駒子の備忘録

観劇記と乱読日記、愛蔵コミック・コラムなどなど

宝塚歌劇花組『カリスタの海に抱かれて/宝塚幻想曲』

2015年05月25日 | 観劇記/タイトルか行
 宝塚大劇場、2015年3月16日マチネ、4月4日マチネ。
 東京宝塚劇場、5月19日ソワレ。

 地中海で最も美しいとされる島、カリスタ。フランスの統治下にあるこの島に、新任の司令官が降り立った。その男の名は、シャルル・ヴィルヌーブ・ドゥ・リベルタ(明日海りお)。カリスタ島に生まれながらもある事情によってフランスで育ち、時を経て再びこの島に戻ってきたのだった。その日、カリスタでは「アルドの命日」を迎えていた。28年前、フランスの奴隷のように働かされていた島民たちを救おうとアルド(高翔みず希)という男が独立運動を起こし、処刑された日だった。アルドが処刑された日に生を受けたロベルト・ゴルジ(芹香斗亜)はカリスタ島独立を目指すグループのリーダーとなって、フランス軍に抵抗を続けていたが…
 作/大石静、演出/石田昌也、作曲・編曲/手島恭子。

 初見が初日開いてわりとすぐで事前にあまりいろいろな評判を聞いていなかったのと、わりとハードルを下げ気味にして観に行ったためか、意外や私は楽しく観てしまいました。その後も間遠に観ていることもあり、もちろんいろいろ難点があるのは感じつつも、ウン特には悪くないよね!という感想で、早々にこの回数で見納める私です。
 きっとこれ以上観ると粗が目立ってこんな私でもイライラすると思うし。今これ以上この組にかけるお金も時間も情熱も今の私にはないんだな、というのもあります。
 そう、すべては残念ながら愛とか情熱の差だと思います。私が『美しき生涯』についてあんなにあんなに語ったときとの差はそれです。とりあえず今確実に言えることは、大石先生にはもうこれ以上、宝塚歌劇の脚本を依頼する必要はない、ということです。大金を払って(イヤ原稿料がいくらなのかとか相場や座付き作家への給料に比べて高いのかどうかとか知りませんが)ネームバリューを買っているつもりなのかもしれませんが、ももええやろ。私は映像の大石作品はもう少し楽しめてきた記憶があるのですが(もともとは舞台出身の作家ですが、その頃のお仕事を私は知りません)、こと宝塚歌劇に関しては彼女はファンかもしれませんが書いた脚本は素人の域を出ていないのではないかと思います。言いすぎかもしれませんけど。あと単純に古い。なら新人を自前で育成した方がいいですよ劇団さん、ずっとそうしてきたのだから。
 仮にもプロがよくもまああんなに臆面もなく露骨で芸のない説明台詞を書くよ…と絶句させられるのは、もういいです。No Thank You。それだけは劇団に投書しておこうかな…それくらいの情熱と義務感はあるんですよ宝塚歌劇に対して、私はね。迷惑でもね。でも今の花組に対してはわりとライトなファンなのですすみません。
 なので、細かいことを考えずに観られれば、なかなか楽しい点も多い作品だと私は思いました。
 まず、セリ上がってきて振り返ってライト当てられて歌い出す主人公というベタさがとても似合う、みりおカルロの爽やかさがたまりません。とてもわかりやすい。
 今さら歯でも矯正しているのか舌でも痛めたかまさか何かで麻痺が出たとかじゃないでしょうねってくらい口が回ってない(台詞を噛む、というレベルではない)のが心配ではありますが。というか台詞が聞き取れないこと甚だしいのがけっこう問題だと思いますが。でも歌詞だと大丈夫なんですよね。
 歌は朗々としていて安定の歌唱力、聞いていて気持ちがいいです。故郷に帰ってきて嬉しいのね、うんうんわかるわがんばってね、と素直に思える輝きがあります。
 話が進んでくると、えっフランスでどういう育ち方したの?とかどう出世してどう邪魔されると今この歳でこの立場で赴任して来るの?とかそういったもろもろに対して屈託なさすぎないこの人?とか28歳で初めて愛したとか言ってるけど大丈夫この男?とかいろいろいろいろ疑問が沸いて出はするのですが、とりあえず全力でスルーすることにすると、なんとかならないこともないのです。すごいなあみりおのDT力!!!
 そしてかのちゃんアリシアがまた私には可愛らしいヒロインに見えました。『エリザベート』エトワールではさんざん叩かれましたが(そしてそれも仕方がないという残念な出来だったと思っていますが)、そもそもはもっときちんと歌えるし芝居ができる娘役さんという印象を持っていたので、安心して観ていられました。普通に可愛かったしまあまあ小さかったし。
 何より脚本に書かれたアリシアに私は好感を持ちました。これは大石先生の古さがいい方に出た例だと思います。おてんばで男勝りで、親が決めた婚約者のことはただの幼なじみ、仲間としてしか見ていない、元気な少女。でも女の子らしいキラキラしたものへの憧れもあって、綺麗なドレスを着てみたいと思っていたり、素敵な青年とワルツを踊ってみたいという思いを素直に口に出したりもする。突然現われたカルロによって彼女の視界は大きく開かれ、それが恋に変わるのに時間はかからない…すごく自然でスムーズだと思いました。
 わがままで勝手だ、と引っかかる向きがあるのもわからなくはない、かな。でも私は、こういう勝気で男勝りなキャラクターって女の子っぽいことは苦手とか嫌いとか、下手すると興味あるくせにない振りをするっていう嫌らしいパターンがほとんどだと思うのに、そうしなかったことに本当に感心し感動したのです。素直に、可愛いヒロインだな、いいな、と思えました。
 カルロの乱入にいきりたつ島の男たちを抑えて、彼の話を聞き、解放を促し、彼を送り届けて、ドレスをもらう約束をして…「あんたの前でだけ、着るよ」なんて、なかなかの殺し文句だと思います。恥ずかしげもなく展開されるフォーリン・ラブ場面に、そうそう、そうこなくっちゃね!と身悶えするのも宝塚観劇の醍醐味のひとつでしょう。イヤこれが贔屓組でやられると気恥ずかしすぎて、やれリアリティがないとか芸がないとか品がないとか騒ぐ自分が目に浮かびますよ? でもホラ申し訳ないけど私は今、この組にそこまで肩入れしていないのでした。だからフラットに観ていられたのだと思います。
 で、ロベルトはキャラぶれしてるんじゃなかろうか、いろいろ背負わせてるわりに書かれなさすぎというかしどころなさすぎというかではなかろうか、とか心配したり、セルジオ(瀬戸かずや)が馬鹿っぽすぎないか、俺たちのあきらに何やらすんねん、でも完全復帰のじゅりあ様とイチャイチャしてるのがめでたいからいいや、とかほだされたり、まよちゃんやっぱ上手いよな、しかし娘役陣の十把ひとからげ感はひどいな、とか憤ったり、アニータ(美穂圭子)様怖すぎるよ、その思いはもはや島の呪いレベルだよ、とか震えているうちに、組替えで来たちなつベルトラム(鳳月杏)がいい仕事して結末を怒涛のハッピーエンドに持っていくので、わあよかったよかった無血革命って素晴らしいおめでとう!と能天気に拍手できてしまったのでした。
 ナポレオン(柚香光)の芝居はアレでいいのかとか、引っかからなくはないんですけれどね。
 初見時はやはり、そうは言ってもロベルトの報われなさすぎ感がかわいそうに思えたり、ロベルトに呪いをかけるかのようにして島を背負わせるアニータってホントひどくないかと憤ったりしたのですが、東京で観たときには同じ台詞でもそこまでの悲壮感や絶望感を感じず、ある種の前向き感を勝手にかもしれませんが感じたので、やはり楽しく見終えました。
 もっと細部に留意して丁寧に繊細に作ってくれたら、よりストレスなく観られただろう…とは思いますが、別に再演されるような演目ではないと思うのでまあ及第点じゃない? もういいや、って感じでしょうか。全ツとかにも持っていかなくていいですからねー。
 というワケで新トップコンビが生まれ綺麗に男役1,2,3体制が組まれた新生花組の未来に、期待しています。ここにあきらまよちなつがいてマイティ以下がいて、いいまとまりを見せていると思います。楽しみ、楽しみ! …難儀な重いファンとしては、脳天気に楽しめる組のひとつくらい持っていたいものです…

 レヴューロマン、読みは「タカラヅカファンタジア」の作・演出は稲葉太地。
 台湾公演も見越して春夏秋冬をテーマにジャポネスクな作り、若干主要スターを働かせすぎでみんな大変痩せちゃうし怪我してるし倒れちゃうよってことが心配な以外は、とても楽しいショーでした。ドコドン! 癖になりますね!!
 ところで浪の花はどうオチてるの?とか、夜の華場面こそザッツ花組のはずなのにみりおだとやっぱちょっとなあ…とか、アオイハナ楽しいね稲葉くん次は月組でサッカーとかやって!とか、黒影場面はかのちゃんじゃなく城妃美伶を使ってあげればいいのにとか、さくらさくらの黒燕尾は本当に素晴らしいね!とか、わあわあ楽しんでいるうちに終わってしまうショーでした。
 キキちゃんは私はノー興味ですが華もあるし押し出しもいいし立派な二番手ぶりで頼もしい限り。カレーちゃんはスターオーラは素晴らしいしダンスはいいんだから、歌と演技の勉強をさせて上手く育ててくださいお願いします、って感じ。でもあのどこからでも目を引く美貌は本当に素晴らしいんだから、こちらもなんの問題もない三番手っぷりでした。この体制でいくと決めたならこれでいけばいいのです、決めないのが何より悪い。
 そしてちなつはどこにいても目立つなあ! 月だと私はみやちゃんとかゆりちゃんとか珠城さんを見るのに忙しくてシンメの位置とかに置かれてると見られなくてホント困ったので、今とても見やすくていい…というのもありますが、超絶スタイルとダンスの上手さはやはり万人の目を引きますよね。合流前のバウ主演発表には逆風があったかと思いますが、今は組ファンも認めているんゃないかなー。いい方に進むといいなと思っています。
 台湾でヒューヒュー言うのが楽しみです!! まずは梅芸ね。人数減る分、人海戦術作戦はやめて、生徒をバランスよく使ってそれぞれ目立たせてあげつつ、主要メンバーを上手く休ませてあげてほしいです。タカラジェンヌはよく鍛えられたアスリートのような一面もあるけれど、あくまで年若いお嬢さんたちなんですからね。無理させすぎるのは厳禁ですよ。
 ひらによろしくお願い申し上げますです!




コメント (4)
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