最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

吹付のアスベストはシールが貼りようはないので賠償責任は負わない

2022-06-26 17:05:36 | 日記
令和3(受)1125  損害賠償請求事件
令和4年6月3日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

建材メーカーが、石綿含有建材の製造販売に当たり、当該建材が使用される建物の解体作業従事者に対し、当該建材から生ずる粉じんにばく露すると石綿関連疾患にり患する危険があること等を表示すべき義務を負っていたとはいえないとされた事例

日経新聞の報道です。
2社はニチアスとエーアンドエーマテリアル。2020年8月の二審判決は、健康被害を防ぐため建材の包装や外装に警告表示をすべきだったと指摘し、各地の高裁判決で唯一、建物の改修・解体作業に従事した人たちに対しても賠償義務があると認めた。
2社は弁論で、建材の出荷から解体まで長期間が経過することから「作業に従事する人に実効性のある警告をするのは困難だ」と主張した。


京建労のHPです。
建材メーカーの責任が認められる可能性のある職種は、屋内作業者は基本的に問題がありませんが、屋外従事者と解体工は難しいと言わざるを得ません。屋外従事者については建材メーカーの予見可能性が否定され、解体工については警告表示による結果回避可能性が否定されてしまったからです。

判決文は悪文過ぎて何を言っているのか分かりません。事件の概要は日経新聞を読んだ方が圧倒的に分かりやすいです。

無茶苦茶簡単に言うと、建材メーカーは解体工事ついてきちんと危険性を警告しろと言う訴えです。

原審の確定した事実関係の概要
(1) 石綿は建材等に広く使用されてきた。
(2) 石綿が粉じんとなって発散し、解体作業従事者が石綿粉じんにばく露することがあった。
(3) 石綿関連疾患には、石綿肺、肺がん等がある。
(4)石綿粉じんへのばく露と石綿関連疾患のり患との間の因果関係に関しては、石綿肺につき昭和33年3月頃に、肺がん、中皮腫等につき昭和47年頃にそれぞれ医学的知見が確立し、昭和48年までに当該知見を基礎付ける研究報告等が国際機関等により公表されていた。
3 昭和50年1月1日以降、石綿含有建材を製造販売する当たり、当該建材が使用される建物の解体作業従事者に対し、①当該建材自体に本件警告情報を記載し、②本件警告情報を記載したシール等とこれを当該建材が使用された部分に貼付するよう当該建物の建設工事の施工者に求める文書とを当該建材に添付し、又は③本件警告情報を記載した注意書とこれを当該建物の所有者に交付するよう当該施工者に求める文書とを当該建材に添付するなどの方法により、本件警告情報を表示すべき義務を負っていたにもかかわらず、その義務を履行しなかった。


これは別の事件か何かあったのでしょうか。よく記録が残っていたもんです。と思ったら

前記事実関係によれば、石綿含有建材の中には、吹付け材のように当該建材自体に本件警告情報を記載することが困難なものがある上、その記載をしたとしても、加工等により当該記載が失われたり、他の建材、壁紙等と一体となるなどしてその視認が困難な状態となったりすることがあり得る。また、建物において石綿含有建材が使用される部位や態様は様々であるから、本件警告情報を記載したシール等を当該建材が使用された部分に貼付することが困難な場合がある上、その貼付がされたとしても、当該シール等の経年劣化等により本件警告情報の判読が困難な状態となることがあり得る。

やはりそうでしたか。

以上によれば、上告人らが、石綿含有建材を製造販売するに当たり、当該建材が使用される建物の解体作業従事者に対し、本件警告情報を表示すべき義務を負っていたということはできない。

そうなりますね。

全員一致でした。

第二小法廷
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

内容は妥当でしたが、とにかく一文が長い。自己満足で判決文を書くなと言いたくなるレベルです。


弁護士ら持続化給付金詐取の疑い

2022-06-24 05:14:23 | 日記
共同通信の報道です。

広島県警は23日、新型コロナ対策の持続化給付金など約600万円をだまし取ったとして、詐欺の疑いで同県東広島市の弁護士加〇康〇容疑者(47)と、広島市の会社役員〇本〇二容疑者(56)を逮捕した。捜査2課によると、給付金詐欺容疑で弁護士が逮捕されるのは全国初。

元記事では伏字になっていません。実名が公表されていますが、とりあえず有罪判決が出るまでは、伏字にしておきます。他のサイトでは、事務所の詳細な地図と画像が晒されています。この弁護士はこれまで2回懲戒処分を受けています。
http://shyster.sakura.ne.jp/

さすがにこの事件が立証されれば除名処分にしないと弁護士会の信用にかかわります。

トンデモ裁判員

2022-06-21 08:22:54 | 日記
裁判員、いびきかき居眠り 被告側が解任請求 仙台
宮城県大崎市の無職男性が自宅に放火され殺害された事件の裁判員裁判で、審理に参加していた男性裁判員がいびきをかきながら居眠りをしていたとして、被告側の代理人弁護士は20日、仙台地裁に裁判員の解任を請求した。
申立書などによると、この裁判員は20日の公判で、被告側が弁論を読み上げている最中に、裁判員席で数分間居眠りをした。いびきの音が一時弁論を遮るような状態となったため、直後に裁判長が休廷した。再開後は通常通り公判が続けられた。


裁判員裁判で裁判員がいびきかき居眠り「到底受け入れられない」被告側が解任請求
宮城県大崎市の無職男性が自宅に放火され殺害された事件の裁判員裁判で、審理に参加していた男性裁判員がいびきをかきながら居眠りをしていたとして、被告側の代理人弁護士は20日、仙台地裁に裁判員の解任を請求した。

裁判で書記が寝てるのを見たことがありますが、裁判員が寝ては駄目でしょう。

在外邦人が最高裁国民審査に参加できないのは憲法違反

2022-06-18 18:32:59 | 日記
令和2(行ツ)255  在外日本人国民審査権確認等、国家賠償請求上告、同附帯上告事件
令和4年5月25日  最高裁判所大法廷  判決  その他  東京高等裁判所
 1 最高裁判所裁判官国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反する
2 在外国民が、国が自らに対して次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが違法であることの確認を求める訴えは、適法である
3 在外国民に国民審査に係る審査権の行使を認める制度を創設する立法措置がとられなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるとされた事例


時事通信の報道です。
海外在住の邦人が最高裁裁判官の国民審査に投票できないのは憲法違反かどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁大法廷(裁判長・大谷直人長官)は25日、「投票を全く認めていない国民審査法は違憲」との初判断を示した。国会が投票を可能にする立法措置を長期に怠った不作為も違法と認め、賠償を命じた。
裁判官15人全員一致の意見。法改正は不可避で、金子恭之総務相は「在外投票を可能とする方策を早急に検討する」との談話を発表した。


在外日本人が国政選挙に参加できない問題ですら解決したのが平成10年からですからね。何でそのときに、最高裁の国民審査も一緒にやらなかったのか、のろまとしか言いようがありません。

では、訴えの内容から見ていきます。
概要
1 在外国民である第1審原告X1 は、第1審被告に対し、主位的に、次回の国民審査において審査権を行使することができる地位にあることの確認を求め、予備的に、第1審被告が第1審原告X1 に対して国外に住所を有することをもって次回の国民審査において審査権の行使をさせないことが憲法15条1項、79条2項、3項等に違反して違法であることの確認を求めている。

ほったらかしすぎますわ。


(1)憲法79条2項は、、同条3項は、同条2項の場合において、投票者の多数が裁判官の罷免を可とするときは、その裁判官は罷免される旨規定している。
(2)公職選挙法19条2項は、市町村の選挙管理委員会は、選挙人名簿の調製及び保管の任に当たるなどと規定し、同法21条1項及び2項は、選挙人名簿の被登録資
格として、当該市町村の区域内に住所を有する年齢満18年以上の日本国民であること等を規定している。
(3)国民審査法14条は、投票用紙には、国民審査に付される裁判官の氏名を印刷するとともに、その氏名を印刷する者のそれぞれに対する×の記号を記載する欄を設けなければならないものとし、都道府県の選挙管理委員会は、同法別記様式に準じて投票用紙を調製しなければならない旨規定している。
(4)国民審査法4条の2第1項は、中央選挙管理会は、衆議院議員の任期満了の日前60日に当たる日又は衆議院の解散の日のいずれか早い日以後直ちに、同日以後初めて行われる衆議院議員総選挙の期日に国民審査に付されることが見込まれる裁判官の氏名等を都道府県の選挙管理委員会に通知しなければならない旨規定している。


(4)には、官報云々ありますが、これも時代錯誤ですよね。HPで公開しろよと思いませんか?紙媒体で配る方が時間と手間がかかり、地域によって不平等が発生します。この辺りは公務員根性です。毎回思うのですが、選挙日が決まった瞬間に公開ぐらいしてもいいレベルです。

3事実認定
(1)ア 第1審原告X1 は、在外国民である。
(2)イ平成29年国民審査が施行された当時、在外国民であり、在外選挙人名簿に登録されていたが、その後帰国した。


国民審査の権利があるのに何もできませんでした。

(3)イ 平成10年4月23日、第142回国会参議院地方行政・警察委員会において、平成10年公選法改正に係る法律案に関連して、在外審査制度について質疑がされた。

改正しなければならないことは国会の委員会でも分かってて、中途半端な状態で止まってしまったのですね

最高裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁は、・・・(在外邦人に国民審査の機会を与えなかったことは)憲法15条1項、3項、43条1項、44条ただし書に違反する。
エ 平成18年公選法改正後の公職選挙法の下においては、衆議院小選挙区選出議員の選挙及び参議院選挙区選出議員の選挙も在外選挙制度の対象とされた。
カ 現在に至るまで、在外審査制度の創設に係る法律案が国会に提出されたことはない。


いいかげんにせーよと言いたい気持ちが伝わってきます。

在外国民の審査権の行使を可能にするための立法措置が何らとられていないことについて、やむを得ない事由があるとは到底いうことができない。
したがって、国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことは、憲法15条1項、79条2項、3項に違反するものというべきである。


そのとおりです。ところがここから、司法の意味不明さが出てきます。

国民審査法が在外国民に審査権の行使を全く認めていないことが違憲であることを理由として、国が個々の在外国民に対して次回の国民審査の機会に審査権の行使をさせないことが違法であると主張され、この点につき争いがある場合に、その違法であることを確認する判決が確定したときには、国会において、裁判所がした上記の違憲である旨の判断が尊重されるものと解されること(憲法81条、99条参照)も踏まえると、当該確認判決を求める訴えは、上記の争いを解決するために有効適切な手段であると認められる。このように解しても、上記のとおり、国民に保障された審査権の基本的な内容等が憲法上一義的に定められていることが明らかであること等に照らすと、国会の立法における裁量権等に不当に影響を及ぼすことになるとは考え難いところである。
したがって、現に在外国民である第1審原告X1 に係る本件違法確認の訴えは、公法上の法律関係に関する確認の訴えとして適法であるということができる。


自己満足で文章を書くな!と言いたくなるくらい悪文です。要するに、「行政の裁量権じゃないよ、憲法で定められた権利なんだからしっかりやれ」と言いたいのでしょう。

損害賠償については
遅くとも平成29年国民審査の当時においては、在外審査制度を創設する立法措置をとることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠ったものといえる。そうすると、本件立法不作為は、平成29年国民審査の当時において、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものというべきである。

とは言っても、税金から出されるので国の責任というよりは、当時の国会議員が連帯して賠償しろという制度にでもしないと制裁になりませんね。ここまでで何と14ページです。そこまでダラダラ書く内容の裁判ではないと思いますが。

裁判官宇賀克也の補足意見
国民審査の制度は参政権の一種である。
厳格な審査基準が適用され、その制約がやむを得ないと認められる事由があるといえるのは、国民審査の公正を確保しつつ在外審査制度を設けることが事実上不可能ないし著しく困難な場合に限られると考えられる。

要するに、これまでやって来なかったことに言い訳できんよねと言っています。

厳格な審査基準が適用され、その制約がやむを得ないと認められる事由があるといえるのは、国民審査の公正を確保しつつ在外審査制度を設けることが事実上不可能ないし著しく困難な場合に限られると考えられる。

私はこれに反対で、衆参の選挙の度ごとにやるべきで、かつ一度審査に通ったからと言って二回目は無しというのはおかしいと思っています。今の制度では甘すぎます。というか、そもそも訴えの内容に関したものからずれた意見を言ってませんか?

大法廷一致の意見でした。
裁判長裁判官 大谷直人
裁判官 菅野博之
裁判官 山口 厚
裁判官 戸倉三郎
裁判官 深山卓也
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 宇賀克也 補足意見が論点ずれ
裁判官 林 道晴
裁判官 岡村和美
裁判官 長嶺安政
裁判官 安浪亮介
裁判官 渡 惠理子
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹

当たり前の判決だと思います。

日弁連が、たまにはいいことを言っています。
在外日本国民の国民審査に関する最高裁判決についての会長声明

当然判決 「仕方ないな」は指示したのと同じ外国公務員への賄賂事件

2022-06-09 14:10:09 | 日記
令和2(あ)1135  不正競争防止法違反幇助被告事件
令和4年5月20日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
外国公務員等に対して金銭を供与したという不正競争防止法違反の罪について、共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決に、刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があるとされた事例

ほぼA4で1枚に渡る一文、ダラダラと書いているのでぶった切って解説します。
・タイでインフラ事業に許認可権のある公務員がいた。
・その公務員にA社の取締役が、自社の商品を売り込むために焼き4000万円を賄賂として渡した。
・この締役は不正競争防止法で、1審有罪、2審は幇助として有罪判決になった。

事実確認を見ます。
(1) カノム郡において火力発電所建設工事を遂行していた。同工事に関し、現地に本件仮桟橋が建設されていたところ、本件仮桟橋は総トン数500t以下の船舶の接岸港として建設許可がされたものであった。
(2) 本件仮桟橋に本件はしけを接岸させる予定が組まれていたが、タイ運輸省港湾局第4地方港湾局ナコンシータマラート支局長としてカノム郡における桟橋使用禁止等を命ずる権限を持つ外国公務員等であったBは、同日、本件会社側に対し、本件仮桟橋の建設許可では本件はしけを接岸できず、接岸するためには地元関係者の分も含めて現金2000万タイバーツを払えとの要求をした。


開発途上国あるあるですね。正規の手続きなのか、裏金要求の前振りなのかよく分からない請求です。

ロジスティクス課長であったE、その上司のD、さらに、その上司であるCに報告され、Eがタイに出張して事態の収拾に当たることが決定された。

(3)Eは、現地において、前記要求に応じて金を支払う以外の代替手段を見いだせないことをDに報告するとともに、現地企業に協力を依頼するなどして、現金の調達に向けて調整に当たった。報告を受けたDは、要求どおり金を支払うしかないことなどをCに伝え、Cも同様の考えに至った。・・・Dは、9日、Eから、建設許可を取り直すには4か月以上かかるとの報告を受け、翌10日、Cに対し、その旨報告した。なお、工事が遅延した場合、本件会社が支払うことになる遅延損害金は、1日当たりおよそ4000万円と見込まれていた。

こういうのはね、すべてオープンにした方がいいと思いますよ。その損害金も載せるぞ!と言った方が、交渉は早く進みます。

(4)C及びDは、10日、前記要求に従ってBらに対し現金2000万タイバーツを供与すること(以下、B自身に対する現金1100万タイバーツの供与を含め、この現金2000万タイバーツの供与を「本件供与」という。)に関する資料を携え、本件会社本社内の被告人用会議室において、被告人と会議を行った
ほぼ即日決済とは、よほどしょっちゅうある事で過去があるんじゃないかと疑いたくなりますね。

Cは、10日の会議の後、被告人との再度の会議を13日に設定し、同日、C及びDは、上記会議室において、被告人と会議を行った

議事録とかどうなってたんでしょうね。それとも録音ですか?

(5)Dは、10日の会議の後、Eに対し、被告人の了承が得られたとして本件供与に向けた手続の再開を指示し、13日には現金用意された。
どういう会計処理をしたんでしょうか。会計士も分からなかった?

(6)17日、貨物の陸揚げが開始された。また、同日以降、Bから、はしけの本件仮桟橋への接岸を拒否されたり現金を要求されたりすることはなかった。

原審での認定は
(1)13日の会議において、Cから賄賂を支払うしかないとの意見を伝えたところ、被告人は、「仕方ないな。」と言って本件供与を了承したと認められる。
(2)同関係者は、エンジニアリング本部長であった被告人が同社の火力発電所建設プロジェクト全体の責任者であり最終判断権者であると一致して認識していたと認められるから、被告人に本件供与に関する業務上の実質的な意思決定権限があったと認められる。そうすると、被告人は、13日の会議において、自らの意思決定権限に基づき、本件供与について了承したことにより、本件供与について共謀を遂げたと認められる。


まあそうですよね。同席して何も言わなかったとしても、反対しなければ認めたようなもんじゃないですか。

被告人には不正競争防止法18条1項違反の罪の共同正犯は成立せず、同罪の幇助犯が成立するとした。

幇助?1000万以上の金をほぼ即日用意するって、上場企業でも取締役決済が普通ですよ。積極的に賄賂を払えとはいってませんが、意思決定は被告人じゃないですか?

Cは、被告人が本件供与を了承したのは13日の会議であり、10日の会議では了承を得られなかったと供述するが、Dは、被告人が本件供与を了承したのは10日の会議であったと供述しており、被告人の了承の経緯や時期という核心部分について整合しておらず、Cの供述の信用性には疑問がある。また、被告人は、上記各会議においてC及びDに対し本件供与によらない代替手段の検討を促し、13日の会議の後にも別の関係者に代替手段の検討を依頼していることなどからすれば、終始本件供与には消極的であったことがうかがわれる。・・・これを最終的に了承する趣旨であったとみることには合理的な疑いが残る。
(2)直属の部下以外の従業員の活動についても監督義務を負うべき立場にあったのに、Cらに対し、本件供与を事実上黙認するような言動をとったものであり、これは本件供与に一種のお墨付きを与えるに等しく、その実現を精神的に容易にしたものであるから、幇助犯が成立する。


おいおい、やれとは言わなくても「やるな」と言わない限り認めたようなもんでしょう。ヤクザの使用者責任もそんなロジックで組長が有罪になっていたはずです。

最高裁は
本件における共謀の有無の認定に当たり重要となるのは、Cらが被告人から本件供与の了承を得るため二度にわたり設定した本件会議で、被告人が本件供与を了承したといえるか否かであり、

やはりここですよね。

被告人自身、本件会議において本件供与を行わないようにと述べていないことは自認している。これらの点を踏まえれば、C及びDの各供述は、いずれも、被告人から、本件会議において本件供与についてその実行がやむを得ないという意味で「仕方ないな。」という発言があり、本件供与の実行に了承が得られたとするものであって、核心部分に齟齬があるとはいえず

そりゃそうです。一般的に「皆まで言わせるな!」という上司がいてもおかしくない状況です。

本件供与に関する共謀の成立を認めた第1審判決に事実誤認があるとした原判決は、第1審判決について、論理則、経験則等に照らして不合理な点があることを十分に示したものとは評価することができない。そうすると、第1審判決に事実誤認があるとした原判断には刑訴法382条の解釈適用を誤った違法があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認められる。

裁判官全員一致
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

当然判決ですね。

安愚楽牧場に関する消費者庁の行政文書は類似事件防止のため公開を個別で判断しろ

2022-06-05 09:58:09 | 日記
令和2(行ヒ)340  行政文書不開示処分取消請求事件
令和4年5月17日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

 預託法(平成21年法律第49号による改正前のもの)違反及び景表法(平成26年法律第71号による改正前のもの)違反に係る調査の結果に関する情報が情報公開法(平成26年法律第67号による改正前のもの)5条6号イ所定の不開示情報に該当しないとした原審の判断に違法があるとされた事例

参考サイト
全国安愚楽牧場被害対策弁護団
和牛預託商法・安愚楽牧場の破綻
和牛預託商法・安愚楽牧場の破綻

安愚楽牧場の破綻が直接裁判の対象ではないので、報道ベースでは出てきませんでした。
事実確認を見ていきます。

1 被上告人が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成26年法律第67号による改正前のもの。以下「情報公開法」という。)に基づき、消費者庁長官に対し、株式会社安愚楽牧場に関する行政文書の開示を請求したところ、これに該当する行政文書のうち別紙目録記載の部分等に記録された情報が情報公開法5条6号イ等所定の不開示情報に該当するとして、当該部分等を除いた一部を開示する旨等の各決定を受けたため、本件各決定のうち別紙目録記載の部分等に関する部分の取消しを求める事案である。

預託商法で被害者救済のために、消費者庁に開示請求したところ、のり弁状態のものが出てきたので、ちゃんと開示しろという裁判です。


ア 預託法に係るものは同庁取引対策課の所掌事務とされ、景表法に係るものは同庁表示対策課の所掌事務とされている。

この制度自体おかしいと思いますけどね。消費行動ではなく、投資でしょう?金融庁の管轄にすべきだと思いますけど。そうはいっても、法律で消費者庁としてしまったので仕方ありません。

イ(ア)同法7条1項は、内閣総理大臣は、預託等取引業者が同法3条~6条の規定に違反する行為をし、かつ、当該行為を引き続きするおそれがあると認めるとき等は、当該預託等取引業者に対し、業務の全部又は一部を停止すべきことを命ずること等ができる旨を規定し、同法10条1項は、内閣総理大臣は、同法の施行のために必要があると認めるときは、預託等取引業者に対し報告をさせ、又はその職員に、預託等取引業者の事業所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査させること等ができる旨を規定する。
本当のことを書かずに募集した預託業者を行政処分にできると書いています。

(ウ) 景表法4条1項は、事業者は、自己の供給する商品又は役務の取引について、同項各号に該当する表示をしてはならない旨を規定する。
法改正前でも、景品表示法で総理大臣が命令できることになっていたそうです。

イ 農林水産大臣は、上記 イ の主務大臣として、平成21年1月、農林水産省職員に、本件会社の事業所への立入検査をさせた。
ウ 本件会社は、平成23年8月1日、本件契約に係る全預託者に対して支払停止の通知書を一斉に送付し、同月9日、再生手続開始の申立てをした。

前々から農業でこんなに高水準の利回りが出せる訳がないと噂が立っていました。にもかかわらず週刊D社とか経済誌を謳う雑誌では随分長い間広告が出ていたのを記憶しています。記憶では6%越えのような。

エ 消費者庁長官は、平成23年11月30日、本件会社に対し、景表法6条に基づき、本件契約の内容についての雑誌広告における表示が同法に違反するものである旨を一般消費者へ周知徹底することを命ずる措置命令を行った。
行政が後手後手に回ったわけですね。3か月も何で時間を必要としたんでしょうか?農林水産省と一緒にやっちまえばよかったのに。これはもはや行政の不作為ですね。

被上告人は、平成23年9月14日、情報公開法に基づき、消費者庁長官に対し、本件会社に関する行政文書の開示を請求し、その後、開示請求に係る行政文書を農水省、消費者庁取引対策課又は同庁表示対策課が作成し、又は入手した本件会社に関する行政文書等に補正した。

多分国の監督責任追及の準備でしょう。当然ですわな。そうしたら、のり弁が出てきたのです。

別紙目録記載3、4、6、8及び9の部分に係る各文書は、いずれも、農水省職員が本件会社に対する預託法違反に係る調査の過程において事業所への立入検査又はその後の追加調査の結果をまとめたものであり、同部分には、上記立入検査等の結果が記載されている。
ってことは、消費者庁に連絡がいってたわけですね。

預託法等違反に係る調査の位置付け等からすれば、預託法等の規制の潜脱を図ろうとするような預託等取引業者等においては、消費者庁長官等が上記判断をするに当たり、いかなる事実関係をいかなる手法により調査を行い、調査により把握した事実関係のうちいかなる点を重視するかなどの着眼点や手法等に高度の関心を寄せ、他の預託等取引業者等に対する調査に係る情報の積極的な収集、分析等を試み、上記着眼点や手法等を推知した上で、将来の調査の実効性を失わせるためその対象となり得る資料等を隠蔽し、又は改ざんすることなどがあり得るものといえる。・・・将来の調査に係る事務に関し、正確な事実の把握を困難にするおそれ又は違法若しくは不
当な行為を容易にし、若しくはその発見を困難にするおそれがあるといえる場合があり得る

捜査手法が書かれているから、そこは見せられないからのり弁にしたようです。確かに、裏をかくような奴らが出て来るとも限りませんからね。で、この防犯の意味から開示できるところもあるはずだろ、もう一回ちゃんと見直せと言うことになりました。

裁判官宇賀克也の補足意見
行政調査の結果、最終的に不利益処分や行政指導に至った場合、当該不利益処分及び行政指導の内容並びにその原因となる事実を公表することは、そこから調査の着眼点が間接的に推知される場合があったとしても、行政の透明性の確保や説明責任の履行の観点から望ましいことであり、実際、消費者庁は、不利益処分及び行政指導の内容並びにその原因となる事実をウェブサイトで公表している。

これのことでしょうか。
行政処分の状況について知りたい
とは言っても、役人が公表しましたよとアリバイ作りのためにやっているかのように探しにくいですね。しかも、新聞記事と大差ない内容です。これをもって公開しているから問題ないと言っていいんでしょうか?

法廷意見も、「監査、検査…に係る事務」に関する情報であれば、情報公開法5条6号イ所定の不開示情報該当性が推認されるという立場に立つものではもとよりない。しかし、行政調査の過程において作成し、又は入手した情報の中には、脱法的行為を防止するために不開示にせざるを得ない機微な情報が含まれ得ることは否めない。・・・個別に情報公開法5条6号イ所定の不開示情報該当性を判断すべきであると考える。

個別に判断するべき・・・何も言ってないのと変わらんでしょう。

事項的基準に加えて、「おそれ」という定性的基準を組み合わせることにより、不開示情報の範囲が必要以上に広がらないように配慮されているので、情報公開法6条2項のような特別の部分開示規定を設ける必要はないと判断されたのである。

この「おそれ」が判断を自由させ過ぎてないか?という事でしょうか。結局のところもう一回じっくり感がよ、本文と何が違うの?という意見でした。補足になってません。

裁判長裁判官 宇賀克也
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 道晴
裁判官 長嶺安政
裁判官 渡 惠理子

煮え切りませんが、まあ仕方ないところでしょうか。こういう事件も、固有名詞は伏せるとして20年後には公開するようにすべきでしょうね。

最高裁長官に戸倉氏決定 新判事は今崎、尾島氏

2022-06-04 15:27:36 | 日記
最高裁長官に戸倉氏決定 新判事は今崎、尾島氏

新たな最高裁判事には戸倉氏の後任に今崎幸彦東京高裁長官(64)を、7月に定年退官する菅野博之判事(69)の後任に尾島明大阪高裁長官(63)を任命する。発令は今崎氏が6月23日以降、尾島氏が7月3日以降の予定。

最高裁判事は、ましてや長官については任命に当たり公聴会を開くべきです。これでは国の通常の人事と何ら変わりません。司法の独立性と公平性を確保するためにも、公聴会を開く制度にしましょう。