経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

1-3月期GDP1次・祝2%成長、あとは水準

2017年05月21日 | 経済
 1-3月期GDPは、見事、実質2%成長に到達した。内容も、民需の寄与度が+0.4、外需+0.1とバランスも良い。何より、消費が前期比+0.4と伸びが回復した。前期の急伸後で望み薄だった設備投資と、ピークを過ぎた住宅も、プラスに踏みとどまり、在庫は調整を終え、寄与度+0.1と押し上げる側へ転じた。そして、公的需要だけが、緊縮財政の下、寄与度0.0と、サッパリ成長に貢献していない。まあ、経済運営が多少ヘボでも、逆噴射さえしなければ、日本経済は成長するということかな。

………
 正直、消費は、もっと行けると思っていた。名目では、直近3期の前期比の平均が+0.4になっているので、お許し願いたい。前期の生鮮物価高が収まり、反動の押し上げを期待していたが、円安による輸入物価高で殺がれたようだ。それでも、消費は、増税後の低迷を脱し、それ以前の伸びである前期比+0.4を取り戻すところまできた。これにより、家計消費(除く帰属家賃)は、実質で273兆円を超え、わずかながら、増税後の最大値を8期ぶりに更新した。

 そうなのだ。2015年1-3月以来、2年間も消費は増えていなかった。生活が豊かになっていないのだから、景気回復と言われても、実感が伴わないのは当然だ。実は、消費増税の駆け込み前の2014年10-12月期と比べ、未だ3.7兆円も少ないし、更に遡るアベノミクス・スタート時の2013年1-3月期さえ下回るのである。「生活にアベノミクスは効なし」は正当な主張だ。他方、高い評価が得られるのは、財政収支の回復と企業収益の増大であろう。

 今後、前期比+0.4を保つと仮定して、消費増税の駆け込み前水準を回復するのは、1年後の2018年1-3月期になる。まる4年の辛抱である。消費増税をしていない場合のトレンドとの差、つまり、「失われた消費」は16.7兆円にもなる。これが8.4兆円増税の代償だ。むろん、この間、社会保障の充実により、政府消費が3.4兆円増え、国民は恩恵に浴したが、公共事業を2.7兆円削って賄ってもいる。財政収支が大きく改善するわけだよ。

 「こども保険なんて保険じゃない」と批判されつつも、公平なる消費増税に支持が集まらないのは、こうしたウラを国民は実感しているからだろう。「どうせ財政赤字の削減に使われて、福祉が大して良くなるわけじゃない」という抜きがたい不信が形成された。「保険だか知らないけど、子供のために使われるなら、いいんじゃない」という反応は素直である。この際、「こどもほけん」と、ぜんぶひらがなにすれば、ひはんもかわせるかもしれない。

(図)



………
 景気の今後については、特に不安は見当たらない。これはコンセンサスだろう。昨年後半からの回復の要因は、第一に、世界経済の加速に伴う輸出の増加、第二に、住宅の駆け込み反動減からの脱出、第三に企業の建設投資の上昇が重なったものだ。その中で、公共投資は足を引っ張っていたが、底入れに至った。こうした追加的需要が景気回復の起動力であり、所得と消費を向上させ、成長を波及させていく。

 足元では、輸出の好調さが続き、伸び切った住宅に公共が代わる形で、建設投資全体も安定している。日経が今期の雇用者報酬の鈍化を心配していたので、大元の毎勤の原データをチェックしてみたが、3月の現金給与の速報がたまたま下ブレしたのに引っ張られたように思う。むしろ、常用雇用は加速している状況だ。確報はこれからだし、4月のソフト・データにも加速感が見られるところだ。

 懸念材料を挙げれば、円安だろう。勤労者世帯が5割に低下し、税と保険料が高まっているので、賃金上昇が消費に結びつきにくくなっている。その中での輸入物価高は痛い。貿易黒字も増大しており、円高へ弾ける圧力は高まっている。緩やかに円高が進むよう、極端な金融緩和を徐々に修正する必要がある。アベノミクスの看板かもしれないが、緊縮財政の是正と合わせ、状況に応じた柔軟な経済運営が求められる。

………
 先日、経産省の若手勉強会のパワポが公表されたが、高齢者医療を削って、子育てに回せという「ゼロサム感」があると思った。2%成長の日本経済は、毎年、10兆円の供給力を新たに獲得する。年金の国庫負担が10兆円であることを考えれば、成長する日本にとって、高齢化の負担など、さほどのことはない。今までは、財政再建を優先し、景気回復の芽を摘むことを繰り返し、名目ゼロ成長に陥っていたから、苦しかったのである。

 アベノミクスの成果により、財政は、一般政府で見ると、赤字のGDP比が-2%を切るまでになり、日銀、年金、保険会社の安定的保有分以外の債務GDP比は60%程まで低下した。人的投資を拡大し、人口減少という社会の構造改革ができるだけの余裕が生まれている。財源論に終始する金庫番意識から脱して、少子化緩和に投資し、年金財政の好転で回収するという、若々しい拡大均衡の思想が必要ではないか。


(今日までの日経)
 こども保険検討へ、人材投資会議を新設。続く成長 届かぬ脱デフレ 賃金、なお伸び低く GDP1-3月実質年2.2%増。残業時間 公表義務付け。遠隔就労ロボVBに出資。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 5/17の日経 | トップ | 5/24の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事