このことについて2つのことを考えます。一つはヒトというサルの1種の行動・心理からして、一人暮らしというのがどういう意味を持つかということです。もちろんそれは異常なことで、精神には悪影響があるはずです。
もう一つはその背景で、これには2つのことが含まれます。一つは、この事実は個人の選択によるのだが、それは、個人がそれを望んだのだろうかということ、もう一つは、それを実現したのは政治のせいなのだろうかということです。
就職や結婚という人生の節目に立った時、人はさまざまな要因を考えた一つの決断をします。この時代の結婚では見合い結婚から恋愛結婚(という言葉自体が死語になったが)に移行しました。結婚の形態はこのグラフの数字には影響しないはずだから、一人暮らしが増えたのは結婚しない人が増えたのかもしれません。しかしグラフに見るような大変化は考えにくいです。おそらく高齢夫婦の死別ということが多いと思われますから、こちらは個人の選択によるものではありません。つまり個人の選択ということでは単独生活者の増加は部分的にしか説明できません。
では政治による産業など生活に関わる社会構造で、単独生活を増加させるものがあったのでしょうか。人口の年集中はこの時代より前に起きたことです。そうなると、大半が都市生活者になって何が起きたかです。戦後に工業化を進めるために人口を都市に集中させたのは1970年代くらいまでにほぼ完了しました。そして核家族化が進みました。それらが完了した後に起きたのが単独化です。都市生活が単独化を起こしたというのはありそうですが、でも具体的にはどういうことか私にはわかりません。コンビニがふえたとか、スマホが普及したなどのこともこの時代に起きたことですが、それは単独化の原因というより、結果という気がします。
データは極めて明瞭ですが、それが実態としてどういうことが起きたのかも、なぜそういうことが起きたかも、団塊の世代の目にははっきりしません。この国の将来は本当に心配です。