経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

消費と輸出の不振で迎える消費増税

2014年02月02日 | 経済
 金曜に12月の月次統計が公表され、民間調査機関の10-12月期GDP予想も出揃ったが、日経によれば、年1.8~4.1%成長とバラついたようだ。一番低いのがニッセイ研の斎藤太郎さんだが、筆者の感じは、これが一番近い。需要重視の家計調査派なのでね。消費増税まで、あと2か月。日本経済は、この基調の低さの中で、試練を迎える。

………
 家計調査の傾向は、前回分析したのと変わらない。二人以上の世帯の季節調整済の指数は、前月比-0.7の98.8だった。これで10-12月期は、前期比+0.5だから、消費は、概ね年2%成長ということになる。その中で、基調を示す「除く住居等」は、前期比-1.8と低迷した。つまり、弱い基調に自動車などの駆け込み需要が乗り、ようやく2%成長になっているということである。

 また、勤労者世帯で見ると、季節調整済の指数は、98.7と前期比+0.1に過ぎない。名目実収入は+0.1であるものの、物価上昇のために、実質実収入は-0.5になっている。収入からすれば、消費はマイナスでもおかしくない。駆け込みを除けば、7-8月期GDP速報での前期比+0.2という消費の低迷ぶりから、状況は変わっていないと考えるべきだろう。

 こうした見方は、筆者だけでなく、第一生命研の大塚崇広さんも同様で、「駆け込みを除いた消費は強くない」(1/31)としている。大塚さんは、消費増税を前に、不安を残しつつも、ボーナスやベアに期待して、1997年のような悪化はないとしているが、果たしてどうか。前にも書いたが、1997年の春闘の賃上げ率は2.9%増、夏のボーナスも2.9%増だったのに、2%の消費増税に耐えられなかった。

 勤労者世帯の消費性向の高さも、駆け込みの大きさを示している。10-12月期は平均74.9だった。普通なら74.0くらいのものである。2013年は、全般的に消費性向が高かった年で、この需要が設備投資に結びつけば、成長が高まり、おのずと消費性向が低下するのだが、まだ設備投資が出始めたところで、消費増税によるカットが始まる。

………
 10-12月期の外需は、輸出が伸び悩む中で、輸入が増大し、寄与度は-0.5程度になりそうだ。異次元緩和の円安で輸出を拡大し、消費増税に耐えるというシナリオは、望み難くなっている。駆け込み需要の輸入増の反動で、4-6月期は多少プラスに寄与するだろうが、それは期待されているものとは違う。1997年の場合、輸出は、前年10-12月期から、前年同期比が4期連続で二桁の伸びを記録していた。それでも挫折したのが前回である。

 住宅は、昨年の着工件数が出たことで、増税後の状況もうかがえるようになった。来年は、駆け込みの反動で、今年より2割減といったところだろう。ただし、1997年当時とは、住宅投資のボリュームが小さくなっており、需要に与える打撃は6割程度にとどまる。だいたいGDP比0.5%くらいではないか。これは、前回との比較で数少ない有利な点である。

 雇用は、1997年当時より良いが、問題は中身である。日経にもあるように、正社員が増えず、非正規中心である。したがって、4-6月期に、すぐさま雇用調整がなされる可能性が高い。今が高いからといって、安心できない。前回は、在庫増から雇用調整へと向かったが、今回は在庫増が少ない中で、雇用が減り、いきなり消費に響くパターンになると考えられる。

………
 米国は、ロイターによると、いくつかの緊縮財政の措置で、年明け以降の消費には不安が伴うようである。既に住宅投資は減り始めているし、好調な輸出も、新興国が陰れば減速することになる。米国の成長率は、昨年より高まるというのが一般的な見方だが、そう簡単には行かず、一進一退は覚悟せねばならない。それで資産価格がもってくれれば、ラッキーというところだろう。

 中国は、1月末の理財商品のデフォルトをひとまず回避した。それでマネーの動きが変わらないかが注目点だ。テーパリングで国内に回帰していたようだが、海外に流出しだすと、不動産のバブルが弾けることになる。そうなると止められなくなるし、世界経済にも影響が出よう。日本は、消費増税のため、異変に対応する余裕はゼロである。世界が平穏であることを祈るよ。


(昨日の日経)
 企業の7割が増収増益。ルネサスが液晶向け撤退。保険販売ルール創設。物価が耐久財に波及。非正規社員が最高の36%、住宅着工は昨年11%増98万戸。山田線を三陸鉄道に移管。
ロイター・米個人所得横ばい、失業保険で減速も。

(今日の日経)
 新薬の保険適用に新基準。新興国国債の保証料急騰。消費税・未完の改革・未来に責任の重い届かず。がん細胞は進化する。読書・シベリア抑留者達の戦後、産業政策の作り方。

※消費税が失敗続きなのは、経済に合わせる思想がないから。倫理観で正当化しようとするところに問題がある。長期的必要性に酔い、そこへ至る過程を疎かにしてはならない。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 厚生年金は景気を助けるのか | トップ | 2/4の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事