自然日誌 たかつき

自然についての問わず語りです。

5月を振り返る

2019年05月31日 | その他 others
水曜日は武蔵野美大講義
いくつかの登校中の論文が返ってきたので、その修正などに格闘し、東大のシカ標本整理が棚上げになってる。暑くなってきた。花マップの「春の花」の調査は今月で最後。今月は編集の準備で、解説文を書き、野草のイラストを描いた。先月現地実習をした高尾山のシカ痕跡調査の報告が届き始める。

5/4 「モンゴル祭」で講演
5/7 麻布大学獣医学部獣医学科で講義
5/11 博物館企画展示入れ替え。「3D模型」展が始まる。
5/12 玉川上水観察会
5/18 丹沢調査
5/21 玉川上水花マップ調査(砂川)
5/23 アファンの森調査
5/24 麻布大学いのちの博物館学生に解説
5/25 玉川上水花マップ調査(境)
5/27 投稿中の丹沢シカ食性論文、査読結果を返却
5/28 国立東京博物館に「東寺」展を見に行く
5/29 玉川上水糞虫トラップ設置
5/30 玉川上水糞虫トラップ回収、東大和南高でフクロウ実習 こちら
 朝日新聞に花マップが紹介される。 こちら
5.31 青梅で糞虫回収、津田塾大学で調査

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

花マップ

2019年05月30日 | 玉川上水
花マップ活動が朝日新聞に紹介されました。

こちら


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丹沢 12

2019年05月29日 | 研究など research
2019年5月18日に丹沢の鍋割山に行きました。目的はシカの糞を採集してもらって分析したのですが、現地を見ていなかったので、シカの影響を自分の目で確認することです。険しくて休み休み登りましたが、標高1000メートルくらいのところでタヌキのタメ糞を見つけました。
 

タヌキのため糞

見ると、明らかにちょっと違うものがあります。シカの毛と思われるものが見えるものや、何かの骨が見えるものもあります。


色々な糞がある

 そうなると拾わないではいられません。常備しているポリ袋と割り箸を取り出して拾うことにしました。


糞を拾う

 5個を持ち帰って水洗したところ、確かにシカの毛が入ったものがあり、ネズミと思われる細かい毛がたくさん入ったものもありました。骨はどうやらカエルのもののようで、ネズミやヒミズなどとは違うものでした。一番頻度が高かったのは甲虫で一部にはオサムシとわかるものがありました。


丹沢のタヌキの糞からの検出物

果実や種子はほとんどなく、冬から春にかけての糞は動物中心のようでした。東京西部では冬でも果実が多く、早春の一時期は果実と哺乳類・鳥類が出ますが、春になればまた果実が多くなります。そう思うと、丹沢湖では、もしかしたらシカが低木を食べてしまってタヌキが食べる果実が乏しくなっているということもあるのかなと思いました。調べたのが5個ですからなんとも言えませんが、ちょっと興味をそそられました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丹沢 11

2019年05月28日 | 研究など research
登りの険しい登山道に比べて、一度尾根に登ってしまえばなだらかな道になり、現金なもので気持ちも晴れやかになりました。


尾根沿いの道

そんな道沿いの一角でお昼にし、気持ち良い涼風を楽しみました。鍋割山というピークに近づくにつれて人が多くなりました。土曜日だったということもあるでしょうが、それにしても山でこんなに人にあったのは高尾山くらいのものです。特に若い人が多くて珍しいなと思いました。その鍋割山に着くと、なんと山小屋に長蛇の列です。


山小屋の前で並ぶ登山者

山道を歩きながら梶谷さんに聞いたところ
「鍋割の鍋にかけて、ここの鍋焼きうどんが美味しいというのがテレビなどで紹介されたものだから、うどんを目当てに登る人が増えたんですよ」
ということでした。

 お腹がいっぱいになればいいという無粋な私にはグルメというのはどうも理解できませんが、美味しいもののためなら険しい山もなんのそのという人がいるということに驚きました。このときは28人が並んでいたとのことで、時々売り切れということもあるそうで、自分の前で最後というときはなんとも悔しいだろうなと想像しました。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丹沢 10

2019年05月27日 | 研究など research
シカが嫌いで食べ残しているものに、バイケイソウなどのほか次のようなものがありました。


フタリシズカ


ナガバヤブマオ


ミミガタテンナンショウ

この3つは金華山にもよくあります。


同じテンナンショウですが、特定できません。なんとかマムシグサというのだと思います。


オオバノイノモトソウ。奥多摩にもよくあります。


マツカゼソウ これも奥多摩によくあります。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ill

2019年05月26日 | ことば
イギリスのメイ首相が辞任表明をした。「強い女」の印象があり、サッチャーを連想させるところがあったが、流石に比較するには力量が違いすぎたことは否めない。正確には覚えていないが、「私が辞める無念ではなく、愛するこの国のために尽力できたことに感謝してのことだ」という意味の言葉を語った。英語だとthis country I loveとなり、最後の最後に「私の愛する」という言葉が来るから感動的でもあり、ご本人も感情を抑えられなかったようだ。
 ところで「無念」というのが「ill will」という言葉だった。私たちは学校でillは病気だと教わった。私の英会話経験は豊富とはいえないが、illを病気以外で聞いたことはない。こういう時に、英語のillというのは、病気と訳して大体はよいが、その範囲はちょっと違うのだということに気づく。
 私は鳥取で育ったから、「しょっぱい」という言葉は使ったことがなく、「からい」というものだと思っていた。この「からい」は別の使い方があり、いたずらっ子を「この子はからい」と言った。これは正確には「しょうがからい」を略した言い方だが、「性格がきつい」ということからくる。そうすると、塩からいの「からい」と「性がからい」の「からい」の共通の意味として、平常でないこと、並々ならぬこと、穏やかざることなどを表現する言葉だということになる。
 「こわい」も同様である。こわいは普通は「怖い」の意味だが、「髪がこわい」というし、硬いご飯を「おこわ」というが、あれは「こわめし」ということで、漢字では「強飯」と書く。ということは「こわい」はなめらか、やわらか、おだやかなどでないこと、心が恐ろしいと感じるようなこと、硬い髪、硬いご飯を示す言葉だということがわかる。
 九州の言葉で「太か」というのも同様で、縦横の比率で「太い」というだけでなく、大きいこと、立派なことという意味で「太か家」とか「太か男」などと言うが、これなども、元々の太いと言う言葉にはそう言う意味があったからだと察する材料になる。
 さて、illだが、メイ首相が愛する母国に対して首相として最善を尽くしたが、力不足、あるいは政治状況の不運で不本意にも辞職せざるを得なくなった。それが無念でないはずはないが、誇りと、本当に母国のためになろうとしたことの締めくくりとして、無念とは言いたくなく、自分がこの英国の首相という重責を担うという人生を思えば、むしろ誇らしいことだと言って辞めたかったのであろう。その「無念」と言うのがillということで、前向きとか建設的などのポジティブな意味の反対のことをillというのであろう。それが健康の場合、病気なのであろう。
 以上は英語の辞書を調べてのことではなく、あるいは見当違いかもしれないが、言葉好きがつれづれに想像した。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丹沢 9

2019年05月25日 | 研究など research
丹沢に行ってシカと植物のことがいろいろ見えてきました。要するにササに代表される大型の低木や草本は激減し、一部のトゲがある植物や有毒な植物などが生き残っているということです。そうした中で草丈の低いイネ科などは再生力があるので、相対的には有力な存在になっており、それがシカの食物にもなっているということです。
 そうしたシカの影響下で、中型大型の植物が減った割に生き延びているのは小型の草本類で、この時期に花を咲かせるものに次のようなものがありました。



ハコネシラカネソウ

 私はこの花を知りませんでした。パッと見たときはヒメイチゲかなと思いましたが、花びらが丸いので違うのはわかりました。何れにしてもAnemone属だろうと思いました。帰って図鑑を見ましたが、そこにはありません。その近くをパラパラ見ていたら、別の属でシラカネソウだということがわかりました。実に繊細で素晴らしくきれいな花でした。


ワチガイソウ


ハコベの1種

ハコベの仲間は間違いないのですが、特定できませんでした。高さは15cmくらいありました。


マルバスミレ


シラバナノヘビイチゴ

ストロンという地上茎が這って横に横にと伸びます。オランダイチゴなどと同じFragariaの仲間で、小さいけどもよく似たイチゴがなります。

思えば白くて小さな花が多く、これらはシカの口を逃れてなんとか生き延びています。頑張れ、小さき妖精たち!

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丹沢 8

2019年05月24日 | 研究など research
尾根では強い風などで樹木が倒れることが多い。もともと乾燥しやすいということもある。そのことから小さな草地ができがちだが、丹沢の場合はそれがシカによって助長されていることもあるし、出現した小草地がシカの良い餌場になっているようだ。
 そういう場所に日本庭園のような景観があり、低木が盆栽のように見える。


草地に盆栽状のメギがある


これはメギで、通常であれば2メートルくらいになるのだが、シカが繰り返し食べることで盆栽状になっている。メギは枝に棘を持っているので、シカは食べにくいのだが、どうも葉が美味しいらしく、痛いのを我慢して食べるようだ。若い新芽や新しい枝はあまり痛くないようで、出てきたところをチョンチョンと食べる結果、盆栽のようになる。なぜ「見たような」ことを言うかというと、シカの多い金華山でまったく同じことが観察されるからだ。


金華山のメギ


 メギは地味な花をつける。花を舐めると甘い味がする。そのため金華山ではサルが好んで食べる。


メギの花

 トゲと言えばこういう草地や森林ギャップに名前はわからないがアザミがあった。うっかり座ろうものならお尻がえらいことになる。


アザミの株

 
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丹沢 7

2019年05月23日 | 研究など research
高いところにブナ林があり、非常に特殊化した構造が単純になっていることがよくわかりました。尾根部には木がないところもあり、日差しが良いので、草本類が多くなります。林の中で木が倒れたりしてできる隙間(森林ギャプという)があると緑が濃くなります。こういう場所も普通であれば低木類やつる植物が多いのですが、ここではイネ科やスゲが優占していました。


森林ギャップ

 またギャップというには木がない場所もあり、小さな草原のようになっています。こういうところもイネ科が多く、シカがいかにも好みそうな場所です。実際、探すとシカの糞がありました。


「小さな草地」

 丹沢のシカ糞を分析しましたが、現地を見ていなかったので、どうもおかしいと感じていたのは、普通植物が豊富な中腹ではろくなものを食べていないのに、高地のほうがイネ科が多いのです。


丹沢東側の塔ノ岳の中腹と高地の春のシカ糞の組成。稈というのはイネ科の茎のこと。中腹では稈が多かったほか、ササが少しあった。これに対して高地ではイネ科が25%くらいもあり、そのほか繊維と稈も多かった。この結果は、シカは中腹では植物の葉を全部足しても20%ほどしか食べず、消化の悪い稈などを食べているが、高地ではイネ科を中心に葉を30%ほどは食べていることを示している。もっとも高地でも繊維が多いから、他の場所に比べれば葉が極端に少ない。

 高地や尾根は概して植物が貧弱なので意外感がありました。それで糞を送ってくれたブナ党の梶谷さんに質問したら、尾根のほうが植物が多いということで「そうかなあ」と思っていたのですが、それが現地を見てとても納得ができました。元々はそうではなかったはずで、シカの影響がなかった頃は中腹のほうがササや低木が豊富でシカには好適な環境だったはずで、シカ自身にとって逆転現象が起きたものと思われます。

 やはり「現地を見るに如くはなし」です。
コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

丹沢 6

2019年05月22日 | 研究など research
丹沢のブナ林は低木も大型草本もないと書いたのですが、正確ではありません。全体はそうなのですが、場所によってバイケイソウがあり、この写真のように大量にあることもありました。バイケイソウはシカが食べないので、食べ残されています。シカの多い金華山島では同じ仲間のコバイケイソウが同じように生えています。


バイケイソウ

それからマルバダケブキもありました。この写真はほとんど何も植物がないところにマルバダケブキだけが目立って残っていることをよく示しています。光条件や水条件は同じので、茶色の中に一部の緑だけがあるというのは異様なことです。これもシカが食べ残したときに見られる特異な景観です。本来ならばこのくらいの大きさの様々な草本が生えているのに、他のものはシカに食べられてしまったのです。


ブナ林内に点々と生き延びるマルバダケブキ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする