乙女高原で自然観察や保全活動を推進している植原彰さんの協力で、調べる内容を考えて記録用紙を作り、6月16日までに171の情報が得られました。このうち14は「なし」という記録なので、実質157ということになります。これを標高と生育地について整理しました。
標高は900 m台から100 m刻みで集計しました。生育地は湿地、草地、林縁、落葉樹林(落葉広葉樹とカラマツ)、常緑樹林(常緑針葉樹林)に分けました。これを種ごとに集計し、記録が5以上であったスミレを取り上げました。
標高
多くの種は標高1500 mから1700 mレベルで多く、低地でもみられたのはニョイスミレとタチツボスミレでした(図1)。アカネスミレは1700 m台だけとなっていますが、実際にはこれより低いところにも生育すルシ、ニョイスミレとタチツボスミレは1100-1400 mの間で記録がないですが、これも実際には生育することはわかっています。その意味で、この結果は調査した場所の標高に偏りがあることを反映しており、来シーズンは標高による調査頻度をそろえるようにしたいと思います。
図1. 乙女高原一帯でのスミレの標高100 m刻みでの分布。マンジュリカとは狭義の「スミレ」Viola mandshuricaのこと
生育地については次のような傾向がありました。サクラスミレは草地で多い、アカネスミレ、マンジュリカ(狭義の「スミレ」Viola mandshurica)は草地だけ、エイザンスミレとミヤマスミレ、ヒナスミレは落葉広葉樹りんが多い、タチツボスミレは湿地以外は多くの生育地にある、ニョイスミレは湿地と草地で多い(図2)。
図2. 乙女高原一帯でのスミレの生育地ごとの出現頻度。マンジュリカとは狭義の「スミレ」Viola mandshuricaのこと
結論
こうした結果から次のようなまとめをしました
・記録用紙はやや複雑で記録がしにくかった。
・データの取り方として、乙女高原周辺に集中したため、低標高での実態を捉えることができなかった。
・生育地については種ごとの傾向がある程度把握できた。
・まとまった調査でなくても、野外でスミレを見かけたら報告するようなシステムを工夫し、情報の充実を図るようにしたい。
・今後はこれらの点を反省し、今後の調査を改善したい。
感想
反省点はいろいろありますが、それでもこの方法でスミレ各種の生育ちに違いがあることが示せそうだという感触は得られました。これは一人ではとてもできないことで、多人数で成果を出すという意味で市民科学の好例だと思っています。