経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・4月はロケットスタート

2017年06月04日 | 経済(主なもの)
 4月の経済指標は極めて好調だ。2.2%成長を達成した1-3月期は、2次速報で上方修正が予想されており、4-6月期に入っても、その勢いは続いている。「雇用は増えても、消費は」と言われてきたが、消費中心の成長となっている。次は、物価上昇が見られるだろう。日本経済は、0% 台前半の成長力しかないと見限られていたが、大方の予想を超える健闘ぶりを見せている。特に改革をしたわけではないにもかかわらず。

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 4月の商業動態の小売業は、前月比+1.4と急伸した。CPIの財が+0.2であったし、インバウンドも含むので、割り引く必要はあるが、4-6月期に消費が2%超の成長を確保するのに、かなりの「貯金」となった。特に、車と衣料が大きく伸びている。これらは振れやすい項目のため、5,6月に反動減が出るだろうが、仮に3月の水準まで戻ったとしても、4-6月期の平均は、前期比+0.7になる。

 5月のデータは、まだ断片に過ぎないにせよ、意外なほど好調だ。車は、引き続き、前年同月を上回り、衣料も、一部企業では良かったようである。ソフトデータの5月の消費動向調査は前月比+0.2となり、季節調整値ではジグザグだが、12か月移動平均で見ると、4月と同様、加速感もある。むろん、消費の背景となる4月の雇用は拡大しているわけだし、遠景にある輸出や建設財出荷も順調だ。

 また、4月の家計調査では、消費水準指数が前月比+2.8にもなった。4月の-2.0の取り戻しが大部分を占めるものの、この半年ほど、大きな振幅の中で回復傾向が見られる。家計調査は、庶民的であり、弱さが大きく出がちで、景気の陰った2015年秋から、被服履物と住居が大きく崩れた。それが、昨年秋に至り、ようやく底入れを果たし、ここに来て、被服履物が上向くまでになった。

 消費と裏表となる物価は、カギとなるサービス(除く帰属家賃)が、極めて緩慢ながらも、上昇を続けている。この数か月は、通信等が落ちて下振れしていたが、4月はトレンドへ戻った。財については、国民生活の上では安定が望ましいけれども、昨秋以来の円安と原油高により、上昇へと転じている。消費が強まるに連れ、物価が高まるのは必然的だ。足下では、実質GDPの家計消費(除く帰属家賃)と政府消費の合計が増税前水準に肩を並べるところに来ており、始まるのは、これからである。

(図)



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 供給面に目を移すと、4月の鉱工業指数は、前月比+4.0となり、一段と水準を高めた。生産予測も、5月-2.5、6月+1.8と順調である。このままなら、4-6月期は、前期比2%超の高いものとなる。こうした動きは、今後の輸出増を見越したものと言えよう。もう一つの景気の起動力である建設は、4月の建設財生産が+2.0、5月予測が-2.0、6月が+0.4と一進一退だ。住宅投資が頭打ちになっている状況からすれば、満足すべきものだろう。

 設備投資を占う資本財(除く輸送機械)は、更なる高まりを見せている。外需を多く含むと思われるが、4月生産は+8.2、5月予測が+2.8、6月が+1.4である。鉱工業生産の全体以上に資本財が高まるというのは、景気拡大期の典型だ。他方、消費財の生産は、下げては上げを繰り返しているものの、着実に水準を上乗せしている。主役の車は、輸出も好調だが、国内でも売れている。消費財の生産や出荷が増税前水準を超えるのも、間もなくであろう。

 雇用については、有効求人倍率のバブル期超えが話題となったが、女性向きの福祉介護のパートが多いなど、かつてとは質的な違いもある。焦点は、男性の就業者数で、4月の労働力調査では+4万人だった。鈍いながらも増えているとは言え、内訳の雇用者数が低調なのは気になる。新規求人では、建設、製造、運輸といった男性向きのフルタイムの求人が増えているので、今後の浮上に期待したい。

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 昨年後半からの景気回復局面は、輸出増に、住宅と企業の建設投資が加勢することで始まった。足下では、住宅投資は一服し、引き続き、輸出が牽引する中で、成長は消費へと波及してきた。追加的需要を起点に、雇用増、消費増というパターンであり、消費が増税前水準を超えるようになれば、おのずと物価上昇へつながるだろう。景気は、波及を知ることが大切であり、波に乗ることこそ、経済運営の要諦となる。

 消費は、景気ウォッチャーの動きからすると、まず、車と家電が上昇し、次いで、インバウンドに恵まれた百貨店が続き、足下で、衣料とコンビニが上向き、スーパーはこれからという感じだ。車と家電は、消費増税前の駆込み需要から3年が経ち、買い替え時期が回ってきただけとも言えるが、先送りされなかったのは、景気が順調であればこそだ。こうして、チャンスを活かしながら、景気は加速していく。それは改革に勝るのである。


(今日までの日経)
 出生数 初の100万人割れ。世界の株、時価総額最高。日銀総資産500兆円。設備投資、リーマン前回復・法人統計。所得税収 前年割れ。

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