最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

1票の格差は2倍以内は許容範囲 その1

2019-01-31 21:26:43 | 日記
平成30(行ツ)153  選挙無効請求事件
平成30年12月19日  最高裁判所大法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

平成29年10月22日施行の衆議院議員総選挙当時において,公職選挙法13条1項,別表第1の定める衆議院小選挙区選出議員の選挙区割りは,憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったということはできず,上記規定が憲法14条1項等に違反するものということはできない。

朝日新聞の報道です。

最高裁は、最大格差が2倍を超えた09、12、14年の衆院選について、3回連続で「違憲状態」と判断し、是正を求めた。国会はこうした指摘を踏まえて、16年に小選挙区の定数を「0増6減」したうえで、17年に19都道府県の97選挙区で区割りを変更した。この結果、同年の選挙で定数1人あたりの有権者数は、最多の東京13区が最少の鳥取1区の1・98倍となり、14年選挙の最大格差2・13倍から縮小した。
 国会は、都道府県の人口比をもとに定数を配分する「アダムズ方式」の導入も決定したが、完全導入は20年の国勢調査後に先送りしている。格差拡大の最大の要因とされてきた、都道府県にまず1議席割り振る「1人別枠方式」の定数配分は残った状態だ。
 今回の訴訟で全国の高裁・支部が出した16件の判決は、15件が「合憲」。名古屋高裁だけが「違憲状態」と判断し、「1人別枠方式が完全廃止されておらず、構造的な問題は解消されていない」と指摘していた。
 最高裁での弁論で、弁護士グループ側は「最大格差が2倍未満なら違憲状態を解消した、ということにはならない」として、人口に比例した選挙の実現を求めた。一方、被告の選挙管理委員会側は「将来的にも最大格差を2倍未満とする具体的な仕組みを作った」と強調。「選挙改革の歴史で画期的」と述べ、投票価値の平等に反しないとした。



私の考えからすると、三権分立の観点から、そもそも定員の正当性を論じる事すら司法の政治への介入ですので、受理したこと自体で全員×です。しかし、過去に一度取り上げた経緯もあるので、判例に従いやらざるを得ないというところでしょうか。
私はそれでも全員×だと思っていますが。
というのは、都内には人口の10%以上が住んでおり、純粋に人口比率だけで物事が決められた場合、地方の住民は一方的に不利益を被るからです。例えば、北朝鮮の木造船が流れ着く日本海では、市町村の責任で死体処理と船の廃棄を行わなければならず、1回流れ着くと最低100万円、波消しブロックに引っかかってクレーン出動の場合は400万円かかります。これは自治体がやらかした問題ではなく、国防上の問題なのに都民はその負担をせずに済みます。
こういう案件が腐るほどあります。都民がその問題に一つ一つ丁寧に判断してくれればいいのですが、よほどの大事件でもない限りその可能性は0と言っていいでしょう。
また、食料自給率確保や二酸化炭素排出に関わり森林の保全が問題になりますが、こういう事は過疎地と言っていいようなところで、都市部の尻拭いをしているのです。
ですから、単純に人口比率で1票の格差云々いうことは現実的ではないと思っています。

その上で、次回から今回の裁判判決文42ページという今までで最長のものを見ていきます。

督促状が形式不十分であっても場合によっては時効延長になる

2019-01-26 12:22:53 | 日記
平成29(オ)1725  請求異議事件
平成30年12月18日  最高裁判所第三小法廷  決定  その他
 最高裁判所は,民訴規則203条所定の事由があるとしてされた民訴法324条に基づく移送決定について,当該事由がないと認めるときは,これを取り消すことができる

たった2枚の判決文な上に、ニュースを探してもこの事件に関係するものと思われるものが出てきませんでした。判決文も法律の解釈だけで、事実認定も一切なしなので、想像を交えて検討していきます。

まず、民事訴訟法第324条(督促決定の記載事項)
1 督促決定には,次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 当事者の氏名又は名称及び住所並びに法定代理人の氏名及び住所
二 求める決定及び請求を特定するのに必要な事実
三 一定額の金銭の支払いを命ずる旨
2 第1項の督促決定には,債務者が督促決定の送達を受けた日から二週間以内に督促異議の申立てをしないときは,職権により仮執行の宣言をする旨を付記しなければならない。

高松高裁は次のように判断しました。
債権執行の申立てをした債権者が当該債権執行の手続において配当等により請求債権の一部について満足を得た後に当該申立てを取り下げた場合,当該申立てに係る差押えによる時効中断の効力が民法154条により初めから生じなかったことになると解するのは相当でない。

この事件の想像です。
担保不動産競売の申立てをした債権者が当該競売の手続において請求債権の一部又は全部の満足を得ることなく当該申立てを取り下げた場合について判断した。
ある会社Aが、競売で物件を落としましたが、満額はお金を払ってもらえませんでした。そこで督促しましたが、督促するのに民事訴訟法324条の条件を満たさなかったようです。これを楯にBさんは、督促を受けていないと主張しました。これについて、高松高裁は完璧に条件を満たしてはいなくても時効は消滅しない、つまり通常の督促が出されたのと同様に差し押さえができると判断しました。これは19年前に裁判になったそうです。

これに対して最高裁は民訴規則203条を根拠に異議を唱えました

第二百三条 法第三百二十四条(最高裁判所への移送)の規定により、上告裁判所である高等裁判所が事件を最高裁判所に移送する場合は、憲法その他の法令の解釈について、その高等裁判所の意見が最高裁判所の判例(これがない場合にあっては、大審院又は上告裁判所若しくは控訴裁判所である高等裁判所の判例)と相反するときとする。

最高裁は
民訴法324条は,上告裁判所である高等裁判所は,最高裁判所規則で定める事由があるときは,事件を最高裁判所に移送しなければならない旨を定め,民訴規則203条は,法令等の解釈について当該高等裁判所の意見が最高裁判所等の判例と相反するときに上記事由があると定めている。そして,民訴法22条1項は,「確定した移送の裁判は,移送を受けた裁判所を拘束する。」と規定しているものの,その趣旨が主として第1審裁判所の間で移送が繰り返されることによる審理の遅延等を防止することにあることに照らせば,同法324条に基づく高等裁判所の移送決定が上記「移送の裁判」に含まれると解すべきではない。

ということで最高裁では受け付けられないという結論になりました。高裁の判断が確定したわけですね。

日本の民法は、貸主よりも借主の方が優遇されており、ごね得が通用する法体系になっています。その点からすると、この判決はしっかり払えよと間接的に言っているわけで妥当な判決だと言えます。
ただ、場合によるとしているのは法律がそう決めてしまっているからなのでしょうか。

裁判長裁判官 岡部喜代子 妥当
裁判官 山崎敏充 妥当
裁判官 戸倉三郎 妥当
裁判官 林 景一 妥当
裁判官 宮崎裕子 妥当

生活保護の不正受給のペナルティ本来控除される分も払え

2019-01-22 09:39:19 | 日記
平成30(受)16  損害賠償請求事件
平成30年12月17日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  広島高等裁判所  岡山支部


勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対する生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの)78条に基づく費用徴収額決定に係る徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除(昭和36年4月1日付け厚生事務次官通知に基づくもの)の額に相当する額を控除しないことが違法であるとはいえない



裁判所の事実認定から見ていきましょう。
1 生活保護法(平成25年法律第104号による改正前のもの。以下 「法」という。)に基づく保護を受けていた被上告人が,同一世帯の構成員である 長男の勤労収入について法61条所定の届出をせずに不正に保護を受けた。
法78条は,不実の申請その他不正な手段により保護を受け,又は他人をして受 けさせた者があるときは,保護費(保護の実施に要する費用をいう。以下同じ。) を支弁した都道府県又は市町村の長は,その費用の全部又は一部を,その者から徴 収することができると規定している。
(1) 門真市福祉事務所長は,平成17年10月26日,法7条本文に基づき, 門真市内に居住する被上告人を世帯主とし,その長男を世帯員として,保護の開始 を決定した。
(2) 被上告人の長男は,平成21年6月1日,賃金を翌月払とする条件で就労 を開始し,同年7月から同22年8月までの間に,合計233万9835円の勤労 収入(源泉徴収に係る所得税の額を控除した後のもの。以下「本件勤労収入」とい う。)を得た。
21年7月から同22年8月までの間に合計242万1640円の保護費(生活扶 助,住宅扶助及び一時扶助)が被上告人に支給された。
(3)被上告人の長男が本件勤労収入等を得ていたの に,その届出がなかったため不正受給額が生じたとして,平成24年2月7日付け で,被上告人に対し,法78条に基づき,費用徴収額を235万9765円とする 本件徴収額決定をした。上記金額には,本件勤労収入の全額に相当する額が含まれ ている。
(4)本件勤労収入に対応する基礎控除の合計額は,38万4080円である(以下 この額を「本件基礎控除額」という。)。



基礎控除分だけ余計に貰ったことになるので、保護費とその分を返せという趣旨のようです。


原審では、
本件勤労収入が適正に届け出られていれば,本件基礎控除額は被上告人の世帯の収入とは認定されていなかったはずであるから,これに相当する額についても保護費が支給されていたことになる。

最高裁の判断は
法78条も,保護の制度をその悪用から守ることを目的として,所定の徴収権を 付与する趣旨の規定と解されるから,被保護者がその収入の状況を偽って不正に保 護を受けた場合には,当該収入のうち被保護者がその最低限度の生活の維持のため に活用すべきであった部分に相当する額は,広く同条に基づく徴収の対象となるも のと解すべきである。

(2) 勤労収入は,本来,被保護者がその最低限度の生活の維持のために活用す べきものである。そして,基礎控除は,被保護者が勤労収入を適正に届け出た場合 において,勤労収入に係る額の一部を収入の認定から除外するという運用上の取扱 いであるところ,上記のとおり,保護は,保護受給世帯における収入,支出その他 生計の状況についての適正な届出を踏まえて実施されるべきものであるから,その ような届出をせずに,不正に保護を受けた場合にまで基礎控除の額に相当する額を 被保護者に保持させるべきものとはいえず,これを法78条に基づく徴収の対象と することが同条の上記趣旨に照らし許されないものではない。

勤労収入についての適正な届出をせずに不正に保護を受けた者に対 する法78条徴収額の算定に当たり,当該勤労収入に対応する基礎控除の額に相当 する額を控除しないことが違法であるとはいえないと解するのが相当である



裁判長裁判官 山崎敏充  妥当
裁判官 岡部喜代子  妥当
裁判官 戸倉三郎  妥当
裁判官 林 景一 妥当
裁判官 宮崎裕子 妥当


というか、そもそもこの法律にペナルティが乏しいのが問題ですね。うっかりミスというにはどうなの?というレベルではないでしょうか。むしろこれは生活保護費を求めた詐欺罪として刑事告訴すべき案件ではなかったのでしょうか。

参考HP
生活保護問題対策全国会議
門真市での生活保護率全国平均3倍

当然判決:名義貸与の依頼を承諾して自動車の名義上の所有者兼使用者の賠償責任

2019-01-14 17:53:09 | 日記
平成30(受)16  損害賠償請求事件
平成30年12月17日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄差戻  広島高等裁判所  岡山支部
名義貸与の依頼を承諾して自動車の名義上の所有者兼使用者となった者が,自賠法3条にいう運行供用者に当たるとされた事例

共同通信の報道です。
自分名義で車を所有できない生活保護受給者が、他人に名義を借りて車を購入し、事故を起こした場合、名義を貸した人に賠償責任があるかどうかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(小池裕裁判長)は17日、「名義貸しが運転に伴う危険の発生に寄与した。監視、監督すべきだった」として、賠償責任を負うとの判断を示した。
 他人を所有者とするケースは、車の運転が原則認められていない生活保護受給者などに多いとみられ、安易な名義貸しに警鐘を鳴らす判決と言えそうだ。
 賠償請求を受けたのは、生活保護を受給していた姉に頼まれて名義を貸した岡山市の男性。


事実認定を見ていきましょう。

(1) Aは,平成22年10月から生活保護を受けていた。Aは,平成24年3月頃,本件自動車を購入することとしたが,自己の名義で所有すると生活保護を受けることができなくなるおそれがあると考え,弟である被上告人に対して名義貸与を依頼し,被上告人は,これを承諾した。Aは,同月下旬,本件自動車を購入し,所有者及び使用者の各名義を被上告人とした。
(2) Aは,平成24年10月,岡山県倉敷市内において,自己の運転する本件自動車を,上告人が同乗する普通乗用自動車に追突させる事故を起こした。上告人らは,本件事故により傷害を負った。
(3) 被上告人とAとは,平成24年当時,住居及び生計を別にし,疎遠であった。被上告人は,本件自動車を使用したことはなく,その保管場所も知らず,本件自動車の売買代金,維持費等を負担したこともなかった。


なんだかゲスい事件です。生活保護受給者は、地方によっても違いますが、受給と引き換えに車の所有権を手放す事になります。よほどの田舎でない限りは、車の所有は禁止になります。ところが、生活保護を受給しながら弟名義で車を買って自己所有のように運転していました。

さらに追加の事実認定では、
被上告人は,Aからの名義貸与の依頼を承諾して,本件自動車の名義上の所有者兼使用者となり,Aは,上記の承諾の下で所有していた本件自動車を運転して,本件事故を起こしたものである。

結論
被上告人がAの依頼を拒むことができなかったなどの事情もうかがわれない。・・・被上告人とAとが住居及び生計を別にしていたなどの事情があったとしても,被上告人は,Aによる本件自動車の運行を事実上支配,管理することができ,社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視,監督すべき立場にあったというべきである。したがって,被上告人は,本件自動車の運行について,運行供用者に当たると解するのが相当である。


全く知らず、勝手に名義を使われたわけではないとなれば、この判断は当然でしょう。盗まれた車であっても、賠償義務を負う事があるのですから。なぜ原審でこんな判断が出たのかそちらが不思議ですし、最高裁で不受理になってしかるべき訴えのように思えます。

全員一致でした
裁判長裁判官 小池 裕 当然
裁判官 池上政幸 当然
裁判官 木澤克之 当然
裁判官 山口 厚 当然
裁判官 深山卓也 当然


生活保護を受けて自力で車を買ったとなると、不正受給の疑いありですね。不正受給については今回の裁判の争点ではないので、論じられませんが、こういうのが結構いるそうです。私の家の近所にも市営住宅がありますが、本来は低所得の人のための緊急避難的な意味合いの建物のはずです。ですが、レクサス、ベンツ、ルノーの大型車がいつも停められています。維持費用だけで年間50万はかかりそうなものです。なんかおかしいですよね。

大阪地裁:女児抱き上げた男性に無罪=「1秒で不安感小さい」

2019-01-13 09:49:46 | 日記
大阪地裁での事件ですので、判決文は公開されていません。

事件概要は時事通信によると、
 路上で背後から抱き上げるなど女児=当時(8)=の体に触れたとして、大阪府迷惑防止条例違反の罪に問われた男性(63)の判決で、大阪地裁(野口卓志裁判官)は10日、無罪(求刑懲役8月)を言い渡した。
 野口裁判官は「女児と遊ぶつもりで持ち上げた可能性を否定できない」と指摘。その上で、「わずか1秒間の行為で、執拗(しつよう)に体を触ろうとするものではない。性的羞恥心や不安感を与える程度は小さい」と判断した。
 男性は昨年4月、大阪府内の路上で背後から女児の腹部付近に両手を回して抱き上げ、服の上から体を触ったとして起訴された。2人は同じマンションの住人で、顔見知りだったという。


産経新聞でもほぼ同様の文面からすると、他に書きようがなかったようです。
大阪府迷惑防止条例は、大阪府公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例の事と思います。
それにしても世知辛い世の中ですね。確かに親からすれば、性犯罪に巻き込まれないように必死でしょうが、同時に同じマンションに住む顔なじみのおじさんに抱っこされたというのはほほえましい事とつい最近までは言われていましたが。確かに微妙ですよね、8歳ぐらいになれば知的障害でない限り、羞恥心はあるでしょう。
親と何かトラブルがあったんでしょうかね。
まあこの程度であれば、勘弁してやれよというのが滲んでいる判決でした。形式上、どのようにして判断に至ったかを書かなければならないので1秒と書いたのでしょうけど、これが確定するとこれが独り歩きする事になりますね。
これを根拠にするのはどうなんでしょうか。

元取締役の詐害行為による遅延損害金は当初の支払い予定日から払え

2019-01-12 08:52:29 | 日記
平成30(受)44  旧取締役に対する損害賠償,詐害行為取消請求事件
平成30年12月14日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥る

裁判所の事実認定です。

1 本件は,Aに対して約37億6000万円の損害賠償債権を有する被上告人が,詐害行為取消権に基づき,上告人Y1に対しては,Aが上告人Y1から株式を代金1億6250万円で購入する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記代金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求め,上告人Y2に対しては,Aが上告人Y2に1億2000万円を贈与する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記贈与金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求めるなどしている事案である。

前回と同様、この文章も酷いですね。主語が何なのか分からなくなってきます。本当に小学校からやり直して欲しいレベルです。仕方ないのでこの悪文を分割してみましょう。

①Aに対して約37億6000万円の損害賠償債権を有する被上告人がいる。
②Aは詐害行為をしたので詐害行為取消権に基づき,元取締役の上告人Y1に対しては,Aが上告人Y1から株式を代金1億6250万円で購入する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記代金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求めた。
③元取締役の上告人Y2に対しては,Aが上告人Y2に1億2000万円を贈与する旨の契約の取消し並びに受領済みの上記贈与金相当額及びこれに対する訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を求めるた。

要するに、会社が借金を返さなかった。その会社の元取締役2人が、支払えたのに資金を移動させて支払いを遅らせたので遅延損害金を払えと訴えられた。

訴えの内容は
詐害行為取消しによる受益者の取消債権者に対する受領済みの金員相当額の支払債務は,詐害行為の取消しを命ずる判決の確定により生ずる。
確定前に履行遅滞に陥ることはないのに,上告人らの被上告人に対する各受領金支払債務につき各訴状送達の日の翌日からの遅延損害金の支払を命じた原審の判断には,法令の解釈適用の誤りがある。


詐害行為認定はしょうがないとしても、遅延損害金は判決が出てからでしょ?その前の分を払えはないでしょ。という趣旨のようです。

詐害行為取消権は,詐害行為を取り消した上,逸出した財産を回復して債務者の一般財産を保全することを目的とするものであり,受益者又は転得者が詐害行為によって債務者の財産を逸出させた責任を原因として,その財産の回復義務を生じさせるものである(最高裁昭和32年(オ)第362号同35年4月26日第三小法廷判決・民集14巻6号1046頁,最高裁昭和45年(オ)第498号同46年11月19日第二小法廷判決・民集25巻8号1321頁等参照)。そうすると,詐害行為取消しの効果は過去に遡って生ずるものと解するのが上記の趣旨に沿うものといえる。

だから
上記受領金支払債務は,履行の請求を受けた時に遅滞に陥るものと解するのが相当である。

 最高裁判所第二小法廷
裁判長裁判官 菅野博之 当然
裁判官 鬼丸かおる 当然
裁判官 山本庸幸 当然
裁判官 三浦 守 当然

そりゃそうでしょう。詐害行為をして裁判になったら引き延ばして妨害する事になりますよね。それで数年以上かかって判決が確定したとすると、その間に詐害行為をした人はその分は免責されることになりますよね。ごね得になるのでそれはダメでしょう。という補足意見ぐらいあっても良さそうなもんですが。

受け子に共謀の要素があるとされた事例:当然判決だが判決文が悪文

2019-01-11 13:58:03 | 日記
平成29(あ)44  覚せい剤取締法違反,詐欺未遂,詐欺被告事件
平成30年12月11日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄自判  福岡高等裁判所  宮崎支部

朝日新聞の報道です。
特殊詐欺の受け子に逆転有罪判決 最高裁が続けて判断
特殊詐欺の被害者が宅配便で送った現金を受け取ったとして、詐欺などの罪に問われた「受け子」の女(31)=千葉県市原市=に対する上告審判決が14日、最高裁第二小法廷であった。三浦守裁判長は「詐欺にあたるかもしれないと認識して受け取った」と述べ、詐欺罪を無罪とした二審を破棄した。懲役2年6カ月の一審判決が確定する。
 受け子をめぐって最高裁は11日、争点が同じ別事件でも逆転有罪判決を出しており、捜査現場には追い風になる可能性がある。
 判決によると、被告は2014年12月に6回、他人を装って自宅で荷物を受け取った。最高裁は、依頼主は暴力団組員の知人で、1回に5千~1万円の報酬を得ていたことも踏まえ、詐欺罪の成立を認めた。



では事実認定を見ていきます。
(1) 被告人は,氏名不詳者らと共謀の上,A(当時83歳)が,老人ホームの入居契約に名義を貸した問題を解決するために立替金を交付する必要があり,同立替金が後に返還されるなどと誤信していたことに乗じて,同立替金名目で同人から現金をだまし取ろうと考え,平成27年11月17日,氏名不詳者が,山梨県富士吉田市内のA方に電話をかけてうそを言い,Aに前記問題を解決するために現金を交付する必要があり,交付した現金は返還される旨誤信させ,よって,同日,同人をして,埼玉県川口市内のマンションの301号室B宛てに現金150万円を入れた荷物を宅配便で発送させ,被告人が,同月18日,前記マンションの305号室において,荷受人であるBなる人物になりすまして配達業者従業員からこれを受け取り,もって人を欺いて財物を交付させた。

実に長ったらしくて読みにくいですね。文章は80文字以上になったら2つ以上に分割しなさいと習わなかったのでしょうか。自己満足で書いている判決文としか思えません。ということで大幅に書き換えました。

老人ホームに入っているAさんが、立て替え金手続で勘違いしていました。そこに受け子の女が乗じて、Aさん名義でお金を受け取らせた。実はこの受け子はヤクザと絡んでていて、1回受け取るごとに5千円から1万円のギャラをもらっていた。

続けて(2)(3)も日本語になっていないので要約します。

(2)受け子はさらにCさんを騙して立て替え金を奪おうとしたが、Cさんが不審に思い未遂に終わった。
(3)更にはEさんを騙して150万円を宅配便で送らせた。

ここまで来ると単なる受け子ではなく、詐欺の共謀じゃないですかね。しかし、受け子は事実誤認であるとして控訴しました。が、二審で却下されました、「その理由は
①被告人が,1か月の間に約20回という頻度で,異なるマンションの空室で,異なる名前を使い他人になりすまして荷物を受け取っていたこと,
②詐欺グループによる他人になりすまして現金を詐取する犯罪が様々な形態で横行しており,ニュース等でも広く報道されていること,
③被告人自身,詐取金の受取方には口座に振り込ませる方法や直接現金を取りに行く方法という複数の形態があること等を知っていた


これは善意の第三者とは言える状況ではなさそうです。

結論
このような事実関係の下においては,被告人は,自己の行為が詐欺に当たるかもしれないと認識しながら荷物を受領したと認められ,詐欺の故意に欠けるところはなく,共犯者らとの共謀も認められる。

裁判長裁判官 宮崎裕子 当然
裁判官 岡部喜代子 当然
裁判官 山崎敏充 当然
裁判官 戸倉三郎 当然
裁判官 林 景一 当然

当然すぎる判決でした。
が、裁判官としてこの文章はないでしょう?というくらい悪文です。主語がはっきりしない文章に始まり、一文がこんなに長いとなんのこっちゃわからんという文章です。伝えようとする気があるのでしょうか?

代金完済していないものを担保してはならない事例

2019-01-05 14:31:52 | 日記
平成29(受)1124  不当利得返還等請求事件
平成30年12月7日  最高裁判所第二小法廷  判決  棄却  東京高等裁判所

金属スクラップ等の継続的売買契約において目的物の所有権が代金の完済まで売主に留保される旨が定められた場合に,買主が保管する金属スクラップ等を含む在庫製品等につき集合動産譲渡担保権の設定を受けた者が代金完済未了の金属スクラップ等につき売主に上記譲渡担保権を主張できないとされた事例

毎回思うのですが、この要約文の悪文ぶりには辟易します。これを英文に翻訳できると思います?主語が誰なのかはじめ、分かりやすく書く努力をして欲しいものです。

日経新聞の報道です。
スクラップを担保として金属販売業者に融資していた商工組合中央金庫(商工中金)が、スクラップの所有権を持つ矢崎総業に担保の効力をどこまで主張できるかが争われた訴訟の上告審判決が7日、最高裁第2小法廷(三浦守裁判長)であった。同小法廷はスクラップのうち、代金未払い分については矢崎に所有権が残る契約だったとして、商工中金は担保権を主張できないと判断した。
代金未払いの商品在庫に担保が設定されるケースは多いとみられ、今回の判断は実務に一定の影響を与えそうだ。
矢崎は業者にスクラップを継続的に売却し、毎月の代金支払いが終わった時点で所有権を業者に移す契約を締結。一方、業者は商工中金とスクラップを担保とする融資契約を結んでいた。業者が廃業したためスクラップを回収し売却した矢崎に対し、商工中金が担保を根拠に5千万円の支払いを求めていた。
同小法廷は判決理由で、矢崎と業者の契約は代金の支払いを確保するためのもので、毎月代金が完済されるまでは、その分のスクラップの所有権は矢崎にあると指摘。商工中金の上告を棄却した。代金支払いが完了した一部のスクラップまで売却したとして、矢崎に相当額約177万円の支払いを命じた二審判決が確定した。



事実関係を見ていきます。
(1)美崎産業は、金属スクラップ等の処理,再生,販売等を主たる事業とする会社である。
(2)被上告人(矢崎)と美崎産業は,平成22年3月10日,被上告人が美崎産業に対して金属スクラップ等を継続的に売却する旨の契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。
ア 被上告人から美崎総業への目的物の引渡しは,原則として,美崎産業が被上告人の子会社から定期的に目的物を収集することにより行われる。
イ 美崎産業は,被上告人から引渡しを受けた目的物を受領後速やかに確認して検収する。
ウ 被上告人は,検収に係る目的物について,毎月20日締めで代金を美崎産業に請求し,美崎産業は,上記代金を翌月10日に被上告人に支払う。
エ 目的物の所有権は,上記代金の完済をもって,被上告人から美崎産業に移転する。


工場であればよくある契約です。金属加工業であれば、大量の屑金属が出ます。それを定期的に引き取ってもらい、どの金属が何トンあったかを報告する。そして、毎月21日から翌月20日までを一つの期間としての翌月10日払いで、回収業者が工場に代金を払ってっ取引は終了となります。ごく普通の契約ですね。

(3) 被上告人は,美崎産業に対して,本件売買契約に基づき売却した金属スクラップ等の転売を包括的に承諾しており,美崎産業は,被上告人から当該金属スクラップ等の引渡しを受けた直後にこれを特定の業者に転売することを常としていた。

当然回収業者は自分のところで製錬するわけではなく、大手の溶鉱炉を持つ企業に売却します。これもごく普通にやる取引です。

(4) 上告人(商工中金)と美崎産業は,平成25年3月11日,極度額を1億円として,美崎産業からの個別の申込みに応じて上告人が美崎産業に融資を実行する旨の契約を締結した。
ア 譲渡担保の目的は,非鉄金属製品の在庫製品,在庫商品,在庫原材料及び在庫仕掛品で,美崎産業が所有し,静岡県御殿場市内の工場及び精錬部で保管する物全部とする。
イ 本件設定契約の締結の日に美崎産業が所有し上記の保管場所で保管する在庫製品等については,占有改定の方法によって上告人にその引渡しを完了したものとする。
ウ 上記の日以降に美崎産業が所有権を取得することになる在庫製品等については,上記の保管場所に搬入された時点で,当然に譲渡担保の目的となる。


だんだん見えてきましたね。支払いが終わって所有権が美崎産業に移ったものと、まだ運び込まれたばかりで支払いが終わっていないものも混ざっている状態のようです。簡単には区別がつかない状態で保管していたのでしょう。その上で、保管場所に搬入された時点で担保物になるという契約というのが味噌です。
これは完全に美崎産業の契約ミスですね。

(5) 本件譲渡担保権に係る動産の譲渡につき,平成25年3月11日に登記した。
(6) 被上告人(矢崎総業)は,平成26年5月20日までに美崎産業に対して本件売買契約に基づき売却した金属スクラップ等については,一部を除いて,同年6月10日までに美崎産業から代金の支払を受けた。
(7) 被上告人は,平成26年5月21日から同年6月18日までに,美崎産業に対し,本件売買契約に基づき,金属スクラップ等を売却した。
(8) 美崎産業は,平成26年6月18日,被上告人を含む債権者らに対して,事業を廃止する旨の通知をしたが,被上告人は,同通知の時点で,上記(7)の期間に売却した金属スクラップ等について代金の支払を受けていなかった。


代金未払いのままで廃業ですね。
(9) 被上告人は,平成26年11月,美崎産業を債務者として,本件工場で保管されている金属スクラップ等につき,本件条項に基づき留保している所有権に基づき,動産引渡断行の仮処分命令の申立てをし,平成27年1月13日,上記申立てを認容する旨の決定。
(10) 被上告人は,平成27年1月20日及び21日,本件仮処分決定に基づき,本件工場で保管されていた金属スクラップ等を引き揚げ,その頃これを第三者に売却した。なお,上記金属スクラップ等の一部には,美崎産業が被上告人に対して代金を完済したものが含まれていた。


やっちまった感が漂います。そりゃ廃品回収業者を見ればわかりますが、金属の山があってどれがどこから出てきた物なのかはパッと見分かりません。余計なものを物を持っていくな!と「5000万円の損害賠償金及び遅延損害金の支払を請求し、同額の不当利得金の返還及び民法704条前段所定の利息の支払を請求する事案である」と商工中金が矢崎総業を訴えた構造になります。

最高裁は
本件売買契約は,金属スクラップ等を反復継続して売却するものであり,本件条項は,その売買代金の支払を確保するために,目的物の所有権がその完済をもって被上告人から美崎産業に移転し,その完済までは被上告人に留保される旨を定めたものである。
契約では、一つの期間に納品された金属スクラップ等の所有権は,上記の方法で額が算定された当該期間の売買代金の完済まで被上告人に留保されることが定められ・・・

被上告人は,美崎産業に対して金属スクラップ等の転売を包括的に承諾していたが,これは,被上告人が美崎産業に本件売買契約の売買代金を支払うための資金を確保させる趣旨であると解され,このことをもって上記金属スクラップ等の所有権が美崎産業に移転したとみることはできない。


結論
したがって,本件動産につき,上告人は,被上告人に対して本件譲渡担保権を主張することができない

裁判長裁判官 三浦 守 当然
裁判官 鬼丸かおる 当然
裁判官 山本庸幸 当然
裁判官 菅野博之 当然

至極当然な判断です。金融機関として5000万円を溶かす訳にはいかないので必死だったのは分かりますが、どういう契約だったのか調べないで担保を付けた時点でミスがあったのかなぁという気がします。
とは言え、5000万円の法定利息なんぞ、弁護士費用からすればたかがが知れているわけで、何で示談に持ち込めなかったのかなぁと思います。

私物のHDDを持ちこみ許可を得てもデータをコピーするのは産業スパイになる

2019-01-03 11:30:06 | 日記
平成30(あ)582  不正競争防止法違反被告事件
平成30年12月3日  最高裁判所第二小法廷  決定  棄却  東京高等裁判所

不正競争防止法(平成27年法律第54号による改正前のもの)21条1項3号にいう「不正の利益を得る目的」があるとされた事例

以下朝日新聞の報道です。
日産自動車からいすゞ自動車に転職する直前、日産の営業秘密を不正に取得したとして、不正競争防止法違反罪に問われた岡村賢一被告(41)を懲役1年執行猶予3年とした一、二審判決が確定する。最高裁第二小法廷(山本庸幸裁判長)が3日付の決定で、被告の上告を棄却した

地裁の判断については産経新聞が分かりやすく書いています。
日産自動車のサーバーに接続して企業秘密に当たる新型車の企画情報を不正取得したなどとして、不正競争防止法違反(営業秘密の領得)の罪に問われた元社員岡村賢一被告(39)に横浜地裁は31日、起訴内容の一部を無罪とした上で、懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年6月)の有罪判決を言い渡した。
 被告側は「持ち出した情報は営業秘密に当たらない」と起訴内容を否認。無罪を主張していたが、近藤宏子裁判長は「情報にはアクセス制限が掛けられており、被告は営業秘密と認識していた。転職先で活用しようとしたと推認できる」と指摘した。
 判決によると、平成25年7月、新型車の企画情報などのファイルデータを複製。検察側は、22年11月~25年7月、車の製造工程などが書かれた教本の一部を複写した後、転職先の別の自動車メーカーに持ち込んだとする罪でも起訴したが、裁判長は「日産の社内で教本は秘密として管理されていなかった」として無罪と判断した。


事実認定から見ていきます。
1 被告人は,自動車の開発,製造,売買等を業とするA自動車株式会社(以下「A」という。)に勤務し,Aが秘密として管理しているAの自動車の商品企画に関する情報などであって公然と知られていないものを,Aのサーバーコンピュータに保存されたそれらの情報にアクセスするための識別符号であるID及びパスワードを付与されて,示されていた。
(1)平成25年7月16日,自宅において,不正の利益を得る目的で,Aから貸与されていたパーソナルコンピュータを使用して前記サーバーコンピュータにアクセスし,・・・自己所有のハードディスクに転送させて同データファイルの複製
(2) 同月27日,Aテクニカルセンターにおいて,不正の利益を得る目的で,Aから貸与されていた前記パーソナルコンピュータを使用して前記サーバーコンピュータにアクセスし,前記自動車の商品企画に関する情報などであるデータファイ平成30年(あ)第582号 不正競争防止法違反被告事件平成30年12月3日 第二小法廷決定ル4件等が含まれたフォルダを同サーバーコンピュータから自己所有のハードディスクに転送させて同データファイルの複製を作成


いすゞに渡ったかどうかは不明です。コピーしたことが論点になっているようです。
現在の不正競争防止法です。営業秘密管理の指針はこちらです。

客観的事実としては
(1) 被告人は,Aで主に商品企画業務に従事していたが,B自動車株式会社(以下「B」という。)への就職が決まり,平成25年7月31日付けでAを退職することとなった。被告人は,Bにおいて,海外で車両の開発及び企画等の業務を行うことが予定されていた。
(2) 前記1の各データファイルは,A独自のマニュアルやツールファイル,経営会議その他の会議資料,未発表の仕様等を含む検討資料等で,いずれもアクセス制限のかけられたAのサーバーコンピュータに格納される等の方法により営業秘密として管理されていた。
(3) 被告人は,Aから,パーソナルコンピュータ(ノート型。以下「会社パソコン」という。)を貸与され,会社パソコンを持ち出して社外から社内ネットワークに接続することの許可を受けていた。他方,Aにおいて,私物の外部記録媒体を業務で使用したり,社内ネットワークに接続したりすること,会社の情報を私物のパーソナルコンピュータや外部記録媒体に保存することは禁止されていた。
(4) 被告人は,同月16日,自宅において,会社パソコンに保存していた前記1(1)のデータファイル8件を含むフォルダを私物のハードディスクに複製し,さらに,同月18日,自宅において,私物のハードディスクから私物のパーソナルコンピュータ(以下「私物パソコン」という。)に同フォルダを複製した。
(5) 被告人は,同日,上司に対し,「荷物整理等のため」という理由で翌27日の出勤を申し出て許可を受け,同日,Aテクニカルセンターにおいて,持ち込んだ私物のハードディスクを会社パソコンに接続し,Aのサーバーコンピュータから前記1(2)の各データファイルを含む合計5074件(容量約12.8GB)のデータファイルが保存された4フォルダを私物のハードディスクに複製しようとしたが,データ容量が膨大であったため,結局3253件のデータファイルを複製したにとどまった。


いやいや、12Gって半端じゃないでしょう。この当時はUSB2.0だから同時並行でやったって5時間近くかかったのではないでしょうか。これを職場でやったらバレバレですね。こっそりやった意図はなさそうです。
しかも12GはDVD4枚分ですよね。動画だったのでしょうか?私物をそもそも共有フォルダーにそんなに入れますか?もし私物であれば、サーバ管理者の責任がそもそも問われる話です。

「宴会写真」フォルダを除く3フォルダには,それぞれ商品企画の初期段階の業務情報,各種調査資料,役員提案資料等が保存されており,Aの自動車開発に関わる企画業務の初期段階から販売直前までの全ての工程が網羅されていた。


そもそも宴会写真を機密管理のサーバに入れますか?それに、機密事項が移っているところで写真を撮りますか?秘密管理が全然なってない、管理者の責任が十分に問われて然るべき案件です。多分社内で処分があったっと思いますあ。

前記のとおり,被告人が,複製した各データファイルを用いてAの業務を遂行した事実はない上,会社パソコンの社外利用等の許可を受け,現に同月16日にも自宅に会社パソコンを持ち帰っていた被告人が,Aの業務遂行のためにあえて会社パソコンから私物のハードディスクや私物パソコンに前記1(1)の各データファイルを複製する必要性も合理性も見いだせないこと等からすれば,前記1(1)の複製の作成は,Aの業務遂行以外の目的によるものと認められる。

これは裁判官の意見に同意します。私物HDDを持ちこんでコピーを許可した時点で会社の責任ですよ。うがった見方をすると、会社が嵌めようとしたんじゃないですか?と言われても仕方ない案件です。

結論
以上のとおり,被告人は,勤務先を退職し同業他社へ転職する直前に,勤務先の営業秘密である前記1の各データファイルを私物のハードディスクに複製しているところ,当該複製は勤務先の業務遂行の目的によるものではなく,その他の正当な目的の存在をうかがわせる事情もないなどの本件事実関係によれば,当該複製が被告人自身又は転職先その他の勤務先以外の第三者のために退職後に利用することを目的としたものであったことは合理的に推認できるから,被告人には法21条1項3号にいう「不正の利益を得る目的」があったといえる。

ということで、それほど悪質性があるわけでもなく会社にも若干責任があるということで執行猶予になりました。

第二小法廷決定
裁判長裁判官 山本庸幸 妥当
裁判官 鬼丸かおる 妥当
裁判官 菅野博之 妥当
裁判官 三浦 守 妥当

もし会社とこの従業員が天然でこの事件を起こしたとしたら、どれだけ会社の管理がグダグダであるか、恐ろしい話です。こういうのはCIOの許可、情報システム部門と監査部門の許可がなければやってはいけないことでしょう。