「北朝鮮がアメリカを攻撃するはずもなく、アメリカも先制攻撃を行わない」
これが昨年末のイアン・ブレマー氏のご託宣です。
新年、明けましておめでとうございます。
日本の太平洋側の地域は穏やかな正月を迎えていますが、日本海側の地域は風と大雪で大変な正月ですね。どうかこれ以上天候悪化がないよう祈っています。
新年が本当にめでたい年になるのか、不安を感じる方も多いのではないでしょうか。ほかでもない北朝鮮の動向がとても気になるからです。それでも金正恩の年頭演説により、南北会談やオリンピックへの参加可能性など、当事者間は意外と穏やかな空気が流れ始めましたね。なのにトランプは、
「自分はそれよりずっと大きく強力な核ボタンを保有している」などと、ガキのような言葉を吐いて煽っています。
さて、昨年の年初は年中行事になっている国際政治学者イアン・ブレマー氏の「今年の十大リスク」予想から私のコメントがスタートしました。彼は地政学上のリスクの世界的権威で、ユーラシアグループというコンサルティング会社を率いています。私がもっとも尊敬する国際政治学者で、その発言に世界が注目しているリスクの専門家です。その彼が昨年末NHKのインタビューに応えたのが冒頭の言葉です。繰り返しますと、
「北朝鮮がアメリカを攻撃するはずもなく、アメリカも先制攻撃を行わない」
意外にも「戦争にはならない」とはっきり述べていました。これは私にとり、大きな安心材料です。
ではちょっとさかのぼって、昨年年初の彼の17年のリスク予想を簡単に振り返りましょう。
十大リスクの筆頭はトランプ主導の「わが道を行くアメリカ」でした。予測内容を要約しますと、
1. トランプの「アメリカ・ファースト」思想と「アメリカを再び偉大にしよう」という誓約は、アメリカの最も核心的な価値である「独立」に立脚している。
2. トランプにとってそれは、アメリカが世界において必要不可欠な役割を果たすという自らの責任を放棄することを意味し、アメリカが国際機関及び一連の同盟諸国から背負い込んだ重荷を投げ出すことで実現する。
まったくもってその通りとなりました。
世界各国が平和のために協力しようと様々な分野で苦労し合意に至った事項を、トランプはひたすらぶち壊して歩きました。ブレマー氏の警告通り、現代における責任ある大国の大統領とは思えない行動をし続けました。
彼のサイン一つで実現するTPP離脱やパリ協定離脱は、彼が信ずる重荷からの解放に違いありません。すでにイランとの和平協定やキューバとの国交回復なども逆転させ、オバマのレガシーを壊すことにだけに倒錯的快感を感じ、無法行為を続けています。
年末になって中東を奈落の底に落とし入れた「アメリカ大使館のエルサレム移転」も同じ脈絡の中でとらえることができます。アメリカがこれまで果たしてきた「中東問題の仲裁者」の役割を放棄しました。
さらに彼の政策の核心部分をブレマー氏は以下のように予測していました。
引用
「軍事面では、『わが道を行くアメリカ』は、実力行使をためらうことを意味するのではなく、 米国の核心的利益を守るためなら他国にどのような影響を与えようがお構いなしに実力行使する断固たる意志があることを示す」
引用終わり
その通り、突然シリアを爆撃しました。なんとも恐ろしいトランプです。
私はこれまでみなさんに、我が国の首相が「トランプを100%支持する」と何度も何度も言い続け、今回エルサレム移転の非難声明の列にも加わらなかったことは「実になさけない」、と批判してきました。そんなトランプへのラブコールなど、トランプによりいとも簡単になかったことにされる可能性があります。
その傍証の一つとして先ほど面白いニュースが入りました。バノンが政権内の暴露本を書いたのですが、その中でトランプとファミリーを批判したバノンに対してトランプは、「バノンは職だけでなく、正気も失った」と猛烈な批判を始めています。お互いにちゃぶ台を返しっこしています。面白くなってきましたね、みものですよー、みなさん。
日本では年末に報道された昨年の「10大ニュース」のどれもが、北朝鮮のミサイル発射や核実験をトップに上げていました。それはトランプが過激な発言をエスカレートしているからだと私は見ています。
就任前から強い大統領を標ぼうし、北朝鮮を刺激的な言葉で非難し続けました。8月には金正恩に対して「リトル・ロケットマン、・・・世界がこれまで目にしたこともない炎と怒りに直面する」と言い、9月には国連で「北朝鮮が自殺行為の任務を進めている。・・・北朝鮮は完全に破壊される」などと言い続けています。金正恩が抵抗をエスカレートさせるのはある意味当然でしょう。
お互いにこうしたガキの喧嘩のようなアナウンスを継続し続けると、最後はそれを本当に実行する以外に国内から支持を取り付けるすべを失い、無駄な戦争に踏み切る。私はそれをおそれているのです。前にも申し上げたとおり、支持率の低下がトランプ暴発の可能性を増します。
日本の首相は「トランプを100%支持する」と宣言しているので、もし事が起これば在日米軍基地が真っ先に攻撃対象になることは間違いありません。北朝鮮がイの一番に攻撃するのは沖縄であり、岩国であり、厚木であり、三沢の米軍基地で、グアムなどは二の次だと私は思っています。
ところがこと北朝鮮の脅威に関しては、イアン・ブレマー氏は、
「北朝鮮がアメリカを攻撃するはずもなく、アメリカも先制攻撃を行わない」
とのこと。なんとも頼もしいご託宣ですが、いったい何を根拠に言っているのでしょう。
次回はその詳しい理由を説明します。
つづく
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます