4-6月期の家計消費は、仮想的な支出である帰属家賃を除くと、前期比-6.2となり、1-3月期の+2.4の2倍から更に-1.4も低いという落ち込みぶりだった。こうなると、落ち込みは反動減だからとは、誰も言い訳できず、消費増税が大打撃を与えたと認めざるを得ない。雇用者報酬の前期比は-1.8だったから、これでもマシだったかもしれない。
これほどの落ち込みは、政府も、マスコミも、そして、多くのエコノミストにとっても、想定外だったようだが、「物価が上がれば、需要は減る」という経済の原理は、今回についても、たがうことなく働き、「増税すれば、将来への安心感から消費は増える」という、都合の良い幻想を打ち砕いた。
想定外は、アンケートに「想定内」と答えていた経営者にとっても同じだったようだ。その証拠は在庫の急増であり、消費の落ち込みが見込みを超えていたことを示している。ただし、これには同情の余地がある。純増税は、生産によって従業員に与えていた所得を、消費するまでに抜き取り、必ず生産物を余らせるからである。生産を絞っても余りは出るのだ。
実は、こうしたメカニズムが構造化していることが、先進国において、なかなか景気回復が加速しない原因の一つではないかと考えられる。景気が回復しても、所得増は、税や社会保険料によって殺がれてしまい、なかなか消費が加速せず、好循環へ結びつかない。日本は、その極端な例というわけである。
………
1997年の消費増税による大失敗の教訓は、消費増税、公共事業の削減、社会保険の負担増を一度にするのは危険というものだった。このうち、今回、活かされたのは、公共事業はキープする(増やしてはいない)という一点のみであり、消費増税に至っては、1.5倍の引き上げ幅にするという無反省ぶりだった。社会保険も、年金保険料は予定どおりアップし、わざわざ、年金給付の1.7%カットも実施された。
そうした厚生年金の収支状況は、どういうものか、ちょうど、8/8に2013年度決算が公表されたのでチェックしてみよう。まず、見方だが、厚生年金は、積立金を計画的に取り崩すことで収支を調整しているので、これを除いたもので確める必要がある。これは、1.9兆円の赤字であった。とは言え、前年度決算で3.5兆円の赤字だったから、1.6兆円の収支改善であり、それだけ経済にはデフレ圧力がかかっていたことになる。
このベースでの収支は、2011年度に1.1兆円、2012年度は1.4兆円、そして、1.6兆円と着実に改善してきている。2013年度の改善の最大の要因は、GPIFの運用収入が1.3兆円伸びたことであり、次いで、保険料収入の増加が0.9兆円であった。他方、支出は、給付と基礎年金繰入で0.15兆円の増加にとどまった。毎年の保険料の引上げと、支給開始年齢を遅らせるという制度改革に加え、景気と雇用の回復が寄与したと考えられる。
………
景気が回復すれば、税収が上向くのと同じで、社会保険の収支も改善する。税収増については、7/5に国の分、7/13に地方の分を、本コラムで取り上げたが、それぞれ、1.6兆円と0.9兆円である。単純に、国、地方、年金を足し合わせれば、4.1兆円にもなるわけで、これが、公に留まらずに、民に流れていれば、景気は一段と加速していただろう。
日本が福祉国家である以上、税率や保険料率が高いことは当然である。大事なのは、景気回復時には、それが「自動ブレーキ」になるをことを、認識しておくことである。景気が上向いたと、調子に乗って増税に走れば、ダブルに効いて、思わぬ景気失速を招いてしまう。特に、日本は、国・地方・社会保険を統合して見る習慣に欠けるので、要注意である。
最後に、今回のGDP速報の意外な点を一つ。実質値の変更のために、2012暦年の実質成長率が持ち上がり、2013暦年の1.5%成長と並んでしまった。つまり、アベノミクスは、野田民主党政権期から成長を加速させてなかったことになる。したがって、功績は、成長率を保ち、所得や雇用の水準を上げたことに限られる。それでも、「自動ブレーキ」を問題にしないほどの積極性はあったという評価はできよう。
本コラムは、民主党政権下での経済運営を、アベノミクス以上に論難していたから、拍子抜けする思いである。しかも、今日の日経には「7-9月売上高の下ブレ23%」とあり、さしもの日経も強気を保てなくなったらしい。内閣府の8/15「消費税率引上げ後の消費動向等について」も低迷中だ。このままでは、アベノミクスは、消費増税で成長を挫折させただけという歴史的評価になってしまう。なんとも、やるせない。
※平家さん、ご指摘をありがとう。確かに不用意な記述でした。「季節調整の掛け直しがあったために」を「実質値の変更のために」に訂正します。(8/17)
(昨日の日経)
日米欧の金利低下が連鎖。コンビニで介護。増税転嫁「川下」で難航。カジノ事業は甘くない、コナミも苦労。
(今日の日経)
研究開発減税を縮小、法人税率下げの財源に。7-9月期の売上高「下ブレ」23%、10月以降は回復予想・主要企業調査。経済格差は南米などでは縮小。藻類燃料車。
※日経は「夏には」が「秋」になったようだね。まあ、いつかは回復するよ。
これほどの落ち込みは、政府も、マスコミも、そして、多くのエコノミストにとっても、想定外だったようだが、「物価が上がれば、需要は減る」という経済の原理は、今回についても、たがうことなく働き、「増税すれば、将来への安心感から消費は増える」という、都合の良い幻想を打ち砕いた。
想定外は、アンケートに「想定内」と答えていた経営者にとっても同じだったようだ。その証拠は在庫の急増であり、消費の落ち込みが見込みを超えていたことを示している。ただし、これには同情の余地がある。純増税は、生産によって従業員に与えていた所得を、消費するまでに抜き取り、必ず生産物を余らせるからである。生産を絞っても余りは出るのだ。
実は、こうしたメカニズムが構造化していることが、先進国において、なかなか景気回復が加速しない原因の一つではないかと考えられる。景気が回復しても、所得増は、税や社会保険料によって殺がれてしまい、なかなか消費が加速せず、好循環へ結びつかない。日本は、その極端な例というわけである。
………
1997年の消費増税による大失敗の教訓は、消費増税、公共事業の削減、社会保険の負担増を一度にするのは危険というものだった。このうち、今回、活かされたのは、公共事業はキープする(増やしてはいない)という一点のみであり、消費増税に至っては、1.5倍の引き上げ幅にするという無反省ぶりだった。社会保険も、年金保険料は予定どおりアップし、わざわざ、年金給付の1.7%カットも実施された。
そうした厚生年金の収支状況は、どういうものか、ちょうど、8/8に2013年度決算が公表されたのでチェックしてみよう。まず、見方だが、厚生年金は、積立金を計画的に取り崩すことで収支を調整しているので、これを除いたもので確める必要がある。これは、1.9兆円の赤字であった。とは言え、前年度決算で3.5兆円の赤字だったから、1.6兆円の収支改善であり、それだけ経済にはデフレ圧力がかかっていたことになる。
このベースでの収支は、2011年度に1.1兆円、2012年度は1.4兆円、そして、1.6兆円と着実に改善してきている。2013年度の改善の最大の要因は、GPIFの運用収入が1.3兆円伸びたことであり、次いで、保険料収入の増加が0.9兆円であった。他方、支出は、給付と基礎年金繰入で0.15兆円の増加にとどまった。毎年の保険料の引上げと、支給開始年齢を遅らせるという制度改革に加え、景気と雇用の回復が寄与したと考えられる。
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景気が回復すれば、税収が上向くのと同じで、社会保険の収支も改善する。税収増については、7/5に国の分、7/13に地方の分を、本コラムで取り上げたが、それぞれ、1.6兆円と0.9兆円である。単純に、国、地方、年金を足し合わせれば、4.1兆円にもなるわけで、これが、公に留まらずに、民に流れていれば、景気は一段と加速していただろう。
日本が福祉国家である以上、税率や保険料率が高いことは当然である。大事なのは、景気回復時には、それが「自動ブレーキ」になるをことを、認識しておくことである。景気が上向いたと、調子に乗って増税に走れば、ダブルに効いて、思わぬ景気失速を招いてしまう。特に、日本は、国・地方・社会保険を統合して見る習慣に欠けるので、要注意である。
最後に、今回のGDP速報の意外な点を一つ。実質値の変更のために、2012暦年の実質成長率が持ち上がり、2013暦年の1.5%成長と並んでしまった。つまり、アベノミクスは、野田民主党政権期から成長を加速させてなかったことになる。したがって、功績は、成長率を保ち、所得や雇用の水準を上げたことに限られる。それでも、「自動ブレーキ」を問題にしないほどの積極性はあったという評価はできよう。
本コラムは、民主党政権下での経済運営を、アベノミクス以上に論難していたから、拍子抜けする思いである。しかも、今日の日経には「7-9月売上高の下ブレ23%」とあり、さしもの日経も強気を保てなくなったらしい。内閣府の8/15「消費税率引上げ後の消費動向等について」も低迷中だ。このままでは、アベノミクスは、消費増税で成長を挫折させただけという歴史的評価になってしまう。なんとも、やるせない。
※平家さん、ご指摘をありがとう。確かに不用意な記述でした。「季節調整の掛け直しがあったために」を「実質値の変更のために」に訂正します。(8/17)
(昨日の日経)
日米欧の金利低下が連鎖。コンビニで介護。増税転嫁「川下」で難航。カジノ事業は甘くない、コナミも苦労。
(今日の日経)
研究開発減税を縮小、法人税率下げの財源に。7-9月期の売上高「下ブレ」23%、10月以降は回復予想・主要企業調査。経済格差は南米などでは縮小。藻類燃料車。
※日経は「夏には」が「秋」になったようだね。まあ、いつかは回復するよ。
ということですが、内閣府の説明文書を読む限り、基礎データの改定のためのように思えます。季節調整によって季節調整の対象にはならないはずの暦年データが変わるというのは、腑に落ちません。