経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

4/15の日経

2012年04月15日 | 経済
 FTのマーチン・ウルフさんがよく指摘するように、財政赤字を減らす場合、その代わりを誰が務めてくれるかを考える必要がある。財政赤字は、貯蓄を使うということだから、代わりに、企業がそれを設備投資として使ってくれるのなら一番良い。もし、使い手が現れないと、貯蓄は余り、需要が不足して、経済が縮小する形で均衡に向かってしまう。

 日本経済が1.5%成長するとすると、設備投資を含む全投資の割合は、だいたい1/4を占めるから、500兆円×1.5%÷4で、新たに1.9兆円の投資が生み出される。他方、消費税を1%上げると約2.5兆円の増収になり、社会保障の自然増が毎年1兆円ほどあるから、差し引き1.5兆円の財政赤字の削減となる。つまり、この程度の増税による貯蓄増なら、投資増の範囲に収まるということだ。

 こうしてみれば、消費税の1%アップは、財政赤字の大きさを踏まえれば、必要なことだし、可能でもあることが分かるだろう。換言すれば、消費税の絶対反対も、一気の3%引き上げも正しくない。成長の大きさに合わせて、それを阻害しない範囲で、着実に財政再建を進めてゆくのが、最も無理のない行き方である。

 日本の財政当局は、財政赤字の削減だけを目指して、成長率や投資増のことは考えない。それは、経産省や日銀の役割であって、自分たちの責任ではないと思っているからだ。恐るべきセクショナリズムである。経済を知る者からすれば、自殺行為にしか見えない、投資増の3倍を超える一気の増税にも平然としたものである。

 大事なのは、「しょせん、財政当局は、そういうもの」と見切り、「待ったなし」の宣伝を鵜呑みにしないことである。反対に、感情的に反発し、全否定することも適当ではない。確かに、財政赤字の大きさを踏まえれば、緩い増税で間に合うのかという不安もあろう。しかし、そうした「健全な不安」こそ必要である。不安を払おうと一気の増税に走ったり、不安を否認するのではなく、不安を抱えつつ、成長を見極めて機動的に対応するよりほかないと覚悟せねばならない。

(今日の日経)
 東北で次世代車研究。世界で稼ぎ、現金を積み上げる米企業。風見鶏・比例30減で全国単位なら。インフラ更新も選択の集中・秦野市。欧州の製造業の南北さ鮮明に。電力会社も再エネの青写真を。ミャンマー詣ではタイ経由で。粒子との微細な差を探求。読書・タックスヘブンの闇、公会計改革の財政学。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国破れて、税率あり | トップ | 家族の衰退が招く未来を読んで »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事