自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

今年を振り返る 2

2021年12月31日 | ごあいさつ Greetings
活動としては次のことをしました。
 研究活動としては昨日紹介した論文執筆が最重要ですが、そのほか、東大博物館に残したシカの頭骨整理に出かけています。アファンの森のタヌキの糞、金華山のシカの糞、以前とっていたヤマネの糞などを分析しました。それから、玉川上水の群落調査、野鳥調査、樹木調査をしました。
 光栄なことに日本哺乳類学会から「特別賞」の表彰を受けました。
 野外調査は控えめで、アファンの森くらいですが、4月に裏高尾、8月に乙女高原(訪花昆虫の調査)、久しぶりに金華山にいきました。毎年モンゴルに行っていたのに行かないのが3年も続いてしまいました。
 研究者として神奈川県の委員やいくつかの助成金の選考委員をしました。すべてリモートでした。川崎市の市民アカデミーで講義をしました。
 研究以外では地元の玉川上水の保全活動に力を入れました。
 花マップの活動は「花ごよみ」として継続し、毎月上旬、中旬、下旬に花ごよみの記録で玉川上水に行き、野草の花や果実を記録し、皆さんから送ってくるものをブログにアップしました。観察会は細々と毎月おこないました。こちら
 花ごよみを続けていたのですが、玉川上水の樹林伐採が目に余るので、それを阻止する活動として「玉川上水みどりといきもの会議」を立ち上げ、シンポジウムを3回行いました。(1回2回3回)最近になってアンケート調査を始めました。みなさまもご協力ください。こちら
 今年は子供向けの活動が多かったように思います。5月に「花にくる虫、どんな虫?」、9月に「玉川上水には糞虫がいるよ」と12月に「木の実草の実たねしらべ」という楽しいイベントをしました。
 7月には小平市の「スポーツ&カルチャーフェスティバル in こだいら」の「いきもののつながりイベント」で、「フクロウがはこんできたもの」と「タヌキのフンといのちのつながり」というワークショップをしました。
 子供といえば3月に京都のある小学校の先生から連絡があって、国語の時間に私の書いた文章を読み、その内容について子供たちとリモートで話をして欲しいと頼まれました。初めてのことでしたがそのリモート授業が実現し、楽しいものになりました。
・・・・・・・・・・・・・・・・
 思えば、ありがたいことに風邪ひとつ引かず過ごすことができました。娘が3人いて近くに住んでくれているので、孫の面倒などにおばあちゃんは忙しくしています。時々遊びに来るので私も相手をします。「おじいちゃんの部屋は不思議なものがいろいろあるぞ」と調査機器などを取り出しては「これなあに?」と聞くので、「これで木の太さを測るんだよ」「これはねえ、カウンターといって数を数えるんだ。かちゃかちゃとやってごらん」と説明します。
 来年も同じような毎日となりますが、願いはただ一つ、コロナ、ゼロとは言いません、大爆発だけはなんとか避けて欲しいものです。
 時々はこのブログにお立ち寄りください。では良いお年を。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

今年を振り返る 1

2021年12月30日 | ごあいさつ Greetings
今年を振り返ると、やはりコロナで動きが封じられたことが最大事でした。それは誰にも共通のことで、私は昨日書いたように、休まずやりたいことをし続けました。そのうち最重要なのが論文執筆です。今年は文末にあげたの論文を書きました。

  論文を書くと言うのは実にエネルギーのかかることです。関連の文献を読み込み、研究の意義付をし、データを計算し直したり、検定したり、グラフを描いたり、なかなか大変です。原稿ができると、雑誌ごとに違う規定を読んで整えます。最近行った調査なら記憶も新鮮ですが、昔の調査だと記憶が遠ざかっていて、大変です。今年は三十年以上前の野帳とデータと格闘しました。書いているときは集中しますからカミさんから何か言われても聞こえてないことになります。
 こうして原稿ができると投稿しますが、これがまた大変で、今は全てフォーマットに沿って電送ですから、勝手がわからないと立ち往生します。そしてしばらくすると査読結果が戻ってきます。今年の範囲では却下はほとんどなかったのですが、中にはあります。少し背伸びした時は「やっぱりダメか」と自分を納得させますが、それでもやはりちょっと気落ちします。却下は少なかったとはいえ、すぐに「受理です」というのもまた少なく、大抵はたくさんのコメントがあって修正を求められます。ただ、この過程は私にとっては気の重いものではなく、多くの場合は査読者が事情を知らないとか理解していないので、それを説得する感じです。コメントを読みながらアドレナリンが増える感じで、どう説得しようかと頭の中を文章がめぐります。もちろん指摘通り自分の文章が分かりにくく、素直に「ごめんなさい、ありがとうございます」もあります。こうしたやりとりの上、最終的に「受理されました」と言われた時が一番嬉しい時で、調査の時のこと、執筆中のことなどを思い出し、報われた気がします。それからしばらくするとゲラが届いて入念に校正します。それが済むと後は公開されるのを待つばかりとなります。
 私の書架の一部にファイルボックスがあって、準備中、投稿中、受理と並んでいます。その中にそれぞれの原稿のファイルが入っていて、準備中のボックスから右隣の「投稿中」に移り、それからその右隣の「受理」に移動していきます。最後のゲラ校正が終わるとファイルを取り出して原稿はゴミ箱に捨て、必要なデータなどは別のコーナーに戻します。原稿をゴミ箱に捨てるときはなかなか気分の良いものです。こうしてファイルが徐々に右に移動することを繰り返しています。
 研究者の中には英語で書いてこそ論文だと言う人もいます。正論なのですが、私はそうでもありません。確かに国際的な雑誌に自分の論文が掲載され、海外の研究者からリクエストがあったりすると嬉しくはありますが、それほど「世界を相手に」しているつもりもありません。個別的・記述的な論文*は日本の研究者が読んでくれればよいと言う思いもあるし、保全関係のものはむしろ行政の人に読んでもらいたいものもあるので、そういう研究は日本語で書いています。大事なのは調べっぱなしではなく、どういう形であれ、公表することです。特に学生を指導して行った調査などはその気持ちが強いです。彼ら、彼女らの努力を成果として公表してあげることこそが、その努力を無為としないことだと思います。受理の報告をして、喜んでもらえるとよかったと思います。

++++++++++++++++
*これについては以下の文章を書きました。こちら

++++++++ 今年書いた論文など +++++++++

1) Takada, H., Yano, R., Katsumata, A., Takatsuki, S., Minami. 2021. 
Diet compositions of two sympatric ungulates, the Japanese serow (Capricornis crispus) and the sika deer (Cervus nippon), in a montane forest and an alpine grassland of Mt. Asama, central Japan. こちら
Mammalian Biology, 101: 681–694.
浅間山のカモシカとシカの食性

2) Ebihara, H. and S. Takatsuki. 2021. Human effects on habitat use of Japanese macaques (Macaca fuscata); importance of forest edges. こちら
Mammal Study, 46: 131-141. 
ニホンザルのハビタット利用

3) Takatsuki, S. 2021.
Long-term changes in food habits of deer and habitat vegetation: 25-year monitoring on a small island. 
シカ食性と群落の25年の変化

4) Takatsuki, S. and Suzuki, S. in press. 
Food habits of the Japanese dormouse in the Yatsugatake Mountains, Japan. 
Zoological Science, accepted Nov. 12.  
ヤマネの食性

5) 高槻成紀・谷地森秀二. 2021. 
高知県とその周辺のタヌキの食性 – 胃内容物分析–. こちら
哺乳類科学, 61: 13-22.

6) 宗兼明香・南 正人・高槻成紀. 2021. 
長野県東部の山地帯のカラマツ林のテンの食性. こちら
哺乳類科学, 61: 39-47. 

7) 高槻成紀、石川愼吾、比嘉基紀. 2021. 
四国三嶺山域のシカの食性−山地帯以上での変異に着目して. こちら
日本生態学会誌, 71: 5-15. 

8) 高槻成紀・大西信正. 2021. 
過疎化した山村でのシカの食性 − 山梨県早川町の事例 −. こちら
保全生態学研究, 23: 155-165. 

9) 高槻成紀・植原 彰. 2021. 
山梨県の乙女高原がススキ群落になった理由 – 植物種による脱葉に対する反応の違いから -. こちら
植生学会誌, 38: 81-93. 

10) 高槻成紀. 2021. 
タヌキの独り言 - 研究者の見たタヌキの言葉. 
武蔵野樹林, 7: 26-29.  これは論文ではない

11) 高槻成紀・永松 大. 2021. 
スギ人工林が卓越する場所でのニホンジカの食性と林床植生への影響: 鳥取県若桜町での事例. こちら
保全生態学研究, 

12) 高槻成紀・釣谷洋輔. 2021. 
明治神宮の杜のタヌキの食性. 
「鎮座百年記念第二次明治神宮境内総合調査報告書、第2報: 91-101.

13) 高槻成紀・望月亜佑子, 印刷中. 
スギ人工林の間伐が下層植生と訪花に与える影響 – アファンの森と隣接する人工林での観察例 –. 
人と自然, 2021.3.25 受理

14) 高槻成紀・大貫彩絵・加古菜甫子・鈴木詩織・南 正人, 印刷中. 
八ヶ岳におけるヤマネの巣箱利用 − 高さ選択に注目して −. 
哺乳類科学, 2021.9.27 受理.     

15) 高槻成紀.  印刷中
記載的な論文と査読のあり方について. 
哺乳類科学, 2021.11.9 受理.        

16) 高槻成紀・鈴木和男. 印刷中
和歌山県におけるタヌキの体重の季節変化. 
哺乳類科学, 2021.12.6 受理.        

17) 高槻成紀. 印刷中
植物量と草食獣の密度の関係の説明について. 
植生情報, 印刷中

18) 高槻成紀(監修)
「アファンの森 生き物ガイドブック」春、夏、秋、冬


++++++++++++++++++
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

黒目川

2021年12月29日 | 自然 nature
退職以来、毎日が日曜日ですが、私には働く時間と休む時間という区別はなく、働くといえばいつも働いています。それを労働と言ってしまうと、「なりわい」であり「食べていくためにおもしろくもないことをして代価を得る」となりますが、そうだとすると私は全く働いてはいない。おもしろいと思えることをしているのであって、それ以外はしない。それを休みと言うのなら休んでいるが、「休む」と言うのは本来すべきことをしなくていい状態だから、そうだとすると私は全くた休んでいない。やりたいことを前に進めています。それは子供の遊びに近いかもしれません。
 そういう時間を過ごしているのですが、部屋に篭りきりではなくあちこち動いていますが、コロナ以降はそれも封じてきました。そうなると運動不足にもなるし、気持ちも良くないので、近所の散歩を日課にするようにしました。そうしたら近所に黒目川という湧き水が流れになる川があることを知り、よくいくようになりました。
 12月10日に行った時は、トウネズミモチがたわわになっていて、ヒヨドリがきていました。

トウネズミモチ

ハシボソガラスが何やら食べているのでみたらニセアカシアの果実を啄んでいました。


ハシボソガラス

ニセアカシアの果実(豆の鞘)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

木登り

2021年12月28日 | 家族
ときどき近所に住んでいる孫が遊びにきます。この日は霊園の芝生に生えているエノキに登って遊んでいました。エノキはスラリとは伸びなくて枝が横にはる傾向があり、特に孤立木はその傾向があります。この木は特にそういう傾向があるので、木登りに適しています。
 紅一点の六年生はおてんば娘で、木登りは大得意、このくらいの木は物足りないらしく、恐ろしく高いところにも登ります。


 
小さい男の子たちはちょっと恐る恐るです。


この子は来春から一年生。


木登りが済んだら、芝生でおやつの時間にしました。




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

オスジカの標本

2021年12月27日 | 標本
12月9日に東大に行ってオスジカの標本の整理をしました。ラックに収めていきました。院生に手伝ってもらえたので、順調に作業ができました。

修造されたオスの頭骨

10月13日の状態と比べるとずいぶん進みました。

10月13日の様子

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アファンの森 6

2021年12月26日 | アファンの森
目的を果たして山道を降りて、ニコルさんの石碑によりました。冬の低い太陽がさして木漏れ日となって射し込んでいました。





 心が穏やかでないことの多い今、言葉が染みるように思ました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アファンの森 4

2021年12月25日 | アファンの森
12月20日までアファンでの調査のことを書いていたが、「サンタさん」から横道に逸れていました。センサーカメラをチェックしたあと、目的であるタヌキのため糞場につきました。
 前日冷え込んだようで、日陰には少し雪が残っていましたが、糞はちゃんと重ねられていて、凍っていました。


それをサンプリングしました。このくらいあるといい分析ができます。秋から冬にかけては果実が増えるのですが、その内容は年ごとに違いがあります。今年は何を食べているか、分析が楽しみです。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プレゼント

2021年12月24日 | その他 others
クリスマスプレゼントではないのですが、子供にプレゼントを準備しました。1月にフクロウのイベントがあります。親子連れを想定しています。そこに参加してくれた子供にフクロウの人形をプレゼントする予定です。石粉粘土というのがあって、紙粘土みたいな白い粘土ですが、紙粘土よりは重く、乾くと石のように固まります。彩色ができます。
 高さ2、3センチの小さなものです。


 参加者は20人ほどなのでたくさん作りました。それがまとまってあるのは今だけなので勢揃いさせて撮影しました。一つずつ違うので、なんだかちょっと楽しい感じになりました。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

O Holy Night

2021年12月23日 | うた
クリスチャンでもない者がクリスマスを祝うのはおかしいのだろうが、それでも子供の喜ぶ顔を見るのは嬉しいことで、まあ大目に見て欲しいといった気持ちだ。幼子が信じるのを見るとき、この風習を作った文化を見上げる気持ちにもなる。それで想うのは秋田のナマハゲで、子供が怖がるのを嬉しそうに見る大人がいるが、どうもよくわからない。
 山下達郎も悪くないがこの季節になるといつも以上に音楽が聴きたくなる。最近出会ったクリスマスソングに秀逸なものがあった。Lucy Thomasという、まあ見た目も素晴らしく美しい人だが、声が良くて歌が桁外れにうまい。



この人の歌はどの曲もいいのだが、「O Holy Night」はデュエットで、アルトはどうやら妹らしい。ハーモニーがすごすぎて、どちらの声とも違うギーというような協和音が聞こえる。繰り返し聞いている。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

クリスマス

2021年12月22日 | 家族
娘たちがサンタさんを待っていた30年以上も前のこと、私たちは仙台に住んでいました。イエス誕生の夜に博士たちが馬小屋にやってきたという話は人形になっていますが、素朴でとてもいいものがあったので手に入れて、その人形を収める小屋を作りました。舞台のように台形に開いた形にし、奥に窓をあけ、壁に薄い板を貼りました。それから眠るイエスの台を作りました。
 毎年12月になるとこれを取り出して並べました。小さかった娘たちは小さなクリスマスツリーやこの人形小屋を楽しみにしていました。娘たちが結婚しても、同じように並べていたので、孫が楽しむようになりました。


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする