最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

電気供給会社を強制変更させるマンション総会決議は無効

2019-03-31 16:30:18 | 日記
平成30(受)234  損害賠償等請求事件
平成31年3月5日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  札幌高等裁判所

 団地建物所有者等に対してその専有部分の電力供給契約の解約申入れを義務付ける旨の集会決議がされた場合において,団地建物所有者が上記解約申入れをしないことが他の団地建物所有者に対する不法行為を構成しないとされた事例

日経新聞の報道です。
マンションの管理組合が総会で、低額の電気供給サービスを一括導入するために、個別の電気契約を解除するよう全住民に義務付けた決議の有効性が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷は5日、決議は共用部分の変更や管理にしか認められず、専有部分には及ばないとして「無効」との判断を示した。
マンションは一般的に、住民が個別に電気契約を結んでいるが、このサービスは、管理組合が住民の代わりに電気を受け取る。「一括受電」と呼ばれ、経済産業省によると、推計で全国約60万戸(部屋数ベース)で導入。今後採用する場合は、一部住民が反対すると導入が難しくなりそうだ。
区分所有法は、マンション共用部分の変更や管理は住民が集会で決議すると規定。岡部喜代子裁判長は「個々の住民の契約解除は専有部分の使用に関する事項であり、共用部分の管理や変更ではない」と指摘した。
判決によると、札幌市のマンション(計544戸)の管理組合は2014~15年、北海道電力から一括受電するため、各住民に従来の電気契約の解除を義務付ける決議をした。住民2人が反対して実現せず、別の住民1人が低額の電気料を導入できなかったとして損害賠償を求め提訴した。


事実認定を見ていきましょう。
(1) 上告人ら及び被上告人は,いずれも札幌市内の区分所有建物5棟から成る総戸数544戸のマンションの団地建物所有者である。

うわー同じマンション内での諍いですか。たまらんですね。
(2)個別に北海道電力株式会社(以下「電力会社」という。)との間で専有部分において使用する電力の供給契約(以下「個別契約」という。)を締結し,団地共用部分である電気設備を通じて電力の供給を受けている。

これは通常の契約ですね。

(3) 平成26年8月に開催された本件マンションの団地管理組合法人の通常総会において,専有部分の電気料金を削減するため,本件団地管理組合法人が一括して電力会社との間で高圧電力の供給契約を締結し,団地建物所有者等が本件団地管理組合法人との間で専有部分において使用する電力の供給契約を締結して電力の供給を受ける方式への変更をする旨の決議がされた。

ネット回線ではよくあるマンション丸ごと一括で入ってくれると安くなりますよというのと似たような感じで、電気料金もまとめて入ってくれると安くなりますという契約のようです。でも、この管理組合は無茶苦茶な決議をした印象ですが。契約の自由を制限する決議ですよ。

(4) 平成27年1月に開催された本件団地管理組合法人の臨時総会において,本件高圧受電方式への変更をするため,電力の供給に用いられる電気設備に関する団地共用部分につき建物の区分所有等に関する法律65条に基づく規約を変更し,上記規約の細則として「電気供給規則」(以下「本件細則」という。)を設定する旨の決議がされた。・・・本件決議は,本件細則を設定することなどにより団地建物所有者等に
個別契約の解約申入れを義務付けるものであった。

(5)本件決議に反対していた上告人らは,上記書面を提出せず,その専有部分についての個別契約の解約申入れをしない。
そりゃそうですよね。北海道電力の関連企業に勤務する人もいるでしょうし、また別のライバル企業の可能性もあります。

それでも決議に賛成した人は値段が下がらないのは、反対する人がいるからだとして、決議に反対した人を訴えました。

最高裁の判断は、
1 法66条において準用する法17条1項又は18条1項の決議として効力を有するものとはいえない。

重要決定事項は、共有部分の変更は区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議が必要とした17条はこの場合当てはまるのか?ということになりました。確かに建物内に引き込む施設は共有施設になりますよね。だからと言って

(1)このことは,本件高圧受電方式への変更をするために個別契約の解約が必要であるとしても異なるものではない。
(2)団地建物所有者等がその専有部分において使用する電力の供給契約を解約するか否かは,それのみでは直ちに他の団地建物所有者等による専有部分の使用又は団地共用部分等の管理に影響を及ぼすものではないし,また,本件高圧受電方式への変更は専有部分の電気料金を削減しようとするものにすぎず,この変更がされないことにより,専有部分の使用に支障が生じ,又は団地共用部分等の適正な管理が妨げられることとなる事情はうかがわれないからである。


そうなんですよ。共有部分の電気代が安くなるという部分の変更であればOKだと思いますが、どう見たって個別の電気代云々はだめでしょう。

結論
上告人らは,本件決議又は本件細則に基づき上記義務を負うものではなく,上告人らが上記解約申入れをしないことは,被上告人に対する不法行為を構成するものとはいえない。

第三小法廷判決
裁判長裁判官 岡部喜代子 当然
裁判官 山崎敏充 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 林 景一 当然
裁判官 宮崎裕子 当然

むしろ1審の判決が何でこんなあほな?と思いますね。
上告人と被上告人はその後どうなったのでしょう。マンションには住みたくないものです。

養子縁組無効の訴えは誰でもできるが

2019-03-30 11:23:04 | 日記
平成30(受)1197  養子縁組無効確認請求事件
平成31年3月5日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  高松高等裁判所
 養子縁組の無効の訴えを提起する者は養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえない

10回ぐらい読んでようやく関係が分かってきました。判決文には図表を入れることは厳禁なのでしょうか。


事実確認を見ていきます。

(a)被上告人は,平成25年12月に死亡した亡Bの平成22年7月11日付けの自筆証書遺言により,その相続財産全部の包括遺贈を受けた。
(3) 被上告人は,平成28年1月,亡Cから遺留分減殺請求訴訟を提起された。
亡Cが平成29年10月に死亡したため,上告補助参加人は,上記訴訟を承継した。


養子縁組はしたものの、遺産は全て姉夫婦に渡すという遺言を書いていました。通常、遺言が優先されますが、法律上の相続分を請求することができます。

被上告人が,検察官に対し,本件養子縁組の無効確認を求める事案である。

思いっきりこじれましたね。実姉の夫が事件性があると言いだしたようです。

最高裁は
(1)養子縁組の無効の訴えは縁組当事者以外の者もこれを提起することができるが,当該養子縁組が無効であることにより自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることのない者は上記訴えにつき法律上の利益を有しないと解される(最高裁昭和59年(オ)第236号同63年3月1日第三小法廷判決・民集42巻3号157頁参照)。
・・・
養子縁組の無効の訴えを提起する者は,養親の相続財産全部の包括遺贈を受けたことから直ちに当該訴えにつき法律上の利益を有するとはいえないと解するのが相当である。


まずは、養子縁組の無効の訴えは誰でもできると確認しました。

(2)被上告人は,亡Bの相続財産全部の包括遺贈を受けたものの,亡Bとの間に親族関係がなく,亡Cとの間に義兄(2親等の姻族)という身分関係があるにすぎないから,本件養子縁組の無効により自己の身分関係に関する地位に直接影響を受けることはなく,本件養子縁組の無効の訴えにつき法律上の利益を有しないというべきである。

しかし、義理に兄は相続権はそもそも存在しないでしょ?だから当事者じゃないんだから、訴えそのものがおかしいと全員一致で結論付けました。

第三小法廷判決

裁判長裁判官 宮崎裕子 妥当
裁判官 岡部喜代子 妥当
裁判官 山崎敏充 妥当
裁判官 戸倉三郎 妥当
裁判官 林 景一 妥当


妥当な内容だと思います。何で実の姉が訴えなかったのか、そこからしておかしい裁判でした。
下級審が判例の見落としで最高裁まで持ち込まれた事例です。裁判官も人の子とは言え、こういう見落としは裁判費用がかさんだり、ストレスがかかる期間が長くなり、溜まったもんじゃありません。

トンデモ判決 東京地裁死亡した知的障害者(15歳)の逸失利益5200万

2019-03-27 06:42:54 | 日記
今回は敢えてトンデモ判決とさせてもらいます。

以下、産経新聞の報道です

障害者施設側に賠償命令 15歳、行方不明後に遺体で発見
平成27年に東京都八王子市の障害者施設から行方不明となり、遺体で見つかった松沢和真さん=当時(15)=の両親が、安全管理を怠ったとして施設を運営する社会福祉法人藤倉学園(東京)に約1億1400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であった。田中秀幸裁判長は「障害がない者と同等かそれより優れた能力を発揮する可能性があった」として、障害のない男女の平均賃金を基に約5200万円の支払いを命じた。
 松沢さんが生きていれば得られるはずだった「逸失利益」の算定方法が争点だった。両親側は障害のない男性の全年齢平均賃金を基礎に約7400万円と算定すべきだと主張。施設側は逸失利益はなく、あっても福祉的就労で得られる額を基にすべきだと反論していた。
 田中裁判長は、障害者雇用促進法や障害者雇用を推進しようとする社会情勢に触れ「国の障害者雇用施策は大きな転換期を迎えようとしている」と指摘。単に一般企業で就労する可能性を否定するのでなく「個々の障害者の能力を検討し、一般就労が可能か判断するべきだ」と判示した。
 その上で、松沢さんが特定の分野で高い集中力を持っていたことを評価。現状の健常者との就労格差を踏まえ、障害のない男女の19歳までの平均賃金を採用し、逸失利益だけで約2200万円と算定した。これに慰謝料などを加えた。
 障害者の逸失利益をめぐっては、平成21年に最低賃金を、27年には平均賃金を3割減とした額で算定する判決が出ていた。判決後に会見した代理人の坂本千花弁護士は「平均賃金の10割を認めたのは大きな前進で画期的な判決」と述べた。父の正美さんは「息子の発達の可能性などを判決に組み入れてくれ納得している。今後のよい裁判例になれば」と話した。
 藤倉学園の橋本進常務理事は「コメントは控える。松沢さんのご冥福をお祈りする」との談話を出した。



慰謝料ではないのです、逸失利益なのです。
逸失利益(いっしつりえき、英: Lost profit)は、本来得られるべきであるにもかかわらず、債務不履行や不法行為が生じたことによって得られなくなった利益を指す。得べかりし利益(うべかりしりえき)とも言われる。

金を稼ぐ能力がある人が知的障害があるとして障害者施設に入所することはあるのでしょうか?入所中に管理のもとで何か作っていたのでしょうか?慰謝料とごっちゃにしていませんか?
こんな状態で慰謝料の他に逸失利益まで健常者と同様に払えとなれば、誰も障害者施設で働こうとする人はいないでしょう。先日の記事で書いた介護施設の事件と言い、裁判官の社会常識の欠如を感じます。

なお、今回の裁判官田中秀幸で検索すると、以下のブログが出てきます。
東京地裁の裁判官 田中秀幸は頭おかしい NHKの味方をしています

注目裁判 介護士の監督責任の範囲はどこまでか

2019-03-26 21:18:47 | 日記
朝日新聞の報道です。

 事件があったのは2013年12月。判決によると、女性は被告が配ったドーナツをのどに詰まらせて窒息し、約1カ月後に低酸素脳症で死亡した。
 介護の現場に過度の責任を負わせるのは酷だとして、無罪を求める約44万5500筆の署名が裁判所に提出されていた。だが判決は、女性は食べ物を口に詰め込む傾向があり、窒息対策などとしておやつがゼリーに変更されていたと指摘。変更について、被告は施設の引き継ぎ資料などで確認すべきだったのに怠ったと過失を認定した。
 女性の食事中の様子を注視するのを怠ったとする検察側の主張については、他にも食事の介助が必要な人がおり「異変に気づける程度の注視を求めるのは困難」として退けたものの、量刑は求刑通りとなった。
 判決後、弁護側は判決を不服とし、即日控訴した。


産経新聞
の報道です。

長野県安曇野市の特別養護老人ホームで平成25年、おやつのドーナツを食べた直後に意識を失い、その後死亡した入居者女性=当時(85)=の注視などを怠ったとして業務上過失致死罪に問われた准看護師、山口けさえ被告(58)に長野地裁松本支部(野沢晃一裁判長)は25日、求刑通り罰金20万円の有罪判決を言い渡した。
 介護現場でおやつの提供にどこまでの注意義務があるかが注目を集め、福祉や医療関係者を中心に、無罪を求めて約45万筆の署名が集まっていた。
 検察側は論告で、被告が誤嚥の可能性がないかを注視し、おやつも1週間前の形態変更に伴ってゼリー状のものを配膳(はいぜん)しなければならなかったと指摘していた。弁護側は「意識喪失は内因性の疾患が原因だ」と無罪を主張していた。


どの新聞報道もこのレベルで、詳細が明らかになっていません。したがって、どの程度の注意義務が求められるのかが現段階では分かりません。
しかし、年齢が85歳となっていればのどに詰まらせなくても死ぬ可能性があるわけで、この判決はかなり酷なものではないかと思います。このような判決が確定すれば、介護なんかする人はいなくなるでしょう。
この裁判官の年齢は分かりませんが、介護現場なり見たことがないのではないかとすら思えてきます。

18歳の選挙権は憲法違反か?その前に訴えの資格なし

2019-03-25 21:41:47 | 日記
平成30(行ツ)171  衆議院議員小選挙区長崎4区選挙無効確認請求事件
平成31年2月28日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  福岡高等裁判所

 公職選挙法204条の選挙無効訴訟において,選挙人は,同法205条1項所定の選挙無効の原因として,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている同法9条1項の規定の違憲を主張することはできない


これまた実質2枚の判決文でした。

上告理由から見ていきます。
1 民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは,民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られる。
年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている公職選挙法9条1項が憲法15条3項に違反している旨


公職選挙法第九条 日本国民で年齢満十八年以上の者は、衆議院議員及び参議院議員の選挙権を有する。
憲法15条3項 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

つまり18歳で選挙権があるのは憲法違反であると訴えたようです。


公職選挙法204条の選挙無効訴訟は,行政事件訴訟法5条に定める民衆訴訟として,法律に定める場合において法律に定める者に限り提起することができるものである

公職選挙法204条 衆議院議員又は参議院議員の選挙において、その選挙の効力に関し異議がある選挙人又は公職の候補者(衆議院小選挙区選出議員の選挙にあつては候補者又は候補者届出政党、衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては衆議院名簿届出政党等、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては参議院名簿届出政党等又は参議院名簿登載者(第八十六条の三第一項後段の規定により優先的に当選人となるべき候補者としてその氏名及び当選人となるべき順位が参議院名簿に記載されている者を除く。))は、衆議院(小選挙区選出)議員又は参議院(選挙区選出)議員の選挙にあつては当該選挙に関する事務を管理する都道府県の選挙管理委員会(参議院合同選挙区選挙については、当該選挙に関する事務を管理する参議院合同選挙区選挙管理委員会)を、衆議院(比例代表選出)議員又は参議院(比例代表選出)議員の選挙にあつては中央選挙管理会を被告とし、当該選挙の日から三十日以内に、高等裁判所に訴訟を提起することができる

行政事件訴訟法5条 この法律において「民衆訴訟」とは、国又は公共団体の機関の法規に適合しない行為の是正を求める訴訟で、選挙人たる資格その他自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起するものをいう。
第42条 民衆訴訟及び機関訴訟は、法律に定める場合において、法律に定める者に限り、提起することができる。

公職選挙法205条1項は上記の選挙無効訴訟において主張し得る選挙無効の原因を「選挙の規定に違反することがあるとき」と規定しており、


第二百五条 選挙の効力に関し異議の申出、審査の申立て又は訴訟の提起があつた場合において、選挙の規定に違反することがあるときは選挙の結果に異動を及ぼす虞がある場合に限り、当該選挙管理委員会又は裁判所は、その選挙の全部又は一部の無効を決定し、裁決し又は判決しなければならない。


公職選挙法204条の選挙無効訴訟は,選挙人又は公職の候補者が上記のような無効原因の存在を主張して選挙の効力を争う訴訟であるところ,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている本件規定が違憲である旨の主張が,選挙の管理執行の手続に関する明文の規定に違反することをいうものでないことは明らかであり,また,選挙人がその自由な意思によって投票すべき候補者を選択することが著しく妨げられるなど,選挙の基本理念である選挙の自由公正の原則が著しく阻害されるときに当たることをいうものともいえない

要するに訴えの資格が原告側にはないよと言っています。

公職選挙法204条の選挙無効訴訟において,選挙人が,同法205条1項所定の選挙無効の原因として,年齢満18歳及び満19歳の日本国民につき衆議院議員の選挙権を有するとしている本件規定の違憲を主張し得るものとはいえない。

訴えの資格なしとして、憲法と公職選挙法の矛盾は一切触れませんでした。実に歯切れが悪い。


第一小法廷
裁判長裁判官 深山卓也
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚

結果は私もこれでいいと思いますが、なんですかこれは?成人は民法ではいまだ20歳からとしているので、争うなら民法に違反しているとすべきじゃなかったのでしょうか。
しかし、原告側はなにがしたかったのか、全くわかりませんね。

微妙判決 不倫相手に離婚の慰謝料請求できず

2019-03-20 22:56:40 | 日記
平成30(許)10  移送決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
平成31年2月12日  最高裁判所第三小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所

NHKの報道です

この裁判は、4年前に離婚した関東地方の男性が、9年前まで元妻と不倫関係にあった男性に対し、離婚によって精神的な苦痛を受けたとして、およそ500万円の慰謝料などを求めていました。
裁判では、離婚に対する慰謝料を配偶者ではなく過去の不倫相手に請求できるかが争点となり、1審と2審は元夫の訴えを認めておよそ200万円の支払いを命じていました。
これについて、最高裁判所第3小法廷の宮崎裕子裁判長は19日の判決で「離婚は本来、夫婦間で決めることで、不倫相手が直ちに離婚させた責任を負うことはない」と指摘しました。
・・・
今回の裁判で元夫が、一般的に認められている不倫そのものに対する慰謝料を請求しなかったのは、不倫がわかってから3年の時効が過ぎていたためとみられます。
配偶者の不倫が原因で離婚に至った場合、一般的に「不倫行為」に対する慰謝料を不倫相手と配偶者に請求できるほか、「離婚」に対する慰謝料を配偶者に請求できます。
しかし不倫行為に対する慰謝料は不倫の事実と相手を知ってから、3年以内に請求しなければならず、これを過ぎると時効になると法律で定められています。
今回のケースで、元夫は平成22年に元妻の不倫を知り、平成27年に裁判所の調停によって離婚が成立。その後、同じ年に不倫相手に対して今回の裁判を起こしました。この時点で、すでに不倫を知ってから3年を過ぎていました。
このため元夫は不倫相手に対し、離婚に対する慰謝料を求めたとみられます。
今回、最高裁が不倫相手に対しては特段の事情が無いかぎり、離婚の慰謝料を請求できないという判断を示したことによって、今後は、不倫を知ってから3年以内に請求しなければ、不倫相手に賠償させることは難しくなったといえます。



結構世間的には影響が大きい判決なのですが、判決文は以下のたったこれだけです。


主 文
本件抗告を棄却する。
抗告費用は抗告人の負担とする。

理 由
1  抗告代理人青木亮祐,同荒木雄平,抗告復代理人井上聡大の抗告理由1につ いて 人事訴訟法8条1項は,家庭裁判所に係属する人事訴訟に係る請求の原因である 事実によって生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟の係属する第1審裁判所 は,相当と認めるときは,申立てにより,当該訴訟をその家庭裁判所に移送するこ とができることなどを規定している。その趣旨は,人事訴訟と審理が重複する関係 にある損害賠償に関する請求に係る訴訟について,当事者の立証の便宜及び訴訟経 済の観点から,上記人事訴訟が係属する家庭裁判所に移送して併合審理をすること ができるようにしたものと解される。
上記の趣旨に照らせば,離婚訴訟の被告が,原告は第三者と不貞行為をした有責 配偶者であると主張して,その離婚請求の棄却を求めている場合において,上記被 告が上記第三者を相手方として提起した上記不貞行為を理由とする損害賠償請求訴 訟は,人事訴訟法8条1項にいう「人事訴訟に係る請求の原因である事実によって 生じた損害の賠償に関する請求に係る訴訟」に当たると解するのが相当である。 これと同旨の原審の判断は,正当として是認することができる。論旨は採用する ことができない。
2  同2について 論旨は,原審の裁量に属する移送の相当性についての判断の不当をいうものであ るところ,所論の点に関する原審の判断は,是認することができる。論旨は採用することができない。 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。


第三小法廷
裁判長裁判官 岡部喜代子 今ひとつ
裁判官 山崎敏充  今ひとつ
裁判官 戸倉三郎 今ひとつ
裁判官 林 景一 今ひとつ
裁判官 宮崎裕子 今ひとつ

これだけ時間が経過しているのだから、やり直しをしようとしていたのでしょうか。しかし、過去の浮気が許せなく再構築が無理ということになって、昔浮気された相手を訴えたということでしょうか。
許せないなら3年以内に訴えるなら訴えよ、それ以降は時効だし、別れるのは別の問題でしょうという趣旨のようです。
もう1つ考えられるケースですが、子供が独立するのを待って改めて裁判に進めようとしたことなのでしょうか。

法律論から言ったら、確かに特定の期間内にやれよというのは仕方ないのかと思いますが、夫婦仲ってそんな感じで割り切れますかね。特に後者だったりすると、子供のために表にしてこなかった努力が何だったのか。
このあたりはもう少し何とかならんのですかね。これは補足意見があってしかるべき案件だと思いますよ。
余計な話ですが、司法試験には民法の家族法は試験に出ないらしいですが、最も需要のある分野だと思いますし、行政訴訟と選択でできるようにした方がいいと思います。

民事で和解しても刑事は別物

2019-03-18 19:16:48 | 日記
平成30(し)584  再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告事件
平成31年2月12日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所


なんと全文はこれだけです。

主 文 本件抗告を棄却する。 理 由 本件抗告の趣意は,憲法違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反の主張であ って,刑訴法433条の抗告理由に当たらない。なお,同法435条1号にいう 「確定判決」とは,刑事の確定判決をいうものと解すべきであり,民事の確定判決 やこれと同一の効力を有する和解調書等は含まれない。これと同旨の原判断は相当 である。 よって,同法434条426条1項により,裁判官全員一致の意見で,主文の とおり決定する。


裁判長裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也

要約文並に短いですが、なんですかこれ?でしょう。も少し詳しくやってもらわないと、判例として参考のしようがないでしょうに。
何がどういう文脈で裁判になったのか全く分かりませんが、以下はおそらくこうだろうという想像です。
ある人が刑事事件を起こした。
被害者と和解が成立した。
刑事被告は、和解が成立して確定したんだから刑期を短くしろと再審請求をしたようですね。しかし、裁判所は刑事と民事は別物と認定したようです。

一般的には民事で和解が成立したのだから刑期を短くしてくれという「取引」はよくあります。被害者の立場からすれば、罪は罪、しっかり賠償金は払ってくださいとなるでしょうね。
ただ、これをきっちりやると賠償金を払わずしらばっくれる人が増えるでしょう。そうなると民事の時効も設定しなおす必要があります。

判事が「反天皇制」活動 集会参加、裁判所法抵触も

2019-03-13 10:02:46 | 日記
産経新聞の報道です。

名古屋家裁の男性判事(55)が昨年、「反天皇制」をうたう団体の集会に複数回参加し、譲位や皇室行事に批判的な言動を繰り返していたことが12日、関係者への取材で分かった。少なくとも10年前から反戦団体でも活動。一部メンバーには裁判官の身分を明かしていたとみられ、裁判所法が禁じる「裁判官の積極的政治運動」に抵触する可能性がある。

これは酷いですね。裁判官にも当然思想信条の自由はあってしかるべきですが、こういう行動に出るのは公務員法にも引っかかりますし、司法の問題にもかかわってきます。
裁判の内容を揶揄するような高裁の裁判官もいましたが、職業倫理をしっかり勉強させないとダメでしょう。

都議会選挙島しょ部の選挙区定員は違法ではない

2019-03-06 08:34:48 | 日記
平成30(行ツ)92  選挙無効請求事件
平成31年2月5日  最高裁判所第三小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

1 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の適法性
2 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の適法性
3 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)におけるいわゆる特例選挙区の存置の合憲性
4 東京都議会議員の定数並びに選挙区及び各選挙区における議員の数に関する条例(昭和44年東京都条例第55号)の議員定数配分規定の合憲性


ニュースを探してみましたが出ていませんでしたので、裁判所の認定から見ていきます。

江東区選挙区の選挙人である上告人が,
①本件条例が大 島町,利島村,新島村,神津島村,三宅村,御蔵島村,八丈町,青ヶ島村及び小笠 原村の区域(以下「島しょ部」という。)を合わせて1選挙区(島部選挙区)とし て存置したことが公職選挙法271条に,
②本件条例のうち各選挙区において選挙 すべき議員の数を定める規定が同法15条8項 にそれぞれ違反するとともに,同法271条及び本件条例の定数配分規定が憲法1 4条1項等に違反して無効であるから,これらに基づき施行された本件選挙の江東 区選挙区における選挙も無効であると主張して提起した選挙無効訴訟である。



これは広すぎ、人口は少なすぎますね。

(1) 都道府県議会の議員の定数については,地方自治法において,条例で定めるものとされ,変更の要件が定められている(90条1項から3項まで)。・・・公職選挙法において,一の市の区域,一の市の区域と隣接する町村の区域を合わせた区域又は隣接する町村の区域を合わせた区域のいずれかによることを基本とし,条例で定めるものとされ(15条1項),選挙区は,その人口が当該都道府県の人口を当該都道府県議会の議員の定数をもって除して得た数(以下「議員1人当たりの人口」という。)の半数以上になるようにしなければならず,・・・,公職選挙法15条8項は,本文において「人口に比例して,条例で定めなければならない」とする一方で,ただし書において「特別の事情があるときは,おおむね人口を基準とし,地域間の均衡を考慮して定めることができる」としている。

人口比率に応じて選挙区の設定をしなさい、場合によっては定数を減らしても良いという地方自治法と公職選挙法の規定があります。

(2)ア「都議会議員選挙区別議員1人当たりの人口及び較差」の「選挙区」欄及び「条例定数」欄記載のとおりであり,42選挙区に127人の定数を配分しているところ,そのうち,特例選挙区として,昭和44年の本件条例の制定当時から島部選挙区が存置されている。
イ 本件条例の定数配分規定は,その制定後数次の改正を経た後,平成13年3月に4選挙区の定数を2増2減する改正が行われた。
ウ 平成25年6月23日に施行された東京都議会議員一般選挙で・・・・特例選挙区以外の選挙区間における議員1人当たりの人口の最大較差は1対1.92(以下,較差及び配当基数に関する数値は全て概算である。),特例選挙区であった千代田区選挙区と他の選挙区との議員1人当たりの人口の最大較差は1対3.21であり,人口の多い選挙区の定数が人口の少ない選挙区の定数より少ないいわゆる逆転現象は12通りであった。また,島部選挙区の配当基数は0.268であった。
エ 東京都議会は,平成28年6月15日,本件条例について,4選挙区の定数を2増2減するほか,それまで特例選挙区とされていた千代田区選挙区の配当基数が0.549となったため,特例選挙区を島部選挙区のみとする改正をした。


格差がありすぎるので、選挙区の区割りをやり直しました。国政選挙とは違って国防の問題は基本的に対象外なので、1票の格差はなるべく小さい方が良いとは思いますが、島しょ地域はただでさえ病院に行きにくい、所得の問題、ガソリン価格等々格差があるので、多少は許してやれよという気がしないではないです。

オ 本件選挙当時における前記アの定数配分については,平成27年の国勢調査による人口に基づく配当基数に応じた人口比定数と対比すると・・・特例選挙区(島部選挙区)を除く選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差は1対2.48(千代田区選挙区と武蔵野市選挙区)であり,これは特例選挙区を除く人口比定数による選挙区間の議員1人当たりの人口の最大較差と差異がなく,いわゆる逆転現象は6通りであった。また,島部選挙区の配当基数は0.249であった。


これ等について、最高裁判所は次のように述べています。

3(1)都道府県議会の議員の選挙区に関して公職選挙法15条1項から4項までが規定しているところからすると,同法271条は,配当基数が0.5を著しく下回る場合には,特例選挙区の設置を認めない趣旨であると解されるから,このような場合には,特例選挙区の設置についての都道府県議会の判断は,合理的裁量の限界を超えているものと推定するのが相当である。
(2)島しょ部は,離島として,その自然環境や社会,経済の状況が東京都の他の地域と大きく異なり,特有の行政需要を有することから,東京都の行政施策の遂行上,島しょ部から選出される代表を確保する必要性が高いものと認められる一方,その地理的状況から,他の市町村の区域との合区が,地続きの場合に比して相当に困難であることなどが考慮されてきたものということができる。そして,東京都議会は,都議会のあり方検討会での検討を経た上で,平成28年条例改正の際にも,島部選挙区の配当基数は小さいものの,島しょ部の地理的特殊性等に照らし,同選挙区を引き続き特例選挙区として存置することを決定したものと推認することができる。本件選挙当時の島部選挙区の配当基数は,東京都議会において同選挙区を特例選挙区として存置することが許されない程度にまで至っているとはいえない。


この点は私と同意見です。

結論
本件条例が,本件選挙当時,島部選挙区を特例選挙区として存置していたことは,公職選挙法271条に違反していたものとはいえない。
さらに
平成28年条例改正の当時において,同法15条8項ただし書にいう特別の事情があるとの評価がそれ自体として合理性を欠いていたとも,本件選挙当時において上記の特別の事情があるとの評価の合理性を基礎付ける事情が失われたともいい難いから,本件選挙の施行前に本件条例の定数配分規定を改正しなかったことが同議会の合理的裁量の限界を超えるものということはできない。したがって,本件選挙当時における本件条例の定数配分規定は,公職選挙法15条8項に違反していたものとはいえず,適法というべきである。

裁判官林景一の意見

1 国政選挙については,人口比例原則を厳格に考えるべきであるとの立場であるが,地方議会選挙については,同原則を重視しつつも,一定程度緩和する余地を認めることができると考えるものである。
国会議員が全国民(people)の代表としての行動を期待されるのとは異なり,その選挙区である地域(community)の代表という色合いが濃くてしかるべきであることをその根拠とするものである。公職選挙法は,地方自治の基礎となる市町村を補完する役割を担う都道府県の議員選挙について,①市町村(特別区を含む。以下同じ。)を基本的な単位とする(政令指定都市を除き,原則として市町村を分割しない。)こと,②人口が過少であるため市町村を超えて合区する必要がある場合には,隣接市町村と合区することなどを定めているがこのような選挙区割りに関する規定から看取することができる議員の選出地域との密接性の要求は,憲法の規定する地方自治の本旨に基づく住民自治に由来すると考えられる。・・・都道府県議会議員選挙においては,地理的,経済的な諸側面において,隣接地域とどこまで共通基盤を有するかなどの地域の実情に応じて厳に必要な限度において,人口比例原則からの乖離が認められると考えることができる。
2(1) 東京都は,我が国の首都であって政治・経済の中心地であるが故に著しく人口が集中しており,中心部において常住人口と昼間人口との間に極端に大きな差があるなどの特殊事情が指摘されているほか,特に,島嶼部については,そのような東京都の中で,地理的,経済的に際立った差異があるため,自らの地域代表が,そうした実情に基づく特有のニーズ(インフラ整備,交通アクセス,産業振興等)を踏まえた施策を議会の内外において追求する必要性が高いといえ,かつ,共通の基盤を有するといえる隣接選挙区が見当たらないことから,合区の困難性の程度もかなり高いといえよう。


そうなんですよ。これってどうしようもないですよね。どうしてもというのであれば、島しょ部は独立した自治体にせざるを得ません。

(2) さはさりながら,本来,ある選挙区について,配当基数が0.5を下回りながら強制合区を免れるということは,投票価値の平等原則の観点からは,あくまで例外中の例外であって,自ずと限界がある。投票価値の平等原則というものが数値的な問題である以上,配当基数や較差等の数値は重視されなければならない(そうであるからこそ,公職選挙法も強制合区とすべき基準に0.5という定量的基準のみを用いているのであろう。)。・・・人口減少が進んで較差だけが拡大し続けていくこととなるのであれば,もはや合区を検討すべきこととなるのもやむを得ないと考える。・・・早急に是正が検討されるべきであって,取り分け定数差2人の逆転現象は不可解であるとの感を拭えず,その継続は許容できないと考えるものである。

一人一票にこだわりますね。法律家なら仕方ないのでしょうが、行政的な考え方からすれば浮きまくっています。

裁判長裁判官 戸倉三郎 妥当
裁判官 岡部喜代子 妥当
裁判官 山崎敏充 妥当
裁判官 林 景一 微妙
裁判官 宮崎裕子 妥当