自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

江夏 豊

2018年04月30日 | ことば
私は江夏を好きでなかった。ふてぶてしいし、あのお腹はちゃんと練習していたとは思えないし、実際、ドラッグの不祥事もあった。「江夏の21球」はすごいと認めるが、しかしそれでも、あるいはそれだから余計に、スポーツマンの持つ爽やかさとは程遠い存在と感じていた。
 その点、衣笠は好きだった。デッドボールを投げた投手にクレームをいうこともなく、骨折してもなお次の試合に出る。独特の風貌や、筋肉質の体型、身のこなしも魅力的だと感じてきた。
 衣笠がいた広島は長いあいだ弱いチームだった。赤ヘル軍団と呼ばれる以前は常に下位だった。そういうチームには当然いつかない選手がいるものだ。私が子供の頃、田舎ではテレビは巨人戦しか放映しなかったので、田舎育ちの私は巨人以外のチームのことは「巨人の相手」でしか見なかった。たまに出てきて負けることの多い広島は魅力ないチームに思えた。衣笠はその弱小チームにずっといて、よそに移ることなく貫き、そして強くし、優勝までした。
 私は衣笠のそういう現役時代にも好感を持ったが、解説者になってからの、柔らかく、決してケチをつけない語りにも魅力を感じた。語ることにはいわゆる精神論もあり、それを批判することは簡単だが、衣笠の場合は体験に裏付けられていたから、言葉に重みがあった。
 風貌から分かるように衣笠の父親はアフリカ系アメリカ人である。私より少し上だから、時代を考えれば、差別がなかったはずはない。そういうことに負けなかったことも素晴らしいと感じていた。そうした苦労、人生への深い思慮が、あの語り口を生んだのだろうと、衣笠を「ただならぬ人だ」と思ってきた。
 4月29日、その衣笠の訃報を聞いた。そしてNHKの番組で追悼をしていた。そこに他ならぬあの江夏が出てきたのだ。これまで聞いてきた江夏のふてぶてしい言葉とは違うので「おや?」と思った。スポーツ選手の言葉は上滑りすることがあり、江夏にもそういう印象を持っていた。ところが衣笠のことを語る江夏は違っていた。問いかけにすぐには答えず、心に沸く思いが、正しく表現できる言葉を選んでいるようだった。
 江夏は冒頭で、訃報を聞いて「思い切り泣いた」と言った。素直すぎる言葉に「これが江夏の言葉か」と虚をつかれた思いだった。「プロ野球界にとって衣笠の存在とは」という問いかけには、やはり熟考しながら、「記録ではなく、存在そのもの」と言った。そして、自分たちは「やられたらやり返せ、威嚇せよと教えられ、そうしてきた。しかし衣笠は全くそういうことはなかった。あんな男はこれからも出てくるかどうか」と語った。思いをそれ以上でも、それ以下でもない表現で言葉にしていることに感心した。それは私にとって驚きだった。
 だが、この時の江夏が私を驚かせたのはそれにとどまらなかった。あの「江夏の21球」の時、ベンチがリリーフの練習をさせたので、江夏が心穏やかでなかった。その時、衣笠が「お前は自分を信じて前を見て投げろ」と言ってくれた、というエピソードは何度か聞いていた。だが、江夏はそれとは全く違うことを言ったのだ。
「そう言って衣笠はポジションに戻るときにニコッと笑ったんだけど、その時あいつの歯がきれいだと思った。なんであそこでそんなことを感じたのかわからない」
 これはどういう言葉だ。「あの言葉で自分は冷静になれた」とか「そのおかげで勝てた」という言葉が、期待され、納得もされるものであろう。だが、江夏はそうではなく、チームメートの歯のきれいさを語ったのだ。それは訳がわからず、全く脈絡もない言葉だ。あの、球場全体が固唾を吞み、最高度の緊張を要する時に、人はそういうことを思うものなのだろうか。その意外さに心にズシンと残った。
 余計なことだが、衣笠が呑んべえで江夏が下戸で、酔った衣笠を宿まで連れ帰ったというのも全く意外だった。

 あの江夏がいつの間にか、謙虚で、素直で、練れた老人になっていた。人はわからない。
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地を縛る?

2018年04月29日 | 植物 plants
4月16日に津田塾大学のキャンパスを歩いていたら、黄色い花がありました。明るい草のあまり生えていないところでした。これはジシバリで葉はとても小さく、卓球のラケットのような形をしています。地上茎を伸ばすからか、地面を縛るようだということで「ジシバリ」です。葉の大きさに対して花が大きいのがアンバランスでかわいい感じがします。


ジシバリ

もう少し歩いてグランドの近くに行ったら、同じ仲間のオオジシバリがありました。実は花の大きさはさほど違わなくて、ジシバリの大きいのとオオジシバリの小さいのは違わないかもしれないほどです。はっきり違うのは葉で、ラケットのようではなくもっと細長く、スノーシューのようです。そして大きいものになると葉の縁が張り出しています。


オオジシバリ

どちらも直射日光が当たるような場所に生え、草が生い茂ったりすると消えてしまうようです。
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ホウチャクソウ

2018年04月28日 | 玉川上水
これも三鷹駅に近いところです。玉川上水沿いの道でホウチャクソウを見つけました。チゴユリなどの仲間で下向きの清楚な花をつけます。大抵は2つが寄り添うように咲き、先端部が緑色なのがしゃれていると思います。


ホウチャクソウ
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オニグルミ

2018年04月27日 | 玉川上水
玉川上水の三鷹駅に近い部分を歩いていたら、オニグルミの花がありました。雌花で、メスべの子房と柱頭がわかります。ビヤだるみたいなのが子房で、赤く2つに別れているのが柱頭です。





このビヤだるが太って大きくなるとクルミになります。三鷹の駅が近く車がビュンビュン走っているような場所でした。
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チゴユリ

2018年04月26日 | 玉川上水
4月18日に玉川上水を歩いていてチゴユリを見つけました。下向きに咲く白い花は清楚で、葉もすっきりとしていて、「余計なものは一切なし」という潔さを感じます。山の花ですが、玉川上水の林の状態が良いところで見かけます。


チゴユリ

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ヒメスミレ

2018年04月25日 | 植物 plants

ヒメスミレ


ヒメスミレの花

小平霊園が近いので時々散歩します。空が広くて気持ちがいいです。4月10日に小さなスミレを見つけたので見るとスミレ(ただ「スミレ」というスミレがあります)ではないようです。よくあるタチツボスミレは葉がハート型で、花は薄紫色ですが、スミレは葉が細長く、花が濃い紫色なので全く違います。それに生えているのがタチツボスミレは林の下や縁ですが、スミレは明るい芝生などです。霊園は明るいのでスミレはよく見ていましたが、咲くのは4月下旬から5月上旬と記憶しているので、その意味でも違うと思いました。葉が細長く、花も濃い紫色ですが、スミレよりはよほど小さいものでした。地面に顔をつけんばかりに近づいて見るとスミレの葉と違い葉柄に翼がなく、確かに違い、「あ、ヒメスミレだ」とわかりました。
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大ちゃん

2018年04月24日 | 家族


大地くんは2歳。言葉も覚えて、自分の言いたいことはかなり話せるようになりました。なんでも5歳のお兄ちゃんと同じにならないと機嫌が悪くなります。この頃はあやとりができるようになりました。
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モズ

2018年04月23日 | 動物 animals
2018年4月10日、麻布大学のキャンパスでモズの死体を見つけました。状態がよかったので、骨格標本を作ることにしました。


モズの死体


骨格標本

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裏高尾8

2018年04月22日 | 自然 nature


この写真の中央に見える尾根が少しくぼんで見えます。ここに登山道があり、そこから手前にジグザグの道があります。そこを降りてきて振り返って撮影しました。初々しい新緑が爽やかでした。案内してくださった人のグループはこの辺りの国有林がスギ、ヒノキの暗い人工林になりすぎたので、落葉樹を植えて明るい林に戻そうと活動をしているそうです。林を育てるというのは気の長いことで、成果が上がるのも時間がかかります。それを粘り強く進めておられます。
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裏高尾7

2018年04月21日 | 自然 nature
山道を歩いていると、ツボスミレもありました。またタカオスミレがたくさんありましたが、これらは「そのうち」と思っているうちに撮影しそびれてしまいました。タカオスミレがたくさんあるところのつながりに、見かけないスミレを見つけました。タカオスミレは葉が紫色なので他のスミレとはすぐ違いがわかります。このスミレは花は白で側弁の内側に毛が生えています。タチツボスミレなどよりはスラリと背が高い。葉は細長い心形です。よく見てこれはタカオスミレに近いもので、葉が紫がかっていないだけではないかと思いました。


ヒカゲスミレ


ヒカゲスミレ

あとで調べてみたら、ヒカゲスミレでした。私の直感は当たっていたのですが、タカオスミレの緑の葉のタイプではなくむしろ逆で、ヒカゲスミレのうち葉が紫色のものがタカオスミレという品種なのだということでした。

というわけで、いろいろなスミレに出会い、ヒカゲスミレというこれまで見たことのないスミレにも出会いました。「スミレ街道」という名にふさわしい場所だと思いました。この日歩いたのはだいたいが林の中でしたから、少し明るい道端などにはアカネスミレなどもあるものと思います。


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