最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

出演者が麻薬で逮捕、でも芸術支援金は出せよ

2024-02-28 14:30:56 | 日記
令和4(行ヒ)234  助成金不交付決定処分取消請求事件
令和5年11月17日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所

独立行政法人日本芸術文化振興会の理事長が、劇映画の製作活動につき文化芸術振興費補助金による助成金の交付の申請をした者に対し、上記劇映画には麻薬及び向精神薬取締法違反の罪による有罪判決が確定した者が出演しているので「国の事業による助成金を交付することは、公益性の観点から、適当ではない」としてした、上記助成金を交付しない旨の決定は、当該出演者が上記助成金の交付により直接利益を受ける立場にあるとはいえないなど判示の事情の下においては、上記理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法である。

NHKの報道です
『宮本から君へ』助成金不交付は不当 最高裁が公益性のあり方を初判断
麻薬取締法違反で有罪が確定した俳優が出演する映画『宮本から君へ』(2019年公開)に対する助成金を不交付とした国の外郭団体の決定の是非が争われた裁判で,11月17日,最高裁判所は「表現の自由に照らして見過ごすことはできない」などとして不交付の決定を取り消す判決を言い渡した。
国の外郭団体・日本芸術文化振興会は,交付すれば「国は薬物犯罪に寛容である」といった誤ったメッセージを発したと受け取られ,税金を原資とする助成金のあり方に対する国民の理解を低下させるおそれなどをあげ,「公益性の観点から適当でない」と主張した。これについて最高裁は,助成金交付の判断にあたって公益を重視できるのは「当該公益が重要なものであり,かつ,当該公益が害される具体的な危険がある場合に限られる」との判断を示した。そして,交付しても「公益が害される具体的な危険があるとはいい難」く,決定は,「重視すべきでない事情を重視した結果,社会通念に照らし著しく妥当性を欠いたもの」だと断じた。


この公益性が問題になった裁判のようです。

読売新聞の報道です
映画「宮本から君へ」、助成金不交付の決定を最高裁取り消し…製作会社の逆転勝訴が確定
同小法廷は「公益が害されることを理由に広く交付の拒否が行われると、表現行為に 萎縮いしゅく 的な影響が及ぶ可能性がある。表現の自由を保障した憲法21条1項の趣旨に照らして看過しがたい」と指摘。助成するかどうかの判断で公益を重視できるのは、「重要な公益が害される具体的な危険がある場合に限られる」との初判断を示した。
 その上で、助成により出演者が直接利益を受けるわけではなく、交付が「薬物に寛容」とのメッセージになることは想定できないと言及。「助成により公益が害される具体的な危険があるとは言えず、不交付の判断は裁量権の逸脱だ」と結論付けた。


事実確認を見ていきます。
被上告人は、独立行政法人日本芸術文化振興会法及び独立行政法人通則法の定めるところにより設立された独立行政法人である(振興会法2条)。・・・芸術の創造又は普及を図るための公演、展示等の活動に対し資金の支給その他必要な援助を行うこと等の業務を行う旨を規定する。

独立行政法人というのはなんちゃって公務員です。行政が直接支援するには問題がある、かといって放置するのも問題があるということから、この団体を通じて支援する団体です。要するにマネロン的位置づけのなんちゃって法人です。
以前から疑問に思っていたのですが、こういう新作の映画を事実上行政が支援するっていうのはどうなんですかね。こういうのは純粋に民間でやるべきだと思いますが。

(2)理事長は、「文化芸術振興費補助金による助成金交付要綱」を定め、振興会法14条1項1号の業務として、文化庁長官から交付される文化芸術振興費補助金を財源に、劇映画の製作活動等を対象とする本件助成金を交付している。
ア 本件助成金の交付を受けようとする者は、・・・基金運営委員会は、その下に設けられた分野別の部会及び専門委員会による審査の結果を踏まえて理事長の諮問に対する答申を行うところ、劇映画の場合、企画意図に則した優れた内容の作品であること、スタッフ・キャスト等に高い専門性、新たな創造性が認められること等が上記審査の基準とされる。
イ 交付内定の通知を受けた者は、その内容等を受諾した場合には、助成金交付申請書を理事長に提出する。理事長は、上記申請書を受理したときは、その内容を審査し、本件助成金を交付すべきと認めたときは、その交付決定をし、上記の者に通知する。


思いっきりなんちゃって行政組織でしょう。それにそもそも、芸術性を判断する人ってどういう基準で選ばれているのでしょうか。ひろしまトリエンナーレのように醜悪なものを芸術だと感じる人もいますし、明らかに政治的意図をもって選んでくる人もいます。こういうのは喩えなんちゃって組織であっても行政は絡んではいけない案件だと思いますよ。ましてや時代が代われば、文脈上政治的な意図を持つ者もあり得ますから。それはそれとして

(3)上告人は、平成30年4月頃、本件映画の製作に着手し、同年11月22日付けで、本件映画の製作活動につき、助成金交付要望書を理事長に提出した。理事長は、平成31年3月22日、上記製作活動に係る要望を採択すべき旨の基金運営委員会の答申を受け、同月29日付けで上記製作活動を助成対象活動とする交付内定(以下「本件内定」という。)をし、上告人に通知した。
本件映画の出演者の一人は、コカインを使用したとして、同月12日に逮捕され、本件内定後の令和元年6月18日、麻薬及び向精神薬取締法違反の罪により懲役1年6月、3年間執行猶予の有罪判決を宣告された。本件有罪判決は、その頃、確定した。


このせいでTVドラマもたまに再放送ができなくなったりしますよね。

理事長は、同月10日付けで、本件映画には本件有罪判決が確定した本件出演者が出演しているので「国の事業による助成金を交付することは、公益性の観点から、適当ではない」として、本件助成金を交付しない旨の本件処分をした。

最高裁は次のように判断しました
(1)本件助成金については、振興会法や補助金等適正化法に具体的な交付の要件等を定める規定がないこと、芸術の創造又は普及を図るための活動に対する援助等により芸術その他の文化の向上に寄与するという本件助成金の趣旨ないし被上告人の目的(振興会法3条)を達成するために限られた財源によって賄われる給付であること、上記の趣旨ないし目的を達成するためにどのような活動を助成の対象とすべきかを適切に判断するには芸術等の実情に通じている必要があること等からすると、その交付に係る判断は、理事長の裁量に委ねられており、裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した場合に違法となるものというべきである。

確かに不支給の要件を書いてませんからね。かといって、途中で作品そのものあるいは上映において不法行為や公序良俗に反するような行為があった場合が想定されていないというのは大いに問題があります。

(2)本件助成金を交付すると一般的な公益が害されると認められるときは、そのことを、交付に係る判断において、消極的な事情として考慮することができるものと解される。

そうなりますね。

(3)被上告人が「国は薬物犯罪に寛容である」といった誤ったメッセージを発したと受け取られて薬物に対する許容的な態度が一般に広まるおそれが高く、このような事態は、国が行う薬物乱用の防止に向けた取組に逆行するほか、国民の税金を原資とする本件助成金の在り方に対する国民の理解を低下させるおそれがあると主張する。
・・・しかしながら、本件出演者が本件助成金の交付により直接利益を受ける立場にあるとはいえない


でもすでに出演料は発生しているんですよね。今問題になっていますが、再生回数に応じて出演料の支払いとかの問題はどうなるのでしょうか?今回はそういう契約はしていないようですが。

被上告人が上記のようなメッセージを発したと受け取られるなどということ自体、本件出演者の知名度や演ずる役の重要性にかかわらず、にわかに想定し難い上、これにより直ちに薬物に対する許容的な態度が一般に広まり薬物を使用する者等が増加するという根拠も見当たらないから、薬物乱用の防止という公益が害される具体的な危険があるとはいい難い。

裁判所としては刑が確定しているし服役中なのだから、これ以上の制裁は必要ないだろう。しかも、役者だけでなくその他の政策に関わった人が巻き込まれるのは宜しくないと判断しているのでしょう。

結論
以上によれば、本件処分は、理事長の裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとして違法というべきである。

第二小法廷全員一致でした。
裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

この判決に従うと、今後芸能人が麻薬で捕まってもTVドラマや番組はそのまま流してもよいことになりますね。なんか微妙だな。
というか、出演契約のときにこの問題を一部書き込むか保険に入れなければ駄目でしょうね。

で、この裁判に直接の論点になっていませんが、芸術の支援って国家・自治体が支援するってのは憲法89条違反だと思うんですよ。ただちにこの支援に関する法律は廃止すべきです。

犯人引き渡し法は憲法違反ではないが、判決内容が頭に入ってこない雑な判決文

2024-02-26 21:50:31 | 日記
令和5(し)735  仮拘禁許可状の発付に対する特別抗告事件
令和5年11月6日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所
 逃亡犯罪人引渡法に基づく仮拘禁許可状の発付に対する不服申立ての許否


また1枚判決文ではないですが、限りなく1枚に収まる判決文です。
事実認定も何もなく、ただこれだけ

本件抗告の趣意は、東京高等裁判所裁判官がした仮拘禁許可状の発付(以下「本件発付」という。)に対して、刑訴法433条の準用により刑訴法の特別抗告が許されると解すべきであり、そう解さないときは憲法34条に違反する旨主張する。しかしながら、本件発付は、逃亡犯罪人引渡法に基づき東京高等裁判所裁判官が行った特別の行為であって、刑訴法上の決定又は命令でないばかりか、逃亡犯罪人引渡法には、これに対し不服申立てを認める規定が置かれていないのであるから、本件発付に対しては不服申立てをすることは許されないと解すべきであり、したがって、本件申立ては不適法である。また、本件発付の性質に鑑みると、このように解しても憲法34条に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和22年(れ)第43号同23年3月10日判決・刑集2巻3号175頁、昭和26年(ク)第109号同35年7月6日決定・民集14巻9号1657頁、昭和36年(ク)第419号同40年6月30日決定・民集19巻4号1089頁、昭和37年(ク)第243号同40年6月30日決定・民集19巻4号1114頁、昭和39年(ク)第114号同41年3月2日決定・民集20巻3号360頁、昭和37年(ク)第64号同41年12月27日決定・民集20巻10号2279頁、昭和42年(し)第78号同44年12月3日決定・刑集23巻12号1525頁、昭和41年(ク)第402号同45年6月24日決定・民集24巻6号610頁、昭和40年(ク)第464号同45年12月16日決定・民集24巻13号2099頁)の趣旨に徴して明らかである(最高裁平成2年(し)第52号同年4月24日第一小法廷決定・刑集44巻3号301頁、最高裁平成6年(し)第111号同年- 2 -7月18日第一小法廷決定・裁判集刑事263号891頁、最高裁平成26年(行ト)第55号同年8月19日第二小法廷決定・裁判集民事247号147頁、最高裁令和元年(し)第699号同年11月12日第二小法廷決定・裁判集刑事327号1頁参照)。

何のことか分かります?メモ書きですらもう少しちゃんと書きますよ。


裁判長裁判官 尾島 明
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

全員やる気なさすぎ

ケイマンの議決権100%の会社経由で取引は課税対象

2024-02-20 09:32:08 | 日記
令和4(行ヒ)228  法人税更正処分等取消請求事件
令和5年11月6日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所
 1 内国法人に係る特定外国子会社等の事業年度の途中で当該特定外国子会社等の発行する優先出資証券が償還され、当該事業年度終了の時には、当該特定外国子会社等の発行済株式等が、当該内国法人が有し剰余金の配当等が予定されていない普通株式のみとなった場合において、当該特定外国子会社等の事業年度を当該優先出資証券の償還日の前日までとするなどの方法を採る余地もあったなど判示の事情の下では、租税特別措置法施行令(平成29年政令第114号による改正前のもの)39条の16第1項を適用することができないとした原審の判断には、租税特別措置法(平成29年法律第4号による改正前のもの)66条の6第1項の解釈適用を誤った違法がある。
2 増額更正処分後に国税通則法23条1項の規定による更正の請求をし、更正をすべき理由がない旨の通知処分を受けた者は、当該通知処分の取消しを求める訴えの利益を有する。


日経新聞の報道です
みずほ銀行が逆転敗訴 租税回避地巡る課税処分、最高裁
みずほ銀行が租税回避地(タックスヘイブン)を巡る課税処分の取り消しを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(草野耕一裁判長)は6日、課税処分を取り消した二審・東京高裁判決を破棄し、処分は適法とする判断を示した。みずほ銀側の逆転敗訴が確定した。裁判官4人全員一致の結論。
一、二審判決などによると、みずほ銀は自己資本の増強のため、2008年のリーマン・ショック後にタックスヘイブンのケイマン諸島に複数の特別目的会社(SPC)を設立した。SPCが有価証券(優先出資証券)を発行することで、投資家から約3600億円を集めるスキームだった。
集めた資金を返還する過程でSPCに利益が残ったが、みずほ銀は利益は同行に帰属しないとして課税所得0円で税務申告した。
東京国税局は「利益は銀行本体に合算すべきだ」と問題視した。租税回避を防ぐための「タックスヘイブン対策税制」を適用し、16年3月期に利益約84億円の申告漏れを指摘し、過少申告加算税を含め約20億円の追徴課税処分をした。


では、概要を見ていきます。
1 租税特別措置法(66条の6第1項の規定により、ケイマン諸島において設立された被上告人の子会社の後記2の課税対象金額に相当する金額が、被上告人の本件事業年度の所得金額の計算上、益金の額に算入されるなどとして、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分を受けた。

所謂タックスヘイブンを経由して取引したようです。租税回避についてはどこの国も苦労しているようで、条約で締め上げつつあるようです。

2 関係法令
措置法66条の6第1項は、同項各号に掲げる内国法人に係る特定外国子会社等が、各事業年度において適用対象金額を有する場合には、その適用対象金額のうち、その内国法人の有する当該特定外国子会社等の直接及び間接保有の株式等の数に対応するものとしてその株式等の請求権の内容を勘案して政令で定めるところにより計算した金額に相当する金額を、その内国法人の所得の金額の計算上、益金の額に算入する旨を規定する。

ア 本件各子会社は、にケイマン諸島の法令に基づいて設立された外国法人である。
イ 平成20年12月29日、額面1億円の優先出資証券3550口を発行し、投資家に販売した。原則として、普通株主に優先して配当受領権を有する一方、議決権を有しな
いものとされていた。


法人格否認の法理じゃないですか。

(2)平成27年6月30日、被上告人から本件劣後ローンの全額の返済を受けた上で、これを原資として、本件優先出資証券に係る出資金及び配当金をMCIに送金し、本件優先出資証券を償還した。
(3)ア 被上告人は、本件各子会社の本件各子会社事業年度終了の時における発行済株式等のうちに被上告人の有する本件各子会社の請求権勘案保有株式等の占める割合は0%であり、したがって本件各子会社事業年度における課税対象金額は0円であるとして、本件事業年度に係る法人税等の申告をした。
イ 処分行政庁は、平成29年11月7日付けで、被上告人に対し、本件保有株式等割合は100%であり、本件各子会社の適用対象金額の全額が課税対象金額となるなどとし、法人税等の各増額更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をした。


やはり法人格否認の法理として課税すると出したようですね。

これについて最高裁は
(1)本件では、前記事実関係等の下において本件規定を適用することが本件委任規定の委任の範囲を逸脱するか否かが問題となるところ、この点を判断するに当たり、まず、本件規定の内容が、一般に、本件委任規定の趣旨に適合するか否かにつき検討する。

実質100%子会社ですからね、委託というより自分でやったんじゃないの?という指摘です。

(2)では同じようなことが書いてありますので省略

結論
(3)したがって、前記事実関係等の下において本件規定を適用することができないとした原審の判断には、本件委任規定の解釈適用を誤った違法がある。

要するに課税対象ですよとなりました。

裁判官草野耕一の補足意見
(1)当該外国法人がその事業年度終了時とは異なる日を基準日として剰余金の配当等を支払ったところ、これを受け取った当該外国法人の株主がその直後に到来する事業年度終了時にはもはや当該外国法人の株主ではない場合において、①当該外国法人が上記基準日においては特定外国子会社等であり、受取株主が当該特定外国子会社等に係る内国法人であるとすれば、当該配当の原資として用いられた当期純利益の額につき、経済実態からすれば、当該特定親会社に対し合算課税をすることが相当であるにもかかわらず、合算課税をなし得ない事態が発生し得る一方、②当該外国法人が直近年度末においては特定外国子会社等であるが、受取株主は特定親会社と資本関係のない者であるとすれば、配当原資金額につき、経済実態からすれば、当該特定親会社に対し合算課税をすることは相当でないにもかかわらず、合算課税がされる事態が発生し得るところ、

何ですかこの文章は。これ1文ですよ。相手に理解させようとする努力が全く見えません。しかも、外国法人が訴えてきた場合、こんなごみ文章を出すのですか?どうやって翻訳しろと?中学校からやり直せと言いたくなりますね。

会計期間の途中で配当金が出たとする。これを受け取った会社は会計年度末には株を売り飛ばしていたとする。このときに海外子会社としていいのか?と言いたいようです。

(2)本件委任規定を受けて政令の定めを設けるに当たり、「事業年度」の意義につき、特定外国子会社等が、その財産及び損益の計算の単位となる期間の末日以外の日を基準日として配当を行った場合には、当該会計期間の始期から当該配当の基準日までの期間をもって一つの事業年度とみなした上で、その翌日から当該会計期間の末日までの期間をもって次の事業年度とみなすことにすれば、過少課税も過剰課税も回避することができる。

認めたら脱税出来ちゃうから駄目よねと言う事のようです。

私は法廷意見の結論及び理由付けに全面的に賛成するものである。

全員一致でした
裁判長裁判官 草野耕一 論旨はともかく日本語をきちんとわかりやすくかけ
裁判官 三浦 守
裁判官 岡村和美
裁判官 尾島 明



株主総会通知で合併反対の意思表示は、反対表明になる。

2024-02-15 11:53:15 | 日記
令和4(許)11  株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
令和5年10月26日  最高裁判所第一小法廷  決定  破棄自判  名古屋高等裁判所

吸収合併消滅株式会社の株主が吸収合併をするための株主総会に先立って当該吸収合併に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を上記会社に送付した場合において、次の⑴及び⑵の事実関係の下では、上記株主が上記会社に対して上記委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするための株主総会に先立って消滅株式会社等に対してされる当該吸収合併等に反対する旨の通知に当たる。
⑴ 上記吸収合併消滅株式会社は、上記株主に対し、宛先を自社とし、「賛」又は「否」のいずれかに〇印を付けて吸収合併契約の承認に係る議案に対する賛否を記載する欄を設けた委任状用紙を送付して、議決権の代理行使を勧誘した。
⑵ 上記株主は、上記勧誘に応じて、上記欄の「否」に〇印を付けて上記委任状を作成し、これを上記吸収合併消滅株式会社に対して返送した。


マスコミでは取り上げられていないので事実確認から見ていきます。

1 利害関係参加人を吸収合併存続株式会社、スジャータ社を吸収合併消滅株式会社とする吸収合併についての会社法785条2項所定の株主であるとして、スジャータ社に対し、抗告人の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求した

抗告人=Aさんは、スジャータの吸収合併に対して反対をしていたようですが、株主総会で吸収合併が決まってしまったので、持っていた株を買い取れと請求しました。

その価格の決定につき協議が調わないため、同法786条2項に基づき、価格の決定の申立てをした。

当初の提案の株価では嫌だとなったようです。

(1)スジャータ社は、令和2年10月15日、利害関係参加人との間で、効力発生日を同年12月1日として本件吸収合併をする旨の吸収合併契約をした。

会社の重要な案件なのに、株主総会にかけずに勝手に話を進めていくケースが結構あります。某牛丼屋で生娘をしゃぶ漬けにすると言った馬鹿丸出しの取締役がいましたが、解任案件も本来は株主総会で決める案件なんですけどね。

(2)スジャータ社の代表取締役は、同月9日、スジャータ社の株式7950株を有する抗告人に対し、本件総会の招集通知を発するとともに、本件総会に抗告人自身が出席しない場合には、上記招集通知に同封された委任状用紙(令和4年(許)第11号 株式買取価格決定申立て却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件令和5年10月26日 第一小法廷決定)に本件議案に対する賛否を記載するなどして委任状を作成し、これを返送するよう議決権の代理行使を勧誘した。

後出しで株主総会にかけたわけですね。

(3)本件賛否欄の「否」に〇印を付け、その欄外に「合併契約の内容や主旨が不明の上、数日前の通知であり賛否表明ができません」との付記(をするなどして原々決定別紙のとおりの委任状(以下「本件委任状」という。)を作成し、これをスジャータ社に対して返送した。

反対の意思を表明して手続きを取ったわけです。

(4)令和2年11月13日、本件総会において本件合併契約を承認する旨の決議がされたところ、上記決議が行われるに当たり、本件代表取締役は抗告人の代理人として本件議案に反対する旨の議決権の行使をした。

代取をだ自動的に代理人にしたのはまずかったですね。

(5)抗告人は、令和2年11月30日までに、スジャータ社に対し、抗告人の有する全株式を公正な価格で買い取ることを請求した。

結局株主総会で決議されてしまったので、持っている株を買い取れと要求しました。

(6)令和2年12月1日、本件吸収合併の効力が発生し、スジャータ社は利害関係参加人に吸収合併された。
(7)抗告人は、令和3年1月20日、本件申立てをした。
(8)抗告人は、抗告人がスジャータ社に対して本件委任状を送付したことは、会社法785条2項1号イにいう、吸収合併等をするための株主総会に先立って消滅株式会社等に対してされる当該吸収合併等に反対する旨の通知に当たるから、抗告人は反対株主であり、本件申立ては適法であると主張している。/span>

手続きはちゃんとやられてますよね。ですが、原審はそれはおかしい反対手続きになっていないとしたようです。これについて最高裁は、

会社法785条1項、2項1号イは、吸収合併等をするための株主総会において議決権を行使することができる株主が反対株主として株式買取請求をするためには、上記株主総会に先立って当該株主が反対通知をすることを要する旨規定している。・・・本件賛否欄には「否」に〇印が付けられていたのであるから、本件吸収合併に反対する旨の抗告人の意思が本件委任状に表明されていたことは明らかである。したがって、抗告人がスジャータ社に対して本件委任状を送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。


第一小法廷全員一致の意見
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 山口 厚
裁判官 安浪亮介
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹

原審がなぜ却下しようとしたのか、ようわかりません。当然すぎる判決です。

遺留分侵害額請求権よりも遺言書の配分が優先する

2024-02-10 19:30:55 | 日記
令和4(許)14  特別の寄与に関する処分申立て却下審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
令和5年10月26日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  名古屋高等裁判所

 遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しない。

あまりいい解説記事がなかったので、事実関係から見ていきます。

亡Aの親族である抗告人が、Aの相続人の1人である相手方に対し、民法1050条に基づき、特別寄与料のうち相手方が負担すべき額として相当額の支払を求める事案である。

典型的にもめるパターンですね。どういう事情か分かりませんが、この文章から想像するに配偶者と子供がいた可能性があります。おそらく最後まで面倒を見てくれので、そのうちの誰かに全部遺産を渡すと遺言書書いたようです。

(3)相手方は、令和3年3月、Bに対し、遺留分侵害額請求権を行使する旨の意思表示をした。

要するに、全部丸どりじゃなくて少しは遺産相続させろよと言ったようですね。

民法第1050条の5項は
相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第900条から第902条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

相続人が数人ある場合における各相続人の特別寄与料の負担割合について、相続人間の公平に配慮しつつ、特別寄与料をめぐる紛争の複雑化、長期化を防止する観点から、相続人の構成、遺言の有無及びその内容により定まる明確な基準である法定相続分等によることとしたものと解される。このような同項の趣旨に照らせば、遺留分侵害額請求権の行使という同項が規定しない事情によって、上記負担割合が法定相続分等から修正されるものではないというべきである。

おそらくこの死んだAさんの面倒を見たと言っている相続人がいたのでしょう。だからその分は寄越せよという要求は認めないと言っています。これは個別に寄与度がどんなもんだったのかにもよるんじゃないかなぁという気もします。

遺言により相続分がないものと指定された相続人は、遺留分侵害額請求権を行使したとしても、特別寄与料を負担しないと解するのが相当である。

第一小法廷決定
裁判官全員一致の意見でした。

裁判長裁判官 安浪亮介
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹

杉田水脈議員の賠償確定 伊藤詩織さん中傷投稿に「いいね」

2024-02-09 18:08:30 | 日記
以下毎日新聞の報道です。

杉田水脈議員の賠償確定 伊藤詩織さん中傷投稿に「いいね」

2審判決は、杉田議員が当時、伊藤さんに批判的な言動を繰り返していたと指摘。「いいね」を押した行為は「伊藤さんを侮辱する内容のツイートに好意的・肯定的な感情を示すために行われたものと優に認められる。伊藤さんの名誉感情を侵害した」と結論付けた。



判決文を読んでみないと分かりませんが、この記事の範囲では「いいね」を押したことが相手を侮辱する行為となると判断したようです。FacebookでもTwitterでもInstagramでもいいね機能があります。これは「いいね」は特に同調したかどうかではなく、「見ましたよ」の意味もあるわけで、文字通り「いいね」とは限りません。

高裁もそうですが、最高裁判事はこの辺りのことを全く分かっていないようです。

刑務所・留置所の収監者の治療記録を自治体に問い合わせることは個人情報保護法違反ではない

2024-02-03 08:08:33 | 日記
令和4(行ヒ)296  情報不開示決定取消等請求事件
令和5年10月26日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
刑事施設に収容されている者が収容中に受けた診療に関する保有個人情報の全部を開示しない旨の決定につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできないとされた事例

報道がないので原文から見ていきますが、また裁判所の訳分からない文章です。

Aは東京拘置所に未決拘禁者として収容されていた。
行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律に基づき、東京矯正管区長に対し、被上告人が収容中に受けた診療に関する診療録に記録されている保有個人情報の開示を請求した。


生活保護記録から病気か何かの情報を手に入れようとしたんですかね。

同法45条1項所定の保有個人情報に当たり、開示請求の対象から除外されているとして、その全部を開示しない旨の決定を受けた。

ここまで何と1文です。主語と述語がどこなのかすらわからなくなってくる悪文です。

本件決定は、本件情報に係る開示請求を受けた東京矯正管区長において、行政機関個人情報保護法45条1項の解釈を誤り、被収容者診療情報は同項所定の保有個人情報に当たるとの見解に立脚して行ったものである。

その45条はこの条文です。

第四十五条 匿名加工情報取扱事業者は、匿名加工情報を取り扱うに当たっては、当該匿名加工情報の作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために、当該個人情報から削除された記述等若しくは個人識別符号若しくは第四十三条第一項若しくは第百十六条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定により行われた加工の方法に関する情報を取得し、又は当該匿名加工情報を他の情報と照合してはならない

確かにここだけ読めばそうなりますね。

国家賠償法1条1項にいう違法があったとの評価を受けるものではなく、東京矯正管区長が本件決定をする上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と判断したと認め得るような事情がある場合に限り、上記評価を受けるものと解するのが相当である(最高裁平成元年(オ)第930号、第1093号同5年3月11日第一小法廷判決・民集47巻4号2863頁参照)。

これだけで国家賠償には行かないと判断しています。

第三者による前科等の審査に用いられるなどの弊害の発生を防止するという同項の趣旨に照らしても、被収容者診療情報が開示されることになれば収容中に診療を受けた事実、ひいては前科等の存在が明らかになることからすると、上記見解が不合理であるとまではいえない。

第一小法廷判決裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 岡 正晶
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也
裁判官 安浪亮介
裁判官 堺 徹

悪文であること以外特に文句をつけるものでもないかなという気がします。これで治療が手遅れになったとか、そうでもない限り国家賠償は無理でしょう

京アニ事件で〇刑判決の青葉真司の〇刑は執行されない?

2024-02-01 07:14:52 | 日記
京アニ事件で〇刑判決の青葉真司の〇刑は執行されない? LGBT法だけではない グローバリズムが日本の法体系を崩壊させる!

元産経新聞の記者の動画です。
LGBT理解促進法と同じ手を使って死刑を廃止させようとする外国の動きがみられます。

法務大臣が自ら法を破ってどうします。