経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

ユーロの今後と日本の戦略

2011年12月13日 | 経済
 果たして十分なのかと疑問が持たれたEU首脳会議の合意だったが、それに対する市場の反応は、やはり「不十分」というものだった。当面は、S&Pやムーディーズの格下げにどういう動きを見せるかが注目点になる。織り込み済みなのか、あるいは、更なるリスク回避に向かうのか。

 いずれにしても、これからは実態経済の悪化が追い討ちをかけてくる。今日の日経の一面トップは、「世界貿易にブレーキ」である。欧州の減速が中国などのアジアを減速させ、それがまた欧州の輸出を鈍らせるだろう。輸出の鈍化は、盟主のドイツさえ苦しめよう。欧州の成長が失われれば、各国の国債比率はますます高まり、リスクは増していく。

 筆者は、ECBが何らかの形で、大規模な国債購入に踏み切らざるを得なくなるのは、時間の問題だと考えている。あとは、どこまで悲惨になれば決断するかである。実体経済が悪化するタイミングでは、民間への融資にさえリスクが発生するから、戦線が広がりすぎて、ほとんど手が着けられない状況になろう。

 FTは、ECBが銀行に融資して各国の国債を買い支えさせるという方策を指摘している。FT同様、筆者も、にわかに信じがたい。確かに、ECBが絶対にデフォルトさせないと約束すれば、銀行の行動を今までと逆にすることは可能だろうが、そこまでECBを政治的に信用できるのか。銀行は、政治リスクを取るくらいなら、守りに徹すのではないか。まあ、次々と「どうすれば」を出してくるFTはさすがだとは思うが。

 さて、日本だが、エコカー補助金を年末から適用するとは、随分、思い切ったものだ。輸出に危機感を覚える自動車業界の必死さが伝わって来る。それを措置する2.5兆円の四次補正は既定路線のようだが、他方で、国家戦略会議は、2012年度予算の政策経費を前年度と同様の71兆円に抑える方針というのだから、何とも間が抜けている。どういう意味がある「戦略」なのか。

 3000億円規模のエコカー補助金を早々に始めるのは良いが、バラマキ反対で、年明け2月から子ども手当を4000億円カットするのではなかったのかな。本コラムでは、8/18に、欧米景気の低迷していく中で、緊縮財政に舵を切る危うさを指摘していたが、そのとおりになった。欧州危機の深刻化も9/15に書いたとおり。バラマキと緊縮のポリシーミックスとは、素晴らしい「戦略」だよ。緊縮を貫くよりはマシだからね。

(今日の日経)
 世界貿易にブレーキ、欧州危機がアジアを直撃。盟主ドイツの死角。株式、債券、ユーロの売り優勢、伊国債6.8%、ムーディーズは首脳会議を評価せず。FT・悪賢い欧州銀の国債購入。次期戦闘機F35最有力。年末購入から適用、エコカー補助金。COP17・企業は日本の不参加を評価。基礎年金は年金債検討、埋蔵金限界。中国海軍がセイシェルに足場。コスモが20年代に洋上風力。株式会社を考える・末村篤。経済教室・医療の産業化・林良造。

※F35は規定路線。米が導入延期をしようという最悪のタイミングで決めるようだ。※温暖化対策も寂しくなってきたね。※基礎年金は、郵政株という埋蔵金を担保にしたらどうか。政府資産を移すだけだから簡単だよ。まあ、消費増税のテコにする戦略だろうが。

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