経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

8/13の日経

2013年08月13日 | 今日の日経
 悲劇というのは、現実の変化に意識がついていけないときに起こるもの。今日の日経には「首相、法人税率下げ検討指示」とあるが、景気回復によって、足下で法人税収が急増していて、財政再建の「切り札」となっていることを知ったら、あえて、それを捨てるようなことは考えないだろうと思う。

 もちろん、財政当局は法人減税に反対だが、「急増する税収を捨てないでくれ」と訴えたりしたら、消費増税のために自然増収を隠蔽していたことが知れるから、そうもいかない。まったく、隠し事なんかするから、こういう困った事態に陥るのである。国家にとっては、悲劇としか言いようがない。

……… 
 アベノミクスによってデフレを脱出するには、家計の所得を増やすことがカギになるとされる。所得増によって消費が伸び、需給が引き締って、物価が上がることになるからだ。そこで、大きく向上した企業収益を賃金へと回してもらうことが必要になるが、それを政治がお願いしたところで、思うようになるものではない。

 最も簡単で確実な方法は、大いに企業収益をあげてもらい、法人税で回収し、家計に還元することだ。そのために減税や給付をする必要はない。予定している消費増税を緩めてやれば済む。いまや上場企業の株の3割は外資が保有し、減税による貴重な所得は外へ流出する。お望みの法人減税と消費増税の組み合わせはムダが多いのだ。

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 管政権による法人減税によって、日本の税率は米国より低くなったが、2012年には、日本から米国への直接投資は倍増した。日本国内での設備投資は減少しているにもかかわらずである。これは当たり前の話で、投資は需要地においてなされるものだからである。反対に、消費増税で需要を減らしたらどうなるか、想像してみたら良い。  

 また、法人減税は、投資を促進するのに効率が悪い政策だ。アベノミクスで大きく収益を伸ばした金融機関は、減税を受けて、どんな設備投資をするというのだろう。また、製造業も法人減税で資金を得たら、海外投資を選ぶのではないか。国内に投資したときにだけ恩恵が受けられる投資減税と比較すれば、バラマキとしか言いようがない。

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 法人減税と組み合わせるなら、利子や配当などの金融所得への課税強化を考えるべきである。米国が法人減税を検討している背景には、富裕層への課税強化を果たしたことがある。また、スウェーデンの法人税率は日本より低いが、金融所得への課税は高い。法人減税の都合の好いところだけを、つまみ食いしてはいけない。

 また、アベノミクスで金利が上昇し、国債の利払費が増大することが心配されているが、利子課税を25%にしておけば、国内金融資産が国債の4倍以上あるなら、税収増が利払費の増加を上回ることになり、財政は金利が上がるほど楽になる。財政の設計は、こうして考えるものである。

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 日本の財政当局は、消費増税を無理押しするばかりだから、景気をダシに取られて、法人減税を求められる。実態を明らかにして、経済界とだけ取引しようとしなければ、こうはならないはずだ。本当に困ったものである。

(今日の日経)
 法人税率下げ検討指示、消費増税と一体、景気腰折れ懸念払拭狙う。マンション、今秋以降は品不足も。GDP実質2.6%増、消費が主導。製品に価格転嫁広がる・企業物価。独失業率、最低水準に、輸出依存度20%も上乗せ。経済教室・技術革新・今井賢一

※一面トップにつられて、また似たようなことを長々書いてしまった。すまんね。※ちかみちさん、データに当たる大切さまで言っていただけると、冥利に尽きます。

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