。
今日も鳥が啼いてゐる。お城の方へ行かうか。おしろには前の日曜のさみしさがまだ浸み込んで残ってゐるからだめだ。さうして見るともっと東の遠くの方まで出かけよう。

――宮澤賢治「山地の稜」

swing vote

2015-04-25 23:09:47 | 映画


NHKで、赤ちゃんポストの番組をやってた。興味深い番組であった。「命をつなぐ」という言葉でまとめかかっている番組の構成はむろん問題である。問題の具体性がまるで消えてしまうからである。印象に残ったのは、行政やひどい父親とかに対する強烈な不信感、というより拒絶である。抽象的な「命」に話がスライドしてしまうのは、絶望が深すぎる場合の宗教的救済への期待に近いのではなかろうか。すくなとくも、NHKは話をそう解釈したいようにみえた。

そこで思いだしたのは、昔みた「揺れる評決」というアメリカのテレビ映画である。たしか、アンディ・ガルシアが出てた。中絶を許すか許さないかをめぐって、延々議論が続く話である。政治や司法の場でも人間の不幸は問題にされうるのだという当たり前のことが描かれていた。最後に、新人判事であるアンディ・ガルシアが、政治的駆け引きではなく、自分の信念に基づき、ある種の論理的な「妥協案」ならぬ「打開案」を作り出す。そのとき彼が主張したのが、現に生まれている子どもの幸福という視点である。現に不幸になっている子どもたちが多いという現実に向かって中絶問題は論じられなければならない。そしてそれは、宗教や自由という視点のみ(つまり憲法のレベルのみ)では問題にできず、現実的な「人間的感情」かつ「金銭的」な視点が必要だと、彼は主張しているようにみえた。これがクソ絆や命の大切さや、金を誰が出してるんだこのヤローなどの話にならないのは、憲法や宗教的当為が基盤になっているからである。

昔みた映画(記憶がかなり曖昧ではあるが……)と比べても、我々の社会は何段階も遅れているようにみえる。ドローンを官邸に落とそうとする人は別に特殊ではなく、我々は、絶望のあまりテロをしてしまう社会に住んでいる。周囲に対する拒絶はすべてテロである。しかし、むしろこれは周囲の責任を問わなければ、「問題」にならない。とはいえ、その路線は、どうせなれ合いケア、しまいにゃ仲間はずれに落ちてゆくであろう。昔のテロリストは、死んだ後敵から褒められる可能性を夢見ていたところがある。無限孤独に落ちるとは思っていなかったのである。すなわち、来島恒喜みたいなのを総理大臣が褒めるようにならねば、テロリストもいつまでもまともさを取り戻すことはできない。

彼はそれをS市をすぎて間もなく

2015-04-24 23:37:02 | 文学


ほとんど何年ぶりかで食った汽車弁当の味も、今もなお舌なめずりせずにはいられない旨さで思い出された。彼はそれをS市をすぎて間もなくある小駅に汽車が着いた時に与えられ、汽車中の衆人の環視のなかでがつがつとした思いで貪り食ったのである。――しかし、一週間を過ぎたころにはこれらのすべての記憶もやがて意識の底ふかく沈んで行き、灰いろの単調な生活が再び現実のものとして帰って来、それとともに新しく連れて来られた自分の周囲をしみじみと眺めまわして見る心の落着きをも彼は取り戻したのであった。

――島木健作「癩」

君は此処から行かないで呉れ

2015-04-23 23:57:21 | 文学


純黒 俺の胸も裂けやうとする。おゝ。町はづれのたそがれの家で、顔のまっ赤な女が、一人で、せわしく飯をかき込んだ。それから、水色の汽車の窓の所で、瘠せた旅人が、青白い苹果にパクと噛みついた。俺は一人になる。君は此処から行かないで呉れ。
蒼冷 ありがたう。判った。判ってゐるよ。けれども俺は快楽主義者だ。冷たい朝の空気製のビールを考へてゐる。枯草を詰めた木沓のダンスを懐かしく思ふのだ。

――宮沢賢治「蒼冷と純黒」

個人の感想です

2015-04-23 02:47:57 | 思想


★今日、ご飯を食べようとしてテレビをつけたら「クローズアップ現代」とかいうのがやってて、キャンパスをグローバル化するとグローバル化が進むけど数値的に評価するのは難しくて……、グローバル化の波に遅れてて日本の大学のランキングが……(たぶん後半は幻聴)とか、わしの出身校の先生がおどおどしながらしゃべっていた。頭がおかしくなりそうだったのだったので、即テレビを消した。日本の大学が世界的なレベルに乗り遅れているのか定かではないが、もしそういうことがあるとしたら、たぶん原因は二つである。

①、いままでクラスでも珍しい中流家庭のお坊ちゃんだったのでクラスでまあまあの成績だったが、他の貧乏人の生活水準が上昇し成績があがってきたので、生来のいまいちさがばれて焦っている。焦るとお坊ちゃんなので成績に響くのである。
②ー1、数年前、担任の先生がとても馬鹿なやつに変わった。はじめは無視していたが、馬鹿な割に、いじめの天才だったので、馬鹿なふりをするようにがんばった。しかし「馬鹿なふり」は「代替案のないやつの態度」とか意味不明な説教をくらったので、積極的に頭の悪そうな代替案を提出したら褒められた。→勉強時間に支障でた。
②ー2、教員を目指していたが、目の前にいる担任の先生より頭がいいと教員採用試験に受からないという噂を聞き、積極的馬鹿主義でゆくことにした。が、もともと大して勉強ができないことに気付いていたので、「馬鹿って本当は海外から絶賛されている」という本を読んだりして、自信を取り戻す。自信を持ってグローバルに留学したら、海外にも案外馬鹿が居たので更に安心した。キャンパスのなかの外国人も案外話が分かるイイやつが多いよ。まったり……

……だいたいこんな感じでしょうが……

★市長と市議会の選挙があるので、立候補している人たちの写真と抱負の一覧が、新聞に挟まっていたのであるが、これが面白い。地方の政治が衰退しているとか、民主主義が滅びるとかいう正論で退屈している皆様……地方の議員の多種多様なすごさは面白いですよ。これなら、みんな積極的に立候補すべしです。おもしろ地方自治に参加できますよ。総理大臣が馬鹿すぎて絶望しているインテリの皆さん、足下を見てください。革命のためには、上にばかりロックオンすべきじゃない。

★ドローンを飛ばして遊んでいるひとたち、上ばっかり見ているとアホになりますよ。本を読みましょう。

★私がスマホが嫌いな理由がいま分かりました。「スマアホ」と発音していたからです。

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20150421-OYT1T50160.html?from=tw……読売は一体何を言いたいんだ……また誰かに脅されたのか?

★リニア600キロ突破……メタボすぎるのでコメントを差し控えさせて頂きます。

ふりかえる魔物がいる

2015-04-21 23:54:08 | 文学


「帰る」ということは、不思議な魔物だ。「帰ら」なければ、悔いも悲しさもないのである。「帰る」以上、女房も子供も、母もなくとも、どうしても、悔いと悲しさから逃げることが出来ないのだ。帰るということの中には、必ず、ふりかえる魔物がいる。
 この悔いや悲しさから逃れるためには、要するに、帰らなければいいのである。そうして、いつも、前進すればいい。

――坂口安吾「日本文化私観」

ここで犬死にしてはつまらない。逃げられるだけは逃げましょうよ

2015-04-20 23:18:18 | 文学


 お酌のひとは、鳥のように素早く階下に駆け降り、やがて赤ちゃんをおんぶして、二階にあがって来て、「さあ、逃げましょう、早く。それ、危い、しっかり」ほとんど骨がないみたいにぐにゃぐにゃしている大尉を、うしろから抱き上げるようにして歩かせ、階下へおろして靴をはかせ、それから大尉の手を取ってすぐ近くの神社の境内まで逃げ、大尉はそこでもう大の字に仰向に寝ころがってしまって、そうして、空の爆音にむかってさかんに何やら悪口をいっていました。ばらばらばら、火の雨が降って来ます。神社も燃えはじめました。
 「たのむわ、兵隊さん。も少し向こうのほうへ逃げましょうよ。ここで犬死にしてはつまらない。逃げられるだけは逃げましょうよ」

――太宰治「貨幣」

貴様、話しなんかしたら、みろ、

2015-04-19 23:35:24 | 文学


「いいか、貴様、話しなんかしたら、みろ、貴様本当に橋の上から川の中へ突っ込んでやるからな!」
「貴様ばかりでなく、誰だってそうだど」とさぶちゃんはつづけた。「俺、先生だって綾子と変な真似したら用捨はしねえ。ナイフで突っこ抜いてやるんだ!」
 それは綾子やその他の大きな女生徒に、笑いながら話をする若い先生に対する戦争の宣言でもあった。

――犬田卯「橋の上」

飲んじゃった

2015-04-18 16:41:59 | 漫画など


「ヒゲとボイン」の作者がお亡くなりになったらしい。黄桜のCMはわたしも覚えている。こんな感じである。

ぽりうqljkdshflkじゃdh飲んじゃったty rtっtいい気もちー
なんとかなんとかなんとかなんとかwjkfうぇおrj
キーザクラー(ハモる。美しい)

少女は眼を挙げて答えた。「兄さんが死んだので、私たちは幸福になりました。」(太宰治)

2015-04-17 23:11:31 | 日記


http://www.yomiuri.co.jp/local/chiba/news/20150415-OYTNT50360.html?from=tw

大学に「グローバル茶室」

http://www.asahi.com/articles/ASH4H7F37H4HUCVL02B.html?iref=com_rnavi_arank_nr04

愛川欽也さん死去 「キンキン」、テレビ司会で活躍



http://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye2471076.html
自民、大学教育の見直し提言案まとめる
「また、日本の産業競争力強化のため、企業のニーズにあわせた教育ができるよう大学院改革を進め、「博士号の取得者や専門職大学院の修了者を5年で倍にすること」や「世界のMBAランキング100に日本の大学院を5校以上入れること」を目指すとしています。」……



http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20150414-00000049-nnn-pol

自民党 NHKとテレ朝の幹部を呼び聴取へ