最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

予防接種によるB型肝炎発症、潜伏期間が長いのだから救済期間20年を過ぎても助けてやれ

2021-05-31 10:30:09 | 日記
令和1(受)1287  損害賠償請求事件
令和3年4月26日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  福岡高等裁判所

 乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しHBe抗原陽性慢性肝炎の発症,鎮静化の後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害につき,HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段所定の除斥期間の起算点となるとされた事例

時事通信の報道です
集団予防接種が原因のB型肝炎を20年以上前に発症し、その後再発した患者2人が、国に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が26日、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)であった。三浦裁判長は損害賠償請求権が20年で消滅する「除斥期間」を理由に患者側敗訴とした二審福岡高裁判決を破棄、除斥期間の起算点を再発時と判断し、賠償額算定のため審理を高裁に差し戻した。

産経新聞の報道です。
 第2小法廷は、原告2人の再発時の症状は、最初の発症時よりも進行した特異な病態だと判断。各症状の損害は「質的に異なる」とし、除斥期間の起算点は再発時とすべきだと判断した。
 4裁判官全員一致の結論。三浦裁判官は補足意見で「迅速かつ全体的な解決を図るため、救済に当たる国の責務が適切に果たされることを期待する」と述べた。


朝日新聞の報道です。
一審・福岡地裁は除斥期間の起算点を再発時とし、原告の請求通り国に計2675万円の賠償を命じたが、高裁は医療水準の向上をふまえると「再発時の肝炎がより重いとはいえない」と判断。起算点は最初の発症時で請求権がないとした国の主張を認めたため、原告が上告していた。
 乳幼児期の予防接種の注射器使い回しでB型肝炎になった患者をめぐっては、最高裁が06年に国の責任を認め、11年に国と患者が合意して救済法が成立。慢性肝炎については、発症から提訴までが20年未満の人に1250万円、20年を過ぎた人には150万~300万円が払われることになった。


訴えの内容です。
乳幼児期に集団ツベルクリン反応検査又は集団予防接種を受けたことによりB型肝炎ウイルスに感染して成人後にHBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,鎮静化をみたものの,その後にHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものである。本件は,上告人らが,被上告人に対し,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことにより精神的・経済的損害等を被ったと主張して,国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案である。

事実認定です。
(2) 上告人らのB型肝炎の発症状況
ア 上告人Aは,昭和33年4月生まれで,昭和34年9月までに受けた集団予防接種等によってHBVに感染し,昭和62年12月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成19年12月頃,ALT値が再び高値を示し,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症した。
イ 上告人Bは,昭和27年9月生まれで,昭和34年9月までに受けた集団予防接種等によってHBVに感染し,平成3年1月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成16年3月頃以降,ALT値が再び高値を示し,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症した


予防接種を受けてから30年近く経過してから発症したようです。このB型肝炎は、この記述の前に説明がありますが、随分長い時間を過ぎてから症状が出るようです。あの当時というか昭和50年代まで、注射針を変えずにうち回しをよくやってました。今から考えると酷いもんです。

(3) 本件訴訟の提起上告人Aは平成20年7月30日に,上告人Bは平成24年2月29日に,本件訴訟を提起した。

たぶん何が原因で感染したのか分からなかったのでしょう。

原審は
上告人Aにつき昭和62年12月から,上告人Bにつき平成3年1月からそれぞれ除斥期間を計算するのが相当である。

要するに時効だから仕方ないでしょう、諦めなさいという趣旨です。

最高裁は
(1) 民法724条後段所定の除斥期間の起算点は,「不法行為の時」と規定されており,加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には,加害行為の時がその起算点となると考えられる。しかし,身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害されることによる損害や,一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾病による損害のように,当該不法行為により発生する損害の性質上,加害行為が終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には,当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁,最高裁平成13年(オ)第1194号,第1196号,同年(受)第1172号,第1174号同16年10月15日第二小法廷判決・民集58巻7号1802頁,最高裁平成16年(受)第672号,第673号同18年6月16日第二小法廷判決・民集60巻5号1997頁参照)。
(2)
上告人Aは,昭和62年12月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成19年12月頃,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものであり,
上告人Bは,平成3年1月,HBe抗原陽性慢性肝炎を発症し,抗ウイルス治療によって,平成12年頃までにセロコンバージョンを起こして肝炎が鎮静化したが,平成16年3月頃以降,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したものである。

以上によれば,上告人らがHBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については,HBe抗原陽性慢性肝炎の発症の時ではなく,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が民法724条後段所定の除斥期間の起算点となるというべきである。


潜伏期間が長い病気ですから、実際に被害をうけたかどうか分かるまで相当時間がかかります。そこは救ってやれよという判断でした。

裁判官全員一致の意見でしたが、裁判官三浦守の補足意見
集団予防接種等の際の注射器の連続使用により,多数の者にHBVの感染被害が生じたことについては,その感染被害の迅速かつ全体的な解決を図るため,特措法の定める枠組みに従って,特定B型肝炎ウイルス感染者給付金(以下「給付金」という。)等を支給する措置が講じられている。
そして,特措法においては,特定B型肝炎ウイルス感染者の区分に応じて給付金の額が定められているところ,慢性B型肝炎にり患した者については,当該慢性B型肝炎を発症した時から20年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者(6条1項7号及び8号)とそれを除く者(同項6号)とが区分されている。これは,慢性B型肝炎による損害についての除斥期間を前提とするものと理解される


○特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等の支給に関する特別措置法
6条1項7号
七 慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者であって、現に当該慢性B型肝炎にり患しているもの又は現に当該慢性B型肝炎にり患していないが、当該慢性B型肝炎の治療を受けたことのあるもの(これらの者のうち、第一号から第五号までに掲げる者を除く。) 三百万円
8号
八 慢性B型肝炎にり患した者のうち、当該慢性B型肝炎を発症した時から二十年を経過した後にされた訴えの提起等に係る者(第一号から第五号まで及び前号に掲げる者を除く。) 百五十万円
それを除く者(同項6号)
六 慢性B型肝炎にり患した者(前各号、次号及び第八号に掲げる者を除く。) 千二百五十万円

確かに区分されてますね。

HBe抗原陽性慢性肝炎の発症後のセロコンバージョンにより非活動性キャリアとなり,その後,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症した場合,法廷意見が述べるとおり,HBe抗原陰性慢性肝炎を発症したことによる損害については,HBe抗原陰性慢性肝炎の発症の時が除斥期間の起算点となるから,その時から20年を経過する前にその損害賠償請求に係る訴えの提起をした者は,特措法6条1項6号に掲げる者に当たることになろう。


裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 菅野博之
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

この案件に関しては、救済法もできましたし、事件としては一件落着です。健康被害は一生涯もののようですが。

飯塚事件:HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定には証明力はある

2021-05-26 18:56:22 | 日記
平成30(し)76  再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
令和3年4月21日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  福岡高等裁判所
新証拠による旧証拠の証明力減殺が,他の旧証拠の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえず,それらの再評価を要することになるものではないとされた事例

いわゆる飯塚事件の事のようです。

  小学校に登校中のⅤ1(当時7歳)及びV2(当時7歳)を認め,両名が未成年者であることを知りながら,自己の運転する普通乗用自動車(以下「事件本人車」という。)に乗車させ,通学路外に連れ出して,未成年者である両名を略取又は誘拐し,同市内又はその周辺において,殺意をもって,両名の頸部を手で絞め付け圧迫し,両名をいずれも窒息により死亡させて殺害し,同県甘木市内の国道沿いの山中に,両名の死体を投げ捨てて遺棄したというものである。
ロリコン殺人です。被告は無罪を主張しました。
①S1らの目撃供述によれば,本件犯行に犯人が使用したと疑われる車両は,M1製の紺色ワゴンで,後輪がダブルタイヤであり,リアウインドウにフィルムが貼ってあるなどの特徴を有しており,犯人は被害者両名の失踪場所等に土地鑑を有する者であると推測されるところ,事件本人は前記車両と特徴を同じくする事件本人車を所有し,かつ,前記失踪場所等に土地鑑を有すること,②被害者両名の着衣から発 見され,被害者両名が犯人使用車両に乗せられた機会に付着したと認められる繊維片は,事件本人車と同型のWに使用されている座席シートの繊維片である可能性が高いこと,③事件本人車の後部座席シートからⅤ1と同じ血液型(ABO式。以下同じ。)であるz1型の血痕と人の尿痕が検出されているところ,被害者両名ともに殺害された時に生じたと認められる失禁と出血があり,事件本人が犯人であるとすれば,前記血痕及び尿痕の付着を合理的に説明できること,④警察庁科学警察研究所(以下「科警研」という。)が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定によれば,V2の遺体付近にあった木の枝に付着していた血痕並びに被害者両名の膣内容物及び膣周辺付着物の中に,犯人に由来すると認められる血痕ないし血液が混在しており,仮に犯人が1人であるとした場合には,その犯人の血液型はz2型,MCT118型はm1-m5型であり,いずれも事件本人の型と一致していること,⑤事件本人は,本件当時,亀頭包皮炎に罹患しており,外部からの刺激により亀頭から容易に出血する状態にあったから,事件本人が犯人であるとすれば,被害者両名の膣内容物等に犯人に由来すると認められる血液等が混在していたことを合理的に説明できること,⑥被害者両名が失踪した時間帯及び失踪場所は,事件本人が申立人を通勤先に事件本人車で送った後,事件本人方に帰る途中の時間帯及び通路に当たっていた可能性があり,他方で,事件本人にアリバイが成立しない 。

①は状況証拠にすらならないと思いますが、②以下は真っ黒ですね。

  本件再審請求は,①のS1の目撃供述の信用性が否定され,また,新証拠である筑波大学社会医学系法医学教室本田克也教授の鑑定書等によれば,④の科警研が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定の各証拠能力ないし信用性が否定され,その余のいかなる情況証拠を総合しても,事件本人を犯人と認めることはできない  
 ④の科警研が実施した血液型鑑定及びDNA型鑑定の各証拠能力ないし信用性が否定され,その余のいかなる情況証拠を総合しても,事件本人を犯人と認めることはできないから,以上の新証拠は確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせる。


完全に技術的な話になりました。
  ア 旧証拠のうち,科警研が実施したHLADQα型鑑定並びに帝京大学法医学教室石山昱夫教授が実施したミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定は,本田教授の鑑定書等によって証明力が減殺された科警研のMCT118型鑑定と立証命題が有機的に関連しているのであるから,前記3つの鑑定についてそれらの証明力を再評価しなければならない。イ そこで,HLADQα型鑑定の証明力を再評価すると,Ⅴ1の膣内容物(資料(2)),同人の膣周辺付着物(資料(3)),V2の膣内容物(資料(4))及び同人の膣周辺付着物(資料(5))から,科警研の血液型鑑定でz2型が検出され,MCT118型鑑定でm1型及びm5型が検出されているところ,確定判決は,これらの型は犯人由来の型であるとして,資料(2)から(5)までの全てに犯人の血液が混入していたと認定しているのであるから,HLADQα型鑑定においても,資料(2)から(5)までの全てから犯人由来の型が検出されるはずである。

これに対して

  HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力は,確定判決が説示するとおり,鑑定資料のDNA量や状態の不良,更にはこれらの鑑定自体の特性等に基づいて評価されるべきものであって,MCT118型鑑定の証明力減殺が,HLADQα型鑑定並びにミトコンドリアDNA型鑑定及びHLADQB型鑑定の証明力に関する評価を左右する関係にあるとはいえないから,それらの再評価を要することになるものではない。以上によれば,原々決定がこれらの鑑定の証明力を再評価しなかったことに誤りはない旨判示した原決定の判断は正当である。  

技術的なことは全く分かりませんが、他の証拠でも十分有罪な気がします。

裁判長裁判官 小池 裕
裁判官 池上政幸
裁判官 木澤克之 
裁判官山口 厚 
裁判官 深山卓也  

2人殺して死刑です。妥当だと思います。

遺言書に矛盾あるので、確認の裁判を起こすことは信義則違反ではない

2021-05-11 16:51:45 | 日記
令和2(受)645  遺言有効確認請求事件
令和3年4月16日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  大阪高等裁判所

相続人YがAの遺産について相続分を有することを前提とする前訴判決が他の相続人Xとの間で確定するなどしていた場合において,Xが自己に遺産全部を相続させる旨のAの遺言の有効確認をYに対して求める訴えを提起することが信義則に反するとはいえないとされた事例

(1) Y及びXは,いずれもAの子である。Aは,平成24年8月に死亡した。
(2) 平成25年1月,上告人の申立てにより本件遺言書の検認がされた。本件遺言書には,Aの有する不動産,動産,株式等の財産全部をYに相続させる旨が記載されていた


あるあるな相続、争族になってしまいました。

(3) Xは,平成26年6月,Yに対し,XがAの遺産を法定相続分の割合により相続したなどと主張して,Aが所有し又は持分を有していた複数の不動産についての同人からYに対する売買等を原因とする所有権移転登記等の抹消登記手続,上告人が本件不動産を占有していることによる不当利得の返還,Aの死亡後に上告人がA名義の口座から預金の一部を払い戻したことによる不当利得の返還等を求める訴えを提起した。

民放の教科書に出てきそうな単純明快な事件のように見えます。

(4)Yは,前訴において,本件不動産はAとの売買等により取得したものであり,預金の払戻しは生前にAから与えられた権限に基づくものであるなどと主張して前件本訴に係る請求を争うとともに,Aが財産全部をYに相続させる旨の有効な遺言をしたと主張し,これを証明するため,本件遺言書等を証拠として提出した。

この不動産は親から買い取ったのだから、相続の対象外だと主張しています。

前訴の第1審裁判所は,当事者の主張を整理した書面を作成し,Y及びXに対し,これを示して意見を求めた。上記書面には本件遺言に関する上記の主張は記載されていなかったが,Yは,同主張の記載がないことについて意見を述べなかった。
その後,Xは,Yに対し,本件遺言が有効である旨主張するのであれば,その主張はXがAの立替金債務を相続した旨の前件反訴における上告人の主張と矛盾することになるとして,これらの主張の位置付けについて明らかにするよう求めた。Yは,前件本訴に係る請求が本件遺言が無効であることを前提としたものであったため,これに対応して前件反訴を提起したにすぎず,主位的には本件遺言が有効であると主張するものである旨回答した。


買い取ったはずならば、遺言書にかかれるのはおかしいだろと一審で指摘されましたが、Yはこの件については何も言いませんでした。だから、矛盾があるということは暗に認めたじゃないかとして、不動産の買い取りはなかったとXは主張しています。

(5) 前訴の第1審裁判所は,平成28年8月,前件本訴については,上告人がAとの売買等により本件不動産を取得した事実は認められず,預金の払戻しは権限なくされたものであると判断するなどして,所有権移転登記等の抹消登記手続請求を認容し,不当利得返還請求を一部認容するなどし,前件反訴については,上告人による立替払の事実が認められないと判断して請求を棄却する判決をした。上記判決においては,XがAの遺産について相続分を有することについては争いがないものとされ,本件遺言の有効性についての判断はされなかった。

まあ、そうなりますね。

最高裁は
前訴では,本件不動産はAとの売買等により取得したものであり,預金の払戻しは生前にAから与えられた権限に基づくものであるなどと主張して前件本訴に係る請求を争っていたのであって,前訴の判決においては,上記の主張の当否が判断されたにとどまり,本件遺言の有効性について判断されることはなかった。

おいおい、なんかおかしくないですか?売買が成立したかどうかで、遺言書の有効性まで連動している話でしょう。

本件訴えは,前件本訴とは訴訟によって実現される利益を異にするものである。そして,前訴では,受訴裁判所によって前件本訴に係る請求についての抗弁等として取り上げられることはなかったものの,Yは,本件遺言が有効であると主張していたのであり,前件反訴に関しては本件遺言が無効であることを前提とする前件本訴に対応して提起したにすぎない旨述べていたものである。

前訴において,Yは,Xに対し,XがAの立替金債務を法定相続分の割合により相続したと主張し,その支払を求めて前件反訴を提起したが,Yによる立替払の事実が認められないとして請求を棄却する判決がされ,前件反訴によって利益を得ていないのであるから,本件訴えにおいて本件遺言が有効であることの確認がされたとしても,Yが前件反訴の結果と矛盾する利益を得ることになるとはいえない。

以上と異なる見解の下に,本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。
本件訴えの提起が信義則に反するとはいえない。


第二小法廷 全員一致
裁判長裁判官 三浦 守
裁判官 菅野博之
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

と言っているのですが、どの法令のことを言っているのかよく分かりません。判決文の手抜きじゃないですか?なんか微妙に論点がずらされている気がするのですが。

実効性のない判決:弁護士の利益相反

2021-05-08 11:48:28 | 日記
令和2(許)37  訴訟行為の排除を求める申立ての却下決定に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
令和3年4月14日  最高裁判所第二小法廷  決定  破棄自判  知的財産高等裁判所
 弁護士職務基本規程(平成16年日本弁護士連合会会規第70号)57条に違反する訴訟行為について,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできない

特許権については、なかなか報道されないので岩田合同法律事務所の解説を見ます。
コピーができない設定になっているので、直接そちらを見てください。
Xは許可を得て特許を使わせてもらっています。が、特許権者Yが不法行為をしたとの訴えです。
①YがXに対して損害賠償請求をしていますがそれを取り下げろ
②Xの弁護士Zが出てきているが、Yは不法行為をしていないので損が賠償請求を取り下げろ
③Xは使用許諾時から今までの分をZに使用確認をしろ
Zは弁護士で、弁護士倫理規定に反しているという訴えのようです。

(1)基本規程57条は,本文において,共同事務所の所属弁護士は,他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む。)が,基本規程27条1号の規定により職務を行い得ないものとされている「相手方の協議を受けて賛助し,又はその依頼を承諾した事件」等については,職務を行ってはならないと定め,ただし書において,職務の公正を保ち得る事由があるときは,この限りでないと定めている。

第五十七条所属弁護士は、他の所属弁護士(所属弁護士であった場合を含む)が、第二十七条又は第二十八条。規定により職務を行い得ない事件については、職務を行ってはならない。ただし、職務の公正を保ち得る事由があるときは、この限りでない。

第二十七条弁護士は、次の各号のいずれかに該当する事件については、その職務を行ってはならない。ただし、第三号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件


利益相反事件っぽいですね。

(2)特許の特許権者である相手方らが,抗告人によって上記特許に係る特許権が侵害されている旨主張して,抗告人に対し,不法行為に基づく損害賠償を求めるものである。
(3)Z弁護士は,平成20年から相手方塩野義製薬株式会社に組織内弁護士として所属し,平成30年2月から令和元年10月までの間,本件訴訟の提起のための準備を担当していた。Z弁護士は,同年12月31日,相手方塩野義製薬を退社し,令和2年1月1日,阿部弁護士らの所属する阿部国際総合法律事務所に入所した。
(4)阿部弁護士らは,抗告人から令和2年1月8日付け委任状の交付を受けて本件訴訟の訴訟代理人となった。
(5)相手方らは,令和2年2月7日,東京地方裁判所に対し,本件事務所の所属弁護士であるZ弁護士は基本規程27条1号の規定により本件訴訟につき職務を行い得ないのであるから,本件訴訟において阿部弁護士らが抗告人の訴訟代理人として訴訟行為をすることは,基本規程57条に違反すると主張して,阿部弁護士らの各訴訟行為の排除を求める申立てをした。なお,Z弁護士は,同月10日,本件事務所を退所した。


わお!というしかありません。教科書レベルの利益相反です。塩野義さんは裁判する前に懲戒請求して叩きのめしておいた方が良かったんじゃないでしょうか。これが最高裁まで争われる意味が分かりません。Z弁護士のメンツだけで争った?

原審は
(1)弁護士法25条1号に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解される。
(2)相手方である当事者は,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることができるものと解するのが相当である。
(3)本件訴訟における阿部弁護士らの各訴訟行為について,職務の公正を保ち得る事由があるものとは認められず,同各訴訟行為は基本規程57条に違反する。


ごもっともに見える判断です。
ところが、最高裁は
基本規程は,日本弁護士連合会が,弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかにするため,会規として制定したものであるが,基本規程57条に違反する行為そのものを具体的に禁止する法律の規定は見当たらない。

つまり倫理規定は所詮努力義務だから、違法性はないと言っているようです。

基本規程57条に違反する訴訟行為については,相手方である当事者は,同条違反を理由として,これに異議を述べ,裁判所に対しその行為の排除を求めることはできないというべきである。

よく言う「良き法律家は悪しき隣人」を地でいっている判断です。最高裁判事も手の甲で意図的にお尻を触っても痴漢の要件を満たさないから無罪だといっているわけです。やらしいですね。

裁判官草野耕一の補足意見
これは阿部弁護士らがA弁護士の採用を見合わせることなく本件訴訟を受任したことが弁護士の行動として適切であったという判断を含意するものではない。

そりゃそうでしょう。
日本弁護士連合会がこの負託に応え,以って弁護士の職務活動の自由と依頼者の弁護士選択の自由に対して過剰な制約を加えることなく弁護士の職務の公正さが確保される体制が構築され,裁判制度に対する国民の信頼が一層確かなものとなることを希求する次第である。

こういうのは裁判所に持って来ないで弁護士会でやれよと言ってます。
そりゃそうですけどね、弁護士会は単なる互助会であってちゃんと倫理を守らせる会になっているとは思えません。以前に、法律事務所のパートの人妻に手を出して、元プロボクサーがぶん殴って性器を切り落とした事件がありましたが、当該弁護士はお咎めなしで済ませました。こんな弁護士会に期待できますか?

裁判長裁判官 草野耕一
裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 岡村和美

トンデモ判決:養父母は養子の面会交流権が制限=事実上権利はないに等しい

2021-05-04 11:21:21 | 日記
令和2(許)4  子の監護に関する処分(面会交流)申立て却下審判に対する抗告審の取消決定に対する許可抗告事件
令和3年3月29日  最高裁判所第一小法廷  決定  破棄自判  大阪高等裁判所
父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできない

これは昨日の記事の続きです。
昨日の判決は一緒に生活して子供の成長を助ける案件ですが、この判決は面会交流です。面会交流は、お盆や正月に爺ちゃん婆ちゃんと会うぐらいの感覚で、通常月に1回以上会うことを指します。

実父は事実認定によると死亡しているようです。昨日の祖母が孫と合わせろと要求したところ、拒否されたという経緯のようです。

地裁では
父母以外の事実上子を監護してきた第三者が,子との間に父母と同視し得るような親密な関係を有し,上記第三者と子との面会交流を認めることが子の利益にかなうと考えられる場合には,民法766条1項及び2項の類推適用により,子の監護に関する処分として上記の面会交流を認める余地がある。相手方らは,本件子の祖父母であり,Bを補助して事実上本件子を監護してきた者であるから,相手方らと本件子との面会交流を認めることが本件子の利益にかなうか否かなどを審理することなく,本件申立てを不適法として却下することはできない。

極めてマトモな判決です。ところが、

(1) 民法766条1項前段は,父母が協議上の離婚をするときは,父又は母と子との面会交流その他の子の監護について必要な事項は,父母が協議をして定めるものとしている。そして,これを受けて同条2項が「前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。」と規定していることからすれば,同条2項は,同条1項の協議の主体である父母の申立てにより,家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される

だから祖母が養母になったわけですよね。それを実母をなぜ優先する必要があるのでしょうか?子供を放置して他の男と同棲しているような母親ですよ。監護を放棄していた時期をなぜ検討の対象に入れないのか。法律がないから?だったら判例で保管するのが裁判所の仕事でしょう。この裁判官たちは、思考停止になっている無能極まりない裁判官たちです。

他方,民法その他の法令において,事実上子を監護してきた第三者が,家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく,上記の申立てについて,監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。なお,子の利益は,子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照),このことは,上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。

積極的にできないとするならもう少しその根拠を示しなさいよ。

結論
父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として上記第三者と子との面会交流について定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。

酷いですね。きちんとなぜ駄目なのか説明していない、何故養父母が養子に会えないのか説明しろよ。頭がおかしいとしか言いようがないです。

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

第一小法廷はどうお頭がおかしい、傲慢極まりない裁判官ばかりのようです。
次回の衆議院選挙ではこいつらに×をつけましょう。

糞判決:養子縁組した祖母に監護権は渡さない

2021-05-03 11:10:52 | 日記
令和2(許)14  子の監護に関する処分(監護者指定)審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
令和3年3月29日  最高裁判所第一小法廷  決定  破棄自判  大阪高等裁判所

父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできない

日経新聞の報道です
事実上孫を育ててきた祖母が、養育を担う「監護者」に自分を指定するよう、裁判所に申し立てることは認められるか――。こうした点が争われた家事審判で、最高裁第1小法廷(池上政幸裁判長)は31日までに、認められないとの初判断を示した。監護者の指定の申し立ては父母にしかできないとした。
監護者は子の養育をする人。父母が監護者になることが多いが、離婚などを背景に祖父母ら第三者が監護者となることもある。
父母が離婚の際に裁判所に申し立てて第三者を監護者に指定することはできる。一方、その申し立てを第三者自身ができるかどうかは判例が割れていた。最高裁が民法の規定を厳格に判断した形だが、専門家には「父母に問題があれば第三者の申し立ても認めるべきだ」との意見もあり、法制審議会(法相の諮問機関)でも関連の議論が始まっている。
今回問題となったのは、未成年の子について離婚後に親権を持った母親が多忙で、母方の祖母が主に世話をしていたケース。母親は再婚相手とともに子の養育を望んだが、祖母が反対し、子も祖母との生活を続けたいと希望した。祖母が自身を監護者に指定するよう、裁判所に家事審判を申し立てた。


産経新聞の報道です。
許可抗告審では、娘が離婚後に別の男性(後に孫と養子縁組)と暮らすようになり、孫と同居する祖母が監護者指定を求めていた。子供の事実上の監護者である第三者が、監護者指定を求めることができるかが争点で、2審大阪高裁は、子の利益のためなら、父母以外も申し立てができるとの判断を示していた。
 第1小法廷は、民法では子の監護について、父母の離婚協議の規定以外に定めておらず、「申し立ては父母が予定されている」と指摘。子の利益は最も優先する必要があるが、そのことが第三者の申し立てを可能にする根拠にはならず、「父母以外の第三者は、事実上子供を監護しても審判を申し立てられないと解するのが相当」と判断した。
また、母親とともに孫の世話をしていた祖父母が、母親の死後、孫を引き取って暮らす父親に対し、孫との面会交流を求めた別の許可抗告審でも、第1小法廷は同様に父母以外は申し立てを認めないと判断した。


この報道を見ると、裁判官は分かってないなと思います。よほど家庭円満な家なのでしょうか。両親であっての子供の面倒を全く見ないで放置し、餓死させる事件は度々起こっていますし、虐待死させる事件も起きています。今回の事例はそこまでではないにせよ、実質子供を放置していたわけですから、親権は取り上げてもいいくらいでしょう。

(1) 実母と前夫は,平成21年12月,本件子をもうけたが,平成22年2月,本件子の親権者を実母と定めて離婚した。
(2) 実母及び本件子は,平成21年12月,実母の母である相手方と相手方宅で同居するようになり,以後,実母と相手方が本件子を監護していた。
(3) 実母は,平成29年8月頃,本件子を相手方宅に残したまま,相手方宅を出て後の再婚相手と同居するようになり,以後,相手方が単独で本件子を監護している。
(4) 実母と再婚相手は,平成30年3月に婚姻し,その際,再婚相手は,本件子と養子縁組をした。


子どもを放置して、男と同棲を始めたのですよね。結婚に至るまで、子どもと接していたのでしょうか?きちんと接していれば、孫を養子としなかったでしょうし、祖母もここまで怒らなかったでしょう。発達心理学の観点からしても、かなり問題が出るでしょう。

原審は
子の福祉を全うするためには,民法766条1項の法意に照らし,事実上の監護者である祖父母等も,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることができると解すべきである。相手方は,事実上本件子を監護してきた祖母として,本件子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることができる。

ごもっともです。これ以外の判例があるのでしょうか?というくらいです。というか、実父はこのときに親権を争わなかったのでしょうか。
実は、この766条ほどまともに運用されていないのが現状です。例えば、弁護士が離婚相談を受けたときに、連れ去りをそそのかします。子供を連れて家ですることですが、これは不法行為です。本来なら弁護士懲戒請求の対象になるべき案件です。
そして、長期にわたり子供と一緒に暮らしていたということを事実を作り上げれば、連れ去った側がどんなに不倫をしていようと、麻薬中毒であろうと、ソープランドで稼いでいようと、監護をしていたということで親権が有利になります。泥棒に置い銭状態これが民放766条の運用実態です。ですので、地裁は非常にまともな判断をしたと言えます。

最高裁は
(1) 民法766条1項前段は,父母が協議上の離婚をするときは,子の監護をすべき者その他の子の監護について必要な事項は,父母が協議をして定めるものとしている。そして,これを受けて同条2項が「前項の協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,家庭裁判所が,同項の事項を定める。」と規定していることからすれば,同条2項は,同条1項の協議の主体である父母の申立てにより,家庭裁判所が子の監護に関する事項を定めることを予定しているものと解される。

ちゃんちゃらおかしいですね。実態を知らない訳じゃないでしょう。こんな建前だけをよくもまあ臆面もなく言えたもんです。

他方,民法その他の法令において,事実上子を監護してきた第三者が,家庭裁判所に上記事項を定めるよう申し立てることができる旨を定めた規定はなく,上記の申立てについて,監護の事実をもって上記第三者を父母と同視することもできない。なお,子の利益は,子の監護に関する事項を定めるに当たって最も優先して考慮しなければならないものであるが(民法766条1項後段参照),このことは,上記第三者に上記の申立てを許容する根拠となるものではない。

司法の傲慢さが露骨に出ています。我こそは全知全能の裁判官なり!と言わんばかりです。先に書いたように、連れ去り側がどんなに反社会勢力構成んであろうが、精神疾患であろうがやったもん勝ちなのです。実母は権利の上で子供を弄んだと言ってもいいレベルなのです。

結論
父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。


裁判官全員一致でクソ
判長裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

補足意見も出ないって、こいつら全員頭おかしいです。もっと現場を見ろよ。法の運用が無茶苦茶になっているのをちゃんと見て来い。

妥当判決:相続に関して事実離婚を認める

2021-05-02 08:42:03 | 日記
令和2(受)753  退職金等請求事件
令和3年3月25日  最高裁判所第一小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

 民法上の配偶者は,その婚姻関係が事実上の離婚状態にある場合には,中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たらない

まずは訴えの趣旨を見ていきます。
1 被上告人の母であるAは,平成26年に死亡したところ,当時,株式会社Bの従業員であり,同社は,上告人機構との間でAを被共済者とする中小企業退職金共済法所定の退職金共済契約を締結していた。・・・中小企業退職金共済法,JPP基金規約及び出版基金規約において,本件退職金等の最先順位の受給権者はいずれも「配偶者」と定められている。被上告人は,Aとその民法上の配偶者であるCとが事実上の離婚状態にあったため,Cは本件退職金等の支給を受けるべき配偶者に該当せず,被上告人が次順位の受給権者として受給権を有すると主張している。

死亡退職金が出ることになりました。配偶者は婚姻関係は事実上破綻していましたが、籍だけは残っていた状態です。その退職金は法律上にしかすぎない配偶者に渡すべきかの判断です。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要
(1) 中小企業退職金共済法所定の退職金共済契約に基づく退職金について中小企業退職金共済法10条1項は,上告人機構は被共済者が退職したときは,その者(退職が死亡によるものであるときは,その遺族)に退職金を支給する旨を規定している。上記遺族について,同法14条1項は,同項各号に掲げる者とする旨を規定しており,同項1号は,「配偶者(届出をしていないが,被共済者の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)」を,同項2号は,「子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹で被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していたもの」を,同項3号は,「前号に掲げる者のほか,被共済者の死亡の当時主としてその収入によつて生計を維持していた親族」を,同項4号は,「子,父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹で第二号に該当しないもの」をそれぞれ掲げている。そして,上記退職金を受けるべき遺族の順位について,同条2項は,同条1項各号の順位による旨を規定している。

この事件の場合、退職金を遺族に渡すべきと規定しています。その遺族についての例示列挙が出ていますが、順位も出ています。

(2) JPP基金規約に基づく遺族給付金について
確定給付企業年金法47条は,確定給付企業年金の給付の一種である遺族給付金は,確定給付企業年金に係る規約において遺族給付金を支給することを定めている場合であって,加入者等の給付対象者が死亡したときに,その者の遺族に支給するものとする旨を規定している。・・・同条1号は,「配偶者(届出をしていないが,給付対象者の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)」を,同条2号は,「子(中略),父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹」を,同条3号は,「前二号に掲げる者のほか,給付対象者の死亡の当時主としてその収入によって生計を維持していたその他の親族」をそれぞれ掲げている。


事実婚とその子供が含まれるとしています。事実上の婚姻ということは、重婚を認めることになるので、私は一貫してこの法律は廃止すべきだと思っております。案の定、この事件でも同様の問題が出ています。事実婚が認められているなら、事実離婚も認めろと

(3) 出版基金規約に基づく遺族一時金について
ア 平成25年改正前厚生年金保険法130条3項及び同項の委任を受けた厚生年金基金令(平成26年政令第73号による廃止前のもの。以下同じ。)26条1項は,厚生年金基金は,加入員等の給付対象者の死亡に関し,その遺族に一時金たる給付の支給を行うことができる旨を規定している。上記遺族について,同条2項は,同項各号に掲げる者のうち規約で定めるものとする旨を規定しており,同項1号は,「配偶者(届出をしていないが,給付対象者の死亡の当時事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者を含む。)」を,同項2号は,「子(中略),父母,孫,祖父母及び兄弟姉妹」を,同項3号は,「前二号に掲げる者のほか,給付対象者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたその他の親族」をそれぞれ掲げている。

ここも事実婚を認めていますね。せめて婚約関係にあるとかそういうことに限定すべきだと思いませんか?

(4) Aの婚姻関係について要約すると
二人の間には子供がおらず、結婚して5年で別居、配偶者は他の女性と同棲、死んだときも葬儀にも出てこない状態で、どう見ても婚姻関係があるとは思えない状態です。

3(1) 中小企業退職金共済法は,中小企業の従業員の福祉の増進等を目的とするところ(1条),退職が死亡によるものである場合の退職金について,その支給を受ける遺族の範囲と順位の定めを置いており,事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む配偶者を最先順位の遺族とした上で(14条1項1号,2項),主として被共済者の収入によって生計を維持していたという事情のあった親族及びそのような事情のなかった親族の一部を順次後順位の遺族としている(同条1項2~4号,2項)。

一応法律上は夫婦関係にあったので、夫に支払われました。

結論
民法上の配偶者は,その婚姻関係が実体を失って形骸化し,かつ,その状態が固定化して近い将来解消される見込みのない場合,すなわち,事実上の離婚状態にある場合には,中小企業退職金共済法14条1項1号にいう配偶者に当たらないものというべきである。

裁判官全員一致
裁判長裁判官 木澤克之
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

これについて、補足意見も何も出ないというのは正直驚きです。事実婚を認めるのであれば、事実離婚も認めるべきだというのは筋が通っています。ただ、今後はどの状態になれば事実離婚として認めるべきか明確にしてもらいたいところです。例えば、離婚調停中であれば事実離婚として認めるであるとか。
それでも個人的には事実婚は認めるべきではありません。複数人の妻をもつ重婚罪を暗に認めることになりますから。事実離婚についてはこういう問題は発生しませんので、もっと容易に認めるべきではないでしょうか。

妥当判決:電気通信事業者は通信内容の守秘義務を守らなければならない

2021-05-01 17:30:08 | 日記
令和2(許)10  検証物提示命令に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
令和3年3月18日  最高裁判所第一小法廷  決定  破棄自判  東京高等裁判所

1 電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者は,民訴法197条1項2号の類推適用により,職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて証言を拒むことができる
2 電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者の特定に資する氏名,住所等の情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書について,検証の目的として提示する義務を負わない


(2)相手方は(映像販売会社A),動画配信サービス等の提供に係るウェブサイトを管理運営しているところ,同ウェブサイトに設けられていた顧客からの問合せ用のフォームを通
じて,脅迫的表現を含む匿名の電子メールを受信した。本件メールは,抗告人(電気通信事業者)の管理する電気通信設備を用いて送信されたものであった。
(3) Aは,本件メールの送信者に対する損害賠償請求訴訟を提起する予定であり,本件送信者の氏名,住所等が記録され,又は記載された電磁的記録媒体又は文書についてあらかじめ証拠調べをしておかなければその証拠を使用することが困難となる事情があると主張し,訴えの提起前における証拠保全として,本件記録媒体等につき検証の申出をするとともに抗告人に対する検証物提示命令の申立てをした。


恐らく、著作権無視で動画をupした人がいたのでしょう。賠償金請求のために、upした人を特定したい。その証拠を保全したいと言ったところ、プロバイダーは断ったようです。その理由が、お問い合わせフォームに書き込まれたようですが、文章があまりにも脅迫的だったので無視したのではないかと思います。
原審では、脅迫的内容はともかくとして、証拠保全に必要だから教えなさいとしたようです。

(1) 民訴法197条1項2号は,医師,弁護士,宗教等の職(以下,同号に列挙されている職を「法定専門職」という。)にある者又は法定専門職にあった者(以下,併せて「法定専門職従事者等」という。)が職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて尋問を受ける場合には,証言を拒むことができると規定する。・・・・電気通信事業法4条1項は,「電気通信事業者の取扱中に係る通信の秘密は,侵してはならない。」と規定し,同条2項は,「電気通信事業に従事する者は,在職中電気通信事業者の取扱中に係る通信に関して知り得た他人の秘密を守らなければならない。その職を退いた後においても,同様とする。」と規定する。これらは,電気通信事業に従事する者が,その職務上,電気通信の利用者の通信に関する秘密を取り扱うものであり,その秘密を保護するために電気通信事業に従事する者及びその職を退いた者に守秘義務を課したものと解される。

電気通信事業法の事業者に守秘義務が課されており、類推適用の形をとっています。

電気通信事業従事者等は,民訴法197条1項2号の類推適用により,職務上知り得た事実で黙秘すべきものについて証言を拒むことができると解するのが相当である。

まあそうなりますね。

電気通信事業法4条1項が通信の秘密を保護する趣旨は,通信が社会生活にとって必要不可欠な意思伝達手段であることから,通信の秘密を保護することによって,表現の自由の保障を実効的なものとするとともに,プライバシーを保護することにあるものと解される。電気通信の利用者は,電気通信事業においてこのような通信の秘密が保護されているという信頼の下に通信を行っており,この信頼は社会的に保護の必要性の高いものということができる。

これがあるから、2chやその類似する書き込みサイトは保護されているわけです。

このことは,送信者情報について電気通信事業従事者等が証人として尋問を受ける場合と,送信者情報が記載され,又は記録された文書又は準文書について電気通信事業者に対する検証物提示命令の申立てがされる場合とで異なるものではないと解するのが相当である。・・・以上によれば,電気通信事業者は,その管理する電気通信設備を用いて送信された通信の送信者情報で黙秘の義務が免除されていないものが記載され,又は記録された文書又は準文書について,当該通信の内容にかかわらず,検証の目的として提示する義務を負わないと解するのが相当である。

要するに誰がどの人に何を伝えたか(動画等含め)について、プロバイダーは開示する義務はないよと言っています。

第一小法廷裁判官全員一致でした。

裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

まあ法律が守秘義務を課している以上仕方ありませんね。あまりにも簡単に開示請求に応じられると、内部告発もできなくなりますし、場合によっては仕返しの被害者にもなりえますから。