最高裁判所裁判官の暴走を許さない

最高裁判所裁判官の国民審査は、衆議院選挙の時の「ついでに」ならないようにしましょう。辞めさせるのは国民の権利です。

原発損害賠償、代理人が他の裁判と連動した話なので訴えそのものが不適法

2022-07-31 07:39:39 | 日記
令和3(オ)293  原状回復等請求事件
令和4年6月17日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  仙台高等裁判所
 訴えが、これが提起された時点において既に裁判所に係属していた別件の訴えと重複するものとして、不適法であるとされた事例

訴えの内容です。
民法709条に基づき、予備的には原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、損害賠償等を求める事案である。

前回までの裁判の関連したものです。

第2 上告代理人の上告理由について
民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告の理由は、理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、上記各項に規定する事由に該当しない。


第3 職権による検討
平成25年、上告人に対し、民法709条又は原子力損害の賠償に関する法律3条1項に基づき、本件事故による損害賠償を求める訴え(以下「別件訴訟」という。)を新潟地方裁判所に提起しており、別件訴訟は、被上告人らが本件訴えを提起した時点において既に上記裁判所に係属していて、本件訴えのうち被上告人らの上告人に対する損害賠償請求に係る部分は、別件訴訟と重複するものであることが認められる。


裁判官全員一致の意見
第二小法廷判決
裁判長裁判官 菅野博之
裁判官 三浦 守
裁判官 草野耕一
裁判官 岡村和美

これは仕方ないでしょう

原発事故東京電力の賠償(5)反対意見2

2022-07-30 18:44:05 | 日記
5 結果回避可能性等
(1)法令の趣旨、目的を踏まえ、具体的な事情の下で、原子炉施設等の安全機能が損なわれることを確実に防止するために必要かつ適切な措置として合理的に認められるものを対象とすべきものと解される。
(2)本件試算によれば、既存の防波堤の南側と北側において、海抜10mを優に超える津波の遡上が想定されただけでなく、当該防波堤の湾内においても、本件発電所の1号機から6号機までの各原子炉に係る取水ポンプの位置(海抜4m)において、海抜10m前後の津波が想定されるとともに、1号機北側の本件敷地に津波が遡上すると想定されたことがうかがわれる。・・・したがって、本件長期評価を前提に、経済産業大臣が技術基準適合命令を発した場合、東京電力としては、速やかに、本件敷地の東側からも津波が遡上しないよ
う、適切な防潮堤等を設置する措置を講じ、想定される遡上波が本件敷地に到達することを防止する必要があったものであり、その実施を妨げる事情もうかがわれず、それが実施された蓋然性が高いということができる。


このへんは私も完全に同意します。これまでの津波は内陸までかなり遡上することは見られています。

(3)イ 東京電力としては、この事態に即応して、極めてまれな災害も未然に防止するために適切な措置を講ずる法的義務を負っていたものである。本件技術基準に従って講ずべき措置については、本件長期評価を前提とする具体的な事情の下で、そのような災害を確実に防止するために必要かつ適切な措置として合理的に認められるものを対象とすべきであり、こうした措置を蓋然性の考慮から除外すべき理由はない。
ウ 、特に、貞観11年(869年)の貞観地震については、多くの専門家によって、東北地方沿岸の地層の痕跡調査等の研究が積み重ねられつつあったことがうかがわれる。


貞観地震については、やっと最近になって全体像が分かってきたレベルで、これを根拠にするのはいささか問題があるのでは?と思います。これまで論じてきたチリ地震の津波だけでも十分だったと思いますよ。
この後も続きますが、まあ書きたかったのねという印象なのでこれで終わりにします。

裁判長裁判官 菅野博之 今一つ
裁判官 三浦 守 その通り
裁判官 草野耕一 今一つ
裁判官 岡村和美 今一つ

本日死刑執行がされました

2022-07-26 20:54:47 | 日記
産経新聞による報道です。
加藤死刑囚の刑執行命令書署名は22日 法相が会見
古川禎久法相は26日、記者会見し、加藤智大死刑囚の刑執行について、死刑の執行命令書に署名したのは22日だったと明らかにした。

朝日新聞の報道です。
秋葉原無差別殺傷、死刑執行 7人殺害・10人重軽傷、加藤智大死刑囚 08年、歩行者天国で
法務省は26日、2008年に東京・秋葉原で無差別に7人を殺害し、10人に重軽傷を負わせたとして殺人罪などで死刑が確定した加藤智大(ともひろ)死刑囚(39)について、東京拘置所で死刑を執行した。古川禎久法相が同日午前の会見で明らかにした。

案の定定型文の抗議文が公開されました。
日弁連 死刑執行に対し強く抗議し、直ちに全ての死刑執行を停止して、死刑制度を廃止する立法措置を早急に講じることを求める会長声明
金沢弁護士会 死刑執行に抗議する会長声明
東京第二弁護士会 死刑執行に抗議する会長声明
など

会長声明を出していない弁護士会
東京弁護士会、東京第一弁護士会、京都弁護士会、北海道弁護士会、青森県弁護士会、岩手県弁護士会など

抗議すべきは、法律に則って速やかに刑が執行されていなかったことに対してではないでしょうか。

原発事故東京電力の賠償(4)反対意見1

2022-07-21 20:18:16 | 日記
裁判官三浦守の反対意見

1 国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法となるものと解するのが相当である。
2 法令の趣旨、目的等
(1)原子炉等規制法は、・・・経済産業大臣は、その許可の申請があった場合において、原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物又は原子炉による災害の防止上支障がないこと等の基準に適合していると認めるときでなければ、当該許可をしてはならないものとしていた(23条1項1号、24条1項)。・・・このような原子炉施設の安全性の確保については、多方
面にわたる最新の科学的、専門技術的知見に基づいてされる必要がある上、科学技術が不断に進歩、発展していることから、最新の科学技術水準への即応性という観点からも、主務大臣に上記の権限行使を委ねるのが適当とされたものと解される(最高裁昭和60年(行ツ)第133号平成4年10月29日第一小法廷判決・民集46巻7号1174頁。・・・できる限り速やかに、最新の科学的、専門技術的な知見に基づき、極めてまれな災害も未然に防止するために必要な措置が講じられるよう、適時にかつ適切に行使されるべきものであったということができる。
(2)当該原子炉の基本設計ないし基本的設計方針の安全性に影響が及ぶ可能性があることは当然であり、そのような場合にも、最新の知見に基づき、原子炉施設の安全性を確保する必要があることはいうまでもない。・・・上告人は、本件事故以前から、この点に関する法令の解釈を誤っていたといわざるを得ない。


多数意見に真っ向から対立していますね。

3 本件技術基準の解釈等
(1)経済産業大臣が、電気事業法40条に基づき技術基準適合命令を発する要件は、事業用電気工作物が経済産業省令で定める技術基準に適合していないと認めること・・・原子炉の設置又は変更を許可するための基準(原子炉等規制法24条1項4号、26条4項)と重なるものであるから、これらは整合的に解釈されなければならない。
(2)ア 自然力に事故荷重を適切に組み合わせた場合を考慮した設計であること」としていた。そして、その解説において、「自然現象のうち最も苛酷と考えられる条件」とは、「対象となる自然現象に対応して、過去の記録の信頼性を考慮の上、少なくともこれを下回らない苛酷なものであって、かつ、統計的に妥当とみなされるものをいう」としていた。この指針における自然現象の想定は、既往最大のものに限られないにしても、どのようにこれを想定し、防護するかについては具体的に示していなかった。
イ 他方、我が国における津波を含む災害対策は、・・・別途想定し得る最大規模の地震津波を検討し、既往最大津波との比較検討を行った上で、常に安全側の発想から対象津波を設定するものとしていた。
ウ 東京電力を含む各電力会社等に対し、稼働中及び建設中の発電用原子炉施設について、耐震バックチェックを実施し、その結果を報告することなどを指示したが、耐震バックチェックルールは、津波に対する安全性を評価項目の一つとして挙げ、その評価方法として「津波の評価に当たっては、既往の津波の発生状況、活断層の分布状況、最新の知見等を考慮して、施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波を想定し、数値シミュレーションにより評価することを基本とする」などとした。


いくら数値シミュレーションといっても所詮予測でしかすぎませんからね。実際に事が起こらないと分からないものです。だから、安全係数ってのがあるのです。

(3)以上のような経緯等を踏まえ、電気事業法40条の上記趣旨等に鑑みると、・・・最新の科学的、専門技術的な知見に基づき、様々な要因の不確かさを保守的に(安全側に)考慮して、施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性がある津波について、数値計算等を用いて適切に評価すべきものと解される。
4 予見可能性等
(1)本件において、経済産業大臣の規制権限不行使の違法性を判断するに当たっては、津波が本件発電所に到達し、本件敷地が浸水して、本件非常用電源設備の機能の喪失等が生ずることを予見できたであろうといえるかという事情を考慮しなければならない。


地下に発電機を設置するのは、アメリカではハリケーンが多いのでそうしろという趣旨で、日本ではまずそういうことはないのでそこに疑問を持つべきでした。

(2)
イ 地震調査委員会は、地震防災対策の強化を図ること等を目的とする法律の規定に基づき、地震に関する調査結果等の総合的な評価等を行う専門的な機関として政府に設置されたものであり、本件長期評価は、他の海域における地震活動の長期評価と同様に、地震に関する調査研究の成果として、国民や防災を担当する機関に十分に伝達され活用されることを目的としたものということができる。・・・三陸沖北部から房総沖の日本海溝寄りの領域は、17世紀以降、マグニチュード8クラスの津波地震として、三陸沖では慶
長16年(1611年)の慶長三陸地震及び明治29年(1896年)の明治三陸地震、房総沖では延宝5年(1677年)の延宝房総沖地震が発生している上、海側プレートが陸側プレートに同じような勾配や深さで沈み込んでいること等から、この領域を一つの領域として、震源域は特定できないものの、その領域内のどこでも同様の地震が発生する可能性が高いと評価したものである。


地震の10年以上前から知られていたし報告のあったことになります。だったら基準を最新のものに替えろよ!ということになります。

(3)
ア 土木学会は、土木工学の進歩、土木事業の発達を図ること等を目的とするところ、平成11年、土木学会原子力土木委員会の下に、原子力発電所の津波に対する安全評価技術の体系化及び標準化について検討することを目的として、津波評価部会が設置されたが、同部会は、学識経験者のほか、東京電力を含む各電力会社の研究従事者等の委員によって構成されていた。
イ 土木学会の位置付けや津波評価部会の構成、手続等に鑑みても、平成14年津波評価技術における波源の設定に関する領域の考え方が、本件長期評価の合理性を損なうものとはいえない。
ウ 地震調査委員会が、それまでの長期評価等を踏まえて、・・・発生間隔が長く、近い将来に発生する可能性が低いとして、その検討対象から福島県沖・茨城県沖のプレート
間地震等を除外した。


あたかも地震が予測できるかのような書きぶりですが、地震は非線形ですので予測はできません。

(3)保安院が、本件長期評価の公表後、自ら又は東京電力に指示をして、本件長期評価を踏まえ、最新の科学的、専門技術的知見に基づいて津波を想定する場合、多数意見が述べるとおり、本件試算は合理性を有する試算であったといえるから、本件試算津波と同様の津波による遡上が想定されることになったものと考えられ、海抜10mの本件敷地には、最大で海抜15.707mの高さの遡上波が襲来することが想定された。そして、外部電源が失われた状態で、このような遡上波により本件敷地が浸水すれば、本件非常用電源設備がその機能を失うなどして、本件事故と同様の事故が発生するおそれがあることは明らかであった。

うーんここまでわかっていたのに、他の裁判官はどうしてこの事実を認めないのでしょう。
あまりにも長くなったので続きは次の記事で書きます。


原発事故東京電力の賠償(3)補足意見

2022-07-20 22:00:14 | 日記
裁判官菅野博之の補足意見
(1)(東日本大震災による)財産的損害は、我が国において前例を見ないほど甚大なものとなっており、その救済は現在も大きな課題となっている。
(2)エネルギー政策、科学技術振興政策等のため必要なものとして、国を挙げて推進したものであって、各電力会社は、いわばその国策に従い、・・・本件事故のような大規模な災害が生じた場合は、電力会社以上に国がその結果を引き受けるべきであり、本来は、国が、過失の有無等に関係なく、被害者の救済における最大の責任を担うべきと考える。


このロジックはどうかなと思いますよ。災害の規模はあくまでも事後でしか知りえない訳ですし、そもそも災害による被害の支援はしても保証はすべきではないと思います。国の命令でそこに済んだわけではありませんから。その上で(2)は確かに電力会社は国策です。となると、民間の後発会社が同様の事態になった場合は、国が補償すべきなのでしょうか?銀行も同様に法令でガチガチに管理されています。預金保険機構で保障される分以上は自己責任になります。一緒に扱うべきではないとするならば、どのような産業であれば国が丸抱えをすべきか論証すべきです。

3 本件で問題となる国家賠償法上の判断は、上記のような原賠法等に由来する被災者の救済とは異なる問題である。国家賠償法は、いわば国にも不法行為責任を負わせることとしたものであって、通常の不法行為法と同様に、その行為当時の法令、水準、状況等に照らし、平たく言えば、やってはいけないことを行い(不作為の場合は、やらなければいけないことを怠り)、その結果、損害が生じた場合に、これを賠償させるものである。・・・本件長期評価を前提とする津波対策として、防潮堤等の設置以外の防護措置が講じられなければならなかったとか、そのような防護措置が講じられた蓋然性があるということはできない。

そうなんですかね。安全係数を無視した設計ですから。最初から瑕疵があったとしか思えませんが。

以上の理屈をより身近な例で言えば、例えば、悲惨な結果をもたらした医療事故、鉄道事故等があり、事故後に検証すると、特定の医療措置や安全装置があれば事故が起きなかった蓋然性が認められたとしても、その事故当時、その関係者、その状況を前提として、そのような医療措置や安全装置につき、法令上の根拠も医療水準・技術水準もなかった場合(他の病院でもそのような措置はとられていない、他の鉄道会社でもまだその安全装置は設置されていない場合等が考えられよう。)は、不法行為責任を問うことができないのと同じことである。

いやーどうでしょう。安全係数の問題がある以上、蓋然性が認められないとは言えません。

本件地震が余りに大きな地震であったため、本件津波による本件事故を避けることができたという蓋然性を認めるのは困難であり、したがって、国家賠償責任を問うことができないのである。

第一義的には東京電力に賠償責任があり、国家にはあると思いますよ。安全係数を念頭に入れれば当然に。ただ、過失割合は小さくても仕方ないとは思いますけどね。微妙なやや逃げ腰の判断に見えます。

裁判官草野耕一の補足意見

電気事業法40条に基づく規制権限を行使して、津波による本件発電所の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを東京電力に義務付け、東京電力がその義務を履行していたとしても、本件事故と同様の事故が発生するに至っていた可能性が相当程度以上あったので、「経済産業大臣が本件規制権限を行使していれば本件事故又はこれと同様の事故が発生しなかったであろうという関係」を認めることはできない

第四十条 主務大臣は、事業用電気工作物が前条第一項の主務省令で定める技術基準に適合していないと認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる。

こんな立派な法文がありながら、国に管理責任はない?

水冷式非常用ディーゼル発電機は海抜4mの海側エリアに設置されていた冷却水くみ上げポンプの水没によりその機能を失い、空冷式非常用ディーゼル発電機(6号機のものを除く。)も、本件仮定津波の本件敷地への流入箇所に近い運用補助共用施設(共用プール)の地下に設置されていた付属の高圧電源盤の浸水によりその機能を失った可能性が高いので、6号機を除く全ての本件各原子炉施設が非常用電源を喪失していた可能性が高い。)

過去にも6mの津波が来てましたよね。予測不可能ではないでしょう。他にも各原子炉の事について記述していますが、一番の原因はこのディーゼル発電機の水没です。この点を論じないでは意味がありません。事実を見てませんね。

原発事故東京電力の賠償(2)

2022-07-18 19:58:22 | 日記
最高裁の判断
(1)国又は公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行
使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において、国家賠償法1条1項の適用上違法とな
るものと解するのが相当である(最高裁平成13年(受)第1760号同16年4月27日第三小法廷判決・民集58巻4号1032頁、最高裁平成30年(受)第1447号、第1448号、第1449号、第1451号、第1452号令和3年5月17日第一小法廷判決・民集75巻5号1359頁等参照)。・・・記公務員が規制権限を行使しなかったことを理由として同項に基づく損害賠償責任を負うというためには、上記公務員が規制権限を行使していれば上記の者が被害を受けることはなかったであろうという関係が認められなければならない。
(2)経済産業大臣が、本件長期評価を前提に、電気事業法40条に基づく規制権限を行使して、津波による本件発電所の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを東京電力に義務付けていた場合には、本件長期評価に基づいて想定される最大の津波が本件発電所に到来しても本件敷地への海水の浸入を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置が講じられた蓋然性が高いということができる。・・・平成14年津波評価技術が示す設計津波水位の評価方法に従って、上記断層モデルの諸条件を合理的と考えられる範囲内で変化させた数値計算を多数実施し、本件敷地の海に面した東側及び南東側の前面における波の高さが最も高くなる津波を試算したものであり、安全性に十分配慮して余裕を持たせ、当時考えられる最悪の事態に対応したものとして、合理性を有する試算であったといえる。


要するに、地震と津波に関する予測はちゃんとした計算で行われたものであったと言っています。計算以上の災害だよねと?チリ地震のときは三陸で6.2,むつで6.4でした。それを前提に土木学会も計算すべきだったのでは?

本件事故以前において、津波により安全設備等が設置された原子炉施設の敷地が浸水することが想定される場合に、想定される津波による上記敷地の浸水を防ぐことができるように設計された防潮堤等を設置するという措置を講ずるだけでは対策として不十分であるとの考え方が有力であったことはうかがわれず、その他、本件事故以前の知見の下において、上記措置が原子炉施設の津波対策として不十分なものであったと解すべき事情はうかがわれない。

え?ひっくり返します?!

(3)本件地震は、本件長期評価に基づいて想定される地震よりもはるかに規模が大きいものであった。また、本件試算津波による主要建屋付近の浸水深は、約2.6m又はそれ以下とされたのに対し、本件津波による主要建屋付近の浸水深は、最大で約5.5mに及んでいる。
(4)経済産業大臣が、本件長期評価を前提に、電気事業法40条に基づく規制権限を行使して、津波による本件発電所の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを東京電力に義務付け、東京電力がその義務を履行していたとしても、本件津波の到来に伴って大量の海水が本件敷地に浸入することは避けられなかった可能性が高く、その大量の海水が主要建屋の中に浸入し、本件非常用電源設備が浸水によりその機能を失うなどして本件各原子炉施設が電源喪失の事態に陥り、本件事故と同様の事故が発生するに至っていた可能性が相当にあるといわざるを得ない。

したがって、上告人が、経済産業大臣が電気事業法40条に基づく規制権限を行使して津波による本件発電所の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを東京電力に義務付けなかったことを理由として、被上告人らに対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負うということはできない。


きちんとした計算によって津波を予想し堤防も作ったのだから、やれることは全部やったという趣旨のようです。だから、経済産業省はこの事案について指導する立場になかったという結論になりました。

事実認定として、安全係数が十分ではないのでそもそもその計算がおかしかったという結論には至らなかったようです。この点はどうなのか?と思えてきます。

裁判官三浦守の反対意見があるほか、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、判示第3につき裁判官菅野博之、同草野耕一の各補足意見がある

案の定全員一致にはなりませんでした。そもそもこの大きな案件は大法廷でやるべきだったのではないのか?と思いますが。

原発事故東京電力の賠償(1)事実認定と訴えの内容

2022-07-17 19:24:11 | 日記
令和3(受)1205  損害賠償請求事件
令和4年6月17日  最高裁判所第二小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所

今回の判決文は59ページの大作です。三浦裁判官だけが反対だったようです。

朝日新聞の報道です。
原発事故の国の責任、最高裁が認めない判決 「防潮堤でも防げず」
菅野裁判長、草野耕一裁判官、岡村和美裁判官による多数意見はまず、福島第一原発の事故以前の津波対策について「防潮堤の設置が基本だった」と位置づけ、「それだけでは不十分との考えは有力ではなかった」とした。
 そのうえで、2002年に国が公表した地震予測「長期評価」に基づき、東電子会社が08年に計算した最大15・7メートルの津波予測は「合理性を有する試算」と指摘。国が東電に対策を命じた場合、「試算された津波に対応する防潮堤が設置されたと考えられる」とした。

一方、反対意見を述べた検察官出身の三浦守裁判官は、国の規制権限は「原発事故が万が一にも起こらないようにするために行使されるべきもの」と強調した。信頼性が担保された長期評価を元に事故は予見でき、浸水対策も講じさせれば事故は防げたと指摘。国は東電と連帯して賠償義務を負うべきだと主張した。


訴えの内容です
国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求めるとともに、人格権又は同項に基づく原状回復請求として、本件事故当時の居住地における空間放射線量率を0.04マイクロシーベルト毎時以下にすることを求める事案である。

国(環境省)が示す毎時0.23マイクロシーベルトの算出根拠では、自然放射線分0.04マイクロシーベルトのようです。物理を勉強した人であれば分かりますが、一度飛散したものを集めるて除去するのは不可能です。要求した気持ちは分かりますけどね。

事実確認です。結構長いので重要なところだけ抜き出します。
ウ 本件発電所の1号機から4号機までの各原子炉に係る原子炉建屋、タービン建屋等の主要な建屋は、いずれも海抜10mの平らな土地上にあり、本件各原子炉は、北から南に向かって1号機から4号機の順に一列に設置されている。本件敷地の東側及び南東側は、海水をくみ上げるポンプ等の設備が設置された海抜4mの区画等を挟んで海に面している。

チリ地震のときは6.4m以上の津波がむつ市に届いていますね。ということは、4mの位置にポンプを置いたら駄目でしょう。

エ 本件各原子炉に係る原子炉施設(以下「本件各原子炉施設」という。)では、原子炉の運転により発電した電力や外部の変電所から供給される電力が利用されていたが、これらの電力をいずれも利用することができない場合に備えて、非常用ディーゼル発電機及びこれにより発電した電力を他の設備に供給するための電気設備が主要建屋の中に設置されていた。

こういう分野では安全係数というものがあって、計算上安全とされるものの1.5倍は用意しなければなりません。すると、ちょうど10mぐらいになりますね。

(2)原子力発電所の設計津波水位の評価方法に関する報告書の作成
(3)地震調査研究推進本部地震調査委員会


で、もっと安全を確保するために計算しなおしなさいと指示があり、その結果三陸沖北部から房総沖にかけての日本海溝寄りの南北に細長い領域に関し、明治29年に発生した明治三陸地震と同様の地震が上記領域内のどこでも発生する可能性があること、上記領域内におけるマグニチュード8クラスのプレート間大地震(津波地震)については、今後30年以内の発生確率が20%程度、今後50年以内の発生確率が30%程度と推定されること、その地震の規模は、津波マグニチュード8.2前後と推定されること等を内容とするものであった。
(4)発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針の策定
ア 原子力安全委員会は、平成18年9月、発電用軽水型原子炉の設置許可申請及び変更許可申請に係る安全審査のうち、耐震安全性の確保の観点から耐震設計方針の妥当性について判断する際の基礎を示すことを目的として、「発電用原子炉施設に関する耐震設計審査指針」を策定した。
イ 原子力安全・保安院は、同月、東京電力を含む発電用原子炉施設の設置者等に対し、既設の発電用原子炉施設等について、上記指針に照らした耐震安全性の評価を実施するよう指示した。


こういう報告書と指示が出てたんですね。物理的にあの巨大なものをもっと上に持っていくのは可能だったのでしょうか?

(5)本件長期評価に基づく津波の試算
ア 東京電力・・・最大で海抜15.707mの高さになるが、本件敷地の東側前面では本件敷地の高さ(海抜10m)を超えず、主要建屋付近の浸水深は、4号機の原子炉建屋付近で約2.6m、4号機のタービン建屋付近で約2.0mとなるなどというものであった。
イ 本件試算津波と同じ規模の津波に対する対策等についての検討を行ったものの、直ちに対策を講ずるのではなく、土木学会に本件長期評価についての研究を委託することとして、当面の検討を終えた。


うーん、土木学会も問題ないとしたのでしょうか。

本件地震及びこれに伴う本件事故
イ 本件地震により、本件各原子炉のうち定期検査のため運転停止中であった4号機を除く各原子炉がいずれも自動的に停止し、外部の変電所から供給される電力についても、本件地震による設備故障等によりその供給が途絶えた。・・・その浸水深は、主要建屋付近で最大約5.5mに及び、主要建屋の中に海水が浸入する事態となった。その結果、全ての本件非常用電源設備が浸水してその機能を失い、交流電源が喪失した。・・・高温に達した燃料が著しく損傷し、これにより発生した水素ガスの爆発によって原子炉建屋等が損傷するなどして、本件各原子炉施設から放射性物質が大量に放出される事故(本件事故)が発生するに至った。


結局のところ、電源さえ生きていれば爆発事故は起きなかったと言っています。

(7)本件事故以前の我が国における原子炉施設の津波対策の在り方
防潮堤、防波堤等の構造物(以下「防潮堤等」という。)を設置することにより上記敷地への海水の浸入を防止することが対策の基本とされていた。


土木工学についてはど素人ですが、地震で堤防に亀裂が入るのは簡単に予想がつきます。その上津波が来たらどうしようもないですよね。

(8)関係法令の定め
電気事業法39条1項は、事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物を経済産業省令で定める技術基準に適合するように維持しなければならない旨規定し、同法40条は、経済産業大臣は、事業用電気工作物が上記技術基準に適合していないと認めるときは、事業用電気工作物を設置する者に対し、その技術基準に適合するように事業用電気工作物を修理し、改造し、若しくは移転し、若しくはその使用を一時停止すべきことを命じ、又はその使用を制限することができる旨規定する。


「しなければならない」わけではなく「できる」規定です。

訴えの内容
経済産業大臣が、電気事業法40条に基づく規制権限を行使して、津波による本件発電所の事故を防ぐための適切な措置を講ずることを東京電力に義務付けていれば、本件事故と同様の事故が発生しなかったであろうという関係があることが事実上推認されるというべきである。これらの事情等を考慮すると、経済産業大臣は、遅くとも平成18年末までには上記の規制権限を行使すべきであったのであり、同年末以降、経済産業大臣が上記の規制権限を行使しなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であって、この規制権限の不行使と本件事故との間の因果関係も認められるから、上告人は、同項に基づく損害賠償責任を免れない。

技術的な話からすれば真っ黒、でも法律上からすると「できる」規定なので微妙な感じになってきました。

公務員を暴行で処分、被害者への口裏合わせの強要で処分の2回は当然の処分

2022-07-09 20:38:27 | 日記
令和3(行ヒ)164  懲戒処分取消等請求事件
令和4年6月14日  最高裁判所第三小法廷  判決  破棄差戻  名古屋高等裁判所  金沢支部
地方公共団体の職員が暴行等を理由とする懲戒処分の停職期間中に同僚等に対して行った同処分に関する働き掛けを理由とする停職6月の懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであるとした原審の判断に違法があるとされた事例

労働ニュースの報道です。
停職6カ月 裁量権の範囲逸脱せず――最高裁
同職員は複数人への暴行などを理由に停職2カ月の懲戒処分を受けたが、処分を不服として同市公平委員会に審査請求をした。審査請求手続きで自身に有利な証言をさせようと同僚らに働き掛けたところ「反社会的な違法行為」であるとしてさらに停職6カ月となった。最高裁は同僚らへの働き掛けは報復を示唆した威迫行為で、明確な非行に当たると指摘。処分の種類・長さともに裁量権の範囲の逸脱はないと判断した。

日経新聞の報道です。
部下暴行などで2度懲戒 「処分は裁量権の範囲」最高裁
一審・富山地裁は男性の請求を棄却したが、二審は停職6カ月とした2度目の処分は「重すぎる」と取り消し、市に22万円の支払いを命じた。
これに対し、第3小法廷は、男性は面会を断った被害者に報復を示唆するなどしたとして、停職6カ月の2度目の処分について「裁量権の範囲を逸脱したものとは言えない」と判断した。


消防隊が部下をぶん殴るって、火事の現場で仕返しされる可能性があるので絶対やったら危ない案件なんですけどね。

原審の確定した事実関係
(1)地方公務員法29条1項は、職員が同法等に違反した場合(1号)、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合(3号)等においては、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる旨規定
(2)被上告人は、平成2年4月に消防職員として上告人に採用され、第2処分を受けた後である同29年10月31日付けで依願退職した。
(3)ア 被上告人は、平成23年7月22日、関係者の会合において、消防長であるAに対し、「お前みたいなやつ、早く消防長辞めてしまえ。」と怒鳴った。
イ 被上告人は、平成25年5月又は6月頃の勤務終了時、消防署庁舎内において、上司であるBに対し、「お前、上の者のところへ行って俺の悪口を言っとるやろう。」などと大声で一方的に怒鳴り、胸倉をつかんで移動させ、壁に押し付けた。


などなど、実際証拠が残っている範囲でしか裁判にできませんので、相当回数を重ねてたんでしょう。さらにかなりのレベルまで行かないと裁判所も受け付けません。しかも消防士長にですよ。それなりの能力がある人でしょうから、単なる因縁をつけてきただけでしょう。

(4)被上告人(加害者)は、平成29年2月27日付けで、消防長から、前記 の行為等に関し、地方公務員法29条1項1号に基づき停職2月の懲戒処分を受け(第1処分)、同年5月10日、氷見市公平委員会に対して審査請求をした。
(5)ア 電話で、同人が訓練において不適切に電動式心肺人工蘇生器を作動させた事案につき、被上告人においてHに対する処分を軽くするための行動をとることを提案した上で、同人が第1処分に係る調査で事実関係を話したのかについて問い詰め、同人が裏切るような行為をしたために第1処分がされたのであれば許さないなどと述べた。


もろ脅迫ですね。

イ 被上告人は、平成29年3月3日から同月23日までの間、Cに対し、数次にわたる電話で、当時消防職員の給与計算を担当していた同人による時間外勤務手当の処理に問題があることに言及した上で、第1処分に対する審査請求手続において同人への暴行が争点となること等についての話をし、処分をより軽くする目的で、同人と面会する約束をした。その後、被上告人は、Cとの間でメールのやり取りをしたところ、被上告人が送信したメールには、被上告人の運転する自動車にCが同乗して氷見市外の面会場所に行くことを提案する旨の記載や、「この不服に邪魔が入りもしうまくいかなかったら辞表出して(中略)消防長とDを刑事告訴するそれに加担したものも含むつもり リークしたものも同罪やろ」との記載があった。

ヤクザですか?メールでやり取りしてたという時点で、アホ丸出しというか。衝動的な性格の持ち主なんでしょう。

(6)被上告人は、平成29年4月27日付けで、消防長から、前記 の行為が、正当な理由なく暴行の被害者に対して面会を求めるなど、いずれも反社会的な違法行為であって、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に当たるなどとして、地方公務員法29条1項3号に基づき停職6月の懲戒処分を受けた(第2処分)。

2回目の処分ですね。これは重過ぎるとして、自治体の権利の乱用として訴えたようです。こういう加害者は同じことをされたことがないので、どんなに罵倒しても大したことがないと思い込むところがあるんですよね。

最高裁の判断は
(1)公務員に対する懲戒処分について・・・それが社会観念上著しく妥当を欠いて裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したと認められる場合に、違法となるものと解される(最高裁昭和47年(行ツ)第52号同52年12月20日第三小法廷判決・民集31巻7号1101頁、最高裁平成23年(行ツ)第263号、同年(行ヒ)第294号同24年1月16日第一小法廷判決・裁判集民事239号253頁等参照)。

実はここには異論がありまして、身分が保証されている職業なんだからやや厳しめでいいと思いますよ。

(2)ア 被上告人によるHへの働き掛けは、被上告人がそれまで上司及び部下に対する暴行及び暴言を繰り返していたことを背景として、同僚であるHの弱みを指摘した上で、第1処分に係る調査に当たって同人が被上告人に不利益となる行動をとっていたならば何らかの報復があることを示唆することにより、Hを不安に陥れ、又は困惑させるものと評価することができる。

困惑どころじゃなくて、強要・脅迫だと思いますけどね。

イ そうすると、上記各働き掛けは、いずれも、懲戒の制度の適正な運用を妨げ、審査請求手続の公正を害する行為というほかなく、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行に明らかに該当することはもとより、その非難の程度が相当に高いと評価することが不合理であるとはいえない。

当然ですよ。これは、民間だって同じです。むしろもっと厳しいでしょうね。

以上の事情を総合考慮すると、停職6月という第2処分の量定をした消防長の判断は、懲戒の種類についてはもとより、停職期間の長さについても社会観念上著しく妥当を欠くものであるとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したものということはできない。

当然すぎますね。というか、企業だったら第1処分で懲戒免職か諭旨免職が普通です。甘すぎます。

裁判官全員一致

裁判長裁判官 長嶺安政
裁判官 宇賀克也
裁判官 林 道晴
裁判官 渡 惠理子

今回の判決文は実に読みやすかったです。論旨もしっかりしています。ただ、氷見市長にはもっとさっさと重い処分を判断すべきだったと言いたいところです。

取締役兼総務経理部長の会社の金の横領は業務上横領:一審が馬鹿過ぎる

2022-07-03 20:29:21 | 日記
令和3(あ)821  業務上横領被告事件
令和4年6月9日  最高裁判所第一小法廷  判決  破棄自判  東京高等裁判所
他人の物の非占有者が業務上占有者と共謀して横領した場合における非占有者に対する公訴時効の期間

第1審判決の認定した犯罪事実の要旨
・被告人は、株式会社Bの取締役兼総務経理部長として同社の経理業務を統括していたCと共謀の上、平成24年7月5日、同社名義の銀行口座の預金をCにおいて同社のために業務上預かった。
・東京都内の同社事務所において、自己の用途に費消する目的で、Cにおいて、情を知らない同社職員に指示して、上記口座から、Cらが管理する銀行口座に、現金2415万2933円を振込入金させ、もってこれを横領した。


意味不明なくらい長い文章なので、ぶった切りました。最初から悪文なので先が思いやられます。取締役で経理部長が自社の預金をよその口座に入金しろと命令すれば、そりゃ業務命令と思い込みますよね。

2 第1審判決は、上記認定事実によれば、被告人の行為は、刑法65条1項により、同法60条253条(業務上横領罪)に該当するが、被告人には業務上の占有者の身分がないので、同法65条2項により同法252条1項(横領罪)の刑を科することとなるとした。・・・横領罪の法定刑(5年以下の懲役)を基準として刑訴法250
条を適用すると、公訴時効の期間は5年(同条2項5号)であるから、本件の犯罪行為が終了した平成24年7月5日から起算して、本件の公訴提起がされた令和元年5月22日には公訴時効が完成していたとして、被告人に対し、同法337条4号により免訴を言い渡した。


業務上横領の要件は、①業務性②委託信任関係に基づく占有③他人の物であること④横領(自己や第三者のために不法に領得すること)なので、充分当てはまりますね。

検察官が控訴し、被告人に対する公訴時効の期間は業務上横領罪の法定刑を基準とすべきであるのに横領罪の法定刑を基準として公訴時効の完成を認めた第1審判決には法令適用の誤りがあると主張した。

3 所論は、原判決の判断は、名古屋高等裁判所昭和44年(う)第140号同45年7月29日判決・名古屋高等裁判所刑事判決速報487号(以下「名古屋高裁判決」という。)と相反すると主張する。
4 公訴時効制度の趣旨は、処罰の必要性と法的安定性の調和を図ることにあり、刑訴法250条が刑の軽重に応じて公訴時効の期間を定めているのもそれを示すものと解される。そして、処罰の必要性(行為の可罰的評価)は、犯人に対して科される刑に反映されるものということができる。・・・、被告人に対する公訴時効の期間は、同罪の法定刑である5年以下の懲役について定められた5年(刑訴法250条2項5号)であると解するのが相当である。


裁判官全員一致の意見でした。
裁判長裁判官 山口 厚
裁判官 深山卓也
裁判官 安浪亮介
裁判官 岡 正晶
裁判官 堺 徹

裁判官山口厚の補足意見
1 本件で問題となる刑法65条2項はこのような法律上の減軽事由を定めるものではないから、刑訴法252条の定める制約によって刑法65条2項適用以前の刑により公訴時効期間を決定すべきことになるわけではない。

2 共犯の統一的処理の理念により、本件では業務上横領罪の法定刑を基準として公訴時効期間を定めるのが相当だとしている。しかし、共犯の統一的処理といっても、そもそも共犯事件について公訴時効期間の統一を求める規定が存在するわけではない。


今後の条文適用のための忠告といったところでしょうか。

3 業務上占有者に非占有者が加功する本件の場合についての法廷意見の結論は、業務上占有者に占有者が加功する場合の取扱いとの均衡からも、相当な結論だと思われる。すなわち、業務上占有者に占有者が加功する場合には、刑法65条2項が適用されて、占有者には横領罪の共犯が成立することになると思われる。

一審の裁判官になめんなよ、しっかり勉強せーよと説教している感じですね。
しかし、一審の裁判官が変なのだとまわりまで苦労します。