経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・まさかの消費底割れ

2015年12月27日 | 経済(主なもの)
 さすがに、11月の家計調査が消費増税直後の水準を下回るとは思わなかったよ。二人以上世帯の季節調整済指数の実質消費支出は91.8と、2014年5月の92.4より低く、過去15年間で最悪である。3か月で合わせて-4.0という落ち幅も大きく、東日本大震災時の2011年2~3月にかけての-3.9を超える。政府・日銀の「消費は底堅い」は、まさかの底割れで根拠を失い、消費という「一部の弱さ」によって、10-12月期GDPはマイナス成長が濃厚となった。

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 消費不振は暖冬が理由にされているが、たまたま、お金を使う機会がなかったというのではない。勤労者世帯の可処分所得も、最悪の水準に落ちており、使えるお金が減っているのである。9-11月の可処分所得の平均は、6-8月より-3.3も少ない。この間の消費支出が-0.8にどどまり、消費性向が+0.7と上がっていることを踏まえれば、むしろ、消費は健闘していると言えるほどだ。

 その背景には、就業の停滞がある。「雇用は良いのに消費が」と言われがちだが、労働力調査で就業者数を見ると、消費増税後に伸びが鈍り、今年の春から夏にかけては、ほとんど増えなくなったことが分かる。9,10月は回復したかに見えたが、11月は期待を裏切る大幅な減であった。雇用者数の増加は、自営業主・家族従業者の減少でかなり打ち消されており、割り引いて見る必要がある。

(図)



 他方、11月の新規求人倍率は1.93倍、前月比0.10増と大きく上昇した。しかし、就職件数で見ると、この2か月で低落に歯止めがかかった程度である。正社員、パートともに、消費増税以降、低下傾向に転じており、パートのみ、2015年前半に盛り返しが見られたが、再び元の低下トレンドに戻っている。つまり、求人倍率は、消費増税後も上昇傾向にあると言っても、必ずしも就職には結びついていないということである。

 また、10月の毎月勤労統計の確報では、常用雇用が季節調整済指数の前月比で+0.2と、まずまずだったが、8,9月が+0.1と鈍かったことを踏まえれば、11月は安心できない。現金給与総額も気になるところで、3か月同じ水準にとどまっている。しかも、実質賃金は94.6と、1年前をわずかに0.3上回るに過ぎない。総労働時間は、最低値を更新し、低落傾向が続いている。依然、雇用の短時間化が進んでいることがうかがわれる。

(図)



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 さて、10-12月期のGDPだが、11月の家計調査で「除く住居等」が前月比で-1.7にもなると、下方硬直性のある消費総合指数も、ある程度の低下は避けられまい。そうすると、残る12月に反動増で8月並みの高い数値が出たとしても、前期比はマイナスになる。消費は需要項目の「一部」でしかないが、6割を占めるため、これが足を引っ張るようでは、プラス成長を確保することは苦しい。

 他の需要項目については、11月の鉱工業指数の公表は週明けなので、見通しを述べるのはいささか早い。とは言え、前月に続き、投資財の在庫が減少していることは十分に予想され、10-12月期GDPを押し下げることになるだろう。住宅投資は一服しており、公共投資は緊縮財政のために下り坂にある。設備投資は、先行指標の機械受注が振るわない。あとは、上向きにある輸出がどれくらい牽引できるかである。

 今年は、1-3月期、4-6月期ともに、在庫増の成長への寄与度が0.5、0.3と最大項目になるという歪さだった。他方、消費は「除く帰属家賃」の寄与度が0.1、-0.4、0.2と推移し、次の10-12月期もマイナスであろう。これだけ消費が低迷すると、物価安になりそうなものだが、値下げでも売上増は期待できないと考えてか、むしろ、収益性を重視して、円安のデメリットを転嫁しているように思う。

 2014年度の消費増税に次いで、2015年度も8兆円規模の緊縮財政を敷いたのだから、消費の低迷は、政策どおりの結果ではある。本コラムでは、2015年度の国・地方の財政収支が一気にGDP比で2.5%も改善されると見ている。そして、来年度も更なる緊縮財政が実施される予定だ。アベノミクスは財政再建で大成功を収めた。むろん、それは、経済をほぼゼロ成長にし、2年前より消費を7兆円も減らす犠牲によって贖われた成果である。  
  

(今日の日経)
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