経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

2017年度はスキあらば緊縮予算

2016年12月24日 | 経済(主なもの)
 2016年度の大規模な緊縮財政は、無残であった。この反省なくして、2017年度予算は語れまい。財政再建は大事だが、一歩ずつ進めるべきで、2016年度のような「一気に緊縮、景気の陰り、反動でバラマキ」をしていたら、財政も、経済も、社会も、おかしくなってしまう。日本の財政の問題は、赤字や膨張ではなく、緊縮至上の無謀な独善にある。頑なに全体を見ようとせず、面前の課題だけに拘る有様は、この国の宿痾なのか。

………
 2016年度当初は、国、地方、年金の総計で-5.8兆円の緊縮であった。2014年度の-4.4兆円、2015年度の-7.9兆円に連なる、3年続きの野心的な再建策だった。しかし、予算編成時の2015年12月頃には輸出の失速が表れており、10-12月期、翌1-3月期の景気低迷ぶりに慌てることになる。そこで早々に景気対策が叫ばれ、2次補正で2.8兆円の建設国債を追加し、緊縮は-3.1兆円へと変わった。そして、今回の3次補正では、1.8兆円の赤字国債の発行により、結局、緊縮は-1.2兆円で終わる。

 これなら、最初から子育て支援でも増やしておけば良かったではないか。2017年度より、ようやく保育士の処遇改善がなされるようだが、1年遅れである。折しも、2016年の出生数は、ついに100万人割れと報じられている。つまり、使うべきところをケチり、締め過ぎて景気を陰らせ、少子化を進めてから後手を打つという具合で、こうして、財政も、経済も、社会も、おかしくしている。募るのは閉塞感ばかりだろう。

 2017年度予算の公債金等の増減は、国が-600億円、地方が+2600億円で、+0.2兆円の拡張財政である。日経によれば、外為特会からの繰入率を上げて0.7兆円ほどを確保したようなので、これもカウントすると、+0.9兆円と言うこともできよう。ただし、年金の緊縮が現時点では判明しておらず、おそらく、これを相殺する規模になると思われる。したがって、来年度の財政は、ほぼ中立から若干の緊縮といったところである。

 その際、注意したいのは、「税収が当局の見積もりどおり」が前提であることだ。日本の財政当局は、税収の過少見積もりを常習とするので、その場合、緊縮度が先の計算より大きくなる。すなわち、税収の上ブレの可能性をチェックしつつ、必要に応じて、その分を補正予算で民間に還元するようにしないと、いつの間にか緊縮が進んでしまう。「スキあらば緊縮」とは、そういう意味だ。いずれにせよ、大緊縮だった2016年度当初よりは、随分とマシである。

………
 それでは、税収の上ブレはどのくらい見込めるのか。おそらく、2016年度が0.8兆円弱、2017年度が1.0兆円程で、合わせて1.8兆円弱と見ている。推計方法は、至って単純で、前年度決算をベースに、所得税とその他の税は、経済見通しの名目成長率で、消費税は、同じく民間消費増加率で、法人税は、証券各社の企業業績見通しで伸ばしただけである。興味深いのは、当局の見積もりは、法人税で強気で、それ以外は弱気なことである。

 2016年度補正予算の法人税は、前年度決算比+2.9%であり、企業業績見通しが-1.2%の状況では強気と言える。足元の円安が続き、企業収益が上ブレするという予想なのだろう。また、2017年度予算の前年度補正からの伸びも11.3%と、企業業績見通しを若干ながら上回る。他方、2016年度補正予算の消費税は、前年度決算比-3.6%だ。消費低迷とは言え、前年度の予算額さえ下回る。10月までの税収の進捗が前年度より7%近く低いことの反映と思われるが、どうして、こんなに落ちるのか、理由が分からない。 

 2016年度は、円高に振れた結果、企業収益が低下し、税収減に結びついたが、反面、輸入物価が低下し、実質の消費を押し上げるように働いた。いわば、税収減は、消費減税のような役割を果たしたわけである。裏返せば、2017年度に、円安を背景として、法人税収が高まるならば、消費が圧迫されてもいることになる。そのため、税収増をいかに還元するかが求められよう。本予算でケチり、景気が振るわず、補正でバラ撒くことを繰り返してきたが、社会の改善に有効に使えるよう、一体的な予算編成に改革すべきである。

(表)



………
 日経社説は、社会保障の選別と消費増税を訴えるがごとき主張だが、財政批判でなすべきは、「好景気が天から降ってきて、いつか補正をやめられる」という当局の幻想を打ち砕くことだ。見果てぬ夢を捨てられず、吝嗇、不振、浪費の悪循環を繰り返している。補正の常態化という現実を認めさせ、少子化対策や若者支援に充てることに、政治的難しさはない。官僚的な建前主義、実態から遊離した悪慣行の是正こそ、社会の木鐸の役割であり、「国民生活の基礎たる経済の民主的発展を期す」とする社是の発現であろう。


(今日までの日経)
 伊3位行に公的資金。構造改革なき歳出増 17年度予算案、最大の97兆円。社説・3党合意の次の一体改革の検討に入れ。国債減額に「奥の手」 外為特会、苦肉の投入。出生数、初の100万人割れへ。景気判断を上方修正・12月月例報告 。非正規格差是正促す 政府「同一賃金」へ指針。日銀総裁、景気判断「一歩進めた」 「円安、驚く水準でない」。政府経済見通し 実質1.5%成長。

※メリー、クリスマス。国に安らぎを、民に喜びを。来年は好景気で世の中が明るくなるといいね。

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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2016-12-24 17:58:56
福祉の拡充による当初予算の拡大は、景気完全回復しないと無理でしょうな。何より、当の国民が赤字国債発行を許しませんから。
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Unknown (レシートリザード)
2016-12-24 21:14:30
というよりも赤字国債発行を認めないように洗脳されてるんだと思いますね
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