3月27日、小金井の武蔵野公園で観察会をし、午後、室内で講義と実習をしました。
はじめに武蔵野公園と隣接する野川公園に行って自然観察園の植物を観察することにしました。ただしそこに直行したのではなく、歩きながら解説をしました。ハコベがあったので、花弁が10枚に見えるけど実は5枚で、1枚が深く切れ込んでいるという説明をしてルーペで見てもらったりました。
ハコベ
ハコベの花の説明(安田)
カラスノエンドウもあったので、マメ科の花の構造を説明し、複葉であることを説明しました。
複葉の説明の流れで、スイバとタンポポがあったので、葉脈と葉の切れ込みの説明をし、質問しました。
「タンポポは英語で何て言いますか?」
「ダンデライオン」
「そうですね、ユーミンの歌にありますね。どういう意味ですか?」
「・・・」
「dandelionはフランス語から来ていてDents de lionです。dentsは?」
「歯だ。dentistというもん」
「そうですね。deは英語のofですから・・・」
「ライオンの歯」
「そうです。このギザギザがライオンの歯みたいだということです。そう聞けばなるほどと思いますが、この植物を見て花ではなく葉に注目するというところが面白いですね。ユリを漢字で書くと?」
「百合」
「はい、何で百と合ですか?」
「・・・」
ボードに「百合の根」を描きました。
「日本語のユリは花がユラユラと揺れるということです。見た目のことから名付けた訳です。でも中国では食べる部分に注目した。地下部がたくさん重なっているということに注目した訳です。中国文化は動物でも植物でも食べられるかどうかが重要だと考えます。文化によって着目点が違うということですね。」
という具合に横道に逸れるので、時間を気にした人が
「この調子だと入り口に行くまでに11時になってしまって戻れなくなります」
と言いましたが、そうかなと思いました。観察会で急ぐ必要はなくて、忙しい人は参加しなければいいのですから。
タチツボスミレ(安田)
オオイヌノフグリ(安田)
参加者
観察園は湿地で板の歩道がありました。ニリンソウ、ザゼンソウ、クリンソウなどがありました。
クリンソウ(安田)
ニリンソウのいい群落があったので、
「ニリンというけど、花が二つあることはあまりなくて、一つの花が咲いている時に、付け根のほうに次の花が待っていることが多いです。これが丸くてかわいいです。お姉さんと妹という感じですね。アネモネの仲間です」
ニリンソウ群落
ニリンソウの説明(安田)
「これは何ですか?」
「はい、セツブンソウです」
「これを見てください。ニリンソウとセツブンソウの葉は基本的には5枚からできていますが、セツブンソウの方は切れ込みが深いんですね」
ニリンソウとセツブンソウの葉(安田)
「ほんとだ、そういうわけか」
「もう一つ見て欲しいのは、同じ緑色の葉と言っても、緑が違うことです。ほらセツブンソウの方は水色が入ってるんですよ。こういうのはスケッチする時、難しくて、薄く水色を重ねます」
セツブンソウ(安田)
「はあ、確かにそうだ。目の付け所が違うな」
といった具合で雑談しながら歩きました。
その後、武蔵野公園の方に行って道路予定地で説明をしてもらいました。
道路予定地の説明を聞く
それから川沿いを歩くなどしてお昼にしました。陽がさして気持ちの良い天気になりました。
サクラの下でお弁当(安田)
その前に少し話をしました。
「公園ってparkですよね。parkは駐車場でしょう?何で?」
「そうか・・・」
「昔のイギリスには街角に公共の広場があって馬をとめました。それがparkです。そういう場所には木が生えていることが多く、そういう景観をpark-like view と言います。この景観はサバンナの景観であり、林を出たホモサピエンスが長い時間を過ごした場所なのでDNAにこういう景観をこのむように刷り込まれているという説があります。日本庭園もそうだと言われます。
近代化を進めた明治政府はこのparkを作りましたが、parkをどう訳すかは議論があったそうです。庭はあったのだが、それは採用せず、これをpublic spaceという意味で公園と訳した。歴史を考えればイギリス人は馬をとめる場所の発展形とみなしたが、日本では国が用意した公共の空間としてスタートしたという違いがあります。
サバンナの景観だから木はあっても低木などはありません。それが快適だからですが、日本の林はこうではありません。だから下刈りをして管理します。快適ではありますが、こういう場所ではさっき見たようなニリンソウなどはなく、日本の林に多い、ササや低木もありません。だから自然好きからするとあまり面白くなく、観察会向きではないわけです(笑)」
安田さんが武蔵野公園を生物多様性が高い場所にしようという声があるという話をしましたが、私は、話はそう単純ではないことを話しました。本当に日本の多様な自然を戻すなら不快な藪があって昆虫がたくさんいることを覚悟しないといけません、果たしてそういう公園が多数派に支持されるでしょうか。その理解を得るのは広範な努力、教育が不可欠です。それだけの覚悟がいります。その覚悟なしに、言葉だけで生物多様性の復元というのはあやういと思います。それでイエローストーン国立公園の「オオカミお帰りなさい計画」の話をしましたが、長くなるのでここでは省略します。
記念撮影(安田)
写真は安田さん撮影のものも使わせてもらいました。