最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

トンデモ判決:画像のリツイート制限

2020-07-31 17:15:12 | 日記
平成30(受)1412  発信者情報開示請求事件
令和2年7月21日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  知的財産高等裁判所

1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要しない
2 SNSにおける他人の著作物である写真の画像を含む投稿により,同画像が,著作者名の表示が切除された形で同投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に表示された場合に,当該表示画像をクリックすれば元の画像を見ることができるとしても,同投稿をした者が著作者名を表示したことにはならないとされた事例
3 SNSにおける他人の著作物である写真の画像を含む投稿をした者が,プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,「侵害情報の流通によって」氏名表示権を侵害したものとされた事例


産経ビズの報道です。
自らが撮影したスズランの写真の左上に「転載厳禁」、左下に著作権を示す「(c)」マークと名前を記し、自身のウェブサイトに掲載した。この画像がツイッターに無断転載され、さらにリツイートされた。
男性側は最初の投稿者とともに、リツイートした利用者の情報も開示するよう米ツイッター社に請求。無断転載はツイッター社も著作権(公衆送信権)侵害を争わず、最初の投稿者の情報開示は2審で確定した。・・・・
侵害の理由は、投稿が並ぶツイッターのタイムラインで投稿画像の上下が自動的にトリミング(切り取り)され、男性の名前が見えなくなるからだ。だが、これは最初の投稿も同じ。そもそもツイッターのシステム上、画像は横長の枠に合わせて部分表示される仕様で、利用者の意図とは無関係にトリミングされる。
 ツイッター社側は画像をクリックすれば名前を含む元画像が表示されるとも主張したが、判決では、元画像があるのはタイムラインと別のページに過ぎないと一蹴した。戸倉三郎裁判官は判決の補足意見で「他人の著作物を投稿する際には必要な配慮」と戒めたが、ネット上では判決に対し「リツイートまで責任負うのはきつい」「もう二度とリツイート自体できない」などと批判が相次いだ。


Business Insiderの報道です。
(1) 自身が撮影し、クレジットを付けてサイトに掲載した写真を無許可でTwitterのプロフィール画像に設定したTwitterユーザー
(2) 1の画像をコピーしてツイートしたユーザー
(3) 2のツイートをRTしたユーザー
(1)・(2)のユーザーは写真家の公衆送信権を侵害しており、2審(知財高裁判決)でも争いのない「事実」として認定された。
問題となったのは(3)の「ツイートをRTしたユーザー」についての訴えだ。
2審の知財高裁はRTしたユーザーを「自動公衆送信の主体」とは認めず、幇助とも認定しなかった。
一方で(3)のツイートをRTしたユーザーは著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を侵害したと認定。発信者情報の開示をTwitter社に命じた。


では、裁判所の事実認定を見ていきます。
(1) 被上告人は,写真家であり,本件写真の著作者である。
上告人は,ツイッターを運営する米国法人である。
(2) 被上告人は,平成21年,本件写真の隅に「©」マーク及び自己の氏名をアルファベット表記した文字等(以下「本件氏名表示部分」という。)を付加した画像(以下「本件写真画像」という。)を自己のウェブサイトに掲載した。


画像を見ましたが、縦長で左下の端っこに名前が出ています。Twitterの画像は横長に切り取られています。

1 著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用によることを要しない
2 SNSにおける他人の著作物である写真の画像を含む投稿により,同画像が,著作者名の表示が切除された形で同投稿に係るウェブページの閲覧者の端末に表示された場合に,当該表示画像をクリックすれば元の画像を見ることができるとしても,同投稿をした者が著作者名を表示したことにはならないとされた事例
3 SNSにおける他人の著作物である写真の画像を含む投稿をした者が,プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,「侵害情報の流通によって」氏名表示権を侵害したものとされた事例


産経ビズの報道です。
自らが撮影したスズランの写真の左上に「転載厳禁」、左下に著作権を示す「(c)」マークと名前を記し、自身のウェブサイトに掲載した。この画像がツイッターに無断転載され、さらにリツイートされた。
男性側は最初の投稿者とともに、リツイートした利用者の情報も開示するよう米ツイッター社に請求。無断転載はツイッター社も著作権(公衆送信権)侵害を争わず、最初の投稿者の情報開示は2審で確定した。・・・・
侵害の理由は、投稿が並ぶツイッターのタイムラインで投稿画像の上下が自動的にトリミング(切り取り)され、男性の名前が見えなくなるからだ。だが、これは最初の投稿も同じ。そもそもツイッターのシステム上、画像は横長の枠に合わせて部分表示される仕様で、利用者の意図とは無関係にトリミングされる。
 ツイッター社側は画像をクリックすれば名前を含む元画像が表示されるとも主張したが、判決では、元画像があるのはタイムラインと別のページに過ぎないと一蹴した。戸倉三郎裁判官は判決の補足意見で「他人の著作物を投稿する際には必要な配慮」と戒めたが、ネット上では判決に対し「リツイートまで責任負うのはきつい」「もう二度とリツイート自体できない」などと批判が相次いだ。


Business Insiderの報道です。
(1) 自身が撮影し、クレジットを付けてサイトに掲載した写真を無許可でTwitterのプロフィール画像に設定したTwitterユーザー
(2) 1の画像をコピーしてツイートしたユーザー
(3) 2のツイートをRTしたユーザー
(1)・(2)のユーザーは写真家の公衆送信権を侵害しており、2審(知財高裁判決)でも争いのない「事実」として認定された。
問題となったのは(3)の「ツイートをRTしたユーザー」についての訴えだ。
2審の知財高裁はRTしたユーザーを「自動公衆送信の主体」とは認めず、幇助とも認定しなかった。
一方で(3)のツイートをRTしたユーザーは著作者人格権(同一性保持権、氏名表示権)を侵害したと認定。発信者情報の開示をTwitter社に命じた。


では、裁判所の事実認定を見ていきます。
(1) 被上告人は,写真家であり,本件写真の著作者である。
上告人は,ツイッターを運営する米国法人である。
(2) 被上告人は,平成21年,本件写真の隅に「©」マーク及び自己の氏名をアルファベット表記した文字等(以下「本件氏名表示部分」という。)を付加した画像(以下「本件写真画像」という。)を自己のウェブサイトに掲載した。


画像を見ましたが、左端の端っこに名前が書いてあります。具体的なものは、Business Insiderの真ん中あたりに出ています。写真家として、写真の雰囲気を壊さない範囲でつけたのでしょう。

(3) 平成26年12月,原判決別紙アカウント目録記載「アカウント2」のツイッター上のアカウントにおいて,被上告人に無断で,本件写真画像を複製した画像の掲載を含むツイートが投稿された。

いわゆるコピペです。

(4) その後,原判決別紙アカウント目録記載「アカウント3~5」のツイッター上の各アカウント(以下「本件各アカウント」という。)において,それぞれ,上記(3)のツイートのリツイート(第三者のツイートを紹介ないし引用する,ツイッター上の再投稿)がされた。

リツイートですね。

本件においても,これにより,本件各表示画像は,上記(4)のとおりトリミングされた形で上記端末の画面上に表示され,本件氏名表示部分が表示されなくなったものである。

1 所論は,①本件各リツイート者は,本件各リツイートによって,著作権侵害となる著作物の利用をしていないから,著作権法19条1項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」をしていないし,②本件各ウェブページを閲覧するユーザーは,本件各リツイート記事中の本件各表示画像をクリックすれば,本件氏名表示部分がある本件元画像を見ることができることから,本件各リツイート者は,本件写真につき「すでに著作者が表示しているところに従って著作者名を表示」(同条2項)しているといえるのに,本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害を認めた原審の判断には著作権法の解釈適用の誤りがあるというものである。

①リツイートした場合は、最初にツィートしたところに辿れるのだから著作権侵害じゃないでしょう。②クリックすれば大元の画像に行くし、そこで著作者の名前が出ているのだから問題ないよね。という反論のようです。

①著作権法19条1項は,文言上その適用を,同法21条から27条までに規定する権利に係る著作物の利用により著作物の公衆への提供又は提示をする場合に限定していない。また,同法19条1項は,著作者と著作物との結び付きに係る人格的利益を保護するものであると解されるが,その趣旨は,上記権利の侵害となる著作物の利用を伴うか否かにかかわらず妥当する。そうすると,同項の「著作物の公衆への提供若しくは提示」は,上記権利に係る著作物の利用によることを要しないと解するのが相当である。・・・・本件各リツイートによって,上記権利の侵害となる著作物の利用をしていなくても,本件各ウェブページを閲覧するユーザーの端末の画面上に著作物である本件各表示画像を表示したことは,著作権法19条1項の「著作物の公衆への・・・提示」に当たるということができる。

何か変ですよね。そもそも本やDVDからの転写ではなく、著作権者がHPに上げていたものでしょう?これは論点になるんですか?

②本件各リツイート者が本件各リツイートによって本件リンク画像表示データを送信したことにより,本件各表示画像はトリミングされた形で表示されることになり本件氏名表示部分が表示されなくなったものである。

そもそもツィッターの仕様上、端っこが切れるんですよね。著作権者として、自分の名前が消されるのは腹立たしいです。この気持ちはわかりますが、だったら写真のど真ん中に名前を出したらいいじゃないですか。例えばGettyAfloみたいにすればいいだけの話で、売り物であるならばそのくらいの対処は必要です。大した手立てもしておらずに、コピペされたと怒るのはどうかと。プロならばそのくらいは準備しておくべきですよ。

(3) 以上によれば,本件各リツイート者は,本件各リツイートにより,本件氏名表示権を侵害したものというべきである。これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。

敢えて言うならば、元の画像を切り貼りしたというレベルでの著作権侵害ですよね。しかし、それもどうなんですかね。画像の販売で実害があったのでしょうか?

以上によれば,本件各リツイートによる本件氏名表示権の侵害について,本件各リツイート者は,プロバイダ責任制限法4条1項の「侵害情報の発信者」に該当し,かつ,同項1号の「侵害情報の流通によって」被上告人の権利を侵害したものというべきである。

著作者人格権の保護やツイッター利用者の負担回避という観点はもとより,社会的に重要なインフラとなった情報流通サービスの提供者の社会的責務という観点からも,上告人において,ツイッター利用者に対する周知等の適切な対応をすることが期待される。

おいおい、Twitterってどんなもんか知ってる?アホか!のレベルですね。当然反対意見が出ます。

裁判官林景一の反対意見
本件氏名表示部分が表示されなくなったことから,本件各リツイート者による著作者人格権(同一性保持権及び氏名表示権)の侵害を認めた。しかし,本件改変及びこれによる本件氏名表示部分の不表示は,ツイッターのシステムの仕様(仕組み)によるものであって,こうした事態が生ずるような画像表示の仕方を決定したのは,上告人である。これに対し,本件各リツイート者は,本件元ツイートのリツイートをするに当たって,本件元ツイートに掲載された画像を削除したり,その表示の仕方を変更したりする余地はなかったものである。

訴える相手がおかしいんじゃないですか?と言っているのと同じです。リツイートした人ではなく、twitter社をまず訴えるべきです。

本件においては,元ツイート画像自体は,通常人には,これを拡散することが不適切であるとはみえないものであるから,一般のツイッター利用者の観点からは,わいせつ画像等とは趣を異にする問題であるといえる。多数意見や原審の判断に従えば,そのようなものであっても,ツイートの主題とは無縁の付随的な画像を含め,あらゆるツイート画像について,これをリツイートしようとする者は,その出所や著作者の同意等について逐一調査,確認しなければならないことになる。

裁判長裁判官 戸倉三郎  トンデモ
裁判官 林 景一  まとも
裁判官 宮崎裕子 トンデモ
裁判官 宇賀克也 トンデモ
裁判官 林 道晴 トンデモ

少なくともTwitterをやっている裁判官と言えば高裁のパンツ姿を晒した裁判官ぐらいで、こういうのを知らないのではないかと思います。諸外国でどうなっているのか調べなかったのでしょうか。

先ほどのBusiness Insiderの下の方に紀藤弁護士はこう述べています。
ITと著作権に詳しい紀藤正樹弁護士は、「日本の著作権法はとんでもなく遅れているということ」と率直な感想を述べる。
日本の著作権法では「著作権侵害をしたか、しないかしかない」(紀藤弁護士)。これは日本の著作権法に「フェアユース」の概念がないためだ。


おっしゃる通りで、写真のコピー無断使用されたくなければがっちりと著作権者の名前をど真ん中に入れるとか、論文ならばテキストベースではなく画像データにするとか、もう少し対策を取るべきで、そうでないものはもう少し緩くていいのではないかと思います。

性器の3Dデータ配布は猥褻物陳列になる

2020-07-29 20:24:07 | 日記
平成29(あ)829  わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録記録媒体頒布被告事件
令和2年7月16日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

1 行為者によって頒布された電磁的記録又は電磁的記録に係る記録媒体について,芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の有無・程度をも検討しつつ,刑法175条のわいせつな電磁的記録又はわいせつな電磁的記録に係る記録媒体に該当するか否かを判断するに当たっての検討及び判断の方法
2 刑法175条のわいせつな電磁的記録に該当する女性器の三次元形状データファイル又は同データが記録されたCD-Rを頒布した行為について,正当行為として違法性が阻却されるものではないとされた事例


ろくでなし子の女性器を型で取ってそのデータを配布した事件です。
ironnaの記事
ろくでなし子裁判の顛末がバカバカしい

時事通信の報道です
自身の女性器の3次元(3D)データを支援者に配布したとして、わいせつ電磁的記録等送信頒布罪などに問われた漫画家の五十嵐恵被告(48)=ペンネーム・ろくでなし子=の上告審判決が16日、最高裁第1小法廷であり、小池裕裁判長は被告側の上告を棄却した。データのわいせつ性を認定し、罰金40万円とした一、二審判決が確定する。

朝日新聞の報道です。
 罰金40万円の一審判決を支持した東京高裁は「データは女性器を忠実に再現しており、見た人を興奮させることは明らかで芸術性もない」と指摘。「わいせつ性の強い表現がネット上にあふれているとしても社会的に許容されているわけではなく、規制には性犯罪の助長を防ぐなどの十分な合理性があって、憲法に反しない」と判断していた。
 五十嵐被告は東京都内のアダルトショップに女性器をかたどった作品を置いたとしてわいせつ物陳列罪にも問われたが、高裁は「性器の忠実な再現と言えず、性的刺激を受けるとは考えにくい」として一審と同様に無罪とし、確定した。


産経新聞の報道です。
第1小法廷は、わいせつか否かは芸術性の程度を検討しつつ、データを視覚化したもののみから判断すべきだと判示。被告側の主張を勘案しても「女性器を表現したわいせつなデータの配布自体が目的と言わざるを得ない」と結論付けた。
 五十嵐被告は判決後の記者会見で、データをプリントしても色などは再現されず「断層のようにしか見えない」と反論。「女性器はわいせつだという思い込みがある。インターネットで女性器などが簡単に見られるのに、なぜアート目的で作ったものが犯罪とされるのか納得いかない」と述べた。


何だかなぁという事件です。客観的に判断できないことをいい事に名前を売りまくりましたね。猥褻かどうかよりも、そういう目的でやっているのを規制する法理はないのでしょうか?

1 本件は,漫画家兼芸術家である被告人が,被告人の作品制作に資金を提供した不特定の者6名に自己の女性器をスキャンした三次元形状データファイルをインターネットを通じて送信して頒布し,被告人が販売する商品を購入した不特定の者3名に本件データが記録されたCD-Rを郵送して頒布した。
2 行為者によって頒布された電磁的記録又は電磁的記録に係る記録媒体について,芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の有無・程度をも検討しつつ,同条のわいせつな電磁的記録又はわいせつな電磁的記録に係る記録媒体に該当するか否かを判断するに当たっては,電磁的記録が視覚情報であるときには,それをコンピュータにより画面に映し出した画像やプリントアウトしたものなど同記録を視覚化したもののみを見て,これらの検討及び判断をするのが相当である。
3 女性器を表現したわいせつな電磁的記録等の頒布それ自体を目的とするものであるといわざるを得ず,そのような目的は,正当なものとはいえない。


裁判長裁判官 小池 裕
裁判官 池上政幸
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

まあ当然でしょう。これまで猥褻物については電子データになっていたとしても、それは犯罪として認められてきたものですし、その点は一貫しています。
ろくでなし子は、データだけで色は再現されていないから猥褻物ではないと・・・・白黒の猥褻物もありますからね、それは通じないでしょう。

でもね、受け取っても萌えないでしょうな。

公務員の裏口採用、不採用者に国家賠償 当事者も払え

2020-07-26 22:41:51 | 日記
平成31(行ヒ)40  求償権行使懈怠違法確認等請求及び共同訴訟参加事件
令和2年7月14日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  福岡高等裁判所

国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が,その職務を行うについて,共同して故意によって違法に加えた損害につき,国又は公共団体がこれを賠償した場合においては,当該公務員らは,国又は公共団体に対し,連帯して国家賠償法1条2項による求償債務を負う

NHKの報道です。
大分県の教員採用試験の汚職事件をめぐり、不合格とされた人たちへの賠償金を、県教育委員会の元幹部などに負担させるべきだと市民グループが訴えた裁判で、最高裁判所は元幹部に2680万円余りを支払わせるよう命じ、判決が確定しました。
平成20年に発覚した教員採用試験をめぐる汚職事件の後、大分県は点数の改ざんで不合格とされた人たちに、9000万円余りを賠償し、元幹部など事件の当事者から一部、弁済を受けましたが、大分市の市民グループは残りもすべて当事者に負担させるべきだと県を訴えました。
福岡高等裁判所が収賄の罪で有罪となった教育委員会の元幹部に955万円余りを支払わせるよう命じ、最高裁では自己破産するなどして、支払えないほかの元幹部2人と債務を分割したのが妥当かどうかが争われました。


いかにも教育委員会らしいグダグダな対処をしましたね。裏金で採用試験を操作するのは、教育委員会としての業務じゃないですよね。これは県は支払いを拒否して、全額こいつらに払わせるべきでした。教員上りは非常識な宇宙人が多いですが、あまりにも情けない。その上、公務員は公務員に甘い。公務員法の大幅な改正が必要だと常々思っています。

では、事実認定からしていきます。
1 教員採用試験において受験者の得点を操作するなどの不正を行い,大分県は,これにより不合格となった受験者らに対して損害賠償金を支払った。
ここからしておかしいですよね。何で県が慰謝料を払ったのか。

県の住民である上告人らが,被上告人を相手に,地方自治法242条の2第1項4号に基づく請求として,本件不正に関与したAらに対する求償権に基づく金員の支払を請求すること等を求める住民訴訟である。

そりゃこういう反応が出るのは当然です。

2(1)平成19年度採用に係る試験(以下「平成19年度試験」という。)が実施された当時,小・中学校教諭及び養護教諭の教員採用試験の事務は県教委の義務教育課人事班が担当し,その合否の決定は教育長が行っていた。県教委には,教育長を補佐し義務教育部門を統括する教育審議監が置かれていた。
(2) 当時教育審議監であったAは,特定の受験者を合格させてほしいなどの相当数の依頼を受け,当時人事班の主幹であったEに対し,これらの依頼に係る受験者の中からAが選定した者を合格させるよう指示した。
Aが,県内の市立小学校の教頭であったB及びその妻であり県内の市立小学校の教諭であったCから100万円の賄賂を収受し,上記依頼のほかにも相当数の同様の依頼を受け,Eに対し,これらの依頼に係る受験者の中からFが選定した者を合格させるよう指示した。


朝日新聞によると名前が出ています。
 江藤参事はこの試験で、佐伯市立蒲江小学校長、浅利幾美被告(52)=贈賄罪で起訴=から長男と長女を合格させるよう頼まれ、現金など計400万円相当を受け取ったとして、収賄罪で起訴されている。長女と長男はともに合格し、今年4月から勤務している。
 江藤参事の供述によると、1次と2次の合計は1千点満点で、合格ラインは約620点だった。1次試験の終了後、受験者全員の得点表を上層部に見せたところ、「合格ラインに入れろ」と約20人の名前に印を付けて得点表を返されたという。この中に浅利校長の長女の名前もあった。


裁判所の事実認定だとあっさり書いてありますが、かなりえげつない買収だったようですね。

(3) 県は,平成22年12月,和解に基づき,平成19年度試験において本来合格していたにもかかわらず本件不正により不合格とされた者のうち31名に対し,総額7095万円の損害賠償金を支払った。
また,平成20年度採用に係る大分県公立学校の教員採用試験においても,本件不正が行われたところ,県は,平成23年3月,和解に基づき,同試験において本来合格していたにもかかわらず本件不正により不合格とされた22名に対し,総額1950万円の損害賠償金を支払った。
(4) 県は,上記(3)の損害賠償金に関し,平成24年2月までに,県教委の幹部職員等から合計4842万4616円,県教委の教育委員有志等から500万円の各寄附を受けた。


火事見舞いじゃないんだからこんなことにカンパなんか出すなよと思いませんか?こういう感覚が公務員と教員の宇宙人的感覚です。

平成24年2月までに,B夫妻から44万4687円,Aから195万3633円の各支払を受けた。

ナメとんのか!と思いませんか?この年なら少なくとも1000万ぐらいの貯金ぐらいあるでしょう。出しなさいよ。逃げ切るつもりだったのでしょうね。

結論
(1) 国又は公共団体の公権力の行使に当たる複数の公務員が,その職務を行うについて,共同して故意によって違法に他人に加えた損害につき,国又は公共団体がこれを賠償した場合においては,当該公務員らは,国又は公共団体に対し,連帯して国家賠償法1条2項による求償債務を負うものと解すべきである。

公務員が違法行為を知っててわざとやったことについても国家賠償なんですか?これは法の不備ですね。

(2) 本件において,Aは,F及びEと共同して故意に本件不正を行ったというのであり,これにより平成19年度試験において本来合格していたにもかかわらず不合格とされた受験者に損害を加えたものであるから,県に対し,連帯して求償債務を負うこととなる。そうすると,県は,Aに対し,2877万8376円の求償権を有していたこととなるから,同金額からAによる弁済額を控除した2682万4743円の支払を求めることができる。・・・Aに対して2682万4743円及びこれに対する平成25年4月17日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を請求することを求める限度で認容すべきである。

全員一致でした。当然ですね。

裁判官宇賀克也の補足意見
原審が国家賠償法1条1項の性質について代位責任説を採用し,そこから同条2項の規定に基づく求償権は実質的に不当利得的な性格を有するので分割債務を負うとしていることについて,補足的に意見を述べておきたい。・・・・本件においても,代位責任説を採用したからといって,そこから論理的に求償権の性格が実質的に不当利得的な性格を有することとなるものではなく,代位責任説を採っても自己責任説を採っても,本件の公務員らは,連帯して国家賠償法1条2項の規定に基づく求償債務を負うと考えられる。

ただ何か言いたかっただけみたいです。

裁判長裁判官 林 景一  当然
裁判官 戸倉三郎  当然
裁判官 宮崎裕子  当然
裁判官 宇賀克也  当然
裁判官 林 道晴 当然

公務員の公務に関する意図的な不法行為について、国家賠償は甘くいないですか?法がそうなっているとはいえ、心情的に納得いきません。
懲戒免職になったまではネットで見つかりましたが、刑事事件ではどうなったのか見つかりませんでした。民事事件としても、もっと締め上げていい案件だと思います。

4歳、交通事故で脳挫傷、働けないから死ぬまで賠償金を払い続けろは過剰要求

2020-07-24 19:24:06 | 日記
平成30(受)1856  損害賠償請求事件
令和2年7月9日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  札幌高等裁判所

マスコミでは報道されなかったようです。

(1) 当時4歳の子供が道路を路を横断していたところ,上告人Y1が運転する大型貨物自動車に衝突される交通 事故に遭った。本件事故における過失割合は,上告 人Y1が8割であり,被上告人側が2割である。
(2) 本件事故により脳挫傷,びまん性軸索損傷等の傷害を負い,そ の後,高次脳機能障害の後遺障害が残った。本件後遺障害は,自動車損害賠償保障法施行令別表第2第3級3号に該当するもので あり,被上告人は,これにより労働能力を全部喪失した。
(3) 本件後遺障害による逸失利益として,その就労 可能期間の始期である18歳になる月の翌月からその終期である67歳になる月ま での間に取得すべき収入額を,その間の各月に,定期金により支払うことを求めて いる。


この書き方からすると、横断歩道がなく子供が車道に飛び出した可能性がありますね。

(1) 同一の事故により生じた同一の身体傷害を理由とする不法行為に基づく損 害賠償債務は1個であり,その損害は不法行為の時に発生するものと解される(最 高裁昭和43年(オ)第943号同48年4月5日第一小法廷判決・民集27巻3 号419頁,最高裁昭和55年(オ)第1113号同58年9月6日第三小法廷判 決・民集37巻7号901頁等参照)。したがって,被害者が事故によって身体傷 害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働能力の全部又は一部の喪 失により将来において取得すべき利益を喪失したという損害についても,不法行為 の時に発生したものとして,その額を算定した上,一時金による賠償を命ずること ができる。・・・不法行為に基づく損害賠償制度は,被害者に生じた現実の損害を金銭的 に評価し,加害者にこれを賠償させることにより,被害者が被った不利益を補塡し て,不法行為がなかったときの状態に回復させることを目的とするものであり,ま た,損害の公平な分担を図ることをその理念とするところである。

不法行為というと意図的にやったように印象を持つ人もいますが、過失も不法行為に入ります。

結論1
交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益につ いて定期金による賠償を求めている場合において,上記目的及び理念に照らして相 当と認められるときは,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となるものと解さ れる。
(2) 交通事故の被害者が事故に起因する後遺障害による逸失利益について一時金による賠償を求める場合における同逸失利益の額の算定に当たっては,その 後に被害者が死亡したとしても,交通事故の時点で,その死亡の原因となる具体的 事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情 がない限り,同死亡の事実は就労可能期間の算定上考慮すべきものではないと解す るのが相当である(最高裁平成5年(オ)第527号同8年4月25日第一小法廷 判決・民集50巻5号1221頁,最高裁平成5年(オ)第1958号同8年5月 31日第二小法廷判決・民集50巻6号1323頁参照)。

結論2
上記後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当 たっては,交通事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し, 近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就 労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを 要しないと解するのが相当である。
・・・
上記後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当 たっては,交通事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し, 近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを 要しないと解するのが相当である。


それはそうですね。確かに、80過ぎでタクシーの運転手はいます。労働能力については個体差があります。定年延長で67歳としたのは合理性があります。それと同時に、最初から働こうともしないのもいます。これはどう扱いますかね。これも個体差です。
被害者家族からすればその気持ちはわかりますよ。幼い子供が轢かれて、脳挫傷ですから頭蓋骨も割れたでしょう。親が死んだ後に子供はどう暮らしていけばいいのか、せめて入院費用ぐらいはとはと考えるのは分かりますが、それと同時に加害者側も考えなければなりません。
これは殺人ではなく、親の管理が悪くちょろちょろと道路に飛び出したんだしと思うのもわかります。

いずれにせよ、期限は区切って賠償する必要はあるでしょう。

本件事故当時4歳の幼児で,高次脳機能障害という本件後遺障害のため労働能力を全部喪失したというのであり,同逸失利益は将来の長期間にわたり逐次現実化するものであるといえる。これらの事情等を総合考慮すると,本件後遺障害による逸失利益を定期金による賠償の対象とすることは,上記損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるというべきである。

要するに、死ぬまで金を払い続けろというのは無茶な要求と判断したわけです。

裁判官小池裕の補足意見は
1 被害者の死亡によってその後の期間について後遺障害等の変動可能性がなくなったことは,損害額の算定の基礎に関わる事情に著しい変更が生じたものと解することができるから,支払義務者は,民訴法117条を適用又は類推適用して,上記死亡後に,就労可能期間の終期までの期間に係る定期金による賠償について,判決の変更を求める訴えの提起時における現在価値に引き直した一時金による賠償に変更する訴えを提起するという方法も検討に値するように思われ,この方法によって,継続的な定期金による賠償の支払義務の解消を図ることが可能ではないかと考える。

分かりにくいかと思いますので、補足します。一時金による賠償は、将来にわたって支払われる金額をインフレ率を含めて計算したのと解釈されるから、そんなに差はないはずだというようです。

2 不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らし,定期金による賠償制度の趣旨,手続規定である判決の変更を求める訴えの提起の要件との関連性等を考慮して検討すべきものであると考えられ,定期金による賠償に伴う債権管理等の負担,損害賠償額の等価性を保つための擬制的手法である中間利息控除に関する利害を考慮要素として重視することは相当ではないように思われる。

なんか言いたかっただけのような・・・

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 小池 裕
裁判官 池上政幸
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

今回の件は、当然でしょうね。車の所有者であった会社に対する賠償請求ですが、約一人分の給料を死ぬまで払えという要求ですよね。同情はしますが、過失相殺があるとはいえ、さすがに無理な要求で妥当の結果ではないでしょうか。

生んでいない外国籍の母親、後から認知した父親の親子関係確認

2020-07-22 17:28:44 | 日記
平成31(受)184  親子関係存在確認請求事件
令和2年7月7日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

 法例の一部を改正する法律(平成元年法律第27号)の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,法の適用に関する通則法29条1項を適用し,子の出生の当時における母の本国法によって定める

これに近い事件はニュースになってるのですが、この事件自体は上がっていませんので、事実認定から見ていきます。

(1) 上告人は,昭和33年▲月▲▲日に日本で出生し,日本に居住している。上告人については,韓国において,Bとその当時の妻との間の子として出生の届出がされ,韓国の戸籍の父の欄にはBの当時の氏名が記載された。
上告人は,平成14年▲月,帰化により日本国籍を取得した。その際に編製された日本の戸籍は,父の欄が空欄とされ,母の欄にはBの遠縁に当たる女性の氏名が記載された。


最初から話が厄介ですね。実の母親ではなく親戚のおばさんの名前が書かれていたと。既にこの時点で不実記載ですか。

(2) Aは,昭和8年▲月,日本で出生し,日本国籍を有していた。Aは,昭和28年▲月,Bとの間に長女をもうけ,昭和39年▲▲月,Bと婚姻をし,昭和40年▲月,Bと共に被上告補助参加人を養子とする養子縁組をした。
Aは,平成22年▲月,死亡した。


なんで死んでから裁判なんかしたんだか。

3 原審は,上記事実関係の下において,次のとおり判断して,上告人とAとの間の親子関係の存在確認請求に係る訴えを却下した。・・・平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,準拠法を定める規定が旧法例になく,確立された国際慣習法も存在しなかったから,認知による親子関係の成立についての準拠法を定める旧法例18条1項を準用ないし類推適用するのが相当であり,子の出生の当時における母の本国法及び子の本国法の双方が適用されると解すべきである。

規定がなかったから、産んだはずの母親の国籍に基づいて法的処理を進めるべきだとしたわけですね。

準拠法の決定及び適用について定める通則法は,新法例を全部改正したものであるところ,通則法附則2条は,同附則3条の規定による場合を除き,通則法の規定を通則法の施行日(平成19年1月1日)前に生じた事項にも適用する旨を規定する。・・・・これに代えて通則法の規定を適用してもその結果に変わりがない場合には,その規範は通則法によって内容が実質的に変更されていないものと評価することができるから,通則法の規定を遡及適用することとして差し支えないというべきである。

規定がなかった時代のことについては過去にさかのぼってこの法律が適用されるということのようです。

親子関係の成立については,分娩による直接的な結び付きがあること,親子関係の存否が確定しなければ子の本国法が定まらない場合があること等を踏まえ,旧法例22条の法意に鑑み,子の出生の当時における母の本国法によって定めるのが相当であったと解される。

ごもっともです。しかし今回は、本来は養子ですよね。不実記載で親子とされてきたわけですよね。そりゃこの法律は適用されてはいけません。

平成元年改正法の施行前における嫡出でない子の母との間の分娩による親子関係の成立については,通則法29条1項を適用し,子の出生の当時における母の本国法によって定めるのが相当である。上告人とAとの間の嫡出でない子の分娩による親子関係の成立についてAの本国法である日本法のほかに韓国法を適用し,韓国民法865条2項所定の出訴期間の徒過を理由に上記親子関係存在確認請求に係る訴えを不適法とすることはできない。

おいおい事実認定はどこに行ってしまったんだ?届け出上の母親は実際に生んだ母親じゃないんですよね。なんでこの法律が適用されないんですか?そこをすっ飛ばしていますよ。

全員一致
裁判長裁判官 林 道晴
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也

全員意味不明です。
そもそも認知しようが何しようが生物学的な親はいるはずです。どうもそれに該当しない人が親だと名乗り出たという時点で、おかしいですよね。しかも、帰化したとはいえ出生時では韓国国籍でありそれは韓国の裁判所でやってもらわないとおかしいでしょう。
実際に生んだ母親が正しいのであればこの結論で納得しますが、そこが怪しいのにこの判断はあり得ません。

さらに、戸籍制度は近親相姦を防ぐ目的もあるわけで、生物学的親を明確に確定する努力が必要です。遺伝子検査なりなんなりして、親子関係を確定すべきだとする補足意見もあってしかるべきです。

当然判決いじめ隠蔽教師への懲戒処分

2020-07-18 10:00:56 | 日記
平成31(行ヒ)97  公務員に対する懲戒処分取消等請求事件
令和2年7月6日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所

市立中学校の柔道部の顧問である教諭が部員間のいじめの被害生徒に対し受診に際して医師に自招事故による旨の虚偽の説明をするよう指示したこと等を理由とする停職6月の懲戒処分を違法とした原審の判断に違法があるとされた事例

朝日新聞の報道です。
判決によると、元教諭は柔道部顧問だった2015年7月、上級生のいじめで胸の骨が折れた男子生徒に「階段から転んだことにしておけ」と口止めした。副顧問から校長に伝わり、県教委は、校長の指示に反して加害生徒を近畿大会に出場させたことなどとあわせ、元教諭を停職6カ月の処分にした。元教諭は「重すぎて不当」として16年10月に提訴した。
最高裁は、元教諭は大会のために主力選手の不祥事を隠そうとし、被害生徒の気持ちをないがしろにしたと指摘。「いじめを受けた生徒の苦痛を取り除くことを最優先に対応すべきだ」としたいじめ防止対策推進法の趣旨に反し、医師の診察も誤らせうる「重大な非違行為」と認定した。



事実認定から見ていきます。
(1)
ア いじめ防止法で、自治体と学校はいじめがあったときに対処し問題解決をしなければならない。

地方公務員法29条1項は,職員が同法等に違反した場合(1号),職務上 の義務に違反し,又は職務を怠った場合(2号)及び全体の奉仕者たるにふさわし くない非行のあった場合(3号)においては,これに対し懲戒処分として戒告できる。
県教委は,懲戒処分についての処分基準を定めていない。

(2))ア 被上告人は,昭和57年4月,上告人の公立学校教員に採用され,平成 20年4月,本件中学校に赴任して,教諭として保健体育の授業を担当するととも に,柔道部の顧問を務めていた。
イ A,B及びCに対し,その入学当初から日常的に,自らの残した食べ物等を食べさ せ,食べ切れずに嘔吐したら暴行を加える,手,足,腹等に香水をかけ,気化した 香水にライターで火を付ける,二の腕等をエアガンで撃つなどの暴力行為に及んで いた。


もはやヤクザですね。これはなぜ傷害事件として届けなかったのでしょうか。

ウ D及びEは,同年7月7日,本件中学校内において,柔道部の練習が始まる 前の午前7時頃から,こもごも,Aの顔面を殴り,長さ約1mの物差しでAの頭, 顔及び身体を10回以上たたき,平手で顔面を数回殴打したほか,みぞおちを数回 蹴るなどの暴行を加え,Aに全治1か月を要する胸骨骨折を含む傷害を負わせた (以下,この事件を「本件傷害事件」という。)。

そりゃそうでしょう。

エ 本件傷害事件の後,柔道部副顧問のG教諭に問いただされたAは,階段から 落ちたなどと説明したが,受傷状況等から虚偽と見抜かれ,D及びEから暴行を受 けたことを認めた。G教諭は,同日午前8時頃には被上告人に連絡し,被上告人と 共にAの受傷状況を確認した。被上告人は,Aを一旦下宿先に帰宅させた後,D及 びEから事情を聴取し,本件傷害事件の経緯と加害行為の詳細並びにA,B及びC に対する継続的な暴力行為の内容をノートに記録した上,そのコピーをG教諭に渡 した。
オ 被上告人は,Aが受診することを了承 したが,A及びG教諭に対し,「階段から転んだことにしておけ。」と述べ,Aに は「分かったな。」と念を押すとともに,懇意の医師に連絡すると告げた上,同医 師に電話をかけ,階段で転んだ生徒がこれから向かうと伝えた。
カ G教諭は,同日午後6時頃,学年全体の生徒指導担当の教諭に本件傷害事件 を報告し,H校長も同教諭から伝達された教頭を通じて報告を受けた。


ほとんど内部告発状態ですね。

キ 翌日から同月18日 まで柔道部の練習を休みにし,練習再開後も,D及びEを練習に参加させず,校内 のトイレ掃除等の奉仕活動をさせた。また,被上告人は,A,B及びCの各保護者 に対し,本件傷害事件について報告し,このような事態を招いたことを謝罪した。

甘いなぁ。骨折ですからね。これは治療費・慰謝料含め即現金で示談まで持って行けばよかったのに。というか、問題を解決せず隠ぺいした時点で、プロ意識の完全欠如、懲戒免職でしょう。

(3)ア H校長及び教頭は,平成27年7月10日,被上告人に対し,本件傷害 事件の重大性等に鑑み,翌日に行われる中播地区総合体育大会にD及びEが出場す ることを自粛するよう指導した。

これも甘い。停学処分か退学処分が相当じゃないですか?ましてや武道をやっている生徒ですよ。この監督だからなめられたのかもしれません。

イ その後,H校長は,柔道部の保護者会,A,D及びEの各保護者との話合い 等において,今後の試合にDを出さないと発言したが,自身も柔道経験者であるA の父が反対し,Dを試合に出してほしいと訴えた。

クレーマーの親ですか刑事事件にしておけば解決が早かったのに。校長も甘かったですね。

ウ H校長は,近畿大会に出場する選手としてDを登録することを一旦了承した が,同月29日,市教委からDを近畿大会に出場させてはならないとの指示を受 け,被上告人に対し,職務命令として,Dを出場させないよう伝えた。これに対 し,被上告人は,県大会は出場できて近畿大会がなぜ出場できないのか,納得でき ないなどと反発した。

まだ言うか!と言いたくなりますね。練習中に骨折させたのではなく日常的な暴行事件ですよね。これは心情的に実名を晒してもいいレベルです。

(4)ア 被上告人が本件中学校に赴任した後,柔道部のために,卒業生や保護者 等から洗濯機,乾燥機,冷蔵庫,トレーニング機器等が寄贈され,校内に設置されていたほか,地元企業からはトレーニングハウ スが寄贈されたが,平成24年4月に本件中学校に赴任したH校長は,当時は学校 運営に支障がないと判断し,被上告人に撤去を求めることはなかった。
 イ H校長は,平成26年12月以降,被上告人に対し,本件物品の撤去を複数 回指示したが,被上告人はその後も新たな物品を搬入した。被上告人は,寄贈者に 説明して了解を得るため平成27年9月頃まで撤去を待ってほしい旨及び校長から も寄贈者に説明をしてほしい旨を申し出たが,H校長はこれに応じなかった。


この馬鹿な監督はメンツを潰されたと思ったのでしょうね。

ウ 市教委は,その後,本件物品及びトレーニングハウスにつき学校の備品とし て認められない物として指摘し,教育長は,同年10月20日付けで,施設管理に 係る改善指示書をH校長に交付した。被上告人は,同指示書において期限とされた 同年11月20日までに本件物品及びトレーニングハウスを撤去した。

(5) 県教委は,相応の処分を求める旨の市教委からの内申を受け,平成28年 2月23日,地方公務員法29条1項及び本件懲戒条例5条の規定により,懲戒処 分として被上告人を同月24日から6月間停職とする旨の本件処分をした。

校長も管理不行き届きじゃないですか?私が教育委員会のメンバーなら校長も処分します。

(6)被上告人は,本件処分に係る停職期間が満了する前の同 年6月30日をもって辞職した。

最高裁は

(1) 公務員に対する懲戒処分について,懲戒権者は,諸般の事情を考慮して, 懲戒処分をするか否か,また,懲戒処分をする場合にいかなる処分を選択するかを 決定する裁量権を有しており,その判断は,それが社会観念上著しく妥当を欠いて 裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したと認められる場合に,違法となるもの と解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷 判決・民集31巻7号1101頁,最高裁平成23年(行ツ)第263号,同年 (行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号25 3頁等参照)。

最高裁昭和47年(行ツ)第52号は職場での労働運動とシュプレヒコールの話で、ここで援用するのはどうかと思います。最高裁平成23年(行ツ)第263号は卒業式で国歌を歌わない国旗掲揚にも起立しないことなので、通常の業務上で上司の指示に指示に従わなかったことに対するので援用はOKだと思います。

(2)ア被上告人による本件非違行為1は,いじめの事実を認識した公立学 校の教職員の対応として,法令等に明らかに反する上,その職の信用を著しく失墜 させるものというべきであるから,厳しい非難は免れない。

これは当然でしょう。高校とはいえ、やっていいこととやってはいけない事の区別を教育し、自分の行為に責任を取らせるのは当然です。ましてやそれを隠ぺいするとは、教師としてのプロ意識の欠如、職務怠慢としか言いようがないです。

イ また,本件傷害事件やそれまでの一連のいじめにおけるDの行為は重大な非 行であり,そのような行為に及んだDについて,教育的見地から,柔道部員として 対外試合に出場することを禁ずることは,社会通念に照らしても相当であって,こ のことは,近畿大会が3年生のDにとって最後の大きな大会となることや,被害生 徒であるAの保護者等がDの出場を支持していたことを考慮しても異ならない。

原審だとそのくらいいいじゃないのさぁ・・・のノリだったようです。地裁はろくでもない裁判官だったようです。

ウ 学校施設 の管理に関する規律や校長の度重なる指示に反したものであり,本件非違行為1及 び2と共に,生徒の規範意識や公正な判断力等を育むべき立場にある公立学校の教 職員にふさわしくない行為として看過し難いものといわざるを得ない。
エ 他方で,原審が被上告人のために酌むべき事情とし て指摘する点は,必ずしもそのように評価できるものではなく,これを殊更に重視 することは相当でないというべきである。


当然の評価だと思います。

(3) 県教委は,懲戒処分についての処分基準を定めておらず,処分を11段階 に区分し,減給及び停職については各3段階としているというのであるが,そのこ とにより適切な処分の量定の選択が妨げられるものということはできない。また, 上告人の主張するように,本件非違行為1を最も重大なものとしてその処分の量定 を選択した上,本件非違行為2及び3の存在等を加重事由として最終的な処分の量 定を決定することも,それ自体が不合理であるとはいえない。

原審では、上乗せで判断するのはおかしいでしょ?という判断でしたが、それは車の免許でも普通に上乗せになって免停、免許取り消しになります。上乗せが自体おかしいというのは、とんでもないです。

裁判官全員一致
裁判長 裁判官 木澤克之
裁判官 池上政幸
裁判官 小池裕
裁判官 山口厚
裁判官 深山卓也

県教育委員会はだらしなさすぎます。懲戒免職レベルだと思いますけどね。
私が中高校生の頃は体育教師はこんな人ばかりでした。気に入らないとぶん殴り、目をかけている生徒が県大会に出ようものならそいつが何をやっても隠ぺい。アホ丸出しばかりでしたが、やっときちんと処分されるようになったのかと思うと時代が変わったなと思います。

大阪地裁裁判官「ブルーリボンバッジをはずせ」中垣内健治裁判長がフジ住宅側に命令!在日韓国人への支払いも命令

2020-07-17 09:31:13 | 日記
この裁判は地裁なので、判決文はまだ公開されていません。
産経新聞によると、
職場で特定民族への差別を含む資料を配布されて精神的苦痛を受けたなどとして、在日韓国人の50代女性が勤務先の不動産会社「フジ住宅」(大阪府岸和田市)と男性会長(74)に3300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が2日、大阪地裁堺支部であり、中垣内健治裁判長(森木田邦裕裁判長代読)は同社と会長に計110万円の支払いを命じた。
 判決によると、同社では平成24年ごろから中国や韓国を非難する記事などが従業員に配られ、原告が提訴した後には、社内で原告を批判する旨の文書が配られるなどした。
 中垣内裁判長は判決理由で、資料は中国や韓国を強く批判したり、両国出身者を攻撃したりする内容だとしつつ、「個人への差別的言動とはいえない」と指摘。一方、国籍差別を禁じる労働基準法などを引用した上で、資料は職場で差別を受けるかもしれないと危惧して当然のものであり、「労働者の国籍によって差別的取り扱いを受けないという『人格的利益』を侵害するおそれは、社会的な許容限度を超えている」と違法性を認めた。


日経新聞によると
判決などによると、女性は2002年から勤務。13年ごろから社内で業務とは無関係に、中国や韓国の国籍や出自を有する人に対して「死ねよ」「うそつき」「卑劣」などと侮辱する文書などが配布された。また会長の歴史認識に沿った記述がある保守色の強い育鵬社などの教科書が採択されるよう教科書展示場へ行き、アンケートを提出するよう促された。
15年に女性が提訴した後、社内で訴訟に関する説明会が開かれ「温情をあだで返すばか者」「彼女に対して世間から本当の意味でのヘイトスピーチが始まる」など女性を誹謗中傷する旨の社員の感想文が配られた。


個人攻撃ではないのですよね。しかも現在雇用されている身分ですよね。ということは、韓国籍故の雇用時差別はなかったと考えていいのではないでしょうか。雇用期間中については具体的に何があったのか書いてないので判断のしようがありませんが、韓国非難決議に署名しろと言ったわけではないです。
争うならば思想信条の自由であり差別とするのは問題があるように思えます。となると、110万円でも高すぎませんかね。

言いたいことはほとんどこのブログに書いてあるので、そちらを読んでください。

しかしここは看過できません。ブルーリボンバッジに裁判長は因縁を付けました。
「ブルーリボンバッジをはずせ」中垣内健治裁判長がフジ住宅側に命令!在日韓国人への支払いも命令

この中垣内健治裁判長は、

どういう経緯でこうなったのか分かりませんが、相手は在日韓国人であって在日北朝鮮人ではないですよね。
この裁判官はそのあたりを理解していないのでしょうか?

これは裁判官の裁量権の逸脱の可能性がありますので、公務員懲戒制度で追及は可能だと思います。

フジ住宅は上訴したようですが、この裁判官の懲戒も考えたほうが良くないでしょうか。

泉佐野市ふるさと納税5 補足意見トンデモ宮崎裕子 裁判官

2020-07-16 16:05:45 | 日記
裁判官宮崎裕子の補足意見

もし地方団体が受け取るものが税なのであれば,地方団体がその対価やお礼を納税者に渡す(返礼品を提供する)などということは,税の概念に反しており,それを適法とする根拠が法律に定められていない限り,税の執行機関の行為としては違法のそしりを免れないことは明らかであろう。他方で,地方団体が受け取るものは寄附金であるとなれば,地方団体が寄附者に対して返礼品を提供したとしても,返礼品は,提供を受けた個人の収入金額と認識すべきものにはなるが,納税の対価でも納税のお礼でもなく,直ちに違法の問題を生じさせることにはならない。

・・・中略・・・

そもそも寄附金と税という異質なものが制度の前提にあることを考慮すると,上記の調整の仕組みを欠いた状態で本件改正規定の施行前に地方団体が行なった寄附金の募集態様や返礼品の提供という行為を,制度の趣旨に反するか否か,あるいは制度の趣旨をゆがめるような行為であるか否かという観点から評価することには無理がある。


ふるさと納税制度そのものがおかしい、税金なのか寄付金なのかはっきりせい!と言いたいようです。これもおかしなはなしで、だったら学校への寄付金が税控除になるのもおかしな話ですよね。この裁判官はズレています。

裁判官林景一の補足意見
泉佐野市が,殊更に返礼品を強調する態様の寄附金の募集を,総務大臣からの再三の技術的な助言に他の地方団体がおおむね従っている中で推し進めた結果,集中的に多額の寄附金を受領していたことにある。特に,同市が本件改正法の成立後にも返礼割合を高めて募集を加速したことには,眉をひそめざるを得ない。また,ふるさと納税制度自体が,国家全体の税収の総額を増加させるものではなく,端的にいってゼロサムゲームであって,その中で,国と一部の地方団体の負担において他の地方団体への税収移転を図るものであるという,制度に内在する問題が,割り切れなさを増幅させている面もある。そして,その結果として,同市は,もはやふるさと納税制度から得られることが通常期待される水準を大きく上回る収入を得てしまっており,ある意味で制度の目的を過剰に達成してしまっているのだから,新たな制度の下で,他の地方団体と同じスタートラインに立って更なる税収移転を追求することを許されるべきではないのではないか,あるいは,少なくとも,追求することを許される必要はないのではないかという感覚を抱くことは,それほど不当なものだとは思われない。

その通りだと思いますね。しかし、結論は同じですよね。ここは反対意見を言って欲しかった。

裁判長裁判官 宮崎裕子
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴

全員トンデモ、特に裁判官宮崎裕子はズレていると判断します。

全体として、総務省の傲慢さと泉佐野市のズルさと、政府のだらしなさの集大成と言ってもいい事件だと思います。

泉佐野市ふるさと納税4 トンデモ 最高裁判断

2020-07-15 15:18:47 | 日記
最高裁の判断
(1)
地方税法37条の2第2項の委任の範囲を逸脱するものである場合には,その逸脱する部分は違法なものとして効力を有しないというべきである。
イ(ア) 本件改正規定の施行の日(令和元年6月1日)より前に申出書が提出される場合についてみれば,本件改正規定の施行前の一定期間において同号に定める寄附金の募集及び受領をした地方団体について,一律に指定の基準を満たさないこととするものである。
(イ) ところで,本件改正規定の施行前においては,返礼品の提供について特に定める法令上の規制は存在せず,総務大臣により地方自治法245条の4第1項の技術的な助言である本件各通知が発せられていたにとどまる。


やはりこの点が突っ込まれましたね。総務省がやったのは助言だけで指示をしなかったではないかと指摘しています。

助言については、普通地方公共団体は助言等に従って事務を処理すべき法律上の義務を負わず,これに従わなくても不利益な取扱いを受ける法律上の根拠がないとしています。

本件告示2条3号が地方税法37条の2第2項の委任の範囲を逸脱したものではないというためには,前記(ア)のような趣旨の基準の策定を委任する授権の趣旨が,同法の規定等から明確に読み取れることを要するものというべきである。

(2)「都道府県等による第1号寄附金の募集の適正な実施に係る基準」として総務大臣が定める基準に適合する地方団体として同大臣が指定するものに対する寄附金が,特例控除対象寄附金として特例控除の対象となるものと規定しており,上記の「都道府県等による第1号寄附金の募集」とは,指定を受けることによって特例控除の対象となる寄附金の募集(すなわち,指定対象期間における寄附金の募集)を意味し,また,「募集の適正な実施に係る基準」とは,その寄附金の募集の実施の態様が適正か否かについての基準を意味するものと解するのが自然である。これによれば,募集適正基準とは,文理上,指定対象期間における寄附金の募集の態様に係る基準であって,指定対象期間において寄附金の募集を適正に実施する地方団体か否かを判定するためのものであると解するのが自然である

ところが、

地方税法37条の2第2項柱書きの募集適正基準について,同項の文理上,他の地方団体との公平性を確保しその納得を得るという観点から,本件改正規定の施行前における募集実績自体をもって指定を受ける適格性を欠くものとすることを予定していると解するのは困難

立法趣旨よりも規定優先の考えになったわけですね。確かに、罪刑法定主義的な発想からすればそういうことになりますか。でも釈然としません。

イ 次に,委任の趣旨についてみると,地方税法37条の2第2項が総務大臣に対して指定の基準のうち募集適正基準等の内容を定めることを委ねたのは,寄附金の募集の態様や提供される返礼品等の内容を規律する具体的な基準の策定については,地方行政・地方財政・地方税制や地方団体の実情等に通じた同大臣の専門技術的な裁量に委ねるのが適当であることに加え,そのような具体的な基準は状況の変化に対応した柔軟性を確保する必要があり,法律で全て詳細に定めるのは適当ではないことによるものと解される。

そりゃそうでしょう。地方自治体が自分たちで管理しろとした方がよほどましだと思います。

他方,本件指定制度の導入に当たり,その導入前にふるさと納税制度の趣旨に反する方法により著しく多額の寄附金を受領していた地方団体について,他の地方団体との公平性を確保しその納得を得るという観点から,特例控除の対象としないものとする基準を設けるか否かは,立法者において主として政治的,政策的観点から判断すべき性質の事柄である。また,そのような基準は,上記地方団体について,本件指定制度の下では,新たに定められた基準に従って寄附金の募集を行うか否かにかかわらず,一律に指定を受けられないこととするものであって,指定を受けようとする地方団体の地位に継続的に重大な不利益を生じさせるものである。そのような基準は,総務大臣の専門技術的な裁量に委ねるのが適当な事柄とはいい難い。

ウ さらに,本件法律案の作成の経緯(前記2(3)ア~ウ)をみると,本件指定制度は,過度な返礼品を送付しふるさと納税制度の趣旨をゆがめているような地方団体を特例控除の対象外にすることができるようにするとの基本的な考え方に基づいて,制度設計がされたものである・・・本件法律案は,具体的には,新制度の下においては,寄附金の募集を適正に実施する地方団体のみを指定の対象とし,指定対象期間中に基準に適合しなくなった場合には指定を取り消すことができるものとすることにより,当該制度の趣旨をゆがめるような返礼品の提供を行う地方団体を特例控除の対象外とするという方針を採るものとして作られ,国会に提出されたものといえる。

エ 本件告示2条3号の規定のうち,本件改正規定の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分は,地方税法37条の2第2項及び314条の7第2項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効というべきである。


不指定理由③について
泉佐野市は,記者会見において,返礼品等を提供しない旨申述したのは事業者との調整等が時間的に間に合わなかったためであるなどと説明していたのであって(前記2(6)エ),同市には客観的に返礼品等を提供する予定があったといい得るから,被上告人が法定返礼品基準への適合性を審査の対象としたことに違法があるとはいえない。

はあ?これ認めます?記者会見が証拠?なんですかこれは。ちゃんと書類で出せよと思いませんか。

(2) 不指定理由③は,従前は返礼品の提供について特に定める法令上の規制が存在しなかったのに対し,本件改正規定により,法定返礼品基準が法定され,指定を受けた地方団体がこれに反した場合には指定の取消しの対象となり,その後2年間は指定を受けられなくなるという法令上の規制が設けられたことからすれば,本件改正規定の施行の前後では地方団体の行動を評価する前提を異にしており,同施行前における泉佐野市の返礼品の提供の態様をもって,同施行後においても同市が同様の態様により返礼品等の提供を継続するものと推認することはできない。

だってやるなよと言っていることを、まだ制度化されていないからと言って滑り込みセーフだとやったわけですよね。法がまだ効力を持たないからと。これは他の自治体との公平性から言ってどうなんですか?公序良俗に反しませんか?

裁判官全員一致の意見
結論はかなりトンデモです。
これでは当然、補足意見・反対意見は出ますね。この点は次回に続きます。

泉佐野市ふるさと納税3 泉佐野市の対応

2020-07-13 14:59:02 | 日記
前回からの続きです

泉佐野市の対応
泉佐野市は,上記期間中の平成30年12月及び同31年2月から同年3月までの間,「100億円還元キャンペーン」等と称し,従来の返礼品に加えて寄附金額の3~20%相当のアマゾンギフト券(電子商取引サイトであるアマゾンにおいて取り扱われる商品等の購入に利用できるもの)を交付するとして,寄附金の募集をした。また,同市は,同年4月2日から令和年5月31日までの間においても,「300億円限定キャンペーン」,「泉佐野史上,最大で最後の大キャンペーン」等と称し,従来の返礼品に加えて寄附金額の10~40%相当のアマゾンギフト券を交付するとして,寄附金の募集をした。


解せないのは、①なぜやめてくれと言われているのに規準オーバーの返礼品を出すことにしたのか、②なぜ地場産品ではなく外資系の通販会社の商品券だったのか。
特に②は納得できません。本来の趣旨は地方都市の魅力をアピールする目的ですよね。この当時日本に納税していない外資系の会社の商品券は明らかに立法趣旨を逸脱しています。税金は海外に流れるは、地方の魅力を訴えないはで、この報道があったときは取り消しは当然だろうと思いました。

ウ 泉佐野市は,平成31年4月5日付けで,被上告人に対し,初年度に係る指定の申出をした。その申出書には,返礼品等の提供の有無につき「返礼品等を提供しない」の欄にチェックがされており,指定対象期間に提供する返礼品等の内容に関する書類は添付されていなかった

あれれれ?書類不備ですか?

エ 泉佐野市は,平成31年4月11日,記者会見を開き,返礼品の改善について日程的に事業者との調整ができず,一旦返礼品を送付しないという申出をしたが,返礼品を送らないわけではない旨や,時間的に間に合わなかったため返礼品のリストを提出しなかったが,これを後から提出することもできると聞いている旨等を説明した。

なんで総務省に言わずに記者会見?

オ 総務省は,
① 泉佐野市から提出された地方税法37条の2第3項に規定する申出書及び添付書類の内容が同条2項の基準に適合していることを証するとは認められないこと(以下「不指定理由①」という。)
② 平成30年11月1日から申出書を提出する日までの間に,返礼割合が3割超又は地場産品以外の返礼品を提供することにより寄附金の募集を行い,著しく多額の寄附金を受領しており,本件告示2条3号に該当しないこと(以下「不指定理由②」という。)
③ 現に泉佐野市が実施している寄附金の募集の取組の状況に鑑み,地方税法37条の2第2項各号に掲げる基準に適合する団体としては認められないこと(以下「不指定理由③」という。)


手続き的には問題ないように思えますね。

(7) 本件訴えに至る経緯 泉佐野市の対応
ア 上告人は,令和元年6月10日,本件不指定に不服があるとして,地方自治法250条の13第1項に基づき,国地方係争処理委員会に対し,被上告人を相手方とする審査の申出をした。
イ 上記委員会は,令和元年9月3日付けで,地方自治法250条の14第1項に基づき,被上告人に対し,不指定理由①及び②は指定をしないことの根拠とならず,不指定理由③については更に検討を要する状況にあるとして,本件指定申出に
ついて再度の検討を行った上でその結果を理由と共に上告人に通知することを勧告した。

泉佐野市ふるさと納税2 制度紹介

2020-07-12 14:45:14 | 日記
前回からの続きです

(4) 本件指定制度の概要
(ア) 個人住民税の納税義務者が特例控除対象寄附金を支出した場合には,特例控除をするものとする(1項)。
① 地方団体による第1号寄附金の募集の適正な実施に係る基準として総務大臣が定める基準
② 地方団体が個別の第1号寄附金の受領に伴い提供する返礼品等の調達に要する費用の額として総務大臣が定めるところにより算定した額が,いずれも当該地方団体が受領する当該第1号寄附金の額の100分の30に相当する金額以下であること(2項1号)
③ 地方団体が提供する返礼品等が当該地方団体の区域内において生産された物品又は提供される役務その他これらに類するものであって,総務大臣が定める基準に適合するものであること


総務大臣と言っても総務省の役人が実質的に決めるわけですが、そんな管理を総務省の役人いちいちがやるんですか?日本は共産主義国家ではないですよ。自治体も自分たちでの管理能力をつけさせなければ駄目だと思いますがね。

(ウ) 2項の規定による指定(以下,単に「指定」という。)を受けようとする地方団体は,総務省令で定めるところにより,所定の事項を記載した申出書に,同項に規定する基準に適合していることを証する書類を添えて,これを総務大臣に提出しなければならない

自治体にいちいち申請させて、頭を下げさせたいようです。総務省はそんなに暇でしょうか?少しは業務コストを考えたらどうですか?

(エ) 総務大臣は,指定をした地方団体に対し,報告を求めることができる(5項)。
(オ) 総務大臣は,指定をした地方団体が2項に規定する基準のいずれかに適合しなくなったと認めるとき,又は上記報告をせず,若しくは虚偽の報告をしたときは,指定を取り消すことができる(6項)。

泉佐野市ふるさと納税1 事実確認

2020-07-11 14:43:19 | 日記
令和2(行ヒ)68  不指定取消請求事件
令和2年6月30日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所
ふるさと納税制度に係る平成31年総務省告示第179号2条3号のうち,平成31年法律第2号の施行前における寄附金の募集及び受領について定める部分は,地方税法37条の2第2項の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効である

やっと判決文が公開されました。
そもそも泉佐野市は人工島を作りたかったようですが、その集め方がえげつないということで批判の対象になってきました。そこで総務省は、泉佐野市のふるさと納税を対象外と決定しました。

日経新聞によると、争点は返礼品の割合を3割以下とするなどの規制基準を定めて対象自治体を指定する新制度を導入した際、過去の泉佐野市の返礼品の取り扱い状況に基づいて除外を決めたことが妥当かどうかが最大の争点だった。

産経新聞によると、
これに対し第3小法廷は、過去の募集態様を理由に新制度から除外するルールの策定まで総務相に委任されていることは、地方税法の規定などから明確に読み取れないと指摘。ルールのうち、改正法施行前の募集態様を理由に除外できるとした部分のみを違法で無効と判断した。一方で判決は、新制度移行の直前まで、アマゾンギフト券を贈る手法などで寄付募集をエスカレートさせた泉佐野市を「社会通念上、節度を欠いていたと評価されてもやむを得ない」とも指摘した。

私も立法趣旨から言ったら、外資系通販会社の商品券はないだろうと思います。その地域の産品を原則とすべきでこれだけでも、対象外になるのは当然だと思います。

ともあれ判決文を見ていきます。今回は21ページの対策に加え、補足意見があるので分割して掲載します。

事実認定から見ていきます。
1 ふるさと納税(通称)制度は、地方税法の一部改正によって成り立っている。
所得税の所得控除(所得税法78条1項)及び10%相当額の個人住民税の税額控除がされることに加えて,個人住民税の税額控除の金額に所定の上限額の範囲内で特例控除額の加算(以下「特例控除」という。)がされた。

要するに、住民登録がされている市町村に収めなければならない税金を、一部よその自治体に収めてもよいという制度です。

地方税法37条の2第1項,2項及314条の7第1項,2項。なお,市町村民税に係る地方税法314条の7に規定する内容は,道府県民税に係る同法37条の2

(2) 地方団体による返礼品の提供の状況等
イ 高い返礼品を提供する地方団体が多くの寄附金を集める事態が生じたこと等から,返礼品について,換金性の高いものや高額な又は返礼割合の高いものの送付を行わないようにすること等を求めるものであった。
ウ しかし,平成28年度には,返礼割合が3割を超える返礼品を提供する地方団体の数は,全体の64.7%に当たる1156に上った


これはどうなんでしょう。本来はふるさと寄付金であるべきで返礼品はナシにすべきなのでしょうが、それではなかなか制度がうまく回らないので返礼品を用意したということでしょう。しかし、3割超えたからどうのという基準も何をもってその基準を設定したか、その根拠がありません。えいやぁで決めたのでしょうけど。

総務省が平成29年3月頃に行った全国的連合組織(全国知事会,全国市長会及び全国町村会)や有識者等からの意見聴取においては,地方団体間での返礼品の提供競争が過熱していることへの懸念のほか,国において返礼品に係る一定の基準やルールを設けるべきであるとする意見等が示された。

これもどうなんですかね。そもそも有識者会議の有識者とはだれがどのような基準で選ぶのかの規準が公開されているわけでもなく、公聴会もなく事務方が勝手に選べるのですよ。こんなお手盛りの公聴会なんかまったく意味がありません。

エ このような状況を受けて,総務大臣は,地方団体に対する地方自治法245条の4第1項の技術的な助言として,平成29年4月1日付け通知(総税市第28号。以下「平成29年通知」という。)及び同30年4月1日付け通知を発した。平成29年通知は,返礼割合を3割以下とすることを求めるものである。

条文では「指示ができる」旨が書いてあるのにもかかわらず、「技術的助言」で済ませてますよね。その結果は

平成30年11月1日時点において,25地方団体(全体の1.4%)が3割を超える返礼割合の返礼品を提供し,73地方団体(同4.1%)が地場産品以外の返礼品を提供していた。

そりゃそうでしょう。ここでも疑問があります。そもそも返礼品の金額の計算方法が明示されていません。原価なのか、市場価格なのか、棚ずれ品、限定品の扱いはどうするのか、全くありません。これは明らかに行政の不作為ですね。企業でここまでグダグダの経営をやったら明らかに倒産します。
それ以前に、金額全て自治体の好きにやらせてもよかったのではないかと思います。こういう会計基準をどこに設定するのか、正直裏道はいくらでもありえるからです。そして、いくらにするのか文字自体も経営管理能力を育てるのに好き勝手やらせて、その分自治体への補助金を少なくしてそれこそ「自治」をさせる制度でもよかったのではないかと思います。

(3) 本件指定制度を導入する法改正の経緯
ア 返礼割合が3割超又は地場産品以外の返礼品を送付し制度の趣旨をゆがめているような地方団体に対する寄附金については,特例控除が行われないこととすること等が考えられるとの意見が取りまとめられた。
イ 平成30年12月14日に与党(自由民主党及び公明党)により取りまとめられた平成31年度税制改正大綱では,「過度な返礼品を送付し,制度の趣旨を歪めているような地方公共団体については,ふるさと納税の対象外にすることができるよう,制度の見直しを行う」との基本的な考え方と共に,総務大臣が「寄附金の募集を適正に実施する都道府県等」等の所定の基準に適合する地方団体を特例控除の対象として指定することとし,指定をした地方団体が基準に適合しなくなったと認める場合等には指定を取り消すことができることとするとの方針が示された。また,同月21日に閣議決定がされた平成31年度税制改正の大綱(以下「政府税制改正大綱」という。)においても,同様の方針が示された。


明らかに選挙対策ですね。大都市の票田からクレームが相次いだのでしょう。

ウ 過度な返礼品の送付を行っている地方団体に対するペナルティとして制度を設計することとなり,手続保障の面から課題が多いため,一定のルールの中で寄附金の募集を適正に行う地方団体を総務大臣が指定する方式により,特例控除の対象を限定することとする旨の記載がある。
オ 本件法律案は,上記のような審議を経て,平成31年3月27日,平成31年法律第2号(本件改正法)として成立した。本件改正法のうち,本件指定制度の導入等を内容とする地方税法37条の2及び314条の7の改正規定(以下「本件改正規定」という。)は,令和元年6月1日から施行された。


もうグダグダですわ。こうなるのは最初から分かっていたことだと思いませんか?わからなかったとするならば、どれだけアホが総務省にいたのか。行政と立法の怠慢ですね。

余りにも長いので、次回以降に続きます。

トンデモ:東京高検の黒川前検事長と新聞記者ら 起訴猶予に 東京地検

2020-07-10 18:03:45 | 日記
NHKニュースによると

緊急事態宣言の中、賭けマージャンをしていた問題で刑事告発されていた東京高等検察庁の黒川弘務前検事長と新聞記者らについて東京地方検察庁はきょう、いずれも起訴猶予にしました。
東京地検は賭けマージャンのレートが低かったことなどを考慮したものとみられます。


私は決して、彼には個人的恨みもなければ自民党のお仲間だからと責める気も全くありません。仲間だというのであれば、前法務大臣が忖度されて当然ですからね。
法の下の平等ってどこに行ってしまったのでしょう??私はここにしか興味がありません。

起訴猶予にするには、法務省のHPによると

起訴猶予  被疑事実が明白な場合において,被疑者の性格,年齢及び境遇,犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としないときなどです。

とあります。確かに、「被疑事実が明白な場合において,被疑者の性格,年齢及び」ここまでは否定する気はありませんが、境遇これは大いに問題があるでしょう。犯罪を取り締まるっトップですよ!それが微罪?とは言え犯罪を犯しているのですから、それは法に従って粛々と処分すべきでしょう。
こんな法の精神をぶち壊しにする検事正は誰だ!と思ったら、このザマです。

こんなのアリでしょうか??
検察審査会で強制起訴を是非ともやって、裁判所で明らかにして欲しいと願うばかりです。

破綻法的確定後に過払い金確定、でも破綻前の分の会計処理・修正は認めない

2020-07-06 11:46:53 | 日記
平成31(行ヒ)61  通知処分取消等請求事件
令和2年7月2日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所
 過払金返還請求権に係る破産債権が貸金業者の破産手続により確定した場合に当該過払金の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは法人税法22条4項所定の「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従ったものとはいえない。

これも何故か報道ベースに出てこなかったので、事実確認をしていきます。
貸金業の株式会社クラヴィスが破産しました。
同名の繊維系の会社がありますが、別物ですのでご注意。
この会社の破産管財人が、過払い金について不当利得返還請求権に係る破産債権が,その後の破産手続において確定しました。
これに対応する本件各事業年度の益金の額を減額して計算すると納付すべき法人税の額が過大となったとして,本件各事業年度の法人税につき国税通則法(平成23年法律第114号による改正前のもの。以下同じ。)23条2項1号及び同条1項1号に基づく更正の請求(以下「本件各更正の請求」という。)をしました。
更正をすべき理由がない旨の各通知処分(以下「本件各通知処分」という。)を受けたため,主位的には本件各通知処分の一部の取消しを,予備的には上記制限超過利息等に対応する法人税相当額の一部についての不当利得返還等をそれぞれ求める事案である。


厄介ですね。貸金業者に過払い金の返還請求したところ、貸金業者が破綻して法的処理が確定した後に、さらに過払い金の訴えが確定しました。そうすると、それまでため込んでいた税金の金額が変わってしまいます。そこで、税務署に再度申請したところ認めないと突っ返された事件です。

イ クラヴィスは,平成24年7月5日,破産手続開始の決定を受け,被上告人がその破産管財人に選任された。
ウ 上記の破産手続において,一般調査期間内に届出がされた総額555億3373万9096円の過払金返還請求権に係る破産債権(以下「本件債権1」という。)及び特別調査期間内に届出がされた総額3億0119万2185円の過払金返還請求権に係る破産債権(以下「本件債権2」という。)が確定した。


(2)破産管財人は,平成27年6月19日,所轄税務署長に対し,本件債権1が確定したことにより,本件各事業年度における納付すべき法人税の額が過大となったとして,本件各更正の請求をした。その理由は,過払金返還請求権に係る破産債権が破産手続において事後的に確定した場合には,当該請求権の発生原因となった制限超過利息等に係る受領金額を当該受領の日が属する各事業年度に遡って益金の額から減額して計算すべきであるというものであった。

当然ですね。従業員他、支払いが滞っている人に配当しなければなりませんから。ただ問題なのは、法人税は継続事業体を念頭に入れているので、破綻した企業についてはもう少し緩めに見てくれよというところでしょうか。

(3) 所轄税務署長は,平成27年9月14日付けで,被上告人に対し,本件各更正の請求につきいずれも更正をすべき理由がない旨の本件各通知処分をした。その理由は,本件各事業年度において益金の額に算入されていた制限超過利息等の受領が法律上の原因を欠くものであったことが破産手続において確定したとしても,その確定の事由が生じた日の属する事業年度においてこれを損金の額に算入すべきであるというものであった

こういう事件があると、たとえ解釈がおかしくても、税務署は梃でも動きません。税務署は国費で裁判ができますし、専門の部署があるので全く困らない上に、訴えを起こした後論点を後から追加することを認めるのです。これはアンフェアとしか言いようがないのですが、よくあることです。

(1) 一般に,企業会計においては,会計期間ごとに,当期において生じた収益の額と当期において生じた費用及び損失の額とを対応させ,その差額として損益計算を行うべきものとされている。そして,企業会計原則は,過去の損益計算を修正する必要が生じても,過去の財務諸表を修正することなく,要修正額を前期損益修正として修正の必要が生じた当期の特別損益項目に計上する方法を用いることを定め(第二の六,同注解12),「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(平成21年12月4日企業会計基準第24号)も,過去の財務諸表における誤謬が発見された場合に行う会計処理としては,当該誤謬に基づく過去の財務諸表の修正再表示の累積的影響額を当期の期首の残高に反映するにとどめることとし(21項),同会計処理が認められる誤謬の範囲を当初の財務諸表作成時に入手可能な情報の不使用や誤用があった場合に限定している(4項(8))。

要するに、先ほど述べたように企業は数年で潰れることを前提とせず、きちんと継続を前提として法制度が成立していますよ。だから、各会計年度ごとに処理しなければならない事が規則に決まっているのであって、会計上の修正は必要最小限になるべきだと書いています。その上で法人税もそれに合わせて計算すべきだと言っています。
ちなみに財務会計学と税務会計は全く違うもので、財務会計は各事業年度の経営成績の比較可能性を求めるものに対して、税務会計学はいかに税金を安定徴収するかという根本から違う思考で成り立っています。

(2) 法人税法は,事業年度ごとに区切って収益等の額の計算を行うことの例外として,例えば,特定の事業年度に発生した欠損金額が考慮されずに別の事業年度の所得に対して課税が行われ得ることに対しては,青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越し(57条)及び欠損金の繰戻しによる還付(80条)等の制度を設け,また,解散した法人については,残余財産がないと見込まれる場合における期限切れ欠損金相当額の損金算入(59条3項)等の制度を設けている。

当該制限超過利息等の受領の日が属する事業年度の益金の額を減額する計算をすることは,公正処理基準に従ったものということはできないと解するのが相当である。

どうなんですかね、以前巨額詐欺事件の時に税務署は被害者救済のために、不当に得た利益であるのでそこから税金を取らずに、被害者救済に回した事件があったような気がします。

(3) これを本件についてみると,本件各事業年度に制限超過利息等を受領したクラヴィスが,これを本件各事業年度の益金の額に算入して行った本件各申告はもとより正当であったといえるところ(最高裁昭和43年(行ツ)第25号同46年11月9日第三小法廷判決・民集25巻8号1120頁参照),上記(2)で述べたところによれば,その後の事業年度に本件債権1が破産手続において確定したことにより,本件各事業年度に遡って益金の額を減額する計算をすることは,本件債権1の一部につき現に配当がされたか否かにかかわらず,公正処理基準に従ったものということはできない。

ところがこの一文を見ると、破綻処理は確定したのだから後出しでああだこうだ言うのは、法的安定性を揺るがすし、過去に似たような判断が出てるから認めないよと言っています。

裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

被害者救済は確定する前の話でしたっけ・・・つまりこの判断からすれば、過払い金請求して買ったにもかかわらず、返金はないということになりますね。

未納の健康保険、督促状は時効を中断させる

2020-07-01 18:49:27 | 日記
令和1(行ヒ)252  国民健康保険税処分取消請求控訴,同附帯控訴事件
令和2年6月26日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

 被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につきその納付等を求める旨の相続人に対する通知は地方税法(平成29年法律第45号による改正前のもの)18条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しない

報道機関からのものはないようなので、事実認定から見ていきます。

1 加須市長が,国民健康保険税及びその延滞金の滞納処分として,上告人の預金払戻請求権を差し押さえ,取り立てた金銭を上記国民健康保険税等に係る債権に配当する旨の処分(以下「本件配当処分」という。)をした。
2 上告人が,上記債権は時効消滅して
いたなどと主張して,被上告人を相手に,本件配当処分の一部(上告人が延滞金として納付義務を認めている額を超える部分)等の取消しを求めるとともに,当該部分に相当する額の金員の支払を求めた。


最近yahooオークションやらで官公庁のオークションが出ていますが、これですね。

(1) 地方税法(平成23年法律第115号による改正前のもの)18条1項は,地方税の徴収権(地方団体の徴収金の徴収を目的とする地方団体の権利)は,法定納期限等の翌日から起算して5年間行使しないことによって,時効により消滅する旨を定める。同条2項は,この場合には,時効の援用を要せず,また,その利益を放棄することができない旨を定め,同条3項は,地方税の徴収権の時効については,別段の定めがあるものを除き,民法の規定を準用する旨を定める。地方税法(平成29年法律第45号による改正前のもの。以下同じ。)18条の2第1項は,地方税の徴収権の時効は,納付又は納入に関する告知(1号),督促(2号)等の処分の効力が生じた時に中断する旨を定める。また,民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)147条は,時効の中断事由として,差押え(2号),承認(3号)等を掲げている。

これに対して
ア 上告人は,平成20年9月21日,埼玉県北川辺町が行う国民健康保険の被保険者の資格を取得・・・同月23日,近隣の市町と合併して被上告人となった。・・・加須市長職務執行者は,平成22年4月1日頃,上告人の父であり,上告人を被保険者とする国民健康保険につき世帯主として国民健康保険税の納税義務を負うAに対し,平成20年度分の税額を25万1500円(納期限は同22年5月31日),同21年度分の税額を27万8700円(納期限は同22年4月30日)と決定し(以下,これらの決定を「本件各決定」といい,これにより課された国民健康保険税及びその延滞金に係る債権を「本件租税債権」という。),その旨の通知をした。

ちょっと待ってくださいよ、加須市長職務執行者とは市役所職員ですか?職員の息子?娘?が払わなかったので、親父さんが子供に払えよと通知を出したということでしょうか。

イ 上告人は,平成22年8月4日,被上告人を相手に,本件各決定の取消し等を求める訴訟を提起したが,同24年5月31日,上記取消しに係る訴えは異議申立てを前置していないため不適法であるなどとしてこれを却下する判決が確定した。

異議申し立てもさせないでいきなり召し上げるとはひどいと訴えを起こしたようですが、そういう制度はないと却下されたようです。

ア 被上告人は,平成23年1月26日,Aに対し,本件各決定に基づく国民健康保険税について督促状を発した。
イ Aは,平成23年11月18日に死亡した。
ウ 上告人は,平成24年1月24日,被上告人に対し,本件各決定により課された国民健康保険税のうち平成20年度分の5万9700円及び同21年度分の4万1300円を納付した(以下,この納付を「平成24年納付」という。)。


市役所は払えよと通知を出したが、子供は死んでしまいました。それでも相続人は2年分を払いました。

エ Aの相続人である上告人及びその姉は,平成24年3月20日,Aの遺産につき,その債務の一切を上告人が承継する旨の分割の協議を成立させた。

遺産相続人が決まりました。そこに、市は不足分を払えと通知を出しました。

(4) 加須市長は,平成29年1月10日,本件租税債権につき,同日時点で第1審判決別紙「滞納明細書」の「未納額」欄及び「延滞金」欄記載のとおり合計62万4700円の滞納金があることを前提に,その滞納処分として,上告人の預金払戻請求権を差し押さえ(本件差押処分),第三債務者である銀行から62万4700円を取り立てた上,同月13日付け配当計算書に従って,その全額を本件租税債権に配当する旨の本件配当処分をした。

かなりの金額をため込みましたね。

(5) 本件訴訟において,上告人は,上記滞納金のうち,延滞金3万9100円については納付義務を負うことを認める一方,その余の58万5600円に係る債権(以下「本件係争債権」という。)は時効消滅しており,本件係争債権に基づいて行われた滞納処分は違法であると主張して,本件配当処分のうち本件係争債権に係る部分等の取消しを求めるとともに,被上告人に対し,本件係争債権相当額の金員の支払を求めている。

要するに、民放の時効に従って5年を超える分は知らないよと訴えたようです。

また,地方団体の長による納付又は納入に関する告知は,私人による催告とは異なり,地方団体の徴収金に関する徴収手続の第一段階として,法令の規定に基づき一定の手続と形式に従って行われるものであることから,同法18条の2第1項1号は,これについて特に消滅時効を中断する効力を認めることとしたものと解される。

行政の場合は内容証明でなくてもいいのでしょうか?

相続があった場合には,その相続人が被相続人の納税義務を承継するところ(地方税法9条),これに係る地方団体の徴収金について,被相続人に対し納付又は納入の告知がされているときには,その効力も相続人に引き継がれるというべきであるから,徴税吏員は,相続人に対して直ちにこれに続く徴収手続を進めることができ,改めて相続人に同告知をする必要はないものと解される。

この点に関しては通常の民放と同じで、相続人は負債も引き継ぐ、で充分だと思います。

被相続人に対して既に納付又は納入の告知がされた地方団体の徴収金につき,納期限等を定めてその納付等を求める旨の相続人に対する通知は,これに係る地方税の徴収権について,地方税法18条の2第1項1号に基づく消滅時効の中断の効力を有しないというべきである。

全員一致でした。
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

至極当然の結果だと思います。ただ、もう少しと催促をする手順と要件をしっかり論じて欲しいとは思いますが。