最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

これから注目の裁判「鳥二郎」vs「鳥貴族」

2015-06-30 17:43:52 | 日記
「鳥二郎」と「鳥貴族」のロゴが似ているということで、商標登録の異議申し立てが鳥貴族より出されました。
特許庁の判断では、類似とは認められないとのことで、鳥二郎の商標がそのまま継続使用が認められるになります。

恐らく、鳥貴族は黙っていないでしょう。最高裁まで行く可能性があります。
とはいえ、この裁判におそらく最低でも3-4年はかかるでしょう。こういう裁判は1年で最高裁まで行けるようにしてもらいたいものです。
両社のロゴはこちら


【管理番号】第1300762号
【総通号数】第186号
(190)【発行国】日本国特許庁(JP)
【公報種別】商標決定公報
【発行日】平成27年6月26日(2015.6.26)
【種別】異議の決定
【異議申立番号】異議2014-900320(T2014-900320/J7)
【異議申立日】平成26年11月21日(2014.11.21)
【確定日】平成27年4月23日(2015.4.23)
【審決分類】
T1651.25 -Y  (W43)
T1651.261-Y  (W43)
T1651.262-Y  (W43)
T1651.263-Y  (W43)
T1651.271-Y  (W43)
T1651.4  -Y  (W43)
【異議申立件数】1
(732)【権利者】
【氏名又は名称】株式会社秀インターワン
【住所又は居所】京都府京都市中京区烏丸通蛸薬師上ル七観音町637番地 インターワンプレイス烏丸ビル7F
【異議申立人】
【氏名又は名称】株式会社 鳥貴族
【住所又は居所】大阪府大阪市浪速区立葉一丁目2番12号
【代理人】
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 正樹
【事件の表示】
 登録第5698660号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。
【結 論】
 登録第5698660号商標の商標登録を維持する。
【理 由】
第1 本件商標
 本件登録第5698660号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成26年5月14日に登録出願,同年8月14日に登録査定,第43類「飲食物の提供」を指定役務として,同月29日に設定登録されたものである。
  
第2 引用商標
 1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は,以下の2件であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5353761号(以下「引用商標1」という。)は,「炭火串焼 鶏ジロー」の文字を標準文字で表してなり,平成22年4月7日に登録出願,第43類「串焼きを主とする飲食物の提供」を指定役務として,同年9月17日に設定登録されたものである。
(2)登録第5353762号商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,平成22年4月7日に登録出願,第43類「串焼きを主とする飲食物の提供」を指定役務として,同年9月17日に設定登録されたものである。
 2 申立人が,本件商標が商標法第4条第1項第10号及び同15号に該当するとして引用する商標(以下「『鳥貴族』の標章」という。)は,別掲3のとおりの構成からなり,「焼鳥を主とする飲食物の提供」に使用するものである。
 3 申立人が,本件商標が商標法第8第1項に該当するとして引用する商願2014-36646(登録第5

外国のサーバーで管理してたから国内法は適応されない?電磁的記録等送信頒布罪成立

2015-06-27 13:39:38 | 日記
平成25年(あ)第574号 わいせつ電磁的記録等送信頒布,わいせつ電磁的記録有償頒布目的保管被告事件
平成26年11月25日 第三小法廷決定

日本国内で作ったわいせつ画像を、アメリカのサーバに送り日本時向けのマニアに有料配信を行っていた。法律は国内のみ有効になるので、弁護側は無罪を主張、それに対して検察側は日本事務所で多数のDVD等を押収した。この多数の押収されたDVDが海外に送信するためのものとして認められ、電磁的記録等送信頒布罪及びわいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪となった。


これが国内にサーバがあれば、即わいせつ物頒布の罪(刑法175条)になります。このとき有償か無償かは関係ないようです。
今回は国外にサーバがあり、そのサーバから動画が配信されるので、国内法は適用されないというのが被告側の主張のようです。
ある人が海外に行って、そこで犯罪を犯したことについては国内法が適用されないのは当然ですが、今回はサーバがあちらで日本から操作していたことが問題になります。サーバはどこにあろうが、ネットにつながっていれば操作できます。
ということで、大量にあったDVDを証拠としてわいせつ電磁的記録有償頒布目的保管罪となることは納得です。
ところが、電磁的記録等送信頒布罪というのは若干無理があります。国内のPCから海外のサーバに、一般人が見られる前提でデータを送った時点で犯罪が成立することになります。直接サーバに書き込まず、間接的にだれから受け取った上で本サーバに書き込んだ場合、犯罪は成立しなくなります。
政治犯、思想犯は現在日本ではありませんが、名誉棄損の場合は充分にあり得る話です。
これはさすがに司法の領域を超えていますが、ネット上の犯罪に関しては、国際協力機関や条約を結んだうえでやった方がいいと思います。

今回の判断は、おおむね妥当ですが若干勇み足気味かなという感じがします。

第三小法廷決定

裁判長裁判官 大谷剛彦
裁判官 岡部喜代子
裁判官 大橋正春
裁判官 木内道祥
裁判官 山崎敏充

JVである会社が勝手に違反やってた。他の会社も責任取る?

2015-06-22 09:41:49 | 日記
平成25年(受)第1833号 賠償金請求事件
平成26年12月19日 第二小法廷判決

JV(ジョイントベンチャー)で甲社と乙社が下水道工事を受注しました。ところが、甲社が独占禁止法違反をやってしまいました。罰が確定して公正取引委員会から罰金命令を受けましたが、甲社は払えずそのままになってしまいました。その罰金と遅延損害金8.25%を違反をやっていない乙社に払えということを不服として裁判になりました。
なお、自治体との契約では

「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独禁法」という。)の規定に違反する行為があったとして排除措置命令又は課徴金納付命令(以下,併せて「排除措置命令等」という。)を行い,これが確定した場合,乙は,甲に対し,不正行為に対する賠償金として,請負金額の10分の2相当額を甲の指定する期限までに支払わなければならない(以下,この条項を「本件賠償金条項」という。)

という一文がありました。これはやり過ぎではないのか?というのが上告人の主張です。

これは疑問点があります。
1つは、乙社は善意の第三者であったかどうか。これは、裁判の中で事実認定で考慮されませんでした。私は考慮すべきではないかと思います。
2つには、甲社と乙社の間には役員の出向等の人的交流はなかったのか。形式上でも知りうる立場にあったと推測できるというわけでもなさそうです。
3つには、資本関係はあったのか。あれば法人格否認の法理で排除できる話ではなかったのか。
なぜ、この3点が論じられなかったのか正直言って疑問です。それだけ、自治体との契約が重視されるのか、この点について判決文ではこのように述べています。

被上告人は,共同企業体の構成員のうちいずれかの者についてのみ排除措置命令等が確定した場合に,不正行為に関与せずに排除措置命令等を受けていない構成員や,排除措置命令等を受けたが不服申立て手続をとって係争中の構成員にまで賠償金の支払義務を負わせようというのであれば,少なくとも,上記「乙」の後に例えば「(共同企業体にあっては,その構成員のいずれかの者をも含む。)」などと記載するなどの工夫が必要であり

契約でそうなっているんだから、というのが判決理由になっています。そして判決は、罰金と遅延損害金を乙社は払えと全員一致で判決が出ました。

千葉勝美裁判官は付帯意見として、「契約の段階から信頼できるかどうか確認してるから、JVをやってるんだよね」という趣旨を述べています。
これは経営の実態を分かっていないとしか言いようがありません。技術的な信頼性であればお互い分かるでしょう。取引については、そこまでは知りようがありません。個人間であれば、その人がどのくらい信用できるかどうかがある程度分かりますが、契約部署はJV先の仕入れ担当の行動まで把握できません。個人同士であっても、夫婦間の問題のように連帯保証を義務付けるにもかなり問題があるような事例がある中で、法人同士で事実上の連帯責任は難しいでしょう。

しかし同時に、独占禁止法を順守させるためにプレッシャーをかけるという「政策」的側面は納得しますが、それは裁判所がやる仕事ではなく立法がやるべきことで、千葉勝美氏の付帯意見は的を得ていません。

私自身も契約書に事実上の連帯責任を謳っており社印が押されていれば、その契約は納得されたものとして見なされるべきで、判決の内容そのものについては仕方ないのかなという気がします。

第二小法廷
裁判長裁判官 小貫芳信
裁判官 千葉勝美
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸

不動産業を営む人にとって航空機リースは事業所得になりえるか

2015-06-16 11:26:13 | 日記
平成24(行ヒ)408  所得税更正処分取消等請求事件
平成27年6月12日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所


何が論点なのか全然分かりませんでしたが、その道に詳しい人に聞いてようやくわかりました。

ある不動産業者が余剰資金を使って匿名組合経由で航空機リースのファンドを組んでいたようです。ところが利益が出るはずのファンドが、大赤字に転落してしまったため、その損失を不動産事業の収益から控除対象として申告しました。が、税務署はそれを認めず税金を払えと言う裁判でした。
論点は、不動産業者にとって航空機リースは事業所得たりえるか?という点のようです。

これに関して、裁判官は全員一致で以下のように判断しています。

匿名組合契約に基づき匿名組合員が営業者から受ける利益の分配に係る所得は,当該契約において,匿名組合員に営業者の営む事業に係る重要な意思決定に関与するなどの権限が付与されており,匿名組合員が実質的に営業者と共同して事業を営む者としての地位を有するものと認められる場合には,当該事業の内容に従って事業所得又はその他の各種所得に該当し,それ以外の場合には,当該事業の内容にかかわらず,その出資が匿名組合員自身の事業として行われているため事業所得となる場合を除き,雑所得に該当するものと解するのが相当である。

この不動産業者が、不動産のみの賃貸と仲介をしているのであれば、この判断は妥当でしょう。不動産・物品のリースまではやってなかったようで、やはりこの判断は妥当とのようです。
これは事実認定のみが争点だったようです。

第二小法廷

裁判長裁判官 千葉勝美
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸

下級審 永山基準は妥当か?

2015-06-12 21:12:05 | 日記
千葉・柏の連続通り魔に無期懲役判決 「刑務所出たらまた人を殺す」

 千葉県柏市で昨年3月、2人が死傷した連続通り魔事件で、強盗殺人などの罪に問われた住居不定、無職、竹井聖寿(せいじゅ)被告(25)の裁判員裁判の判決公判が12日、千葉地裁で開かれ、小森田恵樹裁判長は無期懲役(求刑無期懲役)を言い渡した。
 起訴状によると、竹井被告は昨年3月3日夜、柏市の路上で会社員の池間博也さん=当時(31)=のバッグを奪いナイフで刺殺。自転車の男性の手を切り、別の男性2人を脅し財布や車を奪うなどしたとされる。
 5日の最終意見陳述で竹井被告は「社会に対する復讐心は消えず、遺族に謝罪の気持ちはない。刑務所から出たらまた殺人を犯すので死刑を望みます」と述べていた。


死刑にならずに無期懲役になったのは、永山基準が適用されたからでしょう。この基準は、(1)犯罪の性質、(2)動機、計画性など、(3)犯行態様、執拗(しつよう)さ・残虐性など、(4)結果の重大さ、特に殺害被害者数、(5)遺族の被害感情、(6)社会的影響、(7)犯人の年齢、犯行時に未成年など、(8)前科、(9)犯行後の情状の9項目となっています。
1人を殺しただけでは、死刑になりません。人数で判断されるべき根拠はどこにあるのでしょうか。少なくとも、(3)の犯行動機は身勝手極まりないもので、たまたまそこに居合わせただけの通りがかりの人が殺されています。(8)前科もあったようですし、犯行当時は(7)すでに成人でした。
1つの基準を満たしていないと言うだけで、このような凶悪犯でかつ反省するつもりもない被告を、永山基準によって死刑回避にするのは納得できないでしょう。
判決を言い渡した、千葉地裁の小森田恵樹裁判長の苦悩したかどうかは分かりませんが、そろそろ永山基準を見直さなければならない時期ではないでしょうか。

労災による疾病は1200日分の給料を払えば解雇にできるか

2015-06-08 20:05:18 | 日記
平成25(受)2430  地位確認等請求反訴事件
平成27年6月8日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所

某私立学校に勤務する人が、肩こりが酷くて仕事を休みがちになりました。あまりにも長く休むようになったので、労働基準監督署は労災として認定しました。その後も出勤したりしなかったりという状況が続き、平成19年あたりから長く休むようになりました。
学校側としても、このような状態では仕事を任せていいのかどうか迷い、なかなか復帰する気配がないので、労働基準法81条の打ち切補償して解雇しました。
これに対して、解雇された人はまだ働く意思があるとして、地位保全の申し立てを起こした事件です。

時事通信によると
労災で療養中に解雇されたのは不当だとして専修大の元職員の男性(40)が解雇無効を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第2小法廷(鬼丸かおる裁判長)は8日、「労災保険給付を受けている場合でも、補償金を支払えば解雇できる」との初判断を示した。
 その上で、解雇に合理的な理由があるか検討が不十分だとして、一審同様に男性勝訴とした二審東京高裁判決を破棄し、審理を差し戻した。雇用側の解雇対象が広がる判断で、男性の弁護団は「安心して治療に専念する権利を奪う不当な判決だ」と批判した。
 労働基準法は、業務によるけがや病気で休業する期間は解雇を原則禁止。ただ、雇用側が療養費を負担し、療養開始後3年たっても治らない場合は、平均賃金の1200日分の「打ち切り補償」を支払えば解雇できると規定している。
 男性は2003年、腕に痛みなどが出る「頸肩腕(けいけんわん)症候群」と診断され、07年に労災認定と労災保険の支給決定を受けた。男性は11年、リハビリをしながらの職場復帰を求めたが、専修大は認めず、打ち切り補償金約1629万円を支払って解雇した。
 第2小法廷は「労災保険給付は、雇用側が負担する療養費に代わるものだ。打ち切り補償後も、けがや病気が治るまでは給付が受けられることも勘案すれば、労働者の利益が保護されないとは言い難い」と指摘した。 


これに関して、労災といえども解雇に必要な手続きを踏み1200日分の給料を払っているので、最高裁は全員一致で解雇に問題はないとしました。

私もこの見解に同意です。これは教科書の事例に載せてもいいくらいの適切な法的処理でした。
しかし解せないのは、第一に肩こりが労災として認められたのはなぜか。学校法人がやるべきは、労働基準監督署が事実認定を誤っているのではないかと不服申し立てをしなかったこと。肩こりは誰でもあり得るもので、大きな事故の後遺症ではないのです。これを理由に欠勤を続けるのはどうなんでしょうか。
第二に、学校法人はなぜ労災認定から解雇手続きまでこれほど時間がかかったのか。
第三に、学校法人側は適切な法手続きを行い解雇したわけで、この事件は争う余地はないほど法令に従っています。何故最高裁がこの上告を受理したのか、判決文を読む限り事実認定を争う余地がなかったものとみられます。
最高裁は不受理とすべきであり、審議入りするような話ではないのではないかと思います。

今回も第二小法廷

裁判長裁判官 鬼丸かおる
裁判官 千葉勝美
裁判官 小貫芳信
裁判官 山本庸幸

書評 死刑肯定論

2015-06-05 19:59:10 | 日記
今回は書評です。

「死刑肯定論」
シリーズ:ちくま新書
定価:本体800円+税
Cコード:0232
整理番号:1107
判型:新書判
ページ数:240
ISBN:978-4-480-06813-2
JANコード:9784480068132


著者は裁判官として勤務後、現在は弁護士をしている人です。死刑判決に直接関わったようで、それが本書の執筆のきっかけになっているそうです。
現在の日本では死刑賛成論が80%を超え、ヨーロッパとは一線を画しています。
ヨーロッパは基本的に、キリスト教「汝殺すなかれ」の伝統から死刑廃止というだけではなく、イギリスでは死刑執行後に真犯人が出てきたという事件が大きかったようです。このことから、死刑を廃止しようという動きが出てきたそうです。フランスでは強引に世論の動きを待たずに、死刑を廃止しました。
しかし、その理由というのは「汝殺すなかれ」どころか「汝裁くことなかれ」もあるようです。
では、これまで死刑があった理由は何かというと、アウグスティヌスの言葉を引用し、戦争時における兵士と裁判官が下す判決は例外とする何とも手前勝手な解釈論で死刑が肯定されていたようです。ルターに至っては、(死刑で)剣を振るうのは神の手であると。
道徳論、倫理学や神学の死刑反対論、肯定論いずれもお笑いにもならないレベルのようです。

では、科学的にどうなのか。
死刑は、犯罪を予防するか?の論点は、実のところあまり効果はないようです。死刑になるようなことをする人は、後先考えずに犯罪を犯しますから予防効果はないのでしょう。

では何のために死刑は存在するのか。
1つは被害者の感情を発散させる場であること。あとがきに光市の母子殺人事件の家族の言葉が書かれています。確かにその妥当性があるでしょう。
2つに、目には目をの発想で加害者に応酬することでダメージを与える。ただこれは仕返しに仕返しを繰り返すことになるので、これを前面に出すには社会の治安維持には問題がある。
そこで、複数人殺さないと死刑にならない、永山基準のような判断基準が生まれてくるのでしょう。

死刑賛成にしても反対にしても、イデオロギーといっても自分の意見の正しさ、価値観の押し付け合いにしか過ぎないところがあるようです。


ここからは私の見解です。

少なくともキリスト教的な思考での死刑反対論例えばアムネスティインターナショナルのような行動キリスト教系思考の完全な押し付けになるのでしょう。私自身が積極的な肯定論だからかもしれませんが。
何故そう思うのかというと、犯罪者は家庭の事情、社会的環境によって犯罪に走ると一般に言われています。果たしてそうでしょうか?
裕福な家庭に育ちながらも、「死体が見たい」という動機から殺人を行う反社会性人格障害が存在します。この障害は治療困難というより、治療不可能な領域です。症状を薬によって麻痺させるぐらいで、根本治療はありません。
彼らは、純粋に人を殺してみたい、死体が見たいという動機だけで、人を人としてみることはありません。当然、その犯行は淡々と目的を達するために行われます。罪悪感もありません。矯正は不可能なのです。(一応可能ということになっているようですが)
社会から爪はじきされた故の犯罪、相対的に犯罪に陥るのではなく、根源的に絶対的な悪は存在するのです。
仮に、このような犯人を終身刑とします。何年生きるか分かりませんが、その間の管理コストはいくらかかるでしょうか?受刑者一人当たり300万円/年ぐらいのコストがかかると言われています。30代で事件をおこし、70歳まで生きるとすればどれだけコストがかかりますか?この本ではこの論点が抜けていると思います。
また、誤審による無実の人が死刑になる可能性の有無ですが、これは警察の捜査と裁判の問題であり、死刑の問題とは切り離して考えるべきじゃないでしょうか。

いずれにせよ、死刑肯定者も反対者も一読する必要はありそうです。

サラ金A社がB社に吸収合併。A社から借りていた条件は?

2015-06-05 07:37:06 | 日記
平成26(受)1817  不当利得返還請求事件
平成27年6月1日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄差戻  名古屋高等裁判所

ある人がサラ金A社から借りていました。A社はサラ金と言ってもノンバンクで、温厚な会社でした。ところがA社はB社に買収され、合併しました。
A社と契約したとき、この債権は譲渡するとき借主に確認することと一文を入れた契約だったのですが、どうもそれが実行されずにB社に譲渡されたようです。
このとき、この借りた人が利子が上がり取り立てなどで条件が悪化したとして、A社の条件にせよと訴えたものです。

しかし、A社がB社に買収されることで自動的にB社の条件に切り替えられるということはあるのでしょうか?あったから裁判になったのは分かりますが、通常は前の条件の継続が通常です。民法第弐章で「契約は同意がなければ成立しない」のが大原則であり、そもそも簡単に変更できるのか疑問です。
判決文がかなりこの点が曖昧なので分かりませんが、恐らく合併のときに自動的にB社の条件に切り替わる旨の連絡があり、その諾否を等通知が来たのでしょう。返事がない事をもって認めたというのはおかしいという主張のようです。

裁判官全員一致で判決は貸金業法を持ち出して違法性を論じていますが、上位の法律は民法のはずです。民法の規定に従うべきではないのかなという気がします。利息制限法の範囲であれば、民法規定でもいいのではないかと思います。

問題は、返事をしなかったことは自動的に承諾したと見なせるか?ですが、これは日常的によくやっている話じゃないでしょうか。ましてや、裁判所では欠席裁判が通用するように、何も反論しなかったということは認めたと同じです。裁判所自体がやっていることを、一般人がやることはおかしいというにはかなり無理があるのではないでしょうか。
ずぼらな人であれば、通知は見たが面倒くさくて」と返信をしないことはよくあるでしょうし、そういう人をどこまで救済すべきなのでしょうか。返信すること自体は、決して面倒な作業ではないはずです。
この点をもう少しこの判決では論じるべきです。少なくとも内容証明とは行かなくても、配達証明がついたもので配送したものであれば認められるなど一定条件が必要など付帯意見があってしかるべきでしょう。


第二小法廷
裁判長裁判官 千葉勝美 ややずれている
裁判官 小貫芳信 ややずれている
裁判官 鬼丸かおる ややずれている
裁判官 山本庸幸 ややずれている

事実認定 7人を殺した犯人は心神耗弱状態だったか

2015-06-01 08:13:59 | 日記
平成25(あ)729  殺人,殺人未遂,現住建造物等放火被告事件
平成27年5月25日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  大阪高等裁判所

平成16年8月2日の未明,被告人が,自宅の東西に隣接する2軒の家屋内等において,親族を含む隣人ら8名を,順次,骨すき包丁で突き刺すなどし
て,7名を殺害し,1名に重傷を負わせた後,母親が現住する自宅にガソリン等をまいて放火し,全焼させた事件です。この事件の犯人が心神耗弱状態だったか?の事実認定が争われた事件です。

心神耗弱者が起こした犯罪は、刑法39条により刑の減免が可能になります。死刑判決を避けたい意図で控訴したようです。
判決文によると、犯人はパラノイアだったようです。

被告人は,本件犯行当時,妄想性障害・被害型(パラノイア)に罹患していたと診断した上,当該障害に罹患している者の被害妄想を訂正させることは極めて困難で,妄想のテーマとなっている領域については,理非判断能力が著しく侵されていたと判断するのが妥当であるとの意見(以下「山口鑑定意見」という。)を述べている。

しかし、パラノイアは精神病ではなく精神障害なのです。病気は寛解が可能ですが、障害は治しようがないのです。向精神薬で落ち着かせるのが精いっぱいで、薬が切れて、何かの拍子にまた大変にな行動に出始めます。彼らは冷静に殺人が行える人たちなのです。医師も治療を拒否できる数少ない症状です。恐らく、名古屋女子大生の老女殺人、同級生の毒物殺人事件、佐世保の同級生殺人死体損壊事件などは、人格障害であろうと言われています。その意味では理非が判断できない状態のようです。
ただ、別の医師によるとかなりグレーゾーンにあるようです。

第1審で2回目の精神鑑定を命じられた山上皓医師は,被告人は,情緒不安定性人格障害と診断されるにとどまるとしつつ,被告人には表出性言語障害が認められ,これが人格形成に大きな影響を及ぼしたと考えられることや,隣人たちに対する強固な被害念慮が本件犯行を促す上で重要な役割を果たしたと考えられることなどを総合して考えれば,心神耗弱を認められても不当ではないような精神状態にあったと考えられるとの意見(以下「山上鑑定意見」という。)を述べている。


しかし、犯行時の犯人の発言等をみると妄想とはいえ恨みによる犯行と殺意は明白で、心神耗弱(意味不明で無意識に近い状態での犯行)ではないとしか言いようがないでしょう。精神医学の場合は、内臓疾患と違って客観的な診断がしにくい分野であり、この事件もその一例のようです。(今回の件は明白に見えますけど、医師としての視点と定義に合致するか否かしか見ない法律家の違いでしょうか?)

近年、刑法39条を元に裁判にかける前に検察側で精神鑑定を行い、起訴猶予にすることが増えてきたそうです。これは被告が正当な裁判を受ける権利を検察自ら潰している事であり、その点においては今回の裁判は本来の姿に戻した結果であると言えそうです。裁判官ではなく検察官がやった結果ですが。



なお、刑法39条の問題点は、以下の本で生々しく書かれています。

そして殺人者は野に放たれる
日垣 隆 (著)
(新潮文庫)


こういった人格障害あるいは暴力を伴う精神疾患を家族に持つと本当に大変なようです。どこに地雷があるのか、いつどこで怒りが爆発するのか分からないうえ、何をしでかすか分からないのです。
先進諸国から比べて精神病棟の入院ベッド数が多い=要するに政府は医療費削減を目的に入院患者を減らそうとしていますが、その分このような危険を社会が負担することになるのです。


検察官 徳久正 公判出席  今回の英雄

今回の裁判官全員一致で死刑判決
第二小法廷

裁判長裁判官 千葉勝美
裁判官 小貫芳信
裁判官 鬼丸かおる
裁判官 山本庸幸