最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

敵前逃亡をする権利の確認裁判:起こるかどうかわからんことを訴えるな

2019-07-26 17:05:01 | 日記
平成30(行ヒ)195  命令服従義務不存在確認請求事件
令和元年7月22日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  東京高等裁判所
 差止めの訴えの訴訟要件である「行政庁によって一定の処分がされる蓋然性があること」を満たさない場合における,将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟の適否

まずは産経の報道です。
集団的自衛権の行使を可能にした安全保障関連法は違憲だとして、陸上自衛官の男性が、防衛出動命令に基づく職務命令に従う義務がないことの確認を求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は22日、訴えを「適法」とした2審東京高裁判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
 上告審では、訴えの適法性が争点となった。1審東京地裁判決は、男性が所属する陸自の部隊が出動命令を受ける可能性が低いとして、違憲性の審理に入らず訴えを却下。2審判決は「重大な損害を生ずる恐れがある場合」などの訴訟要件を満たし、適法な訴えだと判断。1審判決を取り消して審理を地裁に差し戻し、国側が上告していた。
 2審は、職務命令に従わなかった場合に想定される懲戒処分などを防ぐため提訴できると判断したが、第1小法廷は、職務命令などの現実的な可能性について「要件を満たすものかどうかの点を検討することなく、訴えを適法と判断した」と指摘。「明らかな違法がある」と結論づけた。
 安全保障関連法は、密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し日本の存立が脅かされる事態を「存立危機事態」と定義。一定の要件を満たす場合、集団的自衛権の行使を認めている。


続いて朝日新聞の報道です
 安全保障関連法による集団的自衛権の行使は違憲だとして、現職の陸上自衛官が「存立危機事態」になっても防衛出動命令に従う義務はないことの確認を国に求めた訴訟の上告審判決が22日、あった。最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は「訴えは適法」とした二審・東京高裁判決を「検討が不十分」として破棄し、審理を同高裁に差し戻した。
 自衛官は訴訟の目的を「命令への不服従を理由とした懲戒処分を防ぐこと」と主張している。第一小法廷は、この訴えが適法であるには「処分される現実的な可能性」という要件が必要だと指摘。二審はこの点を検討していないため、さらに審理を尽くすよう求めた。
 一審・東京地裁は「命令が出る事態に直面しておらず、訴えは不適法」として自衛官の訴えを却下した。二審判決は「防衛という重要な任務に背けば、免職を含む重大な処分が想定される」と述べ、一審判決を破棄したが、実際に命令が出る可能性までは言及していなかった。


野党が戦争法案と名付けて大騒ぎしていた2015年が嘘のように静かになっています。
では、訴えの内容を見ていきましょう。
1(1) 本件は,陸上自衛官である被上告人が,我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し,これにより我が国の存立が脅かされ,国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態に際して内閣総理大臣が自衛隊の全部又は一部の出動を命ずることができる旨を規定する自衛隊法76条1項2号の規定は憲法に違反すると主張して,上告人を相手に,被上告人が同号の規定による防衛出動命令(以下「本件防衛出動命令」という。)に服従する義務がないことの確認を求める事案である。

凄いですね。戦闘が始まっても逃げ出す権利があることの確認でしょうか。その論拠は、

(2) 本件防衛出動命令は,組織としての自衛隊に対する命令であって,個々の自衛官に対して発せられるものではなく,これにより防衛出動をすることとなった部隊又は機関における職務上の監督責任者が,当該部隊等に所属する個々の自衛官に対して当該防衛出動に係る具体的な職務上の命令(以下「本件職務命令」という。)をすることとなる。したがって,本件訴えは,被上告人が本件職務命令に服従する義務がないことの確認を求めるものと解される。


組織に対しての命令なので、個人の自衛官に命令されたわけではないので服従する義務はないと。うーん、程度の差はあれ家が燃えているところに救助要請を受けた消防士が、行きたくないと断れるはずだと言っているようなもので、断ったからと言って首にするなよということでしょうか。裁判を受ける権利があるとはいえ、敵前逃亡を法的に認めろと。


最高裁では
本件訴えは,本件職務命令への不服従を理由とする懲戒処分の予防を目的として,本件職務命令に基づく公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟であると解されるところ,このような将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟は,当該処分に係る差止めの訴えと目的が同じであり,請求が認容されたときには行政庁が当該処分をすることが許されなくなるという点でも,差止めの訴えと異ならない。
(中略)
将来の不利益処分の予防を目的として当該処分の前提となる公的義務の不存在確認を求める無名抗告訴訟は,蓋然性の要件を満たさない場合には不適法というべきである。


すでに起こっていることについての差し止めではなく、これから起こるかどうかすらわからないことに対して訴えの資格はないよと門前払いした形になります。

裁判官全員一致の意見
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 池上政幸
裁判官 小池 裕
裁判官 木澤克之
裁判官 深山卓也

原告の訴えの趣旨を見事に法律論で交わしたなという感じです。

なお日本弁護士会は、この法律ができたときには大騒ぎしていましたが、この判決についてはだんまりです。あれだけ大騒ぎしたのに不思議なものですね。

しかし、自衛隊の中に本当にこんな敵前逃亡をしても首にするなよという訴えを起こす人がいるのですか。驚くばかりです。こういう人は自分の家族が目の前で殺されそうになっても、「まあ落ち着いて、話をしよう」というのでしょうか。そもそも自衛隊員は徴兵されたわけではなく志願ですよね。徴兵であってもこの訴えはあり得ないでしょう。

おかしい判決:農業用水に家庭排水を流してよい

2019-07-23 17:29:12 | 日記
平成30(受)533  使用料請求事件
令和元年7月18日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  高松高等裁判所

 土地改良区が河川法23条の許可に基づいて取水した水が流れる水路への第三者の排水により当該水路の流水についての当該土地改良区の排他的管理権が侵害されたとした原審の判断に違法があるとされた事例

中日新聞の報道です。
農業用水路を管理する土地改良区が、浄化槽で処理したし尿を流している一般家庭に対し、河川法に基づき使用料の支払いを強制できるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は18日、強制できないとの判断を示した。
 その上で、改良区側の請求を一部認めた二審高松高裁判決を破棄し、住民側全面勝訴の逆転判決を言い渡した。5人の裁判官全員一致の結論。
 農林水産省などによると、農業地域に農家ではない一般家庭が住む「混住化」が進み、下水道が整備されていない地域では、浄化したし尿などの生活排水を農業用水路に流すケースが多い。


事実認定を見ていきます。

(1) 被上告人は,昭和26年に以西普通水利組合の組織変更により設立された土地改良区であり,昭和40年以降,かんがいの目的で,鮎喰川の流水の占用について河川法23条の許可を受けている。

この土地改良組合は、鮎喰川の水をくみ上げて水田?畑に使ってよいという許可を持っています。

(2) 上記許可に基づいて被上告人が取水した水は,数本の幹線水路から多数の支線水路へと流れており,被上告人の組合員は,これらの水路(以下「本件水路」という。)を農業用の用排水路として使用している。

水田か畑に届くまでの水路管理もやっています。

(3) 被上告人は,その定款等において,被上告人が維持管理する用排水路に無断で汚水を流してはならず,当該用排水路等を使用しようとする者は,被上告人の承認を受け,被上告人との間で使用契約を締結し,被上告人の定める基準により計算される使用料を支払わなければならない旨を定めている。

所謂下水ですね、それをこの用水路に勝手に流すなよという決まりがあります。やりたければ許可を得て金を払えという規則です。

(4) 上告人ら及び選定者Aは,本件水路の周辺に土地建物を所有するか,又は居住しており,公共下水道が整備されていないため,し尿等を各自の浄化槽により処理して被上告人の承認を受けないで本件水路に排水している。

上告人、たぶん農転して新たに入ってきた住民でしょう。その住民は浄化槽をつけてきれいにしたからいいでしょうと思って、用水路に流しました。
これについて土地改良区が勝手に流すな。流したければ金を払えと訴えたようです。

原審では、少しは払いなさいよという判断が出たようですが、最高裁では逆転しました。

公水使用権は,公共用物である公水の上に存する権利であることに鑑み,その使用目的を満たすために必要な限度の流水を使用し得る権利にすぎないと解され(最高裁昭和36年(オ)第62号同37年4月10日第三小法廷判決・民集16巻4号699頁参照),当該使用目的を満たすために必要な限度を超えて他人による流水の使用を排斥する権限を含むものではないというべきである。

最高裁昭和36年(オ)第62号が出てこなかったので何とも言えませんが、それは程度によるのではないでしょうか。火事があったときに、消防車が水をくみ上げるというような場合はおっしゃる通りです。ですが、民家が汚水を流し続けるというのは少々問題が違います。垂れ流しよりはきれいにはしてはあるものの、洗剤やら場合によっては有毒物質も流れてくる可能性もあります。これを継続的に流されると水田に何らかの影響が出るでしょう。しかも一軒や二軒だけではなく、宅地開発が進めばその濃度は高まります。


それでも最高裁は裁判官全員一致の意見でした。

本件水路に被上告人が河川法23条の許可に基づいて取水した水が流れていることから,被上告人が第三者に対し本件水路への排水を禁止することができるとし,上告人ら及び選定者Aの本件排水により本件水路の流水についての被上告人の排他的管理権が侵害されたとした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法がある。


おいおい、何が何でも水捨てさせないぞと言ってるのではないでしょう。利用するならそれなりの料金を払えと言っているので、それを拒否したから使用禁止にすると言ってるのですよね。百姓を少しでもやった経験があるならば、こんなアホな判断は出ませんよ。

裁判官小池裕の補足意見
本件水路は,古くから土地改良区である被上告人の組合員により農業用の用排水路として使用されており,組合員から組合費を徴収する被上告人が,水利の必要等に応じて事実上その全般的な維持管理を行ってきた。他方,被上告人の組合員ではない上告人ら及び選定者Aは,特段の費用を負担することなく,し尿等を浄化槽で処理して本件水路に排水している。本件水路は,公的財産であるいわゆる法定外公共物として法令等に基づいて管理されるべきものであるところ,国から本件水路の譲与を受け,その管理権限を有する徳島市と,本件水路を使用し,その維持管理を行ってきた被上告人との法的関係が明確でないことが,本件のような紛争を生ずる原因の一つとなっていると思われる。そのため,本件水路の維持管理やその費用負担の在り方については,徳島市と被上告人との法的関係を明確にした上,法令に基づいて整理・検討する必要があると考えられる。


ここまで言うなら反対意見を出しなさいよ。

裁判長裁判官 小池 裕 今一つ
裁判官 池上政幸 ダメ
裁判官 木澤克之 ダメ
裁判官 山口 厚 ダメ
裁判官 深山卓也 ダメ

当然判決:裁判所で刃物振り回し殺人未遂決定

2019-07-21 16:20:29 | 日記
今回は判例が公開査定ないので、報道ベースでの記事です。
この事件に関しげ探してみましたが、産経の記事しか見つかりませんでした。

法廷で警察官切り付け 懲役12年判決確定へ
平成29年に仙台地裁の法廷で有罪判決を言い渡された直後、傍聴席の警察官2人をナイフで切り付けたとして殺人未遂や威力業務妨害などの罪に問われた山形市の淀川聖司被告(32)について、最高裁第3小法廷(山崎敏充裁判長)は被告の上告を棄却する決定をした。18日付。懲役12年とした1、2審判決が確定する。
 判決によると、盗撮事件で起訴されていた被告は29年6月16日、判決直後に傍聴席に乱入。隠し持っていたナイフ2本で警察官2人の背中や顔を切り付け重傷を負わせたほか、「何だ、この腐った司法制度は。俺は冤罪(えんざい)なんだぞ」と大声で叫び、裁判官らの業務を妨害した。
 弁護側は殺意を否認したが、1審仙台地裁判決は「人を死亡させる危険が高い行為だと分かっていた」と認定。2審仙台高裁も支持した。


そりゃそうですよ。法の裁きの場で、気に入らない判決だと騒いで警察官の顔を切りつけたという時点で、司法制度に対する重大な挑戦です。それだけでも単なる傷害事件にすべきではないです。
そもそも何でこんなことが起きたか。セキュリティが悪すぎませんか?裁判所の法廷見学に行ったとき、全くセキュリティがないことに驚きました。
何の予約もなしに建物に入り込めますし、身分証明も必要なし。刃物を持っていても、拳銃を持っていてもおそらくは入れるでしょう。そのくらいグダグダです。まるで、憲法9条があれば外国が攻めてこないかのような感覚ではないでしょうか。

そろそろセキュリティを高くした方がいいと思いますよ。
こういう事件も実際ありましたしね。
東京家裁前で妻に切りつけ 殺人容疑で米国人夫を逮捕 警視庁

今一つ判決:破産した会社から買った土地は変更登記されていない公園だったので、立ち退かなければならない

2019-07-20 19:41:07 | 日記
平成30(受)1563  土地明渡等請求本訴,所有権移転登記手続請求反訴事件
令和元年7月18日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  大阪高等裁判所

都市計画区域内にある公園について,湖南市地域ふれあい公園条例(平成17年湖南市条例第35号)に基づく公告がされたことをもって,都市公園法2条の2に基づく公告がされたとはいえない

ニュースでは出てこなかったので、面倒ですが判決文から事実認定を見ていきます。

公園の敷地として占有する被上告人に対し,本件土地につき上告人が所有権を有することの確認並びに所有権に基づく本件土地の明渡し及び賃料相当損害金の支払を求めるものである。

厄介な感じが見えてきますね。公園に勝手に建物を建てたのでしょうか。たまに、測量が雑で道路にかぶっている建物もありますが。

都市公園を構成する土地物件については私権を行使することができない(都市公園法32条)と規定していることから,上告人の本件土地の明渡請求及び賃料相当損害金の支払請求の可否に関して,本件土地を敷地とする公園(以下「本件公園」という。)が同法に基づいて設置された都市公園に当たるか否かが争われている。


そんなことがあるんですね。誰かから寄付でも受けてなし崩しに公園になってしまったのでしょうか。

(1)A社は宅地開発のため,滋賀県知事から都市計画法所定の開発行為の許可を受け,当該許可に係る開発行為に関する工事を完了し,昭和60年6月21日,当該工事が完了した旨の公告がされた。

バブルの走りですね。県知事の許可を受けて建物を建てたとなると、行政側が確認しないでやらかしてしまったのでしょうか。

A社が所有していたところ,上記開発行為に関する工事により公園として整備されたことから,同月22日,その所有権が本件公園を管理すべき者である旧石部町に帰属した(都市計画法40条2項)が,旧石部町への所有権移転登記はされなかった。

おいおい、行政が肝心の登記をしなかったと。

(3) 被上告人は,要旨次のとおり規定した「湖南市地域ふれあい公園条例」(平成17年湖南市条例第35号。以下「本件条例」という。)を制定し,本件条例は,平成17年12月22日に公布,施行された。

登記をせず20年間過ぎたわけですね。

ア 本件条例は,湖南市地域ふれあい公園を設置することにより,市民の福祉の増進及び地域のコミュニティ活動の推進を図ることを目的とし(1条),市長は,上記公園を設置するときは,その名称,位置及び利用開始の期日を公告する(2条)。
イ 本件条例の施行に伴う経過措置として,本件条例の施行の際に現に設置している公園で,2条の公告がされていないものは,同条の規定にかかわらず,本件条例の施行の日において本件条例の公園となるものとし(付則2項),市長は,本件条例の施行の日から遅滞なく,同項の公園について同条に定める事項を公告しなければならない(付則3項)。


なお,本件公園については,都市公園法2条の2に基づく公告はされていない。


思いっきり行政の不作為ですね。

(5) 本件会社は,平成27年3月2日,破産手続開始の決定を受け,破産管財人が選任された。上告人は,同年12月24日,本件土地を本件会社の破産管財人から買い受け,その所有権移転登記を受けた。

これって、破産管財人はちゃんと調べなかったのでしょうか。買った方は善意の第三者ですよ。
原審は,自治体の本訴請求のうち本件土地の明渡請求及び賃料相当損害金の支払請求に係る部分を棄却すべきものとした。

私もこの原審が妥当だと思いますね。

ところが最高裁は、
都市公園法2条の2は,都市公園は,その管理をすることとなる者が,当該都市公園の供用を開始するに当たり都市公園の区域その他政令で定める事項を公告することにより設置されるものと規定し,都市公園法施行令9条は,上記の政令で定める事項は,都市公園の名称及び位置並びに供用開始の期日とすると規定している。・・これに対し,本件条例に基づく公告は,都市公園としての供用開始ではなく,湖南市地域ふれあい公園としての利用開始を明らかにするだけのものであり,その区域を公告することは予定されていない(前記2(3)アの本件条例2条参照)。

看板なりなんなり出していたのでしょうか?明らかに公園とわかるようにしてあったならまだしも、その点が一切かかれていません。ということは、完全に行政の不作為ですよね。

そして,上告人の本件土地の明渡請求及び賃料相当損害金の支払請求が権利濫用に当たるか否か等について,更に審理を尽くさせるため,同部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

また中途半端な逃げ口上を!事実認定が今一つなのか法令解釈が今一つなのかよくわかりませんが、行政の不作為について一切触れていないのはどういう事なんでしょうか?
全員一致で補足意見もありません。


裁判長裁判官 山口 厚 今一つ
裁判官 池上政幸 今一つ
裁判官 小池 裕 今一つ
裁判官 木澤克之 今一つ
裁判官 深山卓也 今一つ

建物売買契約のはずが金銭賃貸借、判決が確定したのに返金しないのは信義則違反

2019-07-07 20:27:11 | 日記
平成30(受)1387  
令和元年7月5日  最高裁判所第二小法廷  判決  その他  東京高等裁判所

貸金の支払を求める訴訟において,前訴でその貸金に係る消費貸借契約の成立を主張していた被告が同契約の成立を否認することは信義則に反するとの原告の主張を採用しなかった原審の判断に違法があるとされた事例

今回はなんだかよくわかりずらい案件です。
裁判所の事実認定から見ていきます。

1 Aから同人の被上告人に対する貸金返還請求権を譲り受けたとして,被上告人に対し,貸金及び遅延損害金の支払を求めるなどしている事案である。
(1) 被上告人は,Aから,平成25年1月23日に800万円を,同年3月29日に50万円をそれぞれ受領した。被上告人が所有する第1審判決別紙物件目録記載の建物について,被上告人からAに対し,同年1月23日に同日売買予約を原因とする所有権移転請求権仮登記がされ,同年3月29日に同日売買を原因とする所有権移転登記がされた。
(2) Aは,平成25年6月,被上告人に対し,本件建物の明渡し等を求める訴えを提起し,同年1月23日に被上告人を売主,Aを買主とする本件建物の売買契約を締結し,その代金として本件金員を交付したと主張した。被上告人は,上記の主張事実を否認し,同日にAと締結したのは金銭消費貸借契約であり,本件金員は貸金として受領したものであると主張した。
第1審裁判所は,平成27年5月,Aの主張する売買契約の成立を認めることはできないとしてAの建物明渡請求を棄却する判決をし,同判決は確定した。


分かりづらいでしょう。BさんはAさんに金を払い、建物を買ったようです。その手続きとして土地の登記簿変更手続きを行いました。ところがAさんはその建物から出ていかず、それどころか建物を売った覚えはない。金を借りただけだと主張し裁判を起こしました。
しかし、地裁では建物の売買契約とは言えないとして、建物明け渡しを認めないとし確定しました。
普通、売り手と買い手と両方の実印が押されているはずなんですけどね。どういう論拠なんでしょうか???

Aが平成25年1月23日に被上告人と本件建物につき譲渡担保設定予約をし,予約完結権を行使した上,譲渡担保権を実行して本件建物を上告人に売却したから,上告人が本件建物の所有者であると主張した。

これなら仕方ありません。返せないなら買取ぞという話であれば、Aさんの主張は通りましす。

上告人は,Aが,平成25年1月23日に被上告人と金銭消費貸借契約を締結し,貸金として本件金員を交付したと主張している。被上告人は,上記の主張事実について,本件金員を受領したことは認めたが,上記契約の成立は否認している。これに対し,上告人は,被上告人が同日にAと金銭消費貸借契約を締結したと主張してきたことなどの各前訴における訴訟経過に鑑みれば,本件訴訟において被上告人が同契約の成立を否認することは信義則に反して許されないと主張している。


AさんはBさんに金を貸す契約をして、Bさんに金を渡したと主張しています。Bさんは金を受け取ったことを認めましたが、売買契約ではないと主張してきたのに金を返さないのはおかしいだろうと主張して訴えることになりました。

最高裁判所は
Aの主張する本件建物の売買契約の成立を否認し,その理由として金銭消費貸借契約の成立を主張し,前訴2においても,金銭消費貸借契約の成立を主張しており,各前訴では,このような訴訟経過の下において被上告人に対する本件建物の明渡請求を棄却する各判決がされたものである。そこで,上告人が各前訴における被上告人の主張に合わせる形で金銭消費貸借契約の成立を前提として貸金等の支払を求める本件訴訟を提起したところ,被上告人は,一転して金銭消費貸借契約の成立を否認したというのである。

そりゃBさんは怒るよねと言っているわけです。最初からAさんが供託金なりなんなりで払っていればまだしも、受け取った金は何が何でも出さないという態度だったのでしょう。

各前訴の判決は確定しており,仮に,本件訴訟において上記の否認をすることが許されて上告人の貸金返還請求が棄却されることになれば,被上告人が本件金員を受領しているにもかかわらず,上告人は,被上告人に対する本件建物の明渡請求のみならず上記貸金返還請求も認められないという不利益を被ることとなる。これらの諸事情によれば,本件訴訟において,被上告人が金銭消費貸借契約の成立を否認することは,信義則に反することが強くうかがわれる。

結論は
原審は,上記諸事情や上告人の上記主張があるにもかかわらず,これらの諸事情を十分考慮せず,同主張について審理判断することもなく,被上告人が上記の否認をすることは信義則に反するとの主張を採用しなかったものであり,この判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

今回の裁判官
第二小法廷
裁判長裁判官 山本庸幸 当然
裁判官 菅野博之 当然
裁判官 三浦 守 当然
裁判官 草野耕一 当然

地裁では信義則違反ではないと判断したようですが、なんで?とすら思えますよね。

狂った判決:6歳児を殺して死体損壊しても計画性がないので無期懲役

2019-07-04 21:57:49 | 日記
平成29(あ)605  わいせつ誘拐,殺人,死体損壊,死体遺棄被告事件
令和元年7月1日  最高裁判所第一小法廷  決定  棄却  大阪高等裁判所

被告人を死刑に処した裁判員裁判による第1審判決を量刑不当として破棄し無期懲役に処した原判決の量刑が維持された事例

事件の概要は昨日UPしたものを見てください。

裁判所の事実認定です。

本件は,被告人が,わいせつ目的当時6歳の被害者を自宅に誘い入れて誘拐した上,被害者の頸部にビニールロープを巻き付けて締め付け,意識を失った被害者の後頸部を包丁で複数回突き刺して殺害し,遺体を切断するなどして損壊し遺棄したという事案である。殺人の犯行は,誘拐の犯行の発覚を免れるとともに遺体にわいせつな行為をしたいと考えて,突発的に強固な殺意が生じたもので,その動機,経緯は余りにも身勝手であり,複数の凶器を使用して確実に被害者を殺害した態様は冷酷かつ残忍である。鋭利な包丁で遺体を切り刻むなどした死体損壊,死体遺棄の態様は凄惨である。被害者の遺族の処罰感情が極めて厳しいのも十分理解できる。被告人の刑事責任は誠に重い。


もう何というか・・・鬼畜ですね。

本件において,殺害の計画性が認められないことは相応に重くみるべき要素であり,また,殺害の動機の身勝手さ及び犯行態様の残虐性に関する第1審判決の評価は過大で是認できず,

私が納得できないのは、殺人と死体損壊について計画性の有無がそんなに重要なんでしょうか。ここでは衝動的にやっているんですよ。迷いに迷ってやったのではない、迷っているならまだ良心の呵責があるんかもしれない。ここでは、そんなことはなくただ衝動的であったということです。
衝動的に殺人と死体損壊をする人が、再犯しない?そんなわけないです。どこにそこにつながるロジックが見いだせるのでしょうか?これもまた永山基準ですか?

さらに最高裁は、
本件の罪質,動機,殺害及び死体損壊,死体遺棄の犯行態様,結果の重大性等を考慮すれば,殺害の計画性の有無にかかわらず,犯行全体として被告人の生命軽視の姿勢が甚だしく顕著であり,死刑の選択が許されるべき事情が認められるという。しかしながら,これらの諸事情を踏まえても,殺害の計画性が認められず,被告人による生命侵害は前科を含めても本件の1回のみにとどまることなどを考え合わせると,犯行全体からうかがわれる被告人の生命軽視の姿勢は明らかではあるが,甚だしく顕著であるとまでいうことはできない

逆に聞きたい、どういうのがはなはだしく顕著になるのでしょうか?最高裁判事の頭のほうがよほどおかしいですよ。裁判官の孫ぐらいの年ですよね。

裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。

補足意見も反対意見もなかったことになります。

裁判長裁判官 山口 厚  狂ってる
裁判官 池上政幸 狂ってる
裁判官 小池 裕 狂ってる
裁判官 木澤克之 狂ってる
裁判官 深山卓也 狂ってる

本来裁判員制度は、こういうアホな判決を止めさせるために始まったはずなのですが、どうも最高裁判所の裁判官たちは司法の特権階級意識の中で暮らしているようです。こいつらには是非とも×をつけてください。

裁判員裁判の本質をひっくり返す裁判結果:神戸小1女児殺害、無期確定

2019-07-03 18:54:31 | 日記
一審の裁判員裁判では死刑判決が出ましたが、最高裁では裁判員裁判の判断をいとも簡単に殺した人数が少ない、再犯の可能性云々で無期懲役に減刑しました。

事件の概要は神、wikiの神戸長田区小1女児殺害事件が一番わかりやすく書いてあります。

判決文は公開されるかどうかわかりませんが、共同通信が以下のように報道しています。
神戸小1女児殺害、無期確定へ

神戸市長田区で2014年、小学1年の女児=当時(6)=を殺害したとして、殺人とわいせつ目的誘拐の罪などに問われた君野康弘被告(52)について、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は検察側の上告を棄却する決定をした。1日付。裁判員裁判で審理された一審神戸地裁の死刑判決を破棄し、無期懲役とした二審大阪高裁判決が確定する。

 裁判員制度開始後、死刑が高裁で無期懲役に減軽されたケースは今回で5件(被害者1人の事件は3件)ある。最高裁で確定するのは4件目(同3件)で、1件は審理中。最高裁は決定で「公平性の確保の観点からも、死刑がやむを得ないとはいえない」と指摘した。


第一小法廷は以下の山口厚裁判官のほかに
池上 政幸
小池 裕
木澤 克之
深山 卓也

がいます。