経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

日本経済の実力を解き放て

2012年05月18日 | 経済
 今年の元旦、本コラムは「消費が伸び、日本は予想外に高成長を遂げる」としたが、4.1%成長という昨日のGDP速報の結果は、それが現実になったと言って良かろう。むろん、経済の動向については、複数のシナリオを用意するのが基本であり、その中で一番おもしろいものを、皆さんに披露しておいたということではある。

 さて、今回の高成長に対する一般的な見方は、日経にもあるように、「復興需要が下支え」というものである。たしかに、今回の4.1%は出来過ぎで、エコカー補助金や公共事業の増加に因る部分はある。しかし、あまりそれに引きずられると、消費の地力を見誤るように思う。政策要因を重視し過ぎると、高成長も一時的という判断に傾くからだ。

 まず、4.1%の中身だが、在庫投資の寄与が0.4もある。在庫投資は持続的なものではないので、これを差し引くと2.5%に下がる。公共事業の寄与の0.3も長くは続かない。これも引くなら1.3%となる。今後は、執行に難があるため、あまり伸びない代わり、大きくは減らず、安定的に推移することも考えられる。そもそも、公共事業は、前々期、前期とマイナスが続き、今回、ようやく伸びただけで、水準自体が決して高くないのである。

 続いて、消費に関するエコカー補助金の影響だが、消費の伸びに対する上乗せは、寄与度で0.2くらいではないか。そうすると、成長率は0.5%まで落ちることになるが、その一方、今回は、設備投資と民間住宅が寄与度で-0.5もあって、実勢を踏まえると、マイナスが続くとは考えられないので、結局、日本経済の実力は、3%程度というところだろう。

 こうしてみると、世間が思うより、日本経済の実力は高いように思う。問題は、それを発揮させようという発想がないことだ。「どうせ伸びないのだ」とばかり、6月には年少控除の廃止が行われ、秋には年金給付のカットも始まる。せっかく、消費が中心になって伸びようとしているのに、財政当局は、それを潰そうと躍起なっているかのようだ。

 成長を信じないから、成長させた上で果実を得ようという発想にならず、我慢できずに芽が出た段階で早々に喰ってしまう。日本のエリートの病は深い。成長を加速し、高投資の構造に持っていくには、本当は、果実をさらに成長に投じるほどの思い切りの良さが必要だ。そこまでいかなくても、成長より「公平」を優先する余計な「改革」だけでもなければと思う。日本経済は、実力を解き放つだけで高成長をする。それを示したのが今回の結果だと考えている。

(今日の日経)
 みなし節電で生産維持。社説・成長力強化へやることは多い。景気緩やかな回復軌道、12年度GDP2.2%増。東芝、テレビ国内生産停止。外国人の株売り越し加速。大機・財政破綻への備え・風都。経済教室・高齢者雇用・太田聡一。

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1 コメント

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Unknown (15の僕)
2012-05-29 23:46:23
何だかんだ、少子化を止めりゃ全て解決。

教育を変えれば、少子化解決。

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