■海南島における日本の侵略犯罪を明らかにする朝鮮人として
今回のことは、大阪人権博物館が、2004年夏の企画展示「海南島とアジア太平洋戦争――占領下で何がおこったか――」を、前年末から公示していながら、開会直前に、「中止」したことに端を発している。2004年夏の企画展示は、関係諸機関で承認され予算案も通過していた。
侵略戦争において、侵略国とその国民は、無制限に、根底的な人権侵害、人権破壊をおこなう。
「人権」を冠した日本の博物館が、広範囲にわたって無制限に、根底的な人権侵害、人権破壊をおこなった日本の侵略戦争の実相を伝える企画展を、無期限に中止してしまった。
2009年春に予定されていたセミナーにおいて、キム チョンミは、担当者から報告タイトルと所属の変更を提案された。
大阪市市民局人権室が「海南島」ということばそのものに難色を示しているから、という理由だった。
わたしは、日本に生まれ、日本で育った在日朝鮮人である。自分の歴史的位置を知ろうとして、歴史研究をおこない、その過程で海南島における日本の侵略犯罪調査・研究をすすめている。
そのわたしの「日本占領下の海南島で」と題する報告の表題から「海南島」ということばの削除を提案されたことは、わたしには、わたしから、「朝鮮」ということばの削除を求められたのと同じ意味をもつ。
山本柚は「戦争の〈不都合な記憶〉をどう伝えるか・上 変えられる展示・消される記憶」(『世界』2010年7月、岩波書店)で、20世紀末以来のピースおおさか、2004年の大阪人権博物館、2006年の埼玉県平和資料館、堺市立平和と人権資料館などでが日本の侵略と加害にかんする展示を「自主規制」する経過と原因を追及している。
アイヌモシリ・琉球王国侵略いらい他地域・他国侵略をつづけてきている日本において資料館や博物館が、日本の加害の歴史を隠蔽・歪曲することは、日本が侵略した諸地域の民衆にたいする新たな加害行為である。
今回のセミナー中止の問題は、大阪人権博物館だけの問題ではなく、日本の社会・文化状況の反映であり、大阪人権博物館だけで解決できることではないだろう。
しかし、侵略犯罪という最大の人権侵害の展示・セミナーを実現できなくなっている原因を大阪人権博物館が主体的に解明し、その解決の努力を積極的に持続的に進めないかぎり状況は変わらない。2009年4月に大阪人権博物館は、「企画の開催が承認されますよう、引き続き努力していく所存です」と広報したが、それからの2年間、残念ながら、大阪人権博物館の努力は、わたしたちには、あまり伝わってきていない。
キム チョンミ
■資料 「リバティセミナー中止・延期についてのお詫び」
『広報誌リバティ』43号(2009年4月1日)
当館では今年の二月から三月にかけて、「総力戦体制と日雇労働者」(吉村智博)、「日本占領下の海南島でー1939年~1945年ー」(キムチョンミ)、「日中戦争下の在阪沖縄人」(仲間恵子)、「戦時期の問題と水平運動」(朝治武)をテーマとしたリバティセミナー「被差別民衆とアジア・太平洋戦争」の開催を予定していました。しかし海南島に関しては特別展もしくは企画展の開催を当館の理事会と展示企画委員会において延期を決定しているとの理由で、大阪市市民局人権室からリバティセミナー開催は承認されませんでしたので、今回のリバティセミナーは中止・延期することにしました。
当館をめぐっては極めて困難な状況にありますが、今後も海南島については展示やセミナーなど博物館事業の企画を検討していきたいと考えています。そして理事会・展示企画委員会、関係機関において企画の開催が承認されますよう、引き続き努力していく所存です。講師を依頼していた海南島近現代史研究会のキムチョンミさん、およびリバティセミナー開催を期待されていた皆さまに対して、深くお詫び申し上げます。
大阪人権博物館 館長秋定嘉和
今回のことは、大阪人権博物館が、2004年夏の企画展示「海南島とアジア太平洋戦争――占領下で何がおこったか――」を、前年末から公示していながら、開会直前に、「中止」したことに端を発している。2004年夏の企画展示は、関係諸機関で承認され予算案も通過していた。
侵略戦争において、侵略国とその国民は、無制限に、根底的な人権侵害、人権破壊をおこなう。
「人権」を冠した日本の博物館が、広範囲にわたって無制限に、根底的な人権侵害、人権破壊をおこなった日本の侵略戦争の実相を伝える企画展を、無期限に中止してしまった。
2009年春に予定されていたセミナーにおいて、キム チョンミは、担当者から報告タイトルと所属の変更を提案された。
大阪市市民局人権室が「海南島」ということばそのものに難色を示しているから、という理由だった。
わたしは、日本に生まれ、日本で育った在日朝鮮人である。自分の歴史的位置を知ろうとして、歴史研究をおこない、その過程で海南島における日本の侵略犯罪調査・研究をすすめている。
そのわたしの「日本占領下の海南島で」と題する報告の表題から「海南島」ということばの削除を提案されたことは、わたしには、わたしから、「朝鮮」ということばの削除を求められたのと同じ意味をもつ。
山本柚は「戦争の〈不都合な記憶〉をどう伝えるか・上 変えられる展示・消される記憶」(『世界』2010年7月、岩波書店)で、20世紀末以来のピースおおさか、2004年の大阪人権博物館、2006年の埼玉県平和資料館、堺市立平和と人権資料館などでが日本の侵略と加害にかんする展示を「自主規制」する経過と原因を追及している。
アイヌモシリ・琉球王国侵略いらい他地域・他国侵略をつづけてきている日本において資料館や博物館が、日本の加害の歴史を隠蔽・歪曲することは、日本が侵略した諸地域の民衆にたいする新たな加害行為である。
今回のセミナー中止の問題は、大阪人権博物館だけの問題ではなく、日本の社会・文化状況の反映であり、大阪人権博物館だけで解決できることではないだろう。
しかし、侵略犯罪という最大の人権侵害の展示・セミナーを実現できなくなっている原因を大阪人権博物館が主体的に解明し、その解決の努力を積極的に持続的に進めないかぎり状況は変わらない。2009年4月に大阪人権博物館は、「企画の開催が承認されますよう、引き続き努力していく所存です」と広報したが、それからの2年間、残念ながら、大阪人権博物館の努力は、わたしたちには、あまり伝わってきていない。
キム チョンミ
■資料 「リバティセミナー中止・延期についてのお詫び」
『広報誌リバティ』43号(2009年4月1日)
当館では今年の二月から三月にかけて、「総力戦体制と日雇労働者」(吉村智博)、「日本占領下の海南島でー1939年~1945年ー」(キムチョンミ)、「日中戦争下の在阪沖縄人」(仲間恵子)、「戦時期の問題と水平運動」(朝治武)をテーマとしたリバティセミナー「被差別民衆とアジア・太平洋戦争」の開催を予定していました。しかし海南島に関しては特別展もしくは企画展の開催を当館の理事会と展示企画委員会において延期を決定しているとの理由で、大阪市市民局人権室からリバティセミナー開催は承認されませんでしたので、今回のリバティセミナーは中止・延期することにしました。
当館をめぐっては極めて困難な状況にありますが、今後も海南島については展示やセミナーなど博物館事業の企画を検討していきたいと考えています。そして理事会・展示企画委員会、関係機関において企画の開催が承認されますよう、引き続き努力していく所存です。講師を依頼していた海南島近現代史研究会のキムチョンミさん、およびリバティセミナー開催を期待されていた皆さまに対して、深くお詫び申し上げます。
大阪人権博物館 館長秋定嘉和
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