先週、都道府県別のGDP統計が公表され、1人当たりの県民所得で、沖縄県は最下位を脱出した。かねてブービーからも水を開けられていた沖縄県が、最下位グループに入っただけとは言え、本土に追いついた瞬間である。まずは、素直に祝福を贈りたい。
前にも書いたかもしれないが、中東・アラブの若いエリートは、意外なほど沖縄を知っている。むろん、米軍基地としての沖縄だ。これに対し、筆者は、「沖縄は、米軍に焼け野が原にされ、27年間の占領も受けたが、妥協もしつつ主権を回復し、20年で首里城を再建して沖縄の誇りを取り戻した。基地も一歩ずつ取り戻す希望がある」と話している。今回は、これに「経済開発に成功し、格差是正も達成した」と加えることができる。こういう説明がなぜ受けるのか、日本人には分かりにくいかもしれないが。
この首里城は、言わずと知れた沖縄観光の目玉である。もう一つの目玉は、美ら島水族館だが、二つとも公共事業によって作られたものである。いまや無駄なモノの代名詞と化している公共事業だが、沖縄の基幹産業である観光に大いに貢献している。月並みになるけれど、公共事業も使い方次第なのである。
昨日の日経は、震災の復興交付金の配分に際して、宮城知事は「査定庁」と語気を荒げたと伝えている。筆者は、「巨額の復興費を余儀なくされた財政当局は、執行段階で抑えにかかるだろう」と予想していたから、驚きはない。復興費の使途を、緊急で生活に欠かせないものに限っていては、誇りや希望に結びつくものにはなり難い。
もちろん、復興費の自由度を増すだけでは、大して役に立たないものに使われるおそれもある。本当は、「復興委員会」的なものは、こういう場面でこそ必要で、オープンの場を作り、採否の理由を明らかにしつつ、「これは」というものには使える仕組みがほしいところだ。本コラムでは何度も書いてきたことだが。
今回、沖縄県が最下位を脱出できた背景には、経済の「ソフト化」もある。沖縄経済を伸ばしているのは、観光とともに、公共事業に代わって台頭した医療・福祉である。本土が輸出型の製造業に沸いているときには、格差は縮めがたかったが、日本経済全体がソフト化するに従い、沖縄の不利性が薄らいできている。沖縄では、更に観光を伸ばそうと、医療・福祉や健康と結びつける試みも始まっている。
豊かな文化や自然は、沖縄だけでなく、全国どこにでもあるとも言える。重要なのは、その見せ方であり、経済への結び付け方だ。被災地の漁業の復興一つを取っても、施設を復旧するだけでなく、客を呼べる要素をいかに加えるかが勝負になる。財政当局は、文化施設や観光施設への復興費の使用は認めないようだが、もうひと工夫あれば、小さな首里城や美ら島水族館になるかもしれない。要求する自治体も、それで誇りや将来に希望が持てるのかを考えてみてほしい。
沖縄の最大の課題は、言うまでもなく、基地の返還である。今回の再編計画の見直しで、不合理なパーケージ論を米国が引っ込め、返せるところから返す形になったのは、大きな前進だ。基地跡地の開発は、ある意味、敗戦からの復興である。それを実現するには、これからも粘り強さが求められる。それを支えるのは、結局のところ、誇りと希望になる。誇りと希望は、頼りなげに見えて、存外、苦難を開く剣となるのである。
(今日の日経)
東電・家庭10%上げ申請へ。知られざる成長企業・医食遊。社説・大震災1年。沖縄海兵隊・司令部残留。投機筋、円売りに転換、日米金利差拡大で。1兆ユーロ供給・融資ドイツに集中。メードインUSA・ドル安効果薄れる。そこが知りたい・グリー。中外・公文書管理・飯野克彦。南欧・職を求め大航海。読書・親切な進化生物学者。
※基地再編は、司令部を残し、部隊を移す逆の形。今までの説明はどうなる。※加えて言えば、日本のCPIのマイナス幅が縮んできている。※マネーは不要なところに集まる。※グリーについては、日経Web刊の「行過ぎたソーシャルゲーム・井上理」出色。強さに応じた、公正さが求められるのであって、ルールに反しなければ良いというものではない。※正論だが、メリハリがないと、企業コンプラと同じ弊害が生じる。※トルコに逆流とはね。
前にも書いたかもしれないが、中東・アラブの若いエリートは、意外なほど沖縄を知っている。むろん、米軍基地としての沖縄だ。これに対し、筆者は、「沖縄は、米軍に焼け野が原にされ、27年間の占領も受けたが、妥協もしつつ主権を回復し、20年で首里城を再建して沖縄の誇りを取り戻した。基地も一歩ずつ取り戻す希望がある」と話している。今回は、これに「経済開発に成功し、格差是正も達成した」と加えることができる。こういう説明がなぜ受けるのか、日本人には分かりにくいかもしれないが。
この首里城は、言わずと知れた沖縄観光の目玉である。もう一つの目玉は、美ら島水族館だが、二つとも公共事業によって作られたものである。いまや無駄なモノの代名詞と化している公共事業だが、沖縄の基幹産業である観光に大いに貢献している。月並みになるけれど、公共事業も使い方次第なのである。
昨日の日経は、震災の復興交付金の配分に際して、宮城知事は「査定庁」と語気を荒げたと伝えている。筆者は、「巨額の復興費を余儀なくされた財政当局は、執行段階で抑えにかかるだろう」と予想していたから、驚きはない。復興費の使途を、緊急で生活に欠かせないものに限っていては、誇りや希望に結びつくものにはなり難い。
もちろん、復興費の自由度を増すだけでは、大して役に立たないものに使われるおそれもある。本当は、「復興委員会」的なものは、こういう場面でこそ必要で、オープンの場を作り、採否の理由を明らかにしつつ、「これは」というものには使える仕組みがほしいところだ。本コラムでは何度も書いてきたことだが。
今回、沖縄県が最下位を脱出できた背景には、経済の「ソフト化」もある。沖縄経済を伸ばしているのは、観光とともに、公共事業に代わって台頭した医療・福祉である。本土が輸出型の製造業に沸いているときには、格差は縮めがたかったが、日本経済全体がソフト化するに従い、沖縄の不利性が薄らいできている。沖縄では、更に観光を伸ばそうと、医療・福祉や健康と結びつける試みも始まっている。
豊かな文化や自然は、沖縄だけでなく、全国どこにでもあるとも言える。重要なのは、その見せ方であり、経済への結び付け方だ。被災地の漁業の復興一つを取っても、施設を復旧するだけでなく、客を呼べる要素をいかに加えるかが勝負になる。財政当局は、文化施設や観光施設への復興費の使用は認めないようだが、もうひと工夫あれば、小さな首里城や美ら島水族館になるかもしれない。要求する自治体も、それで誇りや将来に希望が持てるのかを考えてみてほしい。
沖縄の最大の課題は、言うまでもなく、基地の返還である。今回の再編計画の見直しで、不合理なパーケージ論を米国が引っ込め、返せるところから返す形になったのは、大きな前進だ。基地跡地の開発は、ある意味、敗戦からの復興である。それを実現するには、これからも粘り強さが求められる。それを支えるのは、結局のところ、誇りと希望になる。誇りと希望は、頼りなげに見えて、存外、苦難を開く剣となるのである。
(今日の日経)
東電・家庭10%上げ申請へ。知られざる成長企業・医食遊。社説・大震災1年。沖縄海兵隊・司令部残留。投機筋、円売りに転換、日米金利差拡大で。1兆ユーロ供給・融資ドイツに集中。メードインUSA・ドル安効果薄れる。そこが知りたい・グリー。中外・公文書管理・飯野克彦。南欧・職を求め大航海。読書・親切な進化生物学者。
※基地再編は、司令部を残し、部隊を移す逆の形。今までの説明はどうなる。※加えて言えば、日本のCPIのマイナス幅が縮んできている。※マネーは不要なところに集まる。※グリーについては、日経Web刊の「行過ぎたソーシャルゲーム・井上理」出色。強さに応じた、公正さが求められるのであって、ルールに反しなければ良いというものではない。※正論だが、メリハリがないと、企業コンプラと同じ弊害が生じる。※トルコに逆流とはね。
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