最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

クレジット使用の名義貸し、取り消しは認めない

2017-04-12 19:30:27 | 日記
平成27年(受)第659号 立替金等請求本訴,不当利得返還請求反訴事件
平成29年2月21日 第三小法廷判決  

商売をやっている人にとっては大きな判決かもしれません。
産経新聞の報道によると、

名義貸しでクレジット契約「取り消せる可能性ある」 最高裁が初判断

資金繰りに窮した呉服店に依頼されて名義を貸し、クレジット契約で商品を購入したことにした顧客らが、代金を立て替えた信販会社からの支払い請求を拒めるかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(大橋正春裁判長)は21日、顧客側敗訴とした2審札幌高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。

 同小法廷は「契約が名義貸しという不正な方法で締結されたものでも、重要事項について事実と異なる説明があった場合などは取り消せる可能性がある」との初判断を示した。

 判決によると、呉服店は「絶対に迷惑は掛けない」などと顧客に名義貸しを依頼し、信販会社2社が立て替えた代金を運転資金に充てていた。呉服店は平成24年に破産。2社が顧客らに残金支払いを求めていた。

 1審旭川地裁は2社の請求を退けたが、2審は顧客らに支払いを命じた


裁判所の事実認定から見ていきましょう。
1 ある人がクレジットカードである会社の商品を買いました。
2 しかし、この人は上記売買契約は架空のもの であり,上記立替払契約は,本件販売業者の依頼により,上告人らが名義上の購入 者となることを承諾して締結されたものでした。
いわゆる名義貸しです。
3 クレジットカードの会社は、この人に未払い分を請求しましたが、この人支払いを拒否しました。
4 この人は、割賦販売 法35条の3の13第1項http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S36/S36HO159.htmlにより上記立替払契約の申込みの意思表示を取り消したとして、これまで支払った金額の請求をしました。
5 この人は、平成16年4月,呉服や貴金 属の卸小売等を業とする本件販売業者との間で,割賦購入あっせん加盟店契約を締 結した。
6 販売業者は,平成14年頃から多数回にわたり,その運転資金を得る 目的で,既存の顧客に対して名義貸しを依頼し,これに応じた顧客に架空の売買契 約の購入代金に係る立替払契約を締結させ,被上告人や他の信販会社から代金相当 額の支払を受けるとともに,上記顧客の信販会社に対する支払金相当額を自ら負担 していた。
7 名義貸しを承諾し,本件販売 業者との間で締結した架空の売買契約していました。
8 平成23年10月分ま では,販売業者が支払金相当額を上記口座に振り込んでいた。
9 販売業者は,平成23年11月28日,営業を停止し,平成24年4 月3日,破産手続開始の申立てをし,その後,破産手続開始の決定を受けました。
10 平成24年3月から平成25年1月にかけ て,被上告人に対し,割賦販売法35条の3の13第1項により改正後契約の申込 みの意思表示を取り消す旨の意思表示をした。

経営状態の悪くなった宝石屋さんがいました。おそらく商売仲間か商店街のなかで、宝石屋さんの商品を買ったことにして、架空の売り上げをだして、その分を架空売り上げに協力した人の口座に金を振り込んで資金繰りにしていたようです。
しかし、23年についに資金が回らなくなって破産手続きになりました。多分商品を受け取っていないのに、金だけ払えと言われたのではかなわないということで、支払いをしないでもよいようにしたかったのでしょう。
1審2審は協力者の主張が認められました。これに対して、最高裁は

改正法により新設された割賦販売法35条の3の13第1項6号は,あっせん業 者が加盟店である販売業者に立替払契約の勧誘や申込書面の取次ぎ等の媒介行為を 行わせるなど,あっせん業者と販売業者との間に密接な関係があることに着目し, 特に訪問販売においては,販売業者の不当な勧誘行為により購入者の契約締結に向 けた意思表示に瑕疵が生じやすいことから,購入者保護を徹底させる趣旨で,訪問 販売によって売買契約が締結された個別信用購入あっせんについては,消費者契約 法4条及び5条の特則として,販売業者が立替払契約の締結について勧誘をするに 際し,契約締結の動機に関するものを含め,立替払契約又は売買契約に関する事項 であって購入者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものについて不実告知をし た場合には,あっせん業者がこれを認識していたか否か,認識できたか否かを問わ ず,購入者は,あっせん業者との間の立替払契約の申込みの意思表示を取り消すこ とができることを新たに認めたものと解される。そして,立替払契約が購入者の承 諾の下で名義貸しという不正な方法によって締結されたものであったとしても,そ れが販売業者の依頼に基づくものであり,その依頼の際,契約締結を必要とする事 情,契約締結により購入者が実質的に負うこととなるリスクの有無,契約締結によ りあっせん業者に実質的な損害が生ずる可能性の有無など,契約締結の動機に関する重要な事項について販売業者による不実告知があった場合には,これによって購 入者に誤認が生じ,その結果,立替払契約が締結される可能性もあるといえる。こ のような経過で立替払契約が締結されたときは,購入者は販売業者に利用されたと も評価し得るのであり,購入者として保護に値しないということはできないから, 割賦販売法35条の3の13第1項6号に掲げる事項につき不実告知があったとし て立替払契約の申込みの意思表示を取り消すことを認めても,同号の趣旨に反する ものとはいえない。


無茶苦茶長い文ですが、要するに新しく改正された法律は、高齢者や判断能力が乏しくなった人を守るための制度で、ここで支払いを拒否したい人はその裏側を良く分かっている人たちだよね。そりゃ法の趣旨に合わないでしょうと言ってるのです。

ところが、山崎裁判官はこれに異を唱えます。
1 個別信用購入あっせん(改正法による改正前は割賦購入あっせん)という三 者間の特殊な契約関係を利用した不正な取引というべきものである。・・・商品を受領していないことを認識しつつ,あっせん業者との間で当該商品の購入 代金につき立替払契約を締結し,割賦金の支払義務を負担することを承諾している。
要するに善意の第三者ではないという事ですね。

2 このような販売契約の勧誘に際し販売業 者による不実告知等の違法不当な行為があった場合,購入契約の取消しが認められ たとしても,これと法的には別の契約である立替払契約は存続し,購入者は抗弁権 の接続により未払金の支払の拒絶はできても既払金の返還を求めることはできない ところ,こうした結果は不合理であり,また,購入者に酷であるので,これを是正し既払金の返還を可能とするために新たに上記制度が設けられたものと理解される。

3 抗弁権の接続(改正法による改正前の割賦販売法30条の4第1項)は,販 売業者の違法不当な行為の結果として締結された商品購入契約が無効とされ又は取 り消されたとしても,これと法的には別の契約である立替払契約に基づく割賦金の 支払義務が当然に消滅するものではないことから,消費者保護の観点に立って,そ のような購入契約について購入者が販売業者に対抗できる事由をもって,立替払契 約に基づく割賦金の支払を拒絶できるようにするものと解される。

4 名義貸しの中には,悪質な販売業者が立替払契約を悪用して資金を調達しよ うとして,顧客等に虚言を用いたり,執拗に懇請したりして,架空の購入契約によ る立替払契約を強引に結ばせるといったものもあり得るであろう。こうしたケース における名義貸人は,いわば被害者とみることもできるのであって,悪質な販売業 者を一掃し,このような名義貸しが行われるのを防ぐ必要があることは論をまたな い。そのためには,何よりも,名義貸しが不正な取引に加担することで許されない。

とはいうものの結論は同じになりました。
私も基本的に山崎裁判官に同意します。これは、助けてやろうという気持ちから名義貸しという違法行為をしましたが、違法行為となっていることを知りながらやっていたのであるから、そのまま保護すべきではないとしました。まさにその通りです。
法律は改正されているので、この手口で借りパクリを意図的にやる事はできませんが、こういうのを許してはいけません。
どうしても助けたかったら、資金の賃借契約をしていれば良かったのです。それを、クレジット会社経由でやるのは、保護されるべき対象ではないでしょう。

裁判長裁判官 大橋正春
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大谷剛彦
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充 GJ


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