経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の心

国民の実感としてのアベノミクス

2017年05月14日 | 経済
 アベノミクスの評価については、毎月勤労統計で分かるように、雇用の量は増えたが、実質賃金は低下し、所得と消費の向上は不十分で尽きていると思う。これはハード・データの結果だ。他方、国民の主観的な評価はどうか。ここで「人それぞれ」とすることもない。ソフト・データとしての消費動向調査を見れば良いからだ。その内容は、ハードと概ね同じであるが、少し辛目のものになっている。

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 経済はハード・データで見るのが基本だが、ソフト・データには速報性があり、鋭く変化するので、景気の潮目を判断するのに役立つ。代表的なものに、内閣府の消費動向調査や景気ウォッチャー調査がある。日経は後者を「街角景気」と略称している。どのように使うかというと、例えば、12か月移動平均を作って、原データとのクロスをチェックする。交差点が景気の潮目であり、最近では、2016年の半ば、輸出が増えだした頃である。

 国民の実感は、下図を見てのとおり。「雇用環境」は、アベノミクスが始まった2013年に急速に向上している。そして、消費増税を境に長く低下傾向となり、ようやく、足元で底入れしてきた。「アベノミクスの出だしは良かったけど、消費増税後はサッパリだ」というところだろう。興味深いのは、庶民には縁遠く、消費者態度指数の構成要素外の「資産価値」が「雇用環境」とパラレルに動いていることだ。

 一方、「収入の増え方」と「暮らし向き」は、雇用と比べ、とても緩慢だ。2013年の向上が緩かった上に、消費増税後に大きく低下し、政権交代前を下回るまでになった。その後、徐々に回復してきたものの、「暮らし向き」は、未だ増税前を下回り、「景気回復と言われても、生活は苦しいまま」という声が聞かれるのも当然だろう。加えて、「暮らし向き」は、本来は「収入の増え方」より大きく動くものなのに、この半年の物価高で向上を抑えられたように見える。

 また、「耐久財の買い時」は、消費増税の駆け込みと反動で大きな影響を受けたが、長い冬の時期を超え、アベノミクス前のレベルに戻ってきた。今日の日経が家電の好調ぶりを伝えるのも理解できよう。記事にもあるように、政策に振り回される家電業界には、同情を禁じ得ない。企業経営にとっても、安定的な需要管理は極めて大切で、政策は罪な事をしてきたのである。

(図)



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 アベノミクスを批判するとすれば、まずは、急すぎる財政再建だろう。それが実質賃金や消費の低迷に結びついているからだ。ただし、党派的には、消費増税を仕組んだのは民主党政権であり、安倍政権は無理な追加増税を阻んだ側というネジれた構図にあり、ストレートに、どの程度の緊縮が適当なのかという真っ当な議論にならない。しかも、大幅な財政収支の改善を果たしたにもかかわらず、まだ足りぬと言う人ばかりで、ほめられもしない。

 また、金融政策については、異次元緩和Ⅱは無用だったとすべきではないか。「輸出は為替より世界景気」という従来の知見が再確認されただけで、むやみな円安は、輸入物価高を招いて消費を抑制する方向に働いた。トランプ氏の大統領当選から現在までの円安局面では、極端な金融緩和を修正する重要な機会を逃しているような気がする。2%の物価目標の看板は下ろしにくいだけに、議論の価値があると思う。

 そして、成長戦略に関しては、雇用量の増加に合わせて「一億総活躍」を掲げ、総動員で家庭との両立に厳しさが増す中、「働き方改革」を打ち出し、労働生産性の向上も図るというのは、時宜に適していると言えるだろう。あとは、活躍や両立に必要な保育や介護の充実をどうするかであり、財源づくりを大いに議論してもらいたい。また、社会保険料の軽減と非正規への適用拡大は、重要なアジェンダとなろう。

………
 ハード、ソフトとも、データが示すのは、直近における景気の加速である。税収も、保険料も増しているが、それらをすべて収支改善に充て、貯蓄するのが適当なのか。少子化や非正規の苦境を思えば、人的投資をすべきときであろう。それは、長期的な経済成長を確保する道でもある。正直、筆者には、アベノミクスの是非なんて、どうでもいい。人的投資が円滑になされる未来の経済と制度、それを生きているうちに見たいだけだ。


(今日までの日経)
 家電買い替えの波 耐久財消費11%増。上場企業 2期連続最高益へ。建設単価2割伸び、労務単価1割。日本の稼ぎ投資が軸・経常黒字リーマン前に迫る。4月の街角景気5か月ぶり改善。解雇の金銭解決に限度額。ユーロ圏1.7%成長。派遣料金、上昇目立つ。うつで病休 半数が再取得。半導体活況、リーマン前水準。
ジャンル:
経済
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