最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

参議院選挙の現在の比例代表制は違憲ではない

2020-11-23 14:22:41 | 日記
令和2(行ツ)79  選挙無効請求事件
令和2年10月23日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所
参議院(比例代表選出)議員の選挙についていわゆる特定枠制度を定める公職選挙法の規定の合憲性

この判決は結構大きい話だと思うのですが、1票の格差の話ばかりで新聞で取り上げられていません。なぜなんでしょうか???

まずは事実確認を見ましょう。
1 令和元年7月21日に施行された参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙は無効であるとして提起された選挙無効訴訟である。
2 平成12年法律第118号による公職選挙法の改正により,いわゆる非拘束名簿式比例代表制に改められることとなった。
3 論旨は,特定枠制度においては選挙人の意思と関係なく議員が選ばれているに等しく,本件改正後の公職選挙法における同制度について定める規定は,憲法43条1項に違反する,また,本件選挙と同日に施行された参議院の選挙区選出議員の選挙は同法が定める定数配分規定が憲法に違反するため無効であるから,本件選挙も無効であるなどという。


私も心情的に比例代表ってのはどうなの?と思っています。政党ではなくこの人に託したいという思いがあるのですが、政党名を書かなければならないというのはどうも。

4(1) 投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において,選挙人が候補者個人を直
接選択して投票する方式と異なるところはない。そうすると,本件改正後の参議院(比例代表選出)議員の選挙に関する公職選挙法の規定は憲法43条1項等の憲法
の規定に違反するものではなく,このことは,最高裁平成11年(行ツ)第8号同年11月10日大法廷判決・民集53巻8号1577頁及び最高裁平成15年(行ツ)第15号同16年1月14日大法廷判決・民集58巻1号1頁の判示するところであるか,又はその趣旨に徴して明らかである。
(2) また,参議院議員通常選挙のうち比例代表選出議員の選挙の無効を求める訴訟において選挙区選出議員の選挙の仕組みの憲法適合性を問題とすることができない。


現在の比例代表制は違憲ではないので、選挙は無効ではないと言結論になりました。過去に判決が出てるし、今更判決をひっくり返す理由もないということでした。

裁判官草野耕一の意見
名簿式比例代表制,特に拘束名簿式比例代表制については,伝統的選挙制とは明らかに異なる点があり,これを伝統的選挙制と同等のものとして論ずることは必ずしも適切ではないと考えるものである。
政党内における当選人となるべき順位に有権者による投票結果が反映されないから,候補者及び当選人となるべき順位の決定が専ら政党に委ねられ,有権者は政党を選ぶことしかできない制度であるということができる。これに対し,伝統的選挙制は,有権者が候補者個人を直接選択することができる点で明らかな差異がある。


この点私も全く同じ意見です。

ただし,政党が国民の政治意思を形成する有力な媒体であることなどを踏まえれば,拘束名簿式比例代表制を参議院議員選挙の一部に導入すること自体が国会の裁量権の限界を超えるものとはいえないであろう。そして,本件改正後の公職選挙法においては,参議院議員の総定数は248人であり,そのうち比例代表選出議員は100人であるところ,政党が特定枠の候補者となし得るのは,法文上,名簿登載者の一部の者に限定されていることなどからすれば,本件改正により特定枠制度を導入したことが国会の立法裁量の範囲に属さないとはいえない。

なーんだ、何も言ってないのと同じじゃないですか。ただ言いたかったのねレベルの感想文でした。

裁判長裁判官 岡村和美
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一

訳分からん:私病の有給休暇をパートにも出せ

2020-11-21 13:15:55 | 日記
令和1(受)777  地位確認等請求事件
令和2年10月15日  最高裁判所第一小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対して有給休暇を与える一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例

これもまた2回4回前のブログので書いた郵便局関連の裁判です。

事実認定を見ると
(3) 正社員に適用され,就業規則の性質を有する給与規程において,郵便の業務を担当する正社員の給与は,基本給と諸手当で構成されている。諸手当には住居手当,祝日給,特殊勤務手当,夏期手当,年末手当等がある。このうち特殊勤務手当は,著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,かつ,その特殊性を基本給で考慮することが適当でないと認められるものに従事する正社員に,その勤務の特殊性に応じて支給するものとされている。特殊勤務手当の一つである年末年始勤務手当は,12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであり,その額は,12月29日から同月31日までは1日につき4000円,1月1日から同月3日までは1日につき5000円であるが,実際に勤務した時間が4時間以下の場合は,それぞれその半額である。

え?配達業務って著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務なんですか?高校生のバイトでも普通にやってますけど。

病気休暇は,私傷病等により,勤務日又は正規の勤務時間中に勤務しない者に与えられる有給休暇であり,私傷病による病気休暇は少なくとも引き続き90日間まで与えられる。

(4) 期間雇用社員に適用され,就業規則の性質を有する給与規程において,郵便の業務を担当する時給制契約社員の給与は,基本賃金と諸手当で構成されている。諸手当には,祝日割増賃金,特殊勤務手当,臨時手当等がある。もっとも,上記時給制契約社員に対して年末年始勤務手当は支給されない

(2) 病気休暇について
ア 有期労働契約を締結している労働者と無期労働契約を締結している労働者との個々の賃金項目に係る労働条件の相違が労働契約法20条にいう不合理と認められるものであるか否かを判断するに当たっては,両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当であるところ,賃金以外の労働条件の相違についても,同様に,個々の労働条件が定められた趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である(最高裁平成30年(受)第1519号令和2年10月15日第一小法廷判決・公刊物未登載)。

イ 第1審被告において,私傷病により勤務することができなくなった郵便の業務を担当する正社員に対して有給の病気休暇が与えられているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障を図り,私傷病の療養に専念させることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。


それって仕事内容と関係あります?どう見ても関係ないですよね。あくまでも争点は同一労働同一賃金で、少なくとも賃金ではありません。一緒に論じることはおかしくないですか?これは立法府がしっかりとこの辺りも想定しなかったのがそもそもの原因ですが、司法がそこまで立ち入るべきなんでしょうか。意見として書くならわかりますが。

私傷病による病気休暇として,郵便の業務を担当する正社員に対して有給休暇を与えるものとする一方で,同業務を担当する時給制契約社員に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

いやー支離滅裂です。まず賃金と手当てを一緒にするな。私病の手当ては長期雇用を前提としていると勝手に言ってますが、どこにその根拠があるのでしょうか?

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 深山卓也

拡大解釈しすぎですね。法律を読んで、実態をしっかり理解していればこんな意味不明な判決は出ません。補足意見も出てこないとは。

慰安婦報道訴訟、元朝日記者の敗訴が確定 最高裁

2020-11-20 19:31:47 | 日記
慰安婦報道訴訟、元朝日記者の敗訴が確定 最高裁

元慰安婦の証言を伝える記事を「捏造(ねつぞう)」と記述されて名誉を傷つけられたとして、元朝日新聞記者で「週刊金曜日」発行人兼社長の植村隆氏がジャーナリストの櫻井よしこ氏と出版3社に計1650万円の損害賠償などを求めた訴訟で、最高裁第二小法廷(菅野(かんの)博之裁判長)は植村氏の上告を退けた。請求を棄却した一、二審判決が確定した。18日付の決定。
 植村氏は1991年、韓国人元慰安婦の証言を朝日新聞で2回記事にした。これに対して櫻井氏は2014年、月刊誌「WiLL」「週刊新潮」「週刊ダイヤモンド」で「捏造記事」などと指摘した。18年11月の札幌地裁判決は、韓国紙や論文などから、植村氏の記事が事実と異なると櫻井氏が信じる「相当の理由があった」と請求を退けた。今年2月の札幌高裁判決も一審を追認した。


事実認定で最高裁まで行くことってあるのでしょうか?

元朝日新聞記者の敗訴確定 最高裁、慰安婦記事巡り
1、2審判決によると、桜井氏は、韓国の元慰安婦の証言を取り上げた平成3年の朝日新聞の記事について「捏造」「意図的な虚偽報道」などとする論文を執筆し、週刊誌などに掲載された。植村氏は「事実に基づかない中傷で激しいバッシングを受け、家族も含め危険にさらされた」と平成27年に提訴した。
 1審札幌地裁は30年の判決で「櫻井氏が、記事の公正さに疑問を持ち、植村氏があえて事実と異なる記事を執筆したと信じたのには相当な理由がある」として請求を棄却。今年2月の2審札幌高裁判決も支持した。

参考サイト
植村裁判資料室
植村裁判を支える市民の会

朝日新聞が報道したのには驚きました。市民の会が判決文を公開したら、論評してみましょう。

屁理屈判決:年末年始、祝日給、扶養手当を有期雇用にも払え

2020-11-15 20:05:01 | 日記
令和1(受)794  地位確認等請求事件
令和2年10月15日  最高裁判所第一小法廷  判決  その他  大阪高等裁判所
 無期契約労働者に対して年末年始勤務手当,年始期間の勤務に対する祝日給及び扶養手当を支給する一方で有期契約労働者に対してこれらを支給しないという労働条件の相違がそれぞれ労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例

これもまた郵便局ネタです。事実上前回の続きです。


(1) 年末年始勤務手当について
第1審被告における年末年始勤務手当は,郵便の業務を担当する正社員の給与を構成する特殊勤務手当の一つであり,12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすると,同業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において,同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるといえる。また,年末年始勤務手当は,正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。
上記のような年末年始勤務手当の性質や支給要件及び支給金額に照らせば,これを支給することとした趣旨は,本件契約社員にも妥当するものである。


元々の給料の差はどのくらいあったのでしょうね。他の個所にはそれが書かれていません。

したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,本件契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

正社員との賃金格差を明示しないで不合理といえるのでしょうか?

(2) 年始期間の勤務に対する祝日給について
本件契約社員は,契約期間が6か月以内又は1年以内とされており,第1審原告らのように有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者も存するなど,繁忙期に限定された短期間の勤務ではなく,業務の繁閑に関わらない勤務が見込まれている。そうすると,最繁忙期における労働力の確保の観点から,本件契約社員に対して上記特別休暇を付与しないこと自体には理由があるということはできるものの,年始期間における勤務の代償として祝日給を支給する趣旨は,本件契約社員にも妥当するというべきである。そうすると,前記第1の2(5)~(7)のとおり,郵便の業務を担当する正社員と本件契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,上記祝日給を正社員に支給する一方で本件契約社員にはこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる。
したがって,郵便の業務を担当する正社員に対して年始期間の勤務に対する祝日給を支給する一方で,本件契約社員に対してこれに対応する祝日割増賃金を支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。


理由が単年度で契約が終わらず、事実上継続している従業員がいるから?!

郵便の業務を担当する正社員に対して扶養手当が支給されているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障や福利厚生を図り,扶養親族のある者の生活設計等を容易にさせることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。・・・本件契約社員についても,扶養親族があり,かつ,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,扶養手当を支給することとした趣旨は妥当するというべきである。

長く雇用されるために扶養手当がある?そういう趣旨なんですか?福利厚生は戦後に導入されたもので失業者対策だったはずです。家族に失業者が大量にいる状況なので、能力給だけでやると生活できない人が大量に出るので始めたはずです。長期雇用を前提としてはいないと思いますよ。

裁判官全員一致
第一小法廷
裁判長裁判官 山口 厚 訳分からん
裁判官 池上政幸 訳分からん
裁判官 小池 裕 訳分からん
裁判官 木澤克之 訳分からん
裁判官 深山卓也 訳分からん

何でもいいから理由をつけなければならず、かなり強引にやった印象です。おそらくこれでは、3か月時間をおいての再雇用が増えると思いますよ。扶養手当なんかはそもそも働き具合に一切関係ないのだから、企業はなくす方向に行くでしょうね。企業としてはとにかく安く使いたいでしょうから、今後はもっと残忍な解雇になるでしょう。それこそ法の趣旨に反していると思いますけど。

財産横領の弁護士を懲戒 4千万円、業務停止

2020-11-13 18:36:52 | 日記
産経新聞の報道です
財産横領の弁護士を懲戒 4千万円、業務停止

東京弁護士会は13日、後見人として預かっていた財産計約4380万円を横領したとして、斎藤正和弁護士(69)を業務停止1年5カ月の懲戒処分にした。
 東京弁護士会によると、平成20年3月、依頼者と財産管理や任意後見の契約を結び、約1億4100万円を預かった。月額10万5千円の報酬で財産の管理状況を3カ月ごとに報告する約束だったが、義務を果たさなかったとしている。
 同年10月~24年6月に計52回、10万~1千万円を横領し、事務所の経費などに充てた。30年2月に依頼者から懲戒請求があり弁護士会が調査。斎藤弁護士は発覚後に自身が所有する不動産を売却し、一括返済したという。


この年齢ですから、廃業でしょうか。いくら一括返済したからって、退会処分じゃないんですか?!
所詮弁護士会は互助会、弁護士の自治なんてと思わせてしまう案件です。

今一つ判決:正社員にあるのにバイトに私傷病の有給を与えないのは違反

2020-11-08 16:43:25 | 日記
令和1(受)777  地位確認等請求事件
令和2年10月15日  最高裁判所第一小法廷  判決  その他  東京高等裁判所
 私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対して有給休暇を与える一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例

これも先日の郵便局のアルバイトの事件のようです。

イ 第1審原告X1及び第1審原告X2は,いずれも,国又は日本郵政公社に有期任用公務員として任用された後,平成19年10月1日,郵便事業株式会社との間で有期労働契約を締結し,同社及び第1審被告との間でその更新を繰り返して勤務する時給制契約社員である。また,第1審原告X3は,平成20年10月14日,郵便事業株式会社との間で有期労働契約を締結し,同社及び第1審被告との間でその更新を繰り返して勤務する時給制契約社員である。第1審原告X1及び第1審原告X3は,郵便外務事務(配達等の事務)に従事し,第1審原告X2は,郵便内務事務(窓口業務,区分け作業等の事務)に従事している。

従業員X1は有期任用公務員、郵便内務事務(窓口業務,区分け作業等の事務)
従業員X2は有期任用公務員、郵便内務事務(窓口業務,区分け作業等の事務)
従業員X3は有期労働契約、郵便外務事務(配達等の事務)
民営化される以前に採用されたかどうかの違いで、基本的に一緒みたいですね。

ア 従業員には,無期労働契約を締結する正社員と有期労働契約を締結する期間雇用社員が存在し,それぞれに適用される就業規則及び給与規程は異なる。
イ 正社員に適用される就業規則において,正社員の勤務時間は,1日について原則8時間,4週間について1週平均40時間とされている。・・・正社員は,管理職,総合職,地域基幹職及び一般職(以下「新一般職」という。)の各コースに区分され,このうち郵便局における郵便の業務を担当するのは地域基幹職及び新一般職である。
ウ 期間雇用社員に適用される就業規則において,期間雇用社員は,スペシャリスト契約社員,エキスパート契約社員,月給制契約社員,時給制契約社員及びアルバイトに区分されており,それぞれ契約期間の長さや賃金の支払方法が異なる。・・・契約期間は6か月以内で,契約を更新することができ,正規の勤務時間は,1日について8時間以内,4週間について1週平均40時間以内とされている。


正規雇用とバイトでは就業規則が違うようですが、勤務時間は一緒のようです。

(3) 正規雇用の諸手当には住居手当,祝日給,特殊勤務手当,夏期手当,年末手当等がある。このうち特殊勤務手当は,著しく危険,不快,不健康又は困難な勤務その他の著しく特殊な勤務で,給与上特別の考慮を必要とし,かつ,その特殊性を基本給で考慮することが適当でないと認められるものに従事する正社員に,その勤務の特殊性に応じて支給するものとされている。・・・夏期休暇は6月1日から9月30日まで,冬期休暇は10月1日から翌年3月31日までの各期間において,それぞれ3日まで与えられる有給休暇である。病気休暇は,私傷病等により,勤務日又は正規の勤務時間中に勤務しない者に与えられる有給休暇であり,私傷病による病気休暇は少なくとも引き続き90日間まで与えられる。

(4) 期間雇用社員に適用され,諸手当には,祝日割増賃金,特殊勤務手当,臨時手当等がある。もっとも,上記時給制契約社員に対して年末年始勤務手当は支給されない。私傷病による病気休暇は1年に10日の範囲で無給の休暇が与えられるにとどまる。

正規雇用は90日の有給休暇、非正規は10日の無給の休暇がもらえます。それまで解雇事由にならないということでしょうか。

新一般職は,郵便外務事務,郵便内務事務等の標準的な業務に従事することが予定されており,昇任や昇格は予定されていない。
時給制契約社員は,便外務事務又は郵便内務事務のうち,特定の業務のみに従事し,上記各事務について幅広く従事することは想定されておらず,昇任や昇格は予定されていない。


両方とも昇任・昇格なしで、時給従業員はかなり業務が狭まっているようです。

年末年始勤務手当は,郵便の業務を担当する正社員の給与を構成する特殊勤務手当の一つであり,12月29日から翌年1月3日までの間において実際に勤務したときに支給されるものであることからすると,同業務についての最繁忙期であり,多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において,同業務に従事したことに対し,その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有するものであるといえる。また,年末年始勤務手当は,正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず,所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするものであり,その支給金額も,実際に勤務した時期と時間に応じて一律である。・・・郵便の業務を担当する正社員に対して年末年始勤務手当を支給する一方で,同業務を担当する時給制契約社員に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である

年賀はがきの配達があるので、配達関連業務は繁忙期になりますが、貯金業務や投信などの金融は休みになります。時給の配達業務は出勤義務があり、通常の給与と変わりません。窓口の一般職員は本来休みなので、出勤すれば手当てが出るのは、不合理だと言っています。

これ不合理ですか?

病気
イ 第1審被告において,私傷病により勤務することができなくなった郵便の業務を担当する正社員に対して有給の病気休暇が与えられているのは,上記正社員が長期にわたり継続して勤務することが期待されることから,その生活保障を図り,私傷病の療養に専念させることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものと考えられる。・・・上記目的に照らせば,郵便の業務を担当する時給制契約社員についても,相応に継続的な勤務が見込まれるのであれば,私傷病による有給の病気休暇を与えることとした趣旨は妥当するというべきである。

この理由付けはどうなんですかね。時給従業員は長く勤務しないという前提だから時給じゃないんですかね。むしろここは、病気は平等にやって来るとした方が良くないですか?

結論
したがって,私傷病による病気休暇として,郵便の業務を担当する正社員に対して有給休暇を与えるものとする一方で,同業務を担当する時給制契約社員に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たると解するのが相当である。

第一小法廷 全員一致です
裁判長裁判官 山口 厚  今一つ
裁判官 池上政幸  今一つ
裁判官 小池 裕  今一つ
裁判官 木澤克之  今一つ
裁判官 深山卓也 今一つ

なんか理由が強引な気がしませんか?長く勤務するかどうかは関係ないと思うんですけどね。
時給社員で配達業務は年末年始のために雇われているようなものですよね。窓口業務の正社員が配達業務をやっても上手く行かないでしょう。これは業務内容の違いから、違反でないと言い切っていいような気がしますが。

期間雇用でも夏休み冬休みを出せ

2020-11-05 22:04:58 | 日記
平成30(受)1519  未払時間外手当金等請求控訴,同附帯控訴事件
令和2年10月15日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  福岡高等裁判所
 無期契約労働者に対しては夏期休暇及び冬期休暇を与える一方で有期契約労働者に対してはこれを与えないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例

NHKの報道です。
各地の郵便局で配達や集荷を行う契約社員らが、正社員と同じ業務をしているのに手当や休暇の待遇に格差があるのは不当だと日本郵便を訴えた裁判では、東京高裁と大阪高裁、それに福岡高裁の3件の判決でいずれも不合理な格差があり違法だと判断されました。
しかし、手当や休暇の種類によって2審の判断が分かれていて、契約社員側と日本郵便の双方が上告していました。
15日の判決で、最高裁判所第1小法廷の山口厚裁判長は、日本郵便の手当や休暇のうち、
▼扶養手当、
▼年末年始の勤務手当、
▼お盆と年末年始の休暇、
▼病気休暇、
それに
▼祝日の賃金について、
契約社員側の訴えを認め、不合理な格差があり違法だという判断を示しました。
このうち扶養手当については「日本郵便では、正社員の継続的な雇用を確保する目的があると考えられる。その目的に照らすと、契約社員も継続的に勤務すると見込まれるのであれば、支給するのが妥当だ」と判断しました。


時事通信の報道です。
夏季・冬季休暇は、3件とも高裁段階で不合理な格差とされたが、損害賠償を認めるかで各高裁の判断が割れ、同小法廷は賠償を認めた。年末年始勤務手当は東京と大阪訴訟で争われ、各高裁で支給が認められたが、大阪高裁は「契約期間が通算5年を超える者」と限定。同小法廷は大阪高裁の判断を破棄した。
 非正規労働者の格差をめぐっては、大阪医科薬科大と東京メトロ子会社に勤務した非正規社員らが起こした訴訟の最高裁判決が13日にあり、第3小法廷はボーナスと退職金不支給について正社員らとの職務内容の違いを重視。いずれも「不合理とまでは言えない」と判断していた。


事実確認を見て行きましょう
(1)被上告人は,平成22年6月7日,郵便事業株式会社との間で有期労働契約を締結し,同社及び上告人との間でその更新を繰り返して,郵便外務事務(配達等の事務)に従事する時給制契約社員であったが,同25年12月14日,上告人を退職した。
(2)正社員に適用される就業規則において,正社員の勤務時間は,1日について原則8時間,4週間について1週平均40時間とされている。正社員の中には,被上告人と同様の業務に従事する者があるが,正社員は,業務上の必要性により配置転換や職種転換を命じられることがあり,多様な業務に従事している。また,正社員のうちの一定程度の割合の者が課長代理,課長等の役職者となるところ,正社員の人事評価においては,評価項目が多岐にわたり,組織全体への貢献を考慮した項目についても評価されるものとされている。
期間雇用社員に適用される就業規則において,期間雇用社員は,スペシャリスト契約社員,エキスパート契約社員,月給制契約社員,時給制契約社員及びアルバイトに区分されており,それぞれ契約期間の長さや賃金の支払方法が異なる。このうち時給制契約社員は,郵便局等での一般的業務に従事し,時給制で給与が支給されるものとして採用された者であって,契約期間は6か月以内で,契約を更新することができ,正規の勤務時間は,1日について8時間以内,4週間について1週平均40時間以内とされている。そして,時給制契約社員は,担当業務に継続して従事し,郵便局を異にする人事異動は行われず,昇任や昇格も予定されていない。また,時給制契約社員の人事評価においては,担当業務についての評価がされるのみである。


期間雇用で雇われました。正規雇用と期間雇用では給与体系が異なり、人事異動、店舗間の移動、昇任、昇格がない雇用規則になっていました。

(3) 正社員に適用される就業規則では,郵便の業務を担当する正社員に夏期冬期休暇が与えられることとされている。夏期休暇は6月1日から9月30日まで,冬期休暇は10月1日から翌年3月31日までの各期間において,それぞれ3日まで与えられる有給休暇である。
これに対し,郵便の業務を担当する時給制契約社員には夏期冬期休暇が与えられない。


この状態は労働契約法20条にいう不合理と認められるものに該当するから、休みを寄越せという訴えです。

これについて最高裁は
両者の賃金の総額を比較することのみによるのではなく,当該賃金項目の趣旨を個別に考慮すべきものと解するのが相当である(最高裁平成29年(受)第442号同30年6月1日第二小法廷判決・民集72巻2号202頁)。

この判決文が公開されていません。引用するくらいの重要な判決なら公開してよと思います。これは裁判官の責任ではないようですが。

郵便の業務を担当する正社員と同業務を担当する時給制契約社員との間に労働契約法20条所定の職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があること等を考慮しても,両者の間に夏期冬期休暇に係る労働条件の相違があることは,不合理であると評価することができるものといえる。

こっちの方が分かりやすいです。

(2) また,上告人における夏期冬期休暇は,有給休暇として所定の期間内に所定の日数を取得することができるものであるところ,郵便の業務を担当する時給制契約社員である被上告人は,夏期冬期休暇を与えられなかったことにより,当該所定の日数につき,本来する必要のなかった勤務をせざるを得なかったものといえるから,上記勤務をしたことによる財産的損害を受けたものということができる。

そんな大げさなものなのかな・・・

第一小法廷 裁判官全員一致
裁判長裁判官 山 口 厚
裁判官 池 上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 深山卓也

こうなってくると、正規従業員と期間雇用の従業員と一体何が違うんでしょう?正規従業員を休ませたいから、ちょっと条件をよくしてでも期間従業員を雇うんですよね。よほど条件を明示して条件をよくしないと夏休み、春休みを働かせられなくなります。しかも、郵便ですから止まると裁判の送達もできなくなりますよね。赤字垂れ流しの郵便にはきつい判決です。
司法の責任ではなく立法の責任でしょうが、これでは自由に人を雇えなくなりますね。

就業規則に正社員とパートの職務を明記してあればパートに退職金を払う必要はない。一部トンデモ反対意見。

2020-11-03 10:51:22 | 日記
令和1(受)1190  損害賠償等請求事件
令和2年10月13日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  東京高等裁判所 
無期契約労働者に対して退職金を支給する一方で有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たらないとされた事例

時事通信の報道です。
 退職金支給が争われた、東京メトロ子会社メトロコマースの駅売店で約10年間働いた元契約社員の女性2人が起こした訴訟では、同小法廷(林景一裁判長)は売店業務に従事した正社員と2人を比較。業務内容はおおむね共通するが、正社員は配置転換があるなど一定の相違があるとし、「不支給は不合理とまでは評価できない」と結論付けた。
 宇賀克也裁判官は反対意見で「契約社員が正社員より長期間勤務することもある。功労報償の性質は契約社員にも当てはまる」と述べ、正社員の4分の1の支払いを認めた二審東京高裁判決の破棄には至らないとした。


読売新聞の報道です。
 また、メトロ子会社の元契約社員2人が求めていた退職金についても、契約社員が売店業務に専従し配置転換もないのに対し、正社員は、複数の売店を統括しトラブル処理などにも当たり、配置転換の可能性があることなどから、格差はやむを得ないと結論づけた。
 ただ、同小法廷は、旧労働契約法20条の趣旨を踏まえ、賞与や退職金の格差が不合理と認定されるケースがあり得るとも言及した。

事実認定から見ていきます。
(1)ア 第1審被告は,東京メトロの完全子会社であって,東京メトロの駅構内における新聞,飲食料品,雑貨類等の物品販売,入場券等の販売,鉄道運輸事業に係る業務の受託等の事業を行う株式会社である。
イ 第1審原告らは,X1の契約社員Bとして第1審被告に採用され,契約期間を1年以内とする有期労働契約の更新を繰り返しながら,東京メトロの駅構内の売店における販売業務に従事していた。第1審原告X2については平成26年3月31日,第1審原告X1については同27年3月31日,いずれも65歳に達したことにより上記契約が終了した。


昔の法律ですから、パートを5年ごとにいったん解雇しなくてもOKだった時代の話です。

ア 第1審被告においては,従業員は,社員(以下「正社員」という。),契約社員A(平成28年4月に職種限定社員に変更)及び契約社員Bという名称の雇用形態の区分が設けられ,それぞれ適用される就業規則が異なっていた。
イ 正社員は,無期労働契約を締結した労働者であり,定年は65歳であった。
ウ 契約社員Aは,主に契約期間を1年とする有期労働契約を締結した労働者である。同期間満了後は原則として契約が更新され,就業規則上,定年(更新の上限年齢をいう。以下同じ。)は65歳と定められていた。
エ 契約社員Bは,契約期間を1年以内とする有期労働契約を締結した労働者であり,一時的,補完的な業務に従事する者をいうものとされていた。同期間満了後は原則として契約が更新され,就業規則上,定年は65歳と定められていた。なお,契約社員Bの新規採用者の平均年齢は約47歳であった。


ここまで見ると、契約社員AコースもBコースも大差ないですね。

エ 契約社員Bの労働時間は,大半の者が週40時間と定められていた。・・・正社員と異なり,配置転換や出向を命ぜられることはなかった
オ 第1審原告ら労働時間は,1日8時間以内(週40時間以内)であった。


子育てが終わった専業主婦が再就職するための職場と言ってもいい感じですね。

(3)ア 正社員の賃金は月給制であり,月例賃金は基準賃金と基準外賃金から成り,昇格及び昇職制度が設けられていた。基準賃金は,本給,資格手当又は成果手当,住宅手当及び家族手当により,基準外賃金は,年末年始勤務手当,深夜労働手当,早出残業手当,休日労働手当,通勤手当等により,それぞれ構成されていた。本給は年齢給及び職務給から成り,前者は,18歳の5万円から始まり,1歳ごとに1000円増額され,40歳以降は一律7万2000円であり,後者は,三つの職務グループ(スタッフ職,リーダー職,マネージャー職)ごとの資格及び号俸により定められ,その額は10万8000円から33万7000円までであった。
イ 契約社員Aの賃金は月給制であり,月例賃金額は16万5000円(本給)であった。これに加えて,深夜労働手当,早出残業手当,休日労働手当,早番手当,通勤手当その他の諸手当が支給され,本人の勤務成績等による昇給制度が設けられていた。
契約社員Aには,年2回の賞与(年額59万4000円)が支給されていたが,退職金は支給しないと定められていた。なお,契約社員Aについては,平成28年4月に職種限定社員に名称が改められ,その契約が無期労働契約に変更された際に,退職金制度が設けられた。
ウ 契約社員Bの賃金は時給制の本給及び諸手当から成っていた。本給は,時間給を原則とし,業務内容,技能,経験,業務遂行能力等を考慮して個別に定めるものとされており,第1審原告らが入社した当時は一律1000円であったが,平成22年4月以降,毎年10円ずつ昇給するものとされた。諸手当は,年末年始出勤手当,深夜労働手当,早出残業手当,休日労働手当,通勤手当,早番手当,皆勤手当等であり,資格手当又は成果手当,住宅手当及び家族手当は支給されていなかった。
契約社員Bには,年2回の賞与(各12万円)が支給されていたが,退職金は支給しないと定められていた。
エ 正社員には,勤続10年及び定年退職時に金品が支給されていたのに対し,契約社員A及び契約社員Bには,これらが支給されていなかった。


3階層に従業員を分けているようですね。

(4)ア 登用制度により契約社員Bから契約社員Aを経て正社員になった者とが,約半数ずつでほぼ全体を占めていた。
イ 販売員が固定されている売店における業務の内容は,売店の管理,接客販売,商品の管理,準備及び陳列,伝票及び帳票類の取扱い,売上金等の金銭取扱い,その他付随する業務であり,これらは正社員,契約社員A及び契約社員Bで相違することはなかった。・・・契約社員Aも,正社員と同様に代務業務を行っていた。これに対し,契約社員Bは,原則として代務業務を行わず,エリアマネージャー業務に従事することもなかった
(5) 第1審被告においては,契約社員Bから契約社員A,契約社員Aから正社員への登用制度が設けられ,平成22年度から導入された登用試験では,原則として勤続1年以上の希望者全員に受験が認められていた。平成22年度から同26年度までの間においては,契約社員Aへの登用試験につき受験者合計134名のうち28名が,正社員への登用試験につき同105名のうち78名が,それぞれ合格した。


有名無実の正社員化の試験ではなく、実際に正社員になった人もいるとなると、職務給の問題ではなく通常の人事評価の可能性がありますね。

(6) 第1審被告は,第1審原告らが加入する労働組合との団体交渉を経て,契約社員Bの労働条件に関し,平成21年以降,年末年始出勤手当,早番手当及び皆勤手当の導入や,年1日のリフレッシュ休暇及び会社創立記念休暇(有給休暇)の付与などを行った。

待遇改善はかなり進んでいたようです。

最高裁の判断は
(2)ア 第1審被告は,退職する正社員に対し,一時金として退職金を支給する制度を設けており,退職金規程により,その支給対象者の範囲や支給基準,方法等を定めていたものである。・・・第1審被告における退職金の支給要件や支給内容等に照らせば,上記退職金は,上記の職務遂行能力や責任の程度等を踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務等に対する功労報償等の複合的な性質を有するものであり,第1審被告は,正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から,様々な部署等で継続的に就労することが期待される正社員に対し退職金を支給することとしたものといえる。

この辺りはどうかと思います。そもそも、転勤などに応じる義務があるからと言って、実際に応じたから支給されたとは書いていません。さらに従業員の定着云々は、長くいたからと言って役に立っているとは限りません。ここはどうなんでしょうか。日本は海外と違って、役に立たないからと簡単に解雇できない制度であるので、長くいる云々は理由にならないと思います。

イ 両者の業務の内容はおおむね共通するものの,正社員は,販売員が固定されている売店において休暇や欠勤で不在の販売員に代わって早番や遅番の業務を行う代務業務を担当していたほか,複数の売店を統括し,売上向上のための指導,改善業務等の売店業務のサポートやトラブル処理,商品補充に関する業務等を行うエリアマネージャー業務に従事することがあったのに対し,契約社員Bは,売店業務に専従していたものであり,両者の職務の内容に一定の相違があったことは否定できない。・・・審被告は,契約社員A及び正社員へ段階的に職種を変更するための開かれた試験による登用制度を設け,相当数の契約社員Bや契約社員Aをそれぞれ契約社員Aや正社員に登用していたものである。

この部分は納得です。

ウ そうすると,第1審被告の正社員に対する退職金が有する複合的な性質やこれを支給する目的を踏まえて,売店業務に従事する正社員と契約社員Bの職務の内容等を考慮すれば,契約社員Bの有期労働契約が原則として更新するものとされ,定年が65歳と定められるなど,必ずしも短期雇用を前提としていたものとはいえず,第1審原告らがいずれも10年前後の勤続期間を有していることをしんしゃくしても,両者の間に退職金の支給の有無に係る労働条件の相違があることは,不合理であるとまで評価することができるものとはいえない。

やはり、パート従業員から正社員登用制度もあるし、これは不合理ではないよねと言っています。

結論
売店業務に従事する正社員に対して退職金を支給する一方で,契約社員Bである第1審原告らに対してこれを支給しないという労働条件の相違は,労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たらないと解するのが相当である。

裁判官林景一の補足意見
1 労働契約法20条は,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が不合理と認められるか否かを判断するに当たっては両者の職務の内容等を考慮すべき旨を規定しており,その判断に当たっては,当該労働条件の性質やこれを定めた目的を踏まえて検討すべきものである。・・・・第1審原告らに対し退職金を支給しないことが不合理であるとまで評価することができるものとはいえないといわざるを得ない。・・・退職金制度を持続的に運用していくためには,その原資を長期間にわたって積み立てるなどして用意する必要があるから,退職金制度の在り方は,社会経済情勢や使用者の経営状況の動向等にも左右されるものといえる。そうすると,退職金制度の構築に関し,これら諸般の事情を踏まえて行われる使用者の裁量判断を尊重する余地は,比較的大きいものと解されよう。

退職金って積み立てていかなければならないから、そりゃ会社の業績にも影響しちゃうからも少し慎重に考えていいよと言っているようです。

有期契約労働者に対し退職金に相当する企業型確定拠出年金を導入したり,有期契約労働者が自ら掛け金を拠出する個人型確定拠出年金への加入に協力したりする企業等も出始めていることがうかがわれるところであり,その他にも,有期契約労働者に対し在職期間に応じて一定額の退職慰労金を支給することなども考えられよう。

要するに、自社で丸抱えしなくてもいろんな制度があるからそちらで何とかしてやったら?と言っているようです。裁判官林道晴は,裁判官林景一の補足意見に同調しています。

裁判官宇賀克也の反対意見
長年の勤務に対する功労報償の性格を有する部分に係る退職金,具体的には正社員と同一の基準に基づいて算定した額の4分の1に相当する額すら契約社員Bに支給しないことが不合理であるとした原審の判断は是認することができ,第1審被告の上告及び第1審原告らの上告は,いずれも棄却すべきものと考える。・・・契約社員Bは,契約期間を1年以内とする有期契約労働者として採用されるものの,当該労働契約は原則として更新され,定年が65歳と定められており,正社員と同様,特段の事情がない限り65歳までの勤務が保障されていたといえる。契約社員Bの新規採用者の平均年齢は約47歳であるから,契約社員Bは,平均して約18年間にわたって第1審被告に勤務することが保障されていたことになる。

おいおい、18年間雇用が保証される?はぁ?アホか。最大限勤務可能であって保証はあり得ないですよ。労働法を読んだことあります?

裁判長裁判官 林 景一
裁判官 戸倉三郎
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也 アホか!
裁判官 林 道晴

宇賀地裁判官は、丸のまま共産主義的発想ですね。労働契約は雇用者と被雇用者の対等な契約ですよ。雇われる権利なんぞありませんし、保証なんかもあり得ません。

この裁判とは若干ずれますが、退職金制度自体なくすべきだと思います。そもそも、今働いた分を正当に評価して給与を支給すべきであって、過去に働いた分を後払いするという方が問題だと思います。それに今勤務する会社がいつまでも存在する保証はない訳ですよ。ということは賃金の未払いが発生する可能性が高いわけで、それこそ違法性のある制度だと思いませんか?企業年金も同様です。JALもこれに悩まされて一次的とは言え国営化したわけですし。