自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

大晦日

2023年12月31日 | ごあいさつ Greetings
 今年も終わろうとしています。みなさまにとってこの一年はいかがだったでしょうか。私は大学を辞めて8年が経ち、いろいろ衰えを感じながらも、コツコツと研究活動を続けています。

今年は念願の本を2つ出すことができました。

高槻成紀. 「都会のくらしと野生動物の未来」岩波ジュニア新書
高槻成紀. 「もう木を伐らないで」彩流社

また、哺乳類学会創立100周年記念の「日本の哺乳類学 百年のあゆみ」の中に「群集の中の哺乳類」と題して共著を書きました。

高槻成紀・田村典子・中下留美子. 2023. 群集の中の哺乳類. 「日本の哺乳類学 百年のあゆみ」日本哺乳類学会編, pp. 292-316, 文永堂出版

論文は相変わらず動物の食べ物を主体に、まずまず頑張ったかなという感じです。

シカ
Takatsuki, S., E. Hosoi and H. Tado. 2023. Food or rut: contrasting seasonal patterns in fat deposition between males and females of northern and southern sika deer populations in Japan. Mammalia, 2023aop. 
(色気か食い気か−ニホンジカ南北集団の雌雄の脂肪蓄積の季節パターン)こちら

Takatsuki S, Tsuji Y, Widayati KA, and Suryobroto B. 2023. Seasonal changes in the dietary compositions of rusa deer in Pangandaran Nature Reserve, West Java, Indonesia. Austral Ecology, 2023; 00: 1-8. (インドネシア西ジャワのパンガンダラン自然保護区のルサジカの食性における季節変化)こちら

タヌキ
Takatsuki S and K Suzuki. 2023. Bone growth and body weight patterns in juvenile raccoon dogs in Wakayama Prefecture, western Japan. Mammalia; 
(和歌山のタヌキの若年個体の骨と体重の増加パターン)こちら

Takatsuki, S. and Kobayashi, K. 2023. Seasonal changes in the diet of urban raccoon dogs in Saitama, eastern Japan. Mammal Study, 48: 1-11. 
(東日本のさいたま市の都市ダヌキの食性の季節変化)こちら

Takatsuki, S., Inaba, M. 2023. Food habits of raccoon dogs at an agricultural area in Shikoku, Western Japan. Zoological Science, 
(四国の農業地帯のタヌキの食性)こちら

フクロウ
高槻成紀・福地健太郎. 2023. 宮城県東松島の復興の森のフクロウの食物. BINOS, 30: 1-5.

モンゴル
Takatsuki, S., Purevdorj Y, Bat-Oyun T, Morinaga Y. 2023. Responses of plants protected by grazing-proof fences based on the growth form in north-central Mongolia. Human and Nature, 33: 39-47. (モンゴル中北部における放牧排除柵内の植物の反応−生育型による)

その他
高槻成紀. 2023. 都市孤立樹木の結実パターンと鳥類による種子散布:舗装を利用した種子回収の試み.  保全生態学研究, 28: 165-176. こちら

以下の論文は玉川上水で動植物を調べた仲間との共同研究で、市民科学として認められたもので、大変嬉しく思いました。

大塚惠子・鈴木浩克・高槻成紀. 2023. 玉川上水の杉並区に敷設された大型道路が鳥類群集に与えた影響. Strix, 39: 25-48. こちら

高槻成紀・鈴木浩克・大塚惠子・大出水幹男・大石征夫. 2023. 玉川上水の植生状態と鳥類群集. 山階鳥類学雑誌,55: 1-24. こちら

シンポジウム「小平の玉川上水の自然が危ない」の記録. 緑の風, 277: 4-8. こちら

そのほか、解説的な文章も書きました。

高槻成紀. 2023. フクロウの食物の識別の試みとその教材利用の可能性. BINOS, 30: 23-28.

高槻成紀. 2023. 鳥類群集のデータから多様度と類似度を求める方法. BINOS, 30: 17-21.

読みたい論文が送りますので、あればお知らせください。

おかげさまで、風邪もひかずに過ごした一年でしたが、国内外とも気持ちのふさがることが多くていけません。それでも新しい年には、私たちの社会が少しでも生き物にやさしく生きることができるものになるために、自分で何ができるかを考えながら、できるだけ明るい気持ちで過ごせるようにしたいと思います。みなさまもよい年をお迎えください。
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木をしらべる 5

2023年12月30日 | 玉川上水
その道路ができると、玉川上水の林だけでなく、その北側にあり、地元で「どんぐり林」と呼ばれてしたしまれている林も破壊されることになります。下の写真で、私の背後の柵内がその予定地です。そうなるとどういうことになるか、道路の意味などについて話しました。


お土産にいくつか野草のスケッチカードを配りました。


それから記念撮影をして解散にしました。




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木をしらべる 4

2023年12月29日 | 標本
取れたデータを集計してもらいました。


学年もいろいろだし、幼児もいるので、どのくらいわかったかはわかりませんが、何か木のことを調べているのだということは感じているようでした。そういうことが日常的に体験できるのと、そうでないのとでは子供の成長に大きな違いがあると思います。


私はドイツに行った時に、小さな都市に立派なブナ林があり、その中を家族がゆっくり歩きながら自然を観察しているのを見ていいことだなと思いました。
これを書いている少し前に、日本のGDPがドイツに追い抜かれたと報じていましたが、ドイツが日本より豊かなことは驚きでもなんでもありません。追いつかれてショックだなどというのは世界のことを何も知らない愚者の言うことです。


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木をしらべる 3

2023年12月28日 | 玉川上水
木を測定しながら、動植物について色々説明しました。ここはコゲラの多い林なのでコゲラの説明をしました。


生き物の話を野外で親子一緒に聞くのは、学校の教室で教わるのとはひと味違うだろうと思います。それが子どもたちの心になんらかの形で残ってくれたらいいなと思います。


調べているときに、木にルリタテハが止まりました。


この辺りではキタテハやアカタテハより、ルリタテハの方が多いです。
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木をしらべる 2

2023年12月27日 | 玉川上水
初めに巻尺で「軸」を決めました。


それから、メジャーで木の周を測ってもらいました。


木の種類、その位置、周囲が記録されていきました。


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木を調べる 1

2023年12月26日 | 玉川上水
玉川上水の小平部分、津田塾大学の少し上流に幅36メートルの大きな道路がつく計画があります。それが動くのではないかということで、なんとかしなければということになりました。その活動の一つとして、10月の8日に子どもを含めて現場の木の調査をすることにしました。



当日の朝、初めに挨拶と作業内容の説明をしました。


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10月の乙女高原 9

2023年12月25日 | 乙女高原
追伸的な内容です。井上さんから調査の前日にホソバノツルリンドウを見つけたと写真を送ってくださいました。私は見たことのない花なので、気が付かずに残念でした。


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10月の乙女高原 8

2023年12月24日 | 乙女高原
乙女高原に行くようになってかなり時間が経ちました。最初は植原さんから「乙女高原に綺麗な花が咲いていた時代に比べると、最近はススキだけが多くなってしまった。その時期がシカが増えた時期なので、シカのせいだと思うが、一度見にきてほしい」ということで行ったのでした。その前にシンポジウムでシカと植物の関係について講演をしました。私は現地に行ってすぐに「これはシカのせいだ」とわかりましたが、そのことを誰でも納得できる形で示さないといけません。そこで高橋君に卒論テーマとして、10メートル四方の柵の内外の植物にマーキングして、春から秋まで追跡してもらいました。そうしたらススキは内外であまり違いがないのに、他の多くの双子葉植物は外で草たけが低いことがわかりました。もう一つ行ったのは、代表的な植物を春にマーキングして半分を地表で刈り取りをし、追跡しました。これによって同じ刈り取り、つまりシカの採食を受けても、ススキはダメージが小さく、双子葉草本はダメージが大きいことが説明できました。その結果を報告したら、植原さんが山梨県に報告してくれました。そうしたら県の観光課が乙女高原を柵で囲う予算をつけることになりました。
その頃、もう一人の学生の加古さんが訪花昆虫を調べてくれました。その時のデータと柵を作って8年目の2023年のデータを比較したのが次のグラフです。これをみると、特に夏に大幅に増えたことが一目瞭然です。


訪花昆虫が見られた花の種数は39種から69種の1.7倍に、花の数は348から、実に4985の14.4倍に増えました。

このことはシカの影響を排除したことにより元々の豊かな植物が戻ってくると同時に、その花を利用し、また花の生活史を約束する授粉をする昆虫が戻ってきたということです。行政では生物多様性という言葉があまり理解されないままに喧伝されていますが、乙女高原で示されたのは、このような生き物のつながりが適切な管理によって実際に回復したことが示された好例だと思います。その時に、地道な調査が役立ったことは生態学研究者として嬉しいことでした。
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10月の乙女高原 7

2023年12月23日 | 乙女高原
6月から始めた訪花昆虫の調査も10月7日でいよいよ最後になりました。初めに結果を出しましょう。8月までどんどん増えてピークになり、その後どんどんと減っていきました。7月にはヨツバヒヨドリが多く、8月になるとヤマハギ、ノハラアザミ、シラヤマギクなどが増えました。9月になるとアキノキリンソウが過半数になるという変化を示し、いわば「月替わり」に変化しました。




 これに対応した昆虫の推移を見てみます。昆虫の方も大きく変化し、7月まではハエアブが多く、8月になるとハエアブも多いもののマルハナバチが増えました。9月になると甲虫が増えました。これは花の変化に応じて、その月に多かった花にくる昆虫の数が変化するからです。


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10月の乙女高原 6

2023年12月22日 | 乙女高原


今回は少し少人数になりました。

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