最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

袴田事件 補足意見

2021-01-27 17:12:59 | 日記
どれもこれも煮え切らない何とも言えない歯切れの悪い書き方をしています。

裁判倉三郎の補足意見

5点の衣類が昭和41年 7月20日以前に1号タンクに入れられて1年以上みそ漬けされていたとの事実に 合理的な疑いを差し挟むような証明力を有するか否かについて判断するのが相当で あると考え,原決定を取り消し,原審に差し戻すこととしたものである。

鑑定結果よりも、そもそも証拠となる血痕のついた衣類が入っていたことについて、それが怪しいので裁判やり直しの意見でした。


裁判官宮崎裕子の補足意見
1  鑑定時までの40年以上の間,5点の衣類及び被害者着衣がおかれてきた状 況を考えると,当該試料に含まれていたDNAの劣化はかなり進んでいたと推測す るのが合理的であると思われる。
4  ,1年余りの期間みそ に漬け込まれた場合には血痕の赤みが消失するところまで褐変化が進行するかどう かを合理的に推測できる程度の専門的知見を得て,化学的根拠に基づいた判断をす べきであると考える。


戸倉裁判官とは違い、味噌樽に証拠物件が入っていたことについて疑問は無いようです。が、事件発生から1年間も味噌樽に入っていて、タンパク質も変質する可能性の方が高いので、それ自体オカシイと言っています。

裁判官林景一,同宇賀克也の反対意見

単にメイラード 反応の影響等について審理するためだけに原裁判所に差し戻して更に時間をかける ことになる多数意見には反対せざるを得ないのである。

弁護側の提出した証拠は色々疑わしいけど、特にメイラード 反応だけに絞っておかしいでしょ?というのはおかしいという主張でした。

要するに結論が出ませんでした。疑わしきは罰せずとも有罪とも言えませんという逃げ口上のようにしか思えませんね。
確かにこの事件では、明確に有罪というには証拠が足りないし、検察がでっち上げたというにも決め手がなさすぎます。これは事実認定で最高裁がやるべき判断ではないようにも思えますね。

袴田事件の判決文1

2021-01-17 10:24:07 | 日記
平成30(し)332  再審開始決定に対する即時抗告の決定に対する特別抗告事件
令和2年12月22日  最高裁判所第三小法廷  決定  その他  東京高等裁判所
再審請求を棄却した原決定に審理不尽の違法があるとされた事例

いわゆる袴田事件です。

NHKの報道です。
袴田巌さん(84)は、昭和41年に今の静岡市清水区でみそ製造会社の役員の一家4人が殺害された事件で、死刑が確定しましたが、無実を訴えて再審を申し立てています。
平成26年に静岡地方裁判所が、事件の1年余り後に会社のみそのタンクから見つかった犯人のものとされる衣類の血痕のDNA型が袴田さんのものとは一致しなかったという鑑定結果などをもとに再審を認める決定をした一方、おととし、東京高等裁判所は「DNA鑑定の信用性は乏しい」として再審を認めず、弁護団が特別抗告していました。
最高裁判所第3小法廷の林道晴裁判長は、衣類の血痕のDNA鑑定について「衣類は40年以上、多くの人に触れられる機会があり、血液のDNAが残っていたとしても極めて微量で、性質が変化したり、劣化したりしている可能性が高い。鑑定には非常に困難な状況で証拠価値があるとはいえない」として、弁護側の主張を退けました。
一方で、衣類に付いた血痕の色の変化について「1年余りみそに漬け込まれた血痕に赤みが残る可能性があるのか、化学反応の影響に関する専門的な知見に基づいて審理が尽くされていない」として、23日までに再審を認めなかった東京高裁の決定を取り消し、高裁で再び審理するよう命じる決定をしました。
一方、決定では、5人の裁判官が、3対2で意見が分かれています。
2人の裁判官は反対意見の中で、DNA鑑定などを新証拠と認め、血痕が袴田さんのものではないという重大な疑いが生じているとして、再審を認めるべきだとしています。


事実認定を見ていきます。
Aは,昭和41年6月30日午前1時過ぎ頃,静岡県清水市(当時)所在のみそ製造販売会社専務であった男性の居宅に侵入して金員を物色中,同人に発見されるや金員強取の決意を固め,殺意をもって,所携のくり小刀で同人の胸部等を突き刺し,物音に気付いて起きてきた同人の妻,長男,次女の頸部等をそれぞれくり小刀で突き刺し,店の売上金等を強取した上,さらに,上記4名を住居もろとも焼いてしまおうと考え,混合油を4名の身体に振りかけてマッチで点火して放火し,よって4名を殺害して金員等を強取するとともに住宅1棟を焼損した。
Aは,同年8月18日,本件で逮捕され,同年9月9日に起訴された。第1審の公判が続いていた昭和42年8月31日,同社みそ製造工場において,従業員が1号タンクの仕込みみその搬出作業中,タンク底部から麻袋に入った5点の衣類(白ステテコ,白半袖シャツ,ネズミ色スポーツシャツ,鉄紺色ズボン,緑色パンツ)を発見した。

第2 B鑑定について
1 B鑑定は,5点の衣類から採取した試料のほか被害者着衣から採取した試料から血液細胞を他の細胞と分離して抽出するという細胞選択的抽出法を採用した上でDNA型鑑定を実施し,STR型検査によって検出されたアリルの多くが血液由来のアリルであり,白半袖シャツの右肩部分に付着した血液のDNA型がAのDNA型と一致しないなどとするものである。
原々決定は,B鑑定が信用できるとし,その根拠として,5点の衣類及び被害者着衣の本件試料を採取した部位以外の部位から採取した試料(以下「対照試料」という。)からアリルが検出されなかったこと,本件試料には血液が付着している蓋然性が認められること,PCR増幅回数が28回でありアリルドロップインの可能性が低いこと,外来DNAによる汚染の可能性が低いこと,細胞選択的抽出法を用いてDNA抽出を行ったことを挙げた。


みそ製造タンクの中に入れてあった衣類についた血痕を証拠としたのですよね。血液はタンパク質ですから、変質していると思うのですが。さらに昭和41年の技術で?

血液をみそ漬けにすると血液中のDNAの分解が進むとの実験結果や,DNAは高熱で処理されると分解されて検出困難になり,炭化すると分解されて残らないとの専門家の意見も考慮すると,5点の衣類及び被害者着衣に血液由来のDNAが付着し残存しているとしても,極めて微量でかつ変性・劣化している可能性が高く,また,本件試料が外来DNAに汚染されている可能性も相当程度あるものと考えられる。

やはりそういうツッコミは出ますよね。

B鑑定における本件試料のチャート図を見ると,外来DNAによる汚染を疑うべきものが複数存在し,B教授自身も本件試料の一部に外来DNAによる汚染があることを認めている。・・・微量かつ劣化した試料のDNA検査の困難性を克服しているとはいい難く,B鑑定において検出されたアリルが血液由来のものであると確定することはできないといわざるを得ない。

そりゃそうなりますよね。

原審で実施されたD教授による鑑定(以下「D鑑定」という。)は,裁判所の定めた鑑定事項に沿って行われていないという問題もある。しかし,上記2で検討したところによれば,B鑑定において検出されたアリルは,血液由来のものであるとは確定することができない上,検出されたアリルの型判定の正確性についても疑義があるといわざるを得ない。したがって,B鑑定は,DNA型により個人を識別するための証拠価値があるということはできず,5点の衣類が犯行着衣であるとの確定判決の認定に合理的な疑いを差し挟む証拠とはいえない。

え?手続きを踏んでないものが物証として採用?それは採用したら駄目でしょう。

B鑑定が「無罪を言い渡すべき明らかな証拠」に当たるとした点で刑訴法435条6号の解釈適用を誤った違法があるとした原決定は,結論において正当である。

当然そうなりますよね。

5点の衣類が発見された当時の実況見分調書やE鑑定書には,血痕の色について,「濃赤色」,「濃赤紫色」,「赤褐色」等の記載があり,確定審において,複数の証人が一見して血痕であると分かった旨証言していることからすれば,少なくとも5点の衣類に付着した血痕に赤みが残っていたものがあったことは否定できないから,このような血痕の色合いが1年以上みそ漬けされた血痕として不自然かどうかを検討すること自体が失当とまでいうことはできない。・・・1号タンクで製造されたみその色を正確に再現したものとはいえないとした判断に不合理な点はない。そして,みそ漬け実験報告書について,同実験で使用した赤みその色合いは,原決定が認定した1号タンクのみその色より相当濃いことは明らかであり

ん?1年味噌に使った布地についた血痕がそう簡単にわかります?同じ原材料の醤油をかけてみればすぐわかると思いますが、ありえないでしょう。

検察官が提出したF准教授の意見書の添付写真を見ると,衣類に付着させた血液の色は,遅くともみそ漬けから30日後には黒くなり,5か月後以降は赤みが全く感じられない。

ですよね。

血液の色の変化について,G教授の意見書は,血液の量や濃度,温度,湿度,日光へのばく露,貯蔵媒体のPH,水分量やアルコール含有の有無等により,どの程度の時間が経過するとどのような色調になるかについても一定せず,一,二年以上を経ても赤みが保持されていることは日常的に経験されるとしており

醸造中のみその中で起こる褐変反応であるメイラード反応が,5点の衣類に付着した血痕の色に影響を及ぼす可能性のある要因として初めて主張された。H教授の意見書は,みその色が醸造中に濃くなるのはメイラード反応によるものであり,糖とアミノ酸が縮合して窒素配糖体が生ずることから始まり,アマドリ転位生成物が形成され,ケトアルデヒドが生じ,これがたんぱく質のポリペプチド鎖に重合し,メラノイジンという褐色物質が生ずること,みそ原料の大豆が多量のたんぱく質を含み,メイラード反応が進行する条件が整っていること,血液もたんぱく質により構成されたものであるから,みそ漬けされた血液にもメイラード反応が起こり得ること,


専門家の間でもかなり違う結果が出たようです。

1号タンクのみそについて,メイラード反応の進行の程度を的確に推測する資料がないとしながら,みその色だけを根拠に,メイラード反応がさほど進行していなかったことがうかがわれるとしたものであって,その推論過程に疑問があり,

原決定の上記判断は,みそ漬けされた血液の色調に影響を及ぼす要因,とりわけみそによって生ずる血液のメイラード反応に関する専門的知見について審理を尽くすことなく,メイラード反応の影響が小さいものと評価した誤りがある。このことは5点の衣類に付着した血痕に赤みが全く残らないはずであるとは認められないとの原決定の判断に影響を及ぼした可能性があり,審理不尽の違法があるといわざるを得ない。

5人中3人が賛成し、2人が反対意見となりました。あまりにも長いので補足意見は次回に回します。

会社の粉飾をきちんと調べなかったので、証券会社は新規直後の上場廃止について責任をとれ

2021-01-15 21:44:18 | 日記
平成30(受)1961  損害賠償請求事件
令和2年12月22日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  東京高等裁判所
株式の上場に当たり提出された有価証券届出書の財務計算に関する書類に係る部分に虚偽記載があった場合において当該株式の発行者と元引受契約を締結した金融商品取引業者の金融商品取引法21条1項4号の損害賠償責任につき同条2項3号による免責が否定された事例

時事通信の報道です。
上場廃止となった半導体製造装置メーカー「エフオーアイ」(破産)の粉飾決算で損失を受けたとして、元株主らが上場時の審査や株式販売の主幹事だったみずほ証券に損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が22日、最高裁第3小法廷(宮崎裕子裁判長)であった。小法廷は粉飾に関する同証券の調査が不十分で「免責を受けることはできない」として二審東京高裁判決を破棄し、損害額算定のため審理を同高裁に差し戻した。

産経新聞の報道です。
この日の弁論で株主側は、みずほ証券が「会計監査の信頼性の疑義を払拭するだけの調査をしておらず免責されない」と主張。みずほ証券側は、調査は実施しており「免責要件は満たされる」と述べた。
 1審東京地裁は、粉飾を指摘する投書を受けて追加調査する義務があったのに不十分だったとして、みずほ証券に賠償責任があると判断、約3000万円の支払いを命じた。2審は「取引先への販売実績を調べるなどしており、通常求められる注意義務は尽くした」として1審判決を取り消した。


事実認定から見ていきます。

(1)ア 「エフオーアイ」は半導体製造装置メーカーである。
イ  本件会社の代表取締役及び取締役らのうち2名は,本件会社の平成16年3月期の決算が大幅な赤字となる見込みが生じたことから,富士通株式会社外1社に対する半導体製造装置の販売を仮装して約16億円の架空売上げを計上し,以後,継続して富士通等の国内企業並びに韓国及び台湾の企業に対する架空売上げの計上等を行うことにより,実際の売上高が数億円であるところを数十億円ないし百億円余であるとする粉飾決算を行うようになった。


三角の循環取引をやってしまいましたね。なお、専門用語として粉飾決算ではなく、不正会計処理が正しいです。

ウ 本件会社の平成14年3月期以降の計算書類及び財務諸表についての監査を実施した公認会計士らは,売掛金の実在性について,売掛先に対して残高確認書を送付し,その返送を受けて確認していたところ,本件役員らは,上記粉飾決算を行うようになってからは,本件偽装取引先に協力者を確保し,本件会計士から送付された残高確認書を当該協力者から回収した上,当該残高確認書に偽造印を押捺して本件会計士に返送するなどしていた。

かなり悪質ですね。

(2)ア みずほ証券は,平成19年5月,本件会社との間で上場準備に関する助言提供業務に係る契約を締結し,同年8月,本件会社の主幹事会社として本件会社についての引受審査を開始した。
イ 多額の売掛金があるのは半導体製造装置のうち初号機の検収完了までに長期間を要するという業界の取引慣行のためであり,今後は改善することが見込まれるなどとの説明を受け,当該説明は合理的であると判断した。
ウ 上記担当者は,本件会計士の監査実績及び監査体制に問題がないことを確認したほか,本件会計士から,売掛金の実在性について,売掛先から残高確認書の返送を受けるとともに,平成18年3月期には売掛先のうち富士通を訪問して購買部門の責任者との面談を実施して確認していることなどを聴取した。


公認会計士が適正意見を出した以上、証券会社も信じますよね。

エ 上記担当者は,平成19年11月から12月にかけて,売掛先のうち本件会社から調査対象として提案を受けた富士通外1社を訪問し,担当者として応対した者と面談した。このうち,富士通における応対者は上記責任者と同一人であり,これらの応対者は,本件役員らからの依頼に基づき,これらの企業が本件会社から半導体製造装置を購入しているなどと虚偽の事実を述べた。

ありゃ!告発があったわけですね。

オ みずほ証券は,これらの審査の結果,本件会社の上場申請手続を進めることに問題はないものと判断した。

みずほ証券がどんな審査をしたのか興味がありますね。

(3)ア みずほ証券は,平成19年12月,東証マザーズへの上場申請を行い,みずほ証券は,株式会社東京証券取引所に対して主幹事会社として推薦書等を提出した。
イ 東証は,本件会社の上場承認予定日を平成20年2月18日と設定したが,同月14日,本件会社の粉飾決算を指摘し対処を求める内容の匿名の投書を受け取ったことから,当該上場承認予定日を延期した。
ウ みずほ証券は,その頃,上記投書とおおむね同じ内容の匿名の投書を受け取った。


2回も内部告発と東証にも告発があったわけです。

エ 被上告人の担当者は,第1投書の内容を把握した後,本件役員らに対し,直ちにその内容等を伝え,その後,第1投書は従業員又は元従業員が業務妨害の意図で作成したものであると思われる旨の説明を本件役員らから受け,その作成者を特定した上で従業員であれば処分を行うよう要請した。・・・被上告人の担当者は,本件会社から富士通の関係者に対するストックオプションの付与の事実がないことを確認した。

微妙ですね。何で当事者に聞いちゃったのでしょうか。公認会計士になんで聞かなかったのか。

オ 本件役員らは,同年4月,被上告人に対して第1投書の作成者は本件会社の内部監査室長を務める者であると思われる旨などを説明し,本件会社は,同月,社内体制の整備のためなどとして上記上場申請を取り下げた。

だんだん半沢直樹みたいになってきました。

(4)ア 被上告人は,平成20年5月,本件会社から再度の上場申請の意向を受け,その引受審査を再開した。
イ 被上告人は,審査の結果,本件会社の再度の上場申請手続を進めることに問題はないものと判断した。なお,被上告人の担当者は,第1投書の作成者であると思われる者は内部監査室から異動させており退職の予定である旨を本件役員らから聴取するなどしたため,上記の者との面談を行わなかった。
ウ 本件会社は,同年12月,東証マザーズへの再度の上場申請を行ったが,平成21年5月,当該上場申請を取り下げた。


1年でほとぼりが冷めるとでも思ったのでしょうか、申請再開し、また取り下げです。

(5)ア 被上告人は,平成21年6月,本件会社から3度目の上場申請の意向を受け,その引受審査を再開した。
エ 被上告人は,これらの審査の結果,本件会社の3度目の上場申請手続を進めることに問題はないものと判断した。


3度目の正直でまた上場の推薦書を出しました。

ウ 東証,被上告人及び本件会計士は,平成21年10月27日頃,第1投書とおおむね同じ内容の匿名の投書を受け取った。
エ 第2投書に記載されている規模の粉飾を行うことは相当の簿外資金が必要となるため現実的ではないと思われることなどを聴取した。なお,被上告人の担当者は,第2投書の作成者は第1投書の作成者と同一人であると考えたが,上記の作成者と考えられる者との面談等を行わなかった。


これだけしつこく何度も同じ内容の告発があればもっと慎重に調べても良かったのではないでしょうか。

オ 被上告人は,同年11月11日,本件会社等との間で元引受契約を締結し,同月19日,本件会社に対し,本件会社との間で元引受契約を締結した他の金融商品取引業者を代表して,新株発行の払込総額として約52億円を払い込んだ。上記金融商品取引業者は,本件各投書について知らされていなかった。
カ 本件会社は,同月20日,東証マザーズに上場した。


こういう投書があった旨告知義務はあるのでしょうか?ここで書く理由がよく分かりません。

(7) 本件会社は,平成22年5月,本件有価証券届出書の虚偽記載の事実を認める旨を公表し,同年6月,上場廃止となった。

何と半年で上場廃止ですか。一審では金融商品取引法の免責条項を認め、責任なしとしました。確かにこれでは納得できませんね。

(1) 金商法は,21条1項4号において,有価証券届出書のうちに重要な事項について虚偽の記載があり,又は記載すべき重要な事項若しくは誤解を生じさせないために必要な重要な事実の記載が欠けている場合に,当該有価証券を募集又は売出しに応じて取得した者に対して上記の虚偽記載又は記載の欠缺により生じた損害の賠償責任を負う者として元引受業者を掲げ,同条2項3号において,元引受業者が同号に定める事項(免責事由)を証明したときは上記の損害賠償責任を負わないとしている。

法律系文章にありがちな悪文ですが、要するに公認会計士が問題ないと認めたのだから21条によって免責事項に該当する可能性があると言っています。

上記の金融商品取引業者等は,引受審査に際して上記監査の信頼性の基礎に重大な疑義を生じさせる情報に接した場合には,当該疑義の内容等に応じて,上記監査が信頼性の基礎を欠くものではないことにつき調査確認を行うことが求められているというべきであって,上記の場合に金融商品取引業者等が上記の調査確認を行うことなく元引受契約を締結したときは,同号による免責の前提を欠く・・・・財務計算部分に虚偽記載等がある場合に,元引受業者が引受審査に際して上記情報に接していたときには,当該元引受業者は,上記の調査確認を行ったものでなければ,金商法21条1項4号の損害賠償責任につき,同条2項3号による免責を受けることはできないと解するのが相当である。

つまり、何度も告発があったよね。その告発に基づいてきちんと調べてないじゃないかと言っています。

平成16年頃以降,売上高の急増,売上げの計上時期の偏り,売掛金期末残高の著しい増加,売上債権回転期間の顕著な長期化,営業活動によるキャッシュ・フローのマイナスの連続計上等,売上高の粉飾の典型的な兆候といえる複数の事象が継続してみられる状況にあったこととよく符合するものであった。・・・当該財務諸表についての本件会計士による監査の信頼性の基礎に重大な疑義を生じさせる情報に接していたものというべきである。

これは暗に公認会計士がまともな監査してないよねと言っているのと同じです。さらに、証券会社だったらこの位分かってて当たり前だよねと言っています。

イ 被上告人は,第1投書が本件役員らの主導により粉飾決算が行われている旨を指摘するものであったにもかかわらず,その内容を把握した後,本件役員らに対して直ちに上記内容を伝え,第1投書は本件会社の従業員等が業務妨害の意図で送付したものと思われる旨の説明を受けてその作成者の処分を求めるなど不適切な対応をしている・・・ストックオプションの付与の事実がないことを確認しているものの,このことをもって本件各投書に信ぴょう性がないと直ちに評価し得るものではない。

この記述はごもっともとしか言いようがありません。容疑者に尋問して、「証人が嘘を言っているからあいつを処分する」と言わせたわけです。

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 宮崎裕子
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
全員ごもっともです。

これは重過失というか、もはや酔っぱらい運転で死亡事故をやらかしたくらい酷い話です。
裏を考えると、主幹事で新規上場を仕切るとかなりいい感じで利益が得られるみたいです。2009年ぐらいの日経平均はかなり低い状態ですし、取引も1日10億株以下のどうしようもない頃だったので、貧すれば鈍する状態だったのかもしれません。プロとしては最悪ですね。

3回に分けて借金 どの借金分を返したのか未指定 時効成立はどの分か

2021-01-02 14:10:58 | 日記
令和2(受)887  貸金返還請求事件
令和2年12月15日  最高裁判所第三小法廷  判決  その他  東京高等裁判所
同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合における借主による充当の指定のない一部弁済は,特段の事情のない限り,上記各元本債務について消滅時効を中断する効力を有する

報道が見つからないので、事実確認から見ていきます。
(1) 亡Aは,平成16年10月17日,長男である被上告人に対し,253万5000円を貸し付けた)。・・・「本件貸付け①」
(2) Aは,平成17年9月2日,被上告人に対し,400万円を貸し付けた・・・「本件貸付け②」
(3) Aは,平成18年5月27日,被上告人に対し,300万円を貸し付けた。・・・「本件貸付け③」


親から毎年借金ですか。合計953万5000円です。

(4) 被上告人は,平成20年9月3日,Aに対し,弁済を充当すべき債務を指定することなく,貸金債務の弁済として,78万7029円を支払った。
(5) Aは,平成25年1月4日に死亡し,三女である上告人は,本件各貸付けに係る各債権を全て相続した。


典型的な争続になりましたね。8,747,971円の未払いを三女が相続しました。

(6) 上告人は,平成30年8月27日,被上告人に対し,本件各貸付けに係る各貸金及びこれに対する平成20年9月4日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める本件訴訟を提起した。被上告人が,同法167条1項に基づき,本件貸付け②及び③に係る各債務(以下「本件債務②及び③」という。)の時効消滅を主張するのに対し,上告人は,本件弁済により同法147条3号に基づく消滅時効の中断の効力が生じていると主張して争っている。

返済したのは貸付金①-③のうちどれかをして指定して返さなかった。三女はいつまでも返さないから遅延損害金請求、被上告人は時効だろと裁判になりました。

これについて最高裁は、
(1) 同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合において,借主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をしたときは,当該弁済は,特段の事情のない限り,上記各元本債務の承認(民法147条3号)として消滅時効を中断する効力を有すると解するのが相当である。

旧民法では、時効の中断は承認によって中断することになっています。

(2) これを本件についてみると,前記事実関係等によれば,本件弁済がされた当時,Aと被上告人との間には本件各貸付けに係る各債務が存在し,借主である被上告人は弁済を充当すべき債務を指定することなく本件弁済をしているのであり,本件弁済が本件債務②及び③の承認としての効力を有しないと解すべき特段の事情はうかがわれない。そうすると,本件弁済は,本件債務②及び③の承認として消滅時効を中断する効力を有するというべきである。したがって,上告人が本件訴訟を提起した平成30年8月27日の時点では,本件債務②及び③の消滅時効はまだ完成していなかったことになる。

ごもっともです。

なお,上告人は,平成20年9月4日から平成30年9月26日までの遅延損害金の請求に関する上告について,上告受理申立ての理由を記
載した書面を提出しない。
そうすると,本判決主文第1項のとおり,第1審判決が本件貸付け①に係る残元金として上告人の請求を認容した額である174万7971円に本件貸付け②及び③に係る各貸金の合計額である700万円を加えた額である874万7971円及びこれに対する平成30年9月27日から支払済みまでの遅延損害金の支払を求める限度で上告人の請求を認容する旨に原判決を変更すべきである。


裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 林 道晴
裁判官 戸倉三郎
裁判官 林 景一
裁判官 宮崎裕子
裁判官 宇賀克也

全員ごもっとも。むしろこれは下級審の法令の誤解であって、本来は最高裁まで争われるべきものですらないものだと思います。
最高裁まで争ったら遅延損害金どころか、元本も半分ぐらい返せたのではないかと思いますが。