経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

需要不足の欧州経済

2010年05月16日 | 経済
 リーマンショック後のバブル崩壊で、欧州は需要不足に直面している。その点で言えば、大きな財政赤字を出している南欧諸国は「優等生」ということになる。しかし、それを批判されて、財政赤字を削減せざるを得なくなった。それでは、誰が需要を担うべきなのだろうか。

 答えは、より財政赤字の少ないドイツなどが埋めなければならない。欧州は共通通貨の下で金融政策を統合しているのだから、財政政策も欧州内で統合しなければならない。それは各国が一定の財政赤字のGDP比を超えないようにするといった単純なものではなく、欧州全体で必要になる財政需要を算出し、どう分担するかということになる。

 そういう域にまで達していないから、欧州経済は、方向性が見えなくなって、動揺することになる。例えば、ドイツが拡張的な財政政策を採り、南欧の緊縮財政の穴を埋めるのであれば、景気下押しの不安を市場に与えることはない。

 今後のシナリオとしては。ユーロが下落し、ドイツなどが域外への輸出を拡大させ、それがEU域内の需要を作ることが考えられる。問題は、その輸出先をどこにするかである。リーマンショック前なら、米国で良かったが、今はそうした余地はない。中国は、欧州への輸出を頼りにするような立場にある。

 通常、不況期に金利を下げると、住宅投資が上向き、この需要が景気回復の先駆けとなる。欧州の場合、厄介なのは、バブル期に住宅投資が過剰になっていたことである。そのため、こういう経路で域内需要を引き出すことが難しくなっている。

 こうなると、域内で需要を作るには財政を使うしかない。財政情況が比較的ましな国が財政赤字を拡大するとともに、ECBは、場合によって国債の市場からの買い入れもしながら、長期金利を低く保ち、緩やかなユーロ安に誘導することが必要だ。こうして設備投資が回復してくることを気長に待つのである。

 日本の経験から言えば、財政赤字や金融緩和を続けることは不安との戦いになる。どうしても、景気が回復しないうちに引き揚げてしまいがちだ。今回の欧州の混乱は、ECBが財政より先に出口に向かったことにある。金融政策は、引き締めたときに、どこに影響が出るのか、一番弱い借り手は誰かを見極めなければならない。それをギリシャの特殊事例として看過したところにつまずきがあったと言えよう。

(今日の日経)
 欧州経済不安の連鎖、財政赤字を削減すると景気への不安、ユーロ安投機筋が主導。小沢タクシン現象・伊奈久喜。日銀新貸出、期間異例に長く国債担保。低炭素型産業に1000億円。日本国債ずっと安全?。読書・タイ貧富の格差が拡大、学校選択制のデザイン。

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