経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

なぜ財政赤字は巨大になったのか①

2010年04月25日 | 経済
 他人の失敗を見ると、その人がバカだったからと思いがちだ。これを「バカだから理論」という。そう思ってしまうのは、問題の難しさに無知で、自分なら上手くできると根拠もなく過信しているだけのことである。そして、原因を学ぼうとしないから、自分も同じ失敗をしてしまう。

 日本の財政赤字の原因を「バラマク政治家、ヨロコブ国民」の構図によると思ったら、現実を見誤ってしまう。財政赤字を膨らませた時代に戻り、その経済状況で「健全」財政ができたかを考えれば、容易でないことが分かる。景気が悪くて、とても無理だったからだ。

 例えば、リーマンショック後に、経済対策をすべきでなかったという人は、今はいないだろう。それは景気の悪さが記憶に新しいからで、おそらく、後世の人は、それを忘れて財政赤字を膨らませたことを批判するに違いない。前回の経済危機、ハシモトデフレ後の小渕政権の対策はバラマキと批判されているからだ。

 財政赤字の原因は、経済の需要不足にある。需要不足を放置するか、財政赤字で補うかの選択を迫られ、やむなく、財政赤字を膨らませてきた。需要不足を放置すれば、米国の大恐慌のような経済収縮を起こして大きな打撃を受けかねない。現実を目の前にすれば、そういう選択は、あり得ないことなのである。

 それでは、なぜ需要不足だったのか。その理由は二つある。一つは、社会保障基金、具体的には公的年金が大規模な需要吸い上げを行って、巨大な積立金を形成してきたからである。意外に思われるかもしれないが、これはGDP統計を見れば容易に確かめられる。

 例えば、オイルショック後の不況対策で、福田政権は要求以上の公共事業予算を付けるという「悪名高い」積極財政を行ったが、その赤字のGDP比は、社会保障基金の黒字とほぼ同じである。何のことはない、公的年金で所得を吸い上げていなければ、経済対策も無用だったのである。

 ハシモトデフレ前の財政赤字は、これで大半が説明がつく。それゆえ、ハシモトデフレ前は、表面上の国債残高は巨大でも、社会保障基金の「貯金」を差し引いたネットで見れば、諸外国と比較しても、まったく問題のない水準にあった。財政赤字は大きいのに、日本がインフレと無縁だった理由もここにある。

 ハシモトデフレの悲劇は、これを理解できない財政当局が、過激な緊縮財政を行って、みずから経済危機を作ってしまったことにある。財政再建は必要としても、焦って過激なことをする必要性は少しもなかった。そして、財政赤字が巨額になった二つ目の理由は、この過激さにあるのである。(続く)

(今日の日経)
 社債金利、国債並みに。日本不信・米欧市場じわり。日経B=鉄・最強の永久磁石。2018年、金利急騰の悪夢。2020年も主流はガソリン車。経済学の復活はあるか。

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